最新のミラーレス一眼を使って、手動でピントを合わせて撮るのが楽しい、フォクトレンダーのSONY E用 大口径マニュアルフォーカスレンズ「SE」シリーズ。
今回はそんな「SE」シリーズ第3弾となる、NOKTON 50mm F1.2 Aspherical SE の実写レビューです。
Voigtlander (フォクトレンダー) のSONY Eマウント用のレンズシリーズ「SE」は、優れた光学性能とフルサイズミラーレス一眼カメラに最適化されたチューニングで人気のシリーズです。
滑らかなフォーカスの抵抗感や絞りのクリックなど、自動化が進んだデジタルカメラに物足りなさを感じるユーザーにも、写真を撮る事自体を楽しめる道具として作られています。
現在3本のレンズがラインナップされていますが、いずれもf1.2という非常に明るいf値である事も特徴です。
高性能であるだけでなく、大口径レンズらしい個性を色濃く残しているシリーズでもあり、マニュアルフォーカスという古臭い撮り方だけでなく、写りにもノスタルジックな「クセ」があるのが魅力です。
又、電子接点付きのメリットを最大限活かし、倍率色収差などはデジタル処理され最小限に抑えられる為、同設計のMマウントのシリーズよりずっと高画質になる事もSEシリーズのメリットの一つです。
要は、写りの個性はそのままに、悪い部分だけデジタル処理で取り去る、いいとこ取りが出来るわけです。
Mマウントの方が、他のミラーレス一眼カメラにも使えて便利な気がしますが、SONY Eマウントで楽しむ事が分かっているなら、性能的にも機能的にも最適化されたSEシリーズをおススメします。
そんな、Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 50mm F1.2 Aspherical SE をSONYの超高画素カメラ、α7RIVに装着して、テスト撮影に出かけました。
フィルター径 | 58mm |
最短撮影距離 | 0.45m(最大撮影倍率 1:7.0) |
最小絞り | F22 |
対応センサーサイズ | フルサイズ |
マウント | SONY E |
全長 | 約58.5mm |
重量 | 約383g |
付属品 | レンズフード |
今年は梅雨が長く、しかも梅雨らしく毎日ジトジトと雨が降って、撮影のタイミングに苦労させられます。
この日も朝から曇り空。そんな曇り空をバックに水鏡に逆さに写ったマンションにレンズを向けました。水面までの距離は数メートルのはずなのに、ピントは実際のマンションのある無限遠付近になるのが不思議です。
f1.2の極端に薄いピントが、遠くのマンションと、近くの池に、心地よいコントラストをつけてくれました。
ところが、しばらく撮影していると日が射して来ました。久しぶりの定常光(太陽光)での撮影です。
雨上がりの緑が綺麗で、見上げた大樹の葉に自然とシャッターを切りました。
こういった逆光の、比較的明暗差の激しい状況でも、フリンジがのらないあたりは、倍率色収差の情報がデジタル処理される電子接点付きレンズの利点です。
f11と絞り切って撮影したわけではありませんが(NOKTON 50mm F1.2 Aspherical SE の最小絞りはf22)、葉の隙間からちらりと覗いた陽の光に綺麗な光芒が出ました。
こういった事態なので、人込みを避けて散歩やランニングに体を動かす方も多いと思います。
写真を趣味にしていると、そんなちょっとした散歩がただ歩くより数倍楽しくなります。
さらに、Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 50mm F1.2 Aspherical SE のようなマニュアルフォーカスのレンズを使うと、写真を撮る事自体も楽しむ事が出来ておススメです。
ファインダーを覗きながら、じっくりとピントが合っていく様を見ていると、結果だけにとらわれない、ちょっと余裕を持った心持にしてくれるのではないでしょうか。
既に季節外れになりつつある紫陽花ですが、雨が長引くのを見越したように、少しだけ残った花を咲かせていました。
Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 50mm F1.2 Aspherical SE の最短撮影距離は45cmなのでマクロは無理ですが、紫陽花ほどボリュームのある花ならうまく切り取る事が出来ます。
他のSEシリーズレンズ同様、少し絞って(このカットではf2.8)撮影すると、グッと引き締まった画になって来ます。
梅雨の晴れ間の日の光を受けて輝く寺院の屋根に露出が合うように撮影しました。美しい弧を描く屋根が綺麗です。
レンズが小さいお陰で、撮影が楽です。カメラは何十年かかけて大きく重くなりましたが、今回のカメラ、レンズの組み合わせは、フィルム時代とさほど変わらない大きさなので、写真を撮るのを楽しむ事に専念できます。
まだそれ程熱くない空気を感じながら、気持ちよく撮影を続けていきます。
ユリの花の少々毒々しい色や形を、開放f1.2の極端に薄いピントの中に放り込んでみました。
SEシリーズの中で最も焦点距離が長い NOKTON 50mm F1.2 Aspherical SE は、シリーズ中もっとも大きなボケが期待出来るレンズです。
微妙な写りの違いはありますが、3本ともボケも綺麗なので、どのレンズを選択するかは「焦点距離」から来るボケの量と画角で選べばいいと思います。35mm、40mm、50mmと、非常に近い焦点距離で3本のレンズをラインナップするあたり、こだわり派には嬉しいところです。
何故か歴史ある寺院の山門がダンスフロアーに。礎石の横で木漏れ日が踊っていました。
f5.6まで絞って撮影していますが、石の質感の描写など、Voigtlander (フォクトレンダー)の高性能レンズAPO-LANTHAR(アポランター)に近い描写性能を有していると思います。
レンズの2面性を活かしながらの撮影も、SEシリーズでは定番となったレンズの楽しみ方です。
久しぶりの強い日差しに、夏の到来を感じる陽気でした。
小川に作られたトンネルから外を見るイメージで、カメラを水面すれすれに近づけて撮影しましたが、明暗差と、開放の大きなボケを利用して望遠レンズで撮影したような効果が出ました。
色々やってみる事が、写真をより楽しむコツだと思います。
一本だけしょんぼりと佇むひまわりを、開放の薄いピントで狙いました。
全体的に緑かぶりしているのは、手前に緑色のネットがはってあるからで、オーバー目の露出(露出補正は0ですが、シャッタースピードが足りず、結果オーバーになってしまいました)と併せて、ネガフィルムで撮ったようなノスタルジックな色合いになりました。
フィルターや画像処理でもいいですが、その場の工夫で効果を狙うのも楽しいものです。
これからの時期、日中の撮影では開放f1.2を使おうと思うとシャッタースピード1/8000でも足りない事があるので、NDフィルターは必須だと思います。
開放と絞った時の画質を、拡大して見てみます。
先ずは開放f1.2の画質です。
枠内を拡大
開放では、物凄くシャープというよりは、レンズを感じる柔らかさを感じられるレンズです。
コントラストは十分に高いので、ひと昔前のドイツのレンズのような、骨太な表現が向いているかもしれません。
倍率色収差の補正は、全カットONにして撮影していますが、SEシリーズのレンズらしくフリンジも見られず、色再現も申し分ありません。
次に、絞った際の描写を見てみます。
枠内を拡大
絞り込む事で、非常にシャープで現代的な写りに変貌します。
超高画素機であるSONY α7RIVの性能を使い切れる描写性能です。
先にも書きましたが、クラシックな味わいと、非常にシャープな現代的な写りの2面性が楽しめるのも、Voigtlander (フォクトレンダー) SEシリーズの良さの一つです。
これまで、Voigtlander (フォクトレンダー)のSEシリーズを、35mm F1.2、40mm F1.2、今回 NOKTON 50mm F1.2 Aspherical SE と使ってみて、いずれも個性的で写真が楽しくなるレンズでした。
ピントを手動で合わせるというプロセスが加わっただけで、こんなに写真が楽しくなるとは!
これだけ近い焦点距離に3本のレンズがラインナップされると、どれを購入するか迷うところですが、裏を返せば、撮影者の細かい好みに対応出来る、オーダーメードに近い感覚で選べばいいと思います。
単焦点レンズ、マニュアルフォーカス、大口径f1.2というと、少しレベルが高く感じますが、写真を撮る楽しみがつまったレンズなので、是非チャレンジしてみて欲しいレンズです。
>>> Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 50mm F1.2 Aspherical SE ソニーE