APS-Cサイズセンサーカメラ用の大口径ズームレンズTAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD (Model B070) SONY Eは、約4.1倍のズーム比を持っていながら全域でF2.8と明るく、オールラウンドな活躍が期待できるレンズです。実写レビューを中心に、性能や操作感、動画での使い勝手を紹介します。
TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD (Model B070) SONY Eは、4.1倍という高いズーム比を持ちながら全域でF2.8を達成したAPS-Cサイズセンサーカメラ用の非常に汎用性の高いレンズです。
初めてスペックを見た時、同社のフィルム時代の名レンズSP AF 28-105mm F/2.8 LD Aspherical IFを思い出しました。デジタルで言うフルサイズに対応したレンズであるため、こちらは巨大なレンズでしたが、高倍率、大口径、高性能という相容れない理想を並び立たせようとするTAMRONの野心を感じます。
コンパクトなAPS-Cサイズセンサーのカメラに取り付けると小さくはありませんが、全域で開放F2.8というスペックや、手振れ補正VCを内蔵していることを考えると十分にコンパクトなレンズと言えます。
後述しますが、手ぶれ補正VCが動画向きにチューニングされていることや、引きと寄りを取りやすいズーム倍率などから、1本で便利に使う動画用ズームレンズとしても優秀なスペックです。
外観はプラスチックですが、チープな印象はなくしっかりしたつくりです。なによりズームやフォーカスは滑らかで実用的な操作感で、特にズームの動き出しは一気に動いてしまうこともなくゆっくりと正確なフレーミングが可能です。
ズーム比が大きいのでフードは短めですが、しっかりしたバヨネットの花形タイプです。
フィルター径 | 67mm | 最短撮影距離 | 0.19m(WIDE)/0.39m(TELE) |
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最大撮影倍率 | 1:4.8(WIDE)/1:5.2(TELE) | 最小絞り | F22 |
絞り羽根 | 9枚(円形絞り) | マウント | SONY Eマウント |
長さ | 119.3mm | 重量 | 525g |
風景をスナップする撮影が続いていたので、今回は気分を変えてストリートスナップに出かけました。
まだ開店前の飲み屋さんですが、のれんの鮮やかな赤色に、桜のプリントが目についてレンズを向けました。布の滑らかな質感がしっかり再現されてシャープです。
普段は単焦点レンズを使うことが多い私ですが、思った場所からフレーミングを調整出来るズームはやはり便利で、素早く撮影したい時には重宝します。
毎日のように様変わりしてしまう街中の風景ですが、ふと見上げると時代を感じる古いものがあったりします。
カメラやレンズでもそうですが、なぜ人はこうも古い物に魅力を感じるのでしょうか?と、最新のレンズを装着したデジタルカメラのシャッターを切りました。
F2.8の薄いピントのおかげで、古臭いどこか魅力的なすりガラスに、自然と視線が向かいます。手前にわざと余計なものを入れたくなるのも、明るいレンズならではです。
公園の池をカモが一羽泳いでいました。55mmまでのレンズだったら諦めたかもしれませんが、70mmは35mm判換算で105mmの中望遠なので、カモも写真の一部になる大きさで撮影できました。
スナップ程度であれば、最も使う画角が凝縮された17-70mmの焦点距離はとても使いやすく、ボケについてもF2.8だとある程度満足出来るレベルになるので、TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDは、オールラウンドに使いやすいレンズです。
TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDをオールラウンドたらしめる理由のもうひとつの理由は、近接に強いことです。
0.19m(WIDE)/0.39m(TELE)の最短撮影距離は、ズームレンズを使っているのを忘れるくらい、被写体に寄る事を躊躇なく行えるレベルです。勿論マクロレンズの代わりになるレベルにはありませんが、単焦点の標準レンズを超える撮影倍率は、レンズの利便性を大きく高めてくれていると思います。
もう真冬ですが、紅葉したモミジの葉がわずかに残っていました。
ズームレンズのメリットに、焦点距離によって背景をどのくらい広く入れるかを調整出来る事があげられます。このカットでは標準より少し広角寄りにズームして、被写体に近寄って撮る事で背景を賑やかに入れるようにしました。
もちろん、F2.8の大きく綺麗なボケが一役買っています。
学生時代によく行ったジャズ喫茶「MEG」がまだありました。
数年前に閉店するといううわさを聞いた気がするので、経営が変わっているのかもしれませんが、懐かしくてカメラを向けていたら、颯爽とした女性が写り込み、少しドラマチックな写真になりました。
当時、吉祥寺にはもう一軒「A&F」というジャズ喫茶があり、こちらもよく行くジャズ喫茶でしたが、やはり10年以上前に閉店してしまい、今は影も形もありません。
壁に描かれた画がどうにも魅力的でシャッターを切りました。ガン吹きされた壁の質感やあちこちについた傷や汚れが、画の雰囲気と絶妙にマッチしています。
実は解像力のテスト用に撮ったカットですが、画の雰囲気も味わいがあって好きです。
シュロの木だと思いますが、冬の光を浴びた幾何学的な形が面白くてシャッターを切りました。
何気ない情景を写すのもストリートスナップの醍醐味です。TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDの、4.1倍のズーム比、全域開放F2.8、高い近接性能は、幅広い表現を可能としてくれて、自然とカット数が増えていました。
TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDの4.1倍のズーム比は、引きと寄りを撮る動画でも使いやすい画角になります。
さらにF2.8の明るさはAPS-Cサイズセンサーの高感度の弱さを補い、滑らかなズームの操作感はちょっとずつ動かすじんわりとしたズームの表現に使えるので、動画用レンズかと思えるくらい、動画撮影と相性のいいレンズです。
さらにTAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDの手ぶれ補正VCは、動画撮影時に配慮した補正効果が得られるようチューニングされており、従来より自然な補正効果を得られます。
「ワイドレンジと高画質の両立」という製品コンセプトの通り、TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDも、他のTAMRON レンズ同様高いレベルの光学性能を持っています。
拡大して描写性能を見てみましょう。
開放F2.8、焦点距離は約29mmでの描写ですが、解像感、立体感ともに非常に高いレベルにあり、のれんの縫い糸がわかるレベルで細かい部分まで解像しています。コントラストも高く、メリハリのある抜けのいい描写です。
次にF5まで絞ったカットで周辺部の描写を見てみます。
ガン吹きの細かい凹凸までよく描写されており、周辺部にありがちな画像の流れもほとんど無くシャープです。F2.8の大口径、4.1倍という広いズーム比を持ちながら、単焦点レンズ並みの非常に高い描写性能だと感じました。
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