デジタルカメラの画素数については、多ければいいという訳では無い、という事がしばしば言われます。
しかし、個人的には画素数の多いカメラはやはりいいと感じる事も多く、その高い解像感に驚きと感動を覚える事もしばしばです。
裏面照射型センサーの登場など、高画素のデメリットが技術的に乗り越えられつつある今、画素数と画質の関係について検証してみました。
画素数とは
画素数が多くなると「画質が低下する」と言われるのは何故か?
2420万画素 vs 6100万画素カメラ 画質比較
超高画素機の恐るべき描写性能
大伸ばししなければ高画素のカメラは必要無い?
画素数を活かす条件1【高性能なレンズ】
6100万画素を活かし切るおススメレンズ
Voigtlander (フォクトレンダー) APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical
SIGMA (シグマ) 85mm F1.4 DG DN | Art
SONY (ソニー) FE 24mm F1.4 GM
SONY(ソニー) FE 24-70mm F2.8 GM II
画素数を活かす条件2【ISO感度】
スローシャッターを使う
画素数が多い方がフリンジが出やすいのか?
まとめ
画素数とは映像素子に並んだ、光をデジタル信号に変える画素の数です。
映像を作る際の点(ピクセル)の数となり、例えば2420万画素なら6000×4000ピクセル、6100万画素のカメラなら、9504×6336ピクセルくらいになります。
高画質と言われる4Kモニターが3840×2160ピクセルなので、写真用のカメラがいかに高画質かわかりますね!
画像をつくる点が多くなればそれだけ高画質となる気がしますが・・・
高画素機のデメリットについてよく言われるのは、同じ面積の中に多くのセンサーを詰め込むと、一つ一つの受光素子が光を受ける面積が小さくなり、ノイズが出たりダイナミックレンジの低下を招くというものです。
確かに、SONY α7sIIや、Panasonic GH5sといった、画素数が少ないカメラは、高感度でもノイズが極端に少なく、暗い場所でも滑らかで黒が締まった映像となります。
対して、画素数の多いカメラは、高感度ではノイズが多く出てザラザラした画になってしまいます。
しかし、「条件」が揃った際の高画素機の画質には目を見張るものがあり、非常に高精細です。
それでは「条件」とはどういった事なのか?中程度の画素数のカメラと高画素のカメラでどのくらい差が出るのか?
フルサイズでは一般的な2420万画素のカメラと、フルサイズセンサー採用のカメラの中で最も画素数の多い(2022.6.25現在)6100万画素のカメラで、実際に撮影して、画素数の多少と画質の関係、画素数の多少のメリットデメリットについて検証してみました。
※カメラは同メーカーの最新機種を使いました。他社メーカーとの比較では違った結果となるかもしれませんのでご了承下さい。
条件が揃えば、6100万画素のカメラの描写性能は、驚くほど高いレベルにあります。
上の写真は、6100万画素のSONY α7R IVを使って撮影しました。
花びらの質感や、おしべの細かいディテールなど細かい部分まで詳細に写っており、非常にシャープで抜けのいい描写です。背後のボケにノイズが混じる事も無く、ボケの細かな諧調が滑らかに再現されています。
しかも驚くなかれ、この写真は下の写真からの拡大画像なのです!(緑の枠内を拡大)
ISO感度は常用最低感度のISO100に設定、レンズもクラス最高性能を誇る Voigtlander (フォクトレンダー) APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical を一絞り絞って使いました。
画素数が多い事から来る余裕は、トリミングしたり、大伸ばししたりする際は、頼もしい武器となります。
高画素のカメラが高画質なのはわかりましたが、はたして9504×6336ピクセルといった巨大なデータが必要でしょうか?
普通は必要無いと思いますが、実は大きなデータを使って小さなデータを作ると画質が向上するのです。
9504×6336ピクセルのデータを6000×4000ピクセルのデータにリサイズした画像と、6000×4000ピクセル撮って出しの画像との画質の差を見てみましょう。
わずかではありますが、上の画像の方がシャープで立体感に富みます。
これは、実際の画像のピクセル数よりも多くの情報(ピクセル数)から画像を作っているからで、例えば動画の場合4Kで撮影した映像をFHDに変換した方が、FHDの撮って出しより高画質になったりします。画素数が多い事のメリットはこんなところにもあるのです。
逆に、2420万画素から6100万画素相当の画像を作った場合はどうでしょうか。フォトショップを使って画像解像度を上げて比較してみます。
明らかに6100万画素の画像の方がシャープで高画質です。
少ないピクセル数の画像から大きな画像を作る方が劣化は激しいので、やはり大伸ばしするなら画素数が多い方が圧倒的に有利になります。
条件が揃えば、画素数が多いメリットは大きそうです。それでは、画素数の多さを活かす条件とはどんなものでしょうか?
先に花の写真を拡大した画像を載せましたが、条件が揃わないと如何に高画素なカメラを使っても、あそこまでシャープには写りません。
画素数が多いという事は、それだけ細かい描写を可能にするという事で、細かい描写を実際に写真に活かす為にはカメラの性能だけでなく、センサーに光を届けるレンズの解像度が大きな要素の一つになります。
画素数を活かす条件の一つは、高性能なレンズを選択する事です。
単焦点レンズの中には、恐ろしく高性能なレンズが存在します。
当ブログでも今までに多くのレンズをテストして来ましたが、そんな中から、6100万画素のカメラに相応しい高性能な単焦点レンズを4本ご紹介します。
マニュアルフォーカスのレンズなので、少し敷居が高いかもしれませんが、素晴らしい解像力を誇る標準レンズです。
アポランターの名前のとおり色収差も少ない為、レンズ単体でもフリンジの発生は殆どありません。最近(2022.5月)待望のNikon Z用がラインナップに加わりました。
実は、フォクトレンダーのレンズは、各メーカーのセンサーに合わせて同じレンズ配列でもチューニングが変えられており、これが専用設計されたアポランターの高性能の秘密となっています。
高性能なレンズメーカーとして名高いSIGMA(シグマ)のミラーレス一眼カメラ専用レンズで、素晴らしく高い描写性能だけでなく、美しく滑らかなボケ味で、高画素機の魅力を余すところなく活かし切ってくれるレンズです。
収差の一部(歪曲収差、周辺光量落ちなど)の補正をカメラ側にゆだねる事で、コンパクトさと高性能さを両立しており、高性能な割に比較的小さなサイズも魅力のレンズとなっています。
上の写真はSONY (ソニー)の高性能レンズシリーズGマスターの中から FE 24mm F1.4 GMを使って撮影しました。小さく写った富士山の細かなディテールがきちんと写っていて、驚くばかりです。
自社で6100万画素のセンサーを作るSONY製のレンズ、特にGマスターのシリーズには高性能なレンズが多いですが、その中でもトップクラスの性能を誇ります。
単焦点レンズ並みの性能を持つ、Gマスターシリーズの高性能ズームレンズです。
旧モデルでは6100万画素のα7RIVに装着すると眠さが目立ちましたが、II型になって光学系が一新、ズームレンズとは思えない驚くほどの高性能レンズになりました。
高性能になっただけでなく、大きさ重さとも旧モデルより大幅に小さく軽くなり、使い勝手も向上しています。
特に画素数の多いカメラは、少し感度を上げただけでもノイズが多くなるので、注意が必要です。
もう一つの条件は、ISO感度は可能な限り低感度を使う事です。特に、常用最低感度での映像は、ノイズが無い非常に滑らかな写真となり、高画素機の真骨頂とも言える超高画質を得る事が出来ます。
以下は、2420万画素と6100万画素のカメラのISO感度3200時のノイズの違いです。
6100万画素の機種ではノイズが目立ち、全体的に立体感に乏しい画となってしまっています。
ノイズというと夜間など暗い場所での撮影で問題となるケースが多いですが、このような明るい日中の撮影でも、ノイズによる画質の劣化はおきているので、可能な限り低感度で撮影する事をおススメします。
ちなみに、ISO100で撮ると、
ノイズは発生せず、滑らかな画像となります。
高画素なカメラは勿論、比較的高感度に強い画素数が中程度のカメラでも、ISO感度は出来るだけ低く抑える事で、画質は確実に良くなります。
これは、被写体が動かない事が前提で、さらに三脚などでカメラを固定する必要があるのですが、ISO感度を下げる為にスローシャッターを切るのも有効な手段です。
夜間などの暗い条件での撮影では、つい高感度を使いがちですが、スローシャッターを切る事でISO感度を下げて撮影する事で明らかにノイズを少なく出来ます。
三脚の使用はセッティングなどが面倒ですが、画質向上の為には効果の高い対策なので、試してみる価値があると思います。
画素数の多いカメラは、レンズの欠点が浮き彫りにされるケースが多く、フリンジが出やすいという印象があったので試してみました。
この写真は6100万画素のカメラで、フリンジの出やすい逆光という条件で撮影しましたが、結果はほぼフリンジは発生しませんでした。
フリンジは色収差由来であるケースが多いようですが、最近のデジタルカメラではカメラ内に倍率色収差補正があるのが普通で、最新型の機種で撮影する分にはあまり気にしなくていいのかもしれません。
さらに今回は、非常に高性能で色収差が少ない Voigtlander (フォクトレンダー) APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical を使った事も、仕上がりが良かった要因だと思います。
条件さえ揃えば、超高画素のカメラの高精細さはやはり魅力です。
6100万画素といった高画素のカメラは、性能を引き出すのにいくつかの条件をクリアしなければならず、ピーキーな部分はありますが、どこまでも拡大出来てしまう驚き、感動は他に代えがたいものがあります。
対して2420万画素のカメラは、高感度特性とのバランスも良く、価格もラインナップ中最もリーズナブルな事が多いので、オールラウンドに使い易い画素数と言えるでしょう。実は6000×4000ピクセルもあり十分に高画素なので、トリミングや高いクォリティのプリントにも対応出来ます。
結局どのくらいの画素数のカメラを使うかは、ユーザーの使い方次第という事になりますが、結論の出ない事にこだわって選ぶのもカメラ道楽の楽しみの一つなのかもしれません。