デジタルカメラならあたりまえに出来るオートフォーカス。
しかし「ピント」という写真の重要な要素をカメラ任せにしてばかりでは、写真を楽しむという意味でも、上達するという意味でも少し勿体なくないでしょうか?
今回は手動でしかピント合わせが出来ない、マニュアルフォーカス専用のレンズの魅力や楽しみ方、使い方のコツについてご紹介したいと思います。
-目次-
マニュアルフォーカスレンズの特徴はピント合わせがマニュアルフォーカスでしか出来ない事ですが、それ以外にも専用である故の特徴がいくつかあります。
先ずは多くのマニュアルフォーカスレンズが持つ特徴を幾つか挙げてみたいと思います。
先ず第一は、マニュアルフォーカス専用に作られている為、ピント合わせを行うフォーカスリングの動きが滑らかで、ピント合わせがし易い事が挙げられます。
これは、オートフォーカスは機械が動作を行う為、フォーカスリングの動きを一定以上重く出来ないのに対して、マニュアルフォーカス専用のレンズは動作部分にグリスを入れる事でトルク感を出せる事に起因します。
滑らかで動かしやすいのに、ピントはきちっと止まる、専用に作られた製品ならではの使い易さです。
光の量を変える為の絞り。マニュアルフォーカス専用レンズは、設計が古かったりサードパーティー製であったりすることが殆どなので、絞りを変える機構がレンズ単体で出来るようになっています。
この絞りを変える装置が絞りリングです。
マニュアルフォーカスレンズには、絞りリングとフォーカスリング、2つのリングが付いているのが普通です。
被写体にレンズを向けて、ファインダーの中でじんわりとピントが合っていく様を見つめる。
マニュアルフォーカスレンズの楽しさは、写真を撮っている実感を味わえる事だと思います。
最近はファインダーもEVF(電子ビューファインダー)になってしまい、少し味気ないかもしれませんが、それでもピントを合わせる事は写真を撮るという行為の重要な要素なので、ゆっくりと楽しみたいものです。
写真を撮るという行為は、出来上がった作品の為に他なりませんが、写真を撮る事自体を楽しむ、これもマニュアルフォーカスレンズの楽しみの一つです。
カメラメーカーでマニュアルフォーカスレンズを作っているメーカーは今ではごくわずかです。
よって、カメラのメーカーとレンズのメーカーは別のブランドを選ぶ事が多くなります。
そこで、カメラは仕組み的に他社製レンズを取り付けやすく、マウントアダプターが多く発売されているミラーレス一眼カメラがおススメです。
特に、フィルムと同じサイズのフルサイズセンサーで、専用のサードパーティー製マニュアルフォーカスレンズも多数存在する、SONY(ソニー)α7シリーズはおススメのカメラです。
さて、ミラーレス一眼カメラでマニュアルフォーカスする際便利なのが、フォーカスの拡大機能です。
ミラーレス一眼カメラは、EVF(電子ビューファインダー)なので、フォーカスをアシストする為に、拡大して表示する事が出来ます。
電子接点付きの、専用に設計されたレンズであれば、フォーカスリングを動かすと自動的に拡大される機能がありますし、マウントアダプターなどで他社製レンズを使う際もボタン操作などでファインダー画像を拡大出来る機能が付いているのが普通です。
この拡大機能を使うと、非常に厳密なピント合わせが可能になるので、特に開放f値の明るいレンズはピントがシビアになるので、使用する事をおススメします。
写真の歴史は古く、例えば有名な「LEICA」の市販モデルが発売されてから数えても100年近く経つようです。
これまでに多くのカメラ、レンズが販売されており、趣味として使うユーザーも多かった事から、例えば50年前に作られた製品が今でも中古品として流通しています。
そんなクラシックなレンズ(オールドレンズ)をマウントアダプターという道具を使って、現代のデジタルカメラに使う事ができるのです。
その写りは、性能という観点だけで言えば「悪い」と言えますが、独特の甘さにはなんとも言えない優しさや柔らかさ、個性が有り、愛好する方も多いようです。
勿論、オートフォーカスの時代に作られたオールドレンズはマニュアルフォーカスなので、ピントは手動で合わせる事になります。
クラシックなデザインのオールドレンズを使って、マニュアルでじっくりピントを合わせて撮る瞬間は、写真好きな方なら至福の時間でしょう。
■おススメマウントアダプター
>>> K&F Concept (ケーアンドエフ コンセプト)
>>> SHOTEN (焦点工房)
>>> Voigtlander (フォクトレンダー)
オールドレンズは、性能という意味では写りの悪さを個性と捉えて楽しむレンズと言えるかもしれません。
対して現代のマニュアルフォーカスレンズは、性能と写りの味や個性をバランスさせたレンズと言えるでしょう。
特にSONY(ソニー)やマイクロフォーサーズ用に Carl Zeiss (カールツァイス) や Voigtlander (フォクトレンダー) と言ったメーカーが作っているレンズは、性能と個性を上手くバランスさせていて非常に魅力的です。
現代のマニュアルフォーカスレンズには、性能的には甘さの残る柔らかいレンズから、オートフォーカスのレンズを軽く凌駕する超高性能レンズまでラインナップされ、選ぶのが楽しくなります。
又、敢えてオールドレンズのような個性を楽しみたければ、KAMLAN (カムラン) や 7Artisans (七工匠)といったアジアンレンズを選択する事も出来るので、性能的にはピンからキリまで多くの選択肢が用意されています。
■おススメアジアンレンズメーカー
>>> KAMLAN (カムラン)
>>> 7Artisans (七工匠)
>>> LAOWA (Venus Optics)
現代のマニュアルフォーカスレンズは、マウントに電子接点を持っているものもあり、カメラのレンズ補正に対応していれば、色収差など欠点だけを除去し、味だけを残す事も可能です。
Exif情報が添付されているので、絞りや露出補正値などの撮影データをパソコンで後から確認出来、写真が上手くなるのに一役買ってくれるかもしれません。
現代のマニュアルフォーカスの代表的なレンズに Voigtlander (フォクトレンダー) があります。
Leica Mマウント、SONY(ソニー)Eマウント、マイクロフォーサーズ用のマニュアルフォーカスレンズなどを作るブランドで、オールドレンズや海外のレンズが持つ「味」と、最新レンズの高性能さの両方を持っています。
単焦点レンズの多くのラインナップを持ち、個性も様々で魅力的なブランドです。
Voigtlander (フォクトレンダー) の魅力はそれだけではありません。
ラインナップの全てがマニュアルフォーカスのレンズである事からもわかるとおり、マニュアルフォーカスレンズについて全てを知り尽くしたメーカーでもあるのです。
滑らかなフォーカスリングの動きや絞りリング、クラシックなデザインの金属製の鏡筒など、持って、使って楽しいメーカーです。
マイクロフォーサーズ用の製品がラインナップされているのもポイントです。
特にf0.95という極端に明るいシリーズは、同じ画角なら35mm判よりもボケが小さいマイクロフォーサーズ用レンズとして大きな価値があります。
マイクロフォーサーズは動画に強いカメラも多いので、動画でピントを手動で動かす、背景を大きくボカした映像表現を可能にします。
■関連商品はこちら
>>> ミラーレス用 Voigtlander (フォクトレンダー) レンズ
>>> Mマウント(VM)、Lマウント(ライカスクリュー) Voigtlander (フォクトレンダー) レンズ
便利なオートフォーカスの時代に何故マニュアルフォーカスレンズ?と思う方も多いと思いますが、ゆっくりじっくりピントを合わせる時間は、写真好きな方なら至福の時間だと思います。
フォーカスするという行為は、写真を構成する重要な要素である「ピント」と対峙する重要な瞬間でもあります。
デジタルカメラはEVF(電子ビューファインダー)が主流となり、マニュアルフォーカスの楽しさが薄れたという意見もありますが、最近の高級機のEVFはかなり秀逸で、ピント合わせの楽しさや、精度が犠牲になる事は無いと思います。
釣りをする時、釣った魚の大きさだけが問題でしょうか?滑らかに泳ぐルアーの動き、糸を巻く感触、竿を伝わる魚の振動、それら全てを含めて釣りではないでしょうか。
是非、マニュアルフォーカスで写真を楽しんでみて下さい。
Photo & Text by フジヤカメラ 北原