焦点距離12mmから全域で開放f2.8という驚きのスペックを持ち、αレンズ史上最大径の超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズ、 ゴーストの発生を抑制するナノARコーティングII、といった最新のテクノロジーを投入された SONY (ソニー) FE 12-24mm F2.8 GM の作例と実写レビューです。
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フルサイズ対応、超広角12mmからという超広角レンズでありながら、全域で開放f値2.8というスペックに、先ずは驚かされます。
SONY (ソニー) FE 12-24mm F2.8 GM は、ミラーレス時代の申し子のようなレンズで、これだけのスペックを持ちながら、重量は約847gと1kgを切り、このクラスのレンズとしては軽量と言っていい部類です。
グレードはSONY(ソニー)の最高クラスのレンズ「Gマスター」で、超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズ3枚、非球面レンズ1枚、ED(特殊低分散)ガラス3枚とスーパーEDガラス2枚を使用した、非常に奢った設計となっています。
特に、最前面に使われた、αレンズ史上最大径の超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズは、SONY(ソニー)のこのレンズにかける意気込みを感じます。
高級レンズらしく、ズームやフォーカスの動きもスムーズです。
又、新開発の ナノARコーティングII の採用で、曲率が大きく大口径のフロントレンズのせいで、点光源に対してゴーストが出やすいという、超広角レンズの短所を強力に補正しています。
ナノARコーティングII は、曲率の大きいレンズの裏面にはコーティング均一に出来ないという欠点を改善した新コーティングで、今回のテスト撮影でもゴーストの発生が明らかに少なく感じました。
異色のスペックでありながら、性能にも妥協していない設計に期待しながら、撮影に出かけました。
フィルター径 | 前面は装着不可(後玉後ろにゼラチンフィルター装着可) |
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最短撮影距離/最大撮影倍率 | 0.28m/ 0.14倍 |
最小絞り | F22 |
マウント | SONY Eマウント(35mmフルサイズ) |
全長 | 約137mm |
重量 | 約847g |
その他 | リヤフィルターホルダー搭載 |
付属品 | キャップ(前後)、ソフトケース、フィルターテンプレート |
12mmからの超広角ズームレンズというと、先ず頭に浮かぶのはSIGMAのレンズです。
初期のモデルでは、画面周辺部が大きく流れたりと、性能的に難のあるレンズでしたが、3代目の現行レンズ Art 12-24mm F4 DG HSM は、性能的にも16mmからの大口径広角レンズに近いものになり、高性能化されました。
しかし、一眼レフ用という事もあって重量は 1,150g とかなりな重さのレンズです。
対する SONY (ソニー) FE 12-24mm F2.8 GM の重量は約847gと、開放f2.8の大口径レンズでありながら300gも軽くなります。
ワイド端は焦点距離12mmという事で、レンズ前面にフィルターを装着出来ないといった不便は同様ですが、300gの軽量化はレンズの使い勝手を大幅に向上させていると思います。
12mmという、人間の感覚を超越した画角、遠近感が、普段見慣れた景色をフォトジェニックに変えてくれます。
今回テスト機に使った SONY (ソニー) α7R IV の重量は約665g(バッテリー、メディア含む)、レンズを含めた機材の重量は1.5kgちょっとと、フォト散歩に持ち出すのを躊躇するほどの重量ではありません。
超広角レンズの作り出す非日常を楽しみます。
SONY (ソニー) FE 12-24mm F2.8 GM の最短撮影距離は28cm(最大撮影倍率0.14倍)です。
フローティングフォーカス機構を採用する事で、近接でも描写性能の低下は最小限になっており、最短から良好な描写性能を実現しています。
大口径f2.8を活かせば、超広角でも近距離なら背景を十分にボカす事が可能で、背景をある程度整理したりするのにも便利です。
超広角レンズだけだと、ストレートに撮っていてはやや持て余し気味になって来ます。
この写真は露出を少しオーバーにする事で、漫画のワンシーンのような、ちょっとイラストっぽい効果を狙ってみました。
約22mmの焦点距離で、誇張された遠近感や、オーバー気味の露出で低下した立体感など、写真を構成する要素を色々組み合わせながら撮るのは楽しいものです。
空の雲の感じが飛ばないように、先ほどとは逆に少し露出をアンダーにして撮影しました。
16mmの画角が、手前の建物を広く入れるのに役立ちます。
超広角レンズの特性の一つである、遠近感が誇張される事を意識してシャッターを切りました。
背景が黒く潰せる夜間や夜景の撮影は、超広角レンズの十八番といっていいシチュエーションです。
さらに、f2.8の明るさと、ボディ内手振れ補正をあわせて、夜間の撮影でも街中であれば手振れで苦労する事はまずありません。
12mmという極端に広い画角と誇張された遠近感が作り出す非日常な光景は、露出の工夫がし易い夜間の方がより効果を発揮するかもしれません。
最近の建物は、様々な関節照明が工夫されていて、とても綺麗です。
デジタルカメラの広いダイナミックレンジと、実物以上に明るく撮れる特性、レンズの持つ強力な遠近感の誇張を使って、人通りの少ない夜の街を切り取っていくのが楽しいです。
レンズの持つf2.8という明るさは、f4よりも1段ISO感度を下げる事が出来るという事で、結果、柔らかい照明の諧調が豊かに表現出来たと思います。
横断歩道と言えばビートルズのアルバム「アビーロード」が思い出されます(ですよね!?(笑))。
人も車も少ない、夜という条件を活かして、立ち止まって撮影しました。
超広角レンズは水平を出すのが難しく、この写真も立ち止まって瞬間的にシャッターを切ったのが災いして、少し水平が甘くなってしまいました。
SONY (ソニー) FE 12-24mm F2.8 GM に初めて採用された ナノARコーティングII は、これまで均一にコーティングするのが難しかった、曲率の大きなレンズ裏面への均一なコーティングを可能にし、超広角レンズにおいて優れた逆光耐性を発揮します。
前面に大口径で曲率の大きいレンズを使わなければならない大口径広角ズームでは、下のカットのような、街灯などの強い点光源に対して、ゴーストが発生する事が多々ありました。
例えば FE 16-35mm F2.8 GM といった、高性能なレンズでも、この問題は避けられませんでした。
上のカットは、SONY (ソニー) FE 16-35mm F2.8 GM で撮影しましたが、街灯の点光源にゴーストが発生しています。
似たような条件で FE 12-24mm F2.8 GM で撮影した写真を見てみます。
街灯の明るい点光源にも、全くゴーストは発生しませんでした。
今回、1時間半ほどナイトスナップを楽しみましたが、ゴーストが発生したカットは1枚も無く、ナノARコーティングII の効果は高そうです(出来れば他の広角ズームにも採用して欲しいです)。
先に書いたとおり 超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズ3枚、非球面レンズ1枚、ED(特殊低分散)ガラス3枚とスーパーEDガラス2枚を使用した、豪華な設計となっています。
12mmという特殊と言っていいスペックですが、画質はどうでしょうか。
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画面周辺部とは思えない、素晴らしく高解像度な描写です。
高感度由来のノイズがやや目立つのが残念ですが、レンズの描写性能は「超」高性能と言って良く、高性能な単焦点レンズ並みと思ってよさそうです。
高性能である事は勿論、夜間、点光源が入るシチュエーションでもゴーストが入らない事や、コンパクトなデザインは、ワイド端12mmという特殊と言っていいスペックを超越して、普通の広角レンズとして十分以上に使えるレンズだと思います。
まさにミラーレスの申し子と言っていいレンズで、広角ズームのワイド端16mmが過去のものになる予感がしました。
スマホでは難しい一眼カメラならではの「レンズ」を使った表現手法の可能性を感じたレンズでした。
Photo & Text by フジヤカメラ 北原
>>> SONY (ソニー) FE 12-24mm F2.8 GM 〔SEL1224GM〕