SIGMA(シグマ)17-50mm F2.8 EX DC(OS)HSM の実写レビューです。
SIGMA (シグマ) 17-50mm F2.8 EX DC (OS) HSM は、既に発売から10年近く経ちながら、いまだに現役の、定番のAPS-Cサイズセンサーカメラ用の大口径標準ズームレンズです。
そんな、ベテランレンズを、今回テストしてみようと思ったのは、発売から時間が経ったおかげで、価格もかなりこなれており、お買い得感のあるレンズだと思ったからです。
初心者でも比較的手を出しやすい価格帯でありながら、ズーム全域でf2.8を実現しており、背景をボカした一眼レフらしい表現が可能で、写真を始めたばかりの方にも、おススメの一本と言えます。
又、これだけの長きにわたり製造され、売れ続ける理由は、価格以外の面も一定レベル以上にあるからと考え、あらためてテストしてみる気になりました。
テスト機は、コンパクトなボディサイズでありながら、機能的にしっかりている、コスパの高い一眼レフカメラ PENTAX K70 をセレクトしました。
少し自虐的なんですが、テスト撮影は東京で雪が降った日に行いました。
それまで雨だった天気が、私が撮影に出た瞬間から本降りの雪に代わり、半分は「いい写真が撮れるんじゃないかな」と期待しつつ、半分は「そうでなくても寒いのにたまらんな~」と思いつつ、テスト撮りをスタートしました。
傘の下から片手でカメラを構えての撮影は大変ですが、PENTAX K70 はコンパクトなボディありながら、グリップがしっかりしていて持ちやすいので、なんとかシャッターを切る事が出来ました。
雨の商店街は、土曜日にもかかわらず人もまばらで、ちょっと寂しい雰囲気です。
落書きされたコンクリートの壁の前を、雨の中、足早に人が通り過ぎていきます。
SIGMA (シグマ) 17-50mm F2.8 EX DC HSM のボケ味は素直で、使い易いボケだと思います。
全域f2.8の明るさのおかげで、特に望遠側は想像以上に大きなボケを得られるのも嬉しいところで、f3.5-5.6などのf値の暗いズームレンズのように中途半端なボケ感にならないのも、写真を作る上でメリットが大きいところです。
赤い実が、雨に濡れて輝いていました。ここで植物の名前がわかるといいのですが、残念ながら学が無くてわかりません(後から店長がピラカンサスだと教えてくれました)。
PENTAX K70 は、赤の色が若干飽和し易い印象ですが、上手くいくと、少しドギツイくらい鮮やかに赤色が再現されるので、条件によっては面白い写真をつくりだしてくれます。
このカットも、リアルかと問われれば微妙ですが、濡れた実の鮮やかな色彩や、艶やかな質感が誇張されて、雰囲気のある画になったと思います。
ふと見上げると猫が3匹こちらを見つめていました。
雪が降る中、レンズを上に向けるのは勇気がいりましたが、焦点距離を望遠寄りにして、傘の下からシャッターを切りました。
開放f2.8のおかげで、背景がはっきりボケるのは、大口径ズームを使うメリットの一つです。
又、 SIGMA (シグマ) 17-50mm F2.8 EX DC HSM は、ズームリングの動きもしっかりしているので、上を向けた状態でもズームが動いてしまう事もなく、ストレスなく撮影出来ました。
いつものテスト撮りコースを歩いて、新井薬師に到着した頃には、雪の降りがピークを迎えていました。
日頃の不真面目な勤務態度を薬師如来に叱責されているようで、微妙な心もちになりましたが、ここまで来た以上は腹をくくって撮影に専念するしかありません。
普段は単焦点レンズを交換しながら撮るのを楽しむ事が多いのですが、過酷な条件ではレンズ交換も億劫になります。
SIGMA (シグマ) 17-50mm F2.8 EX DC HSM のような大口径ズームレンズは、表現の幅と利便性のバランスがいいレンズです。
濡れた桜の花が、光を透かして美しくもあり、うなだれているようで寂し気でもあります。
SIGMA (シグマ) 17-50mm F2.8 EX DC HSM の最短撮影距離は28cm、最大撮影倍率は1:5と、マクロっぽく使うには少し力不足で、若干物足りなく感じました。このあたりは、設計の古さが出てしまっているところだと思います。
東京では、雪が降っても「積もる」ところまではなかなかいかないので、雪を写真の演出として使うのは難しいですね。
三寒四温とはよく言ったもので、この時期、春と冬が日ごと交互にやって来すが、この日は明らかに「寒」に当たっていました。
こんな日にわざわざ撮影しなくても、と思うのですが、後から写真を見返してみると、やはり天候や季節感がどこかしら感じられ、雪の日に撮影に出たのも無駄では無かったと思います。
しかし、テストレンズが 17-50mm F2.8 EX DC HSM で良かったです。こんな荒天の中40mm f1.4などの巨大なレンズを振り回すのは、流石にごめんこうむりたいところです。
雨や雪の日の撮影は、花びらに水滴が乗る事で、植物がみずみずしく見えたり、幹に水がしみ込んで黒くなるので、画面が引き締まって見えるなどメリットも多いと思います。
なので、雨の日が撮影日和と言えなくはないのですが、雨を避けながらの撮影がストレスなのも事実です。
SIGMA (シグマ) 17-50mm F2.8 EX DC HSM のオートフォーカスは、レンズ内モーター採用の為、オートフォーカスのスピードも子気味良く、過酷な環境でのストレスを軽減してくれます。
強い光ではないので明言は避けますが、SIGMA (シグマ) 17-50mm F2.8 EX DC HSM は、今回の撮影では逆光時、フレアが発生してコントラスが落ちるような事はありませんでした。スーパーマルチレイヤーコートの効果だと思います。
最近の超高性能レンズは、コーティングの改良で解像度やコントラストを上げるのがトレンドの一つとなっています。
10年前に発売された、SIGMA (シグマ) 17-50mm F2.8 EX DC HSM が、今のレンズと比較してゴーストやフレアが発生しやすいのでは?と、少し心配でしたが、どうやら大きな問題はなさそうです。
10年前に発売されたレンズという事で、性能面でどのくらいのレベルにあるのか、気になるところだと思います。
中心部と周辺部の2ヵ所を拡大して、画質を見てみたいと思います。
ズームレンズとしては、十分以上の解像感とシャープネスで、時代を感じさせません。
細かいおしべの描写や、水滴の透明感など、高いレベルにあると思います。コントラストの低い条件ですが、眠くなってしまう事もなく、現在のSIGMAに続く画質の良さを感じさせる性能だと思います。
次に周辺の画質を見てみます。
周辺部は中心と比べ、やや甘くなります。
中心部がいいだけに少し残念ですが、10年前の設計である事や、現在の価格を考えると、納得出来るレベルだと思います。
画面周辺部に、発売年なりの甘さがあるにはありますが、中心部分の画質は今でも十分に通用するレベルにあります。
10年近くの長きにわたり、売れ続けるレンズというのはやはりそれなりの理由があるようで、あらためてテストしてみる事にも意味があるな、と感じるテスト撮影でした。
実売価格を考えるとコストパフォーマンスが高い事は間違いなく、f3.5-5.6といった、開放f値の暗めのズームからのグレードアップにも最適で、ボケを表現に活かす、一眼レフカメラらしい撮影手法を使う入門用レンズとしてもおススメです。