Nikonのフルサイズデジタル一眼レフカメラ D780 のレビューです。
久しぶりに、プリズムを使った光学ファインダーを持ったデジタル一眼レフカメラを使ってみて、そのメリットや価値含めて、気付くことも多かったのでレポートしたいと思います。
Nikon Zシリーズのコンセプトの一つに「ショートフランジバックによるレンズ性能の良さ」が挙げられているように、アウトプットの写真だけを見れば、今は一眼レフよりミラーレスの方が上にあると思います。
当ブログでも、実際に多くのミラーレス一眼用のレンズをテストしましたが、多くのレンズが一眼レフ用のそれを性能的に凌駕しており、特に画質にこだわる派のカメラマンの多くが、こぞってフルサイズミラーレス一眼カメラに走った事も十分納得できる事でした。
それでは、今、アマチュア向けのフルサイズデジタル一眼カメラに、どのような価値があるのか?
以前であれば、一眼レフカメラと言えばプロの機材として、カメラの頂点にあったと思います。しかし、今、画質面で一番性能のいいカメラはミラーレス一眼カメラになってしまった・・・一眼レフは、一番性能のいいカメラじゃない・・・と考えた時、ふと、ならば一眼レフカメラって「趣味」のカメラでいいんじゃないか?
例えば、車で言えば、マツダロードスターという車があります。2人しか乗れない、燃費も悪い、スピードもわもっと速いカメラが沢山ある、でも乗ってみるとすごく楽しい。
エンジンをふかして、マニュアルでギアを変えて、風を切って走る楽しさがある。
これってNikon D780まんまなのでは!?大きくて重い、光学ファインダーは超高精度なピント合わせは難しい、画質もミラーレスのレンズには叶わない、でも撮る事の楽しさがある。本物の光を見て撮る喜びがある。
カメラの「性能」についてレポートする機会が多かったフジヤカメラのブログですが、今回は写真を撮る楽しさをメインにお伝えしたいと思います。
さて、ちょっと熱く語りすぎてしまいましたが、楽しく写真を撮りたかったので、選んだレンズは2本。AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED と AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G です。
スナップを楽しんで撮ろうと思ったら、機材が重いのは辛いですし、かといってf値の暗いズームレンズでは物足りない、3本以上レンズを持っていくと交換が面倒、と思い上記の2本のレンズを選択しました。
身も心も気軽に「趣味」で写真を撮るなら、このくらいの機材がベストな気がします。
Nikon と言えば黄色、というのはおじさんカメラファンの古いイメージかもしれませんが、Nikon のカメラのテストという事で、それっぽい黄色い壁を見つけてシャッターを切りました。
ついさっき「本物の光を見て撮る喜びがある」とか言ってたくせに、いきなりモニターを使って撮っています(笑)。
一眼レフとミラーレスのハイブリット機と言った性格を持つ Nikon D780 は、Z6には及ばないまでも、ライブビュー撮影でも、スナップ程度であればノーストレスでピントを合わせてくれます。
カンフーガールってなんだ?瓶のラベルですが、個性的な絵柄に興味をそそられてシャッターを切りました。
こちらもライブビューを使っての撮影です。「本物の光を見て撮る喜びがある」はどこに行ってしまったのでしょうか。
Nikon D780 は、ライブビューにすれば、ほとんどミラーレス一眼と言っていい使い心地で、ピントのスピードなど一眼レフに付いているオマケ的なライブビューとは一線を画すものです。
便利でついつい多様してしまいますが、少し不満なのはZシリーズよりモニターの可動範囲が小さいのか、見る角度によっては、ファインダーのアイピースがモニターぎりぎりにかかって、画面上部がちょっと見ずらくなる事です。
昭和な感じのアパートを背景に、昭和な感じのポスターが。
今回は光学ファインダーを見て撮りました。オートフォーカスを使いましたが、発売前に新宿の Nikon サロンで D750 と比較した時は、マニュアルでピント合わせを行う際は確かに D780 の方がクリアでピント合わせがし易いと感じました。
プライベートでは動画がメインなので、すっかりモニターを見て撮るのが普通になってしまいましたが、ファインダーを見てアイレベルでじっくり構図を考えて撮るのも楽しいものです。
奥の咲き始めたばかりの若い花と、手前の散る寸前の花の対比を、手前を大きくボカして表現してみました。
ピントが合っていない部分にも語らせたかったので、レンズは AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED を選択、近接開放の大きなボケを使って撮りました。AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED のボケは柔らかくとても綺麗です。
紫がかったピンク色は、デジタルカメラでは扱いの難し色だと思いますが、花びらのディテールや、柔らかいボケなど、D780 の画像処理エンジンEXPEED 6が上手く再現してくれていると思います。
目について、心動かされたものに気軽にカメラを向ける。撮るものが壁だっていいじゃないか。
久しぶりにアイレベルで光学ファインダーをじっくり覗いて撮影していると、そんな、写真を撮る楽しみがふつふつと沸いて来ました。
単焦点の35mm f1.8を装着した Nikon D780 が、一眼レフ=大きく重い、というイメージとは裏腹に、軽快に子気味良くシャッターを切っていきます。
放置された自転車に、なんだか寂しさを訴えかけられているようでシャッターを切りました。
かつては颯爽と地をかけていた自転車が、今はもう漕ぐ者もいない、動かない、そんな想像が、寂しさを呼び起こすのでしょうか?
無機質の塊に、意志を感じるのは人間です。同じく無機質の塊である一眼レフカメラが、そんな思いを写真に写しとめてくれます。
なんだかムーミンに出て来る「にょろにょろ」のようなサボテンが。旺盛に茂った姿が、かわいいような、気色悪いような。
散歩しながらの写真は、撮りたい!と思った瞬間にはシャッターを切りたいものです。Nikon D780 は、バッテリーのもちが非常にいいカメラなので、今回、撮影中ずっとスイッチを切らないようにしました。
カメラを構えたらすぐ動く、スイッチを切らないで長時間使えるのも、デジタル一眼レフカメラのメリットではないでしょうか。
ツタに覆われた、不思議な家を発見しました。人が住んでいるのかいないのか、凄いインパクトです。
心に響く面白いものや情景があったらカメラを向ける、そんなゆるい撮影スタイルでスナップを楽しみましたが、ちょっと被写体がゆるくありませんでした。こんな発見も写真の喜びの一つです。
光を見ながら撮るのはやっぱり楽しい。Nikon D780 が、そんな気持ちを思い出させてくれました。
このゴミ箱 回転式屑籠っていうの知ってました?私は写真を拡大して初めて知りました。
後から何かに気付くのも写真の楽しさです。光学ファインダーは、撮影レンズを通った光を見る機構ですが、電子化された、アウトプットとしての映像を見ているわけではありません。被写界深度や明るさ、色などはアウトプットとはかけ離れた不完全なものです。
最近は、撮影時には出来上がりを確認出来ない、銀塩フィルムが静かなブームのようですが、光学ファインダーにもそんな不完全さがあり、それが写真を楽しくしてくれているのかもしれません。
とは言え Nikon D780 は、半分はミラーレス一眼の血統が入ったカメラです。モニターを使っての撮影も、ほぼミラーレス一眼並みにこなすので、こういったアングルを上げた写真では威力を発揮します。
ライブビュー撮影時、無理な体制を強いられているのに、なかなかピントが合わなかったりすると、撮影をあきらめたくなりますが、 D780 ならそういった心配は無用です。
このカットは暗部がつぶれ気味だったので、少しだけトーンカーブを使って暗部を持ち上げました。Nikon 得意のアクティブDライティングを使えば良かったです。
Nikon D780 は、使っていてとても楽しいカメラでした。
ミラーレスと一眼レフのハイブリッドカメラとしての完成度は、一番と言ってもいい出来なのではないでしょうか。
厳密に言えば、ライブビュー時のフォーカススピードはZ6にやや劣る(おそらくレンズ側が最適化されていないからだと思います)ようですが、それでもオマケ感が否めなかった今までのライブビューに比べれば、殆どミラーレスと言っていい出来だと思います。
個人的には今回のように、f1.8くらいの無理の無い軽量な単焦点レンズが似合うカメラだと感じました。本来はf2.8通しの、いわゆる大三元といった大型のズームレンズを使う想定なのかもしれませんが、究極の画質を求めるなら、ZシリーズとSラインのレンズがあるので、一眼レフには趣味性の高い、それでいて軽量なレンズが似合うように思います。
デジタル一眼レフカメラの新たな立ち位置を感じるカメラでした。