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2023.04.02
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Nikon D850 レビュー × 河野英喜|あらゆるシーンに対応する魅力に溢れるニコンD850を使い続ける理由

Nikon D850 レビュー × 河野英喜メインバナー
フォトグラファー河野英喜氏によるNikon(ニコン)D850の実写レビューです。一眼レフの中級機でありながら、高いAF性能・高感度の万能カメラ「D850」を使い続ける理由とは?

ポートレートを中心に撮影した作例と合わせてその魅力を紹介します。


ライター河野英喜(こうの・ひでき)イメージ
■フォトグラファー紹介

河野英喜(こうの・ひでき)

23歳で広告・ファッション誌を中心にプロフォトグラファーとしての活動を開始する。その後、女優や俳優、各界のアーティストなどを撮影するとともに、数多くのアイドル写真集を手掛ける。出版された写真集・書籍類は多数。また、大判フィルムによる風景の撮影や、伝統工芸職人のポートレートなども撮り続ける。公益社団法人日本写真家協会(JPS) 会員。

ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gで撮影した微笑みながら振り返る女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
絞りF1.6・1/640秒・ISO100
モデル:御木ももあ

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はじめに

僕がキヤノンからニコンへ全面移行したのはニコンD3Sからで、この頃のニコン機は色調がウォームトーン傾向にあり、友人・知り合いの写真家から「ポートレートには不向きだからやめた方がいい」と、ずいぶん忠告された。

しかし写りの良いレンズや堅牢感を感じるカメラボディー、今までと違った色調の新鮮さに魅了されニコンへ移行したのが懐かしく思い出される。

ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gで撮影した肘をついている女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
絞りF1.6・1/1600秒・ISO100

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さて、仕事の性質上高画素が有利でニコンD800E→D810と使用機材を重ね、ニコンD850ではカタログ制作の撮影から携わらせていただいたご縁もある。今回、強い思い入れのあるD850のレビューの機会をいただけたことを嬉しく感じる。

僕の感じるニコン D850の特徴

D850がいまなお高い人気を誇る理由

ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gで撮影した木の塀の前に立つ女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
絞りF1.4・1/500秒・ISO100

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ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4Gで撮影した笑顔で立っている女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G
絞りF1.4・1/1250秒・ISO64

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DシリーズにZシリーズを加えた両輪で撮影をしている現在、ニコンD850がいまなお高い人気を誇る理由は、おそらく僕がD850を手放せない理由と同じではないかと思う。

一眼レフの中級機でありながらフラッグシップモデルで培われたセンサーやカラーエンジンが搭載され、AF性能はもちろん高画素機の弱点である動体物や高感度に対しても強化され、各ジャンル、全方向にむけた万能カメラともいえる仕上がりで、所有しているならそのままホールド、まだなら現行品である今、入手しておきたい1台だと感じさせる。

ここが僕がホールドしておきたい理由であり、人気の秘密だと推察する。

ニコン D850・AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR

Zシリーズへ繋がる滑らかな諧調表現&発色の美しさ

ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4Gで撮影した橋に立っている笑顔の女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G
絞りF4・1/400秒・ISO64
モデル:永瀬琴葉

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ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4Gで撮影した橋から川を眺める女性の後ろ姿の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G
絞りF8・1/250秒・ISO64

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ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4Gで撮影した木の下で目を瞑る女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G
絞りF4・1/400秒・ISO64

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先述した通り以前のニコンはウォームトーンで全体的にアンバー傾向に振った色の再現性で僕はコダックトーンと当時称していたがいまは違う。

ニコンD810の登場から色の転換や改善が強化され、ニコンD850でさらにチューニングが加えられて素晴らしい連続諧調と色調に仕上がった。最も難しいとされる肌色をポートレートのジャンルからみてもリアルな再現性で、透明感のある抜けの良い肌色へと進化している。

この思想は当然Zシリーズにも受け継がれ更に磨かれているのだろう。同様にD850もファームウェアのバージョンアップによって今なお進化を続けている(2023/1/19 Ver. 1.30)

高画素&光学ローパスフィルターレス

ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4Gで撮影した夕方の古い建物の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G
絞りF1.4・1/1000秒・ISO80

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ニコン D850・AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRで撮影したツタに覆われた電柱と建物の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
絞りF5.6・1/250秒・ISO200

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ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4Gで撮影した振り返る女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G
絞りF1.4・1/500秒・ISO64
モデル:御木ももあ

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タレントを撮影する機会が多い僕には高画素機であることは仕事をする上で欠かせない条件となる。

ここで御紹介いただけるような場面では、僕の構図や撮影の意図を汲んでフル画面で掲載いただけるが、一方タレントを扱う雑誌・書籍の場合は話が変わり、タレントの表情優先と誌面のレイアウトの都合で大きくトリミングされることがしばしばある。そんな時有効画素数4575万画素にはいつも助けられる。

一方ローパスフィルターレスはクリアで気持ち良い写りになるが、モデルの洋服に生まれるモアレには注意が必要だ。紗のような素材や着物や浴衣にも出やすいので注意しておこう。

比較

キヤノン EOS 5D MarkⅣと肌色を比べてみた

キヤノン EOS 5D MarkⅣ・EF85mm F1.4L IS USMで撮影した橋の柱に寄りかかる笑顔の女性の画像

キヤノン EOS 5D MarkⅣ・EF85mm F1.4L IS USM
絞りF1.4・1/2000秒・ISO100

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ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gで撮影した橋の柱に寄りかかる女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
絞りF1.4・1/2000秒・ISO100

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ニコンD850は45.7メガピクセル、キヤノンEOS 5D MarkⅣは30.4メガピクセルと画素数に違いはあるが、どちらも高画素で高い描写能力だ。肌の肌理もかなり細かく写しとっている。

比較ではキヤノンEOS 5D MarkⅣとニコンD850の撮影条件をほぼ揃え、仕上がり設定はポートレートを選択して何箇所かで比較的な意識で撮影。現像はAdobe Lightroomを用いてプロファイルはカメラ設定のポートレートを選択し、特に調整を行わずに出している。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ・EF85mm F1.4L IS USMで撮影した橋の欄干にもたれる女性の画像

キヤノン EOS 5D MarkⅣ・EF85mm F1.4L IS USM
絞りF2・1/1250秒・ISO100

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ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gで撮影した橋の欄干にもたれる女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
絞りF2・1/1250秒・ISO100

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確かにこういう色だったと思い出される5D MarkⅣの色は濃厚な色調で彩度やコントラストもD850に比べてやや高めで、特徴的な暗部の締め方でメリハリづいた印象だ。

一方D850は5D MarkⅣに比べると控えめで、彩度・コントラストともに低く感じられる。感度がわずかに高いためか、明るめな露出でスッキリした仕上がりに感じる。

こうした色調や露出に関する要素は好みによるところが大きく、良い悪いで判断できるものではないが、僕の好みでは記憶色的な印象の5D MarkⅣより、見た目に近いD850のRAWデータの方が影のコントロールなど暗部の微調整に優れ,僕好みの透明感あるスキントーンを表現しやすい。

兄貴分のD810と発色を比べてみた

ニコン D810・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gで撮影した遠くを見る女性の画像

ニコン D810・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
絞りF2.0・1/500・ISO100

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ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gで撮影した微笑みながら遠くを見る女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
絞りF2・1/1250秒・ISO100

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僕は前モデルとなるニコンD810を「色の転換カメラ」と位置付けていた。

操作・設定系などに大きな変更はないものの、ニコンD800Eのウォームトーンからリアルな発色へと明らかなシフトを始めた印象で、ポートレート撮影では肌に赤味が加わるように変化した。D810における色の通過儀礼があってD850や、後に続くZシリーズの色があるのだと個人的に感じている。

ニコン D810・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gで撮影した橋の柱の前で微笑む女性の画像

ニコン D810・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
絞りF2・1/1000秒・ISO100

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ニコン D810・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gで撮影した橋の柱の前で微笑む女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
絞りF1.4・1/2­000秒・ISO100

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D850はD810と比べ暗部の出方などは大きく変わらないが、肌の赤味を絶妙に抑え中間部の肌のヌケが良くなった。色のバランス感はフラッグシップのD5に近い印象で、全体的にとてもカラーバランスの良いカメラへと進化した。

カラーエンジンEXPEED 5の恩恵が大きいものと思われる。ポートレートはもちろん多くのジャンルで支持され今なお高い人気はこの絶妙なチューニングも一因であると想像する。

D810を使用していた当時、ニコンの色に関わる技術担当の方から詳細にヒアリングされた思い出がある。きっと多くのプロの感想や様々な情報をニコンでブレンドされたものがD850の下地となっているのだろう。

レンズの「味」を楽しむ

ポートレート撮影にオススメのレンズ2本

ニコンD850は60年に渡って愛されたFマウントのほとんどのレンズをそのまま使用できる。Fマウントで風景撮影をしている方は大三元を用いてカメラはD850一択だと思う。

また、ポートレートはスナップ同様に懐の深いジャンルでフリンジこそいただけないが、逆光時のフレアやゴースト、浅い色乗りなどなんでも写真の雰囲気さえ良ければすべて「味」になってしまう柔軟さがある。

そんな中、僕からD850でポートレートを楽しみたいみなさんに2本のレンズをおすすめしたい。

比較的新しいAF-S 58mm f/1.4Gの個性的なレンズだ。AF-S 58mm f/1.4Gはピントが合っていても柔らかすぎて合っていないように見えてしまう写りをするが、2段も絞れば今風のシャープな写りになるので、常用としてはF2.8で、ポートレート撮影では絞りF2〜2.8で柔らかさの変化を意識してお使いになるのがポイントだ。

ニコン D850・AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gで撮影した夜の街の橋に立つ女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
絞りF2.0・1/2­00秒・ISO1600
進藤もも(イエローキャブ所属)

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ニコン D850・AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gで撮影した夜の街の橋の欄干に手を置く女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
絞りF1.4・1/125秒・ISO800

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次におすすめしたいのはZシリーズユーザーにも根強い人気のAF-S105mm f/1.4Eだ。

EDレンズの採用はもちろんナノクリスタルやフッ素コートまで施され「写り」にこだわりを感じられる。この描写感は先述のAF-S 58mm f/1.4Gとは異なり開放絞りからシャープな描写となりピントの山も掴みやすくキレの良さを感じながら撮影できる。

ここで挙げた2本は絞り開放時の性格は大きく異なるが三次元的ハイファイレンズと呼ばれボケを重視した設定となっている。その思想はZレンズの85mm f/1.2Sのボケ味に引き継がれている印象を強く受ける。

ニコン D850・AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E EDで撮影したライトが映るガラスの前に立つ女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED
絞りF1.4・1/250秒・ISO800

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ニコン D850・AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E EDで撮影したコートを着た女性の画像

ニコン D850・AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED
絞りF1.4・1/250秒・ISO800

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まとめ

今回は比較的寄りのフレーミングによる作画を覧いただきながらお話しさせていただいた。

高画素機だから広い絵作りで描写能力などに触れるのもありだろうが、普段使う50mmや85mmを中心にモデルとのコミュニケーションがとりやすい距離で撮影している。
ニコンにもミラーレス機のZシリーズがあり、便利さを優先するならZシリーズという選択肢もないわけではない。

しかし一眼レフ機のEVFにはない優しい見え方のファインダーや、キレの良いシャッター音、シャッターを押した時の感触を自分のものにしておきたくて、今でも状況に合わせてニコンD850を使っている。

D850や一眼レフ機は五感を活かし、自分の意志を重ねて撮影できる魅力に溢れたカメラだと思う。

作例に使用したカメラ

Nikon D850

【商品情報】Nikon D850

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作例に使用したレンズ

Nikon
AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G / 58mm f/1.4G / 85mm f/1.4G
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR

Photo & Text by 河野英喜(こうの・ひでき)

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