Canon(キヤノン)のフルサイズミラーレス一眼用の大口径望遠ズームレンズ RF70-200mm F2.8 L IS USM の実写レビューです。いわゆる大三元の一角をなすレンズですが、特徴はなんと言ってもその大きさだと思います。
今までの一眼レフ用の同スペックのレンズはもとより、他社製のフルサイズミラーレス一眼用レンズと比較しても、かなりコンパクトなデザインで驚かされます。
縮めた際の全長は146.0mmしかなく、一般的な70-200mm f2.8の2/3程度の長さです。
全長が大きく変化する機構は賛否両論あるところだと思いますが、実際に持ち歩いてみると、収納するカメラバックも小型のもので済み、とても使い易かったです。
肩から下げて持ち運びする際も、ズームのロックがあるので、コンパクトなまま持ち運べます。
風景写真でも人気のレンズの為か、PLなど回転させて使うフィルターを使い易いよう、フードに開閉式の蓋が付いています。
ズームの動きもスムーズで、画角の微調整もやり易く感じました。少し残念なのは、私が使用した個体では、望遠付近でコツコツと小さな振動を感じた事です。ズームの動きに影響は無いレベルですが、ちょっと不快です(個体差かもしれません)。
イメージスタビライザーもファインダー上で像が安定する、望遠レンズで使い易いものです。
風景写真に人気のレンズという事で、公園で風景写真に挑みました。
都心部でも紅葉の見ごろを迎え、公園は多くの人で賑っていました。人を排除した風景写真を撮ろうと思うと、ワイドはおろか標準も使いずらい事が多いです。そんな時「画角」と「ピント」という2つの要素で構図を整理出来る望遠ズームは非常に使い易く感じました。
Canon (キヤノン) RF70-200mm F2.8 L IS USM は大口径レンズなので開放では画面周辺に向かって口径食がでてしまいました。形は自然なレモン型で見苦しくはありません。
日頃の行いが悪いせいか、晴天を選んで撮影に出かけたのに、公園に到着したら曇っていました。
曇り空と日陰のせいで、真っ赤に色づいたモミジの葉が、錆色になってしまいました。背景を黒く落として紅葉の鮮やかさを出そうと試みましたが失敗です。
コンパクトなデザインにひとしきり驚いた後、Canon (キヤノン) RF70-200mm F2.8 L IS USM を装着した EOS R のファインダーをのぞいて最初に感じたのは「ボケがいい感じ」という事です。柔らかい温かさを感じるいい感じのボケ方だと思います。
夕暮れの公園に鵜が一羽たたずんでいました。
RF70-200mm F2.8 L IS USM + EOS R との組み合わせは、オートフォーカスも非常に快適で、さすが専用レンズだと思いました。Canon純正も含めて、マウントアダプターだとここまでストレスフリーには使えないので、R用のf2.8のズームレンズが3本全て揃ったのは、今後のCanon Rシステムにとって有意義な事だと思います。
特に大型で持ち運びが大変だった望遠ズームがコンパクトな事も、システムの価値を高めていると思います。
小川に張り出したモミジの枝を撮ろうとカメラを構えたら、偶然仲の良さそうなカップルが通りかかり、構図を整えてシャッターを切りました。
「人を排除した風景写真を撮りに」とか冒頭で言っていましたが、早くも自分で制約を排除してしまいました。いいんです。写真は自由なものです。
素早く構図を整えられるのはズームレンズの大きな長所の一つです。全長が変わる事でバランスが変わるのは少しマイナスですが、もともとが全長が短いレンズのせいか、あまり気になりませんでした。
池の中の秋を望遠で切り取りました。曇り空は一向に晴れそうもないので、コントラストが低い方が撮りやすい被写体を探すようにしました。
Canon (キヤノン) RF70-200mm F2.8 L IS USM のボケはやはりかなり好みです。前ボケもふんわりとした温かみのあるボケ方で、ちょっとファンタジックに風景を切り取ってくれました。
水面の反射など少しオートフォーカスに厳しいケースでも、テストボディに選んだ EOS R は、まごつくことも無く的確にピントを拾ってくれます。
仕事帰りと思われる男性が急な階段を登っていきます。まるで、雲に向かって歩いて行くようです。
開放f2.8のお陰で十分な前ボケが稼げて、ドラマチックな感じに撮れたと思います。実は望遠レンズに苦手意識があったのですが、今回はスナップを撮るように肩の力を抜いて撮れました。
こんな気分で撮れたのは Canon (キヤノン) RF70-200mm F2.8 L IS USM のコンパクトさと無関係ではないような気がします。
木の陰から泳ぐカルガモを盗撮しました(笑)
水面に映った紅葉の赤、カモの回りの波紋、レンズの作り出す美しいボケ、よく酒造りに「天地人」という言葉が出てきますが「季節、偶然、機材」の全てが上手くかみ合ってくれました。
冒頭に宣言したとおり風景写真っぽい風景写真も心がけて撮るようにしました。
この写真の枝は、比較的高い位置にあったので、EOS Rのバリアングル液晶モニターを使って、バンザイをして、ハイアングルで撮影しました。コンパクトなレンズのお陰でやろうと思えた事です。さらに、強力な手振れ補正のお陰でブレる事もなくシャープな写真が撮れました。
Canon (キヤノン) RF70-200mm F2.8 L IS USM の小ささが、アングルを自由にしてくれました。
一輪だけ寂し気に咲く椿の花を、背景に池の水面を入れて撮りました。
気付けば望遠側ばかり使って撮っていましたが、ほんの少し戻せるのがズームのいいところです。
Canon (キヤノン) RF70-200mm F2.8 L IS USM の背景ボケが好みに合ったので、ボケを大きくとれる望遠側を無意識に選択してしまっていたのかもしれません。
拡大して解像感を見てみたいと思います。
作例②の、中央右隅のモミジの葉部分の拡大画像ですが、モミジの葉の一枚一枚の立体感や細かいディテールがシャープに描写されています。
ズームレンズである事を感じさせない抜けの良さです。ISO1000で撮影していますが、EOS Rノイズはやや多めなのが残念です。
最後のカットの椿の花の拡大画像です。
やはりピント部分の画質はとてもシャープで良好です。立体感の付き方も良好で花の重さが感じられる画になりました。
EOS Rは紫色の描写も非常に良好で、ひと昔前であれば破綻してしまう色ですが、諧調豊かに表現してくれました。
素晴らしく小さいレンズです。以前、Canon EF80-200mm f2.8L をEOS1に装着して写真を撮っていた身としては驚くべき小ささで、いい時代になったな、と遠い目をしてしまいました。
小さいだけでなく、フルサイズミラーレス一眼カメラ用のレンズらしく非常にシャープで良好な描写性能を持ったレンズで、風景写真の様な細密描写が必要な撮影でも安心して使えると思います。
少し残念なのは、Canon EOS R のシステムにフラッグシップと言えるような超高性能な機種がいまだラインナップさえていない事で、例えばSONYであればα7RIVのような機種があれば、レンズの良さがさらに活きるのに、と思ってしまい ます。
個人的にDIGIC8の色づくりはかなり好きですが、低照度でややざらついた画になるのも、少し不満です。
RF70-200mm F2.8 L IS USM については、コンパクトなデザイン、使い勝手のいい操作性、高い描写性能で、とてもいいレンズだと感じました。
>>> Canon(キヤノン) RF70-200mm F2.8 L IS USM