SIGMA fp の実写レビューです。
SIGMA fp は、フルサイズのレンズ交換式カメラの中で世界最小、最軽量(2019.7現在 SIGMA調べ)の機種で、動画撮影時の放熱処理を行うヒートシンクが目を引く、シンプルで精錬されたイメージのデザインと併せて、見た目からかなりインパクトがあるカメラです。
シャッターはフルタイム電子シャッター、マウントはアライアンスを組むライカ「L」マウントです。
つい、見た目に注目してしまいがちなカメラですが、それ以上にコンセプトが野心的で、今までにない種類のカメラです。
一言で言えば「映像」制作の為のカメラと言えるでしょうか。自由でクリエイティブな映像表現の為の道具、それが fp の目指したところだったんではないでしょうか。
故に、動画機能も充実し、レスポンスを重視した為か、fp はSIGMAのカメラとしては珍しく有効画素数2,460万画素のベイヤー式センサー(ローパスレス)を採用しています。
映像表現の中に写真、動画の垣根が必要でしょうか?
そして、デジタルならそれらの垣根を意識する事無く実現する事が可能です。フィルムカメラの延長として生を受けたデジタルカメラは、SIGMA fp を持って、真にデジタルらしいデジタルカメラになったような気がします。
4K 30p、12bit CinemaDNG RAWに対応、12.5ストップのダイナミックレンジなど、動画性能についてもハイレベルな記録が可能となっています。
さっそく同社の 45mm F2.8 DG DN | Contemporary を付けてテスト撮影に出かけました。
今年は亥年です。そして私は亥年です。
歳をとったことを意識させられるので、亥年を意識させられるような物が嫌いです(笑)。が、イノシシの可愛らしい親子が描かれた絵馬を見つけて、写欲を抑えきれずシャッターを切りました。
SIGMA fp と、45mm F2.8 DG DN | Contemporary の組み合わせは、フルサイズのカメラである事を忘れるくらいコンパクトで、それだけで写真を撮るのが楽しくなります。
45mm F2.8 DG DN | Contemporary のふわりとしたボケ味と、繊毛に覆われた花の種がマッチして、柔らかい雰囲気の写真になりました。
こういった、ピントをスポットに、精密に合わせたいシチュエーションでも、SIGMA fp は迷うことなくピントを拾ってくれました。せっかく、という言い方も変ですが、せっかくなのでフォーカスフレームは、fp から採用されたタッチパネルを使って設定しました。
カメラのコンセプトの一つであるユーザーインターフェースの良さを、早速感じられました。
SIGMA fp を使う楽しさの一つに、COLORモードを切り替えながら使える事があります。
上の写真はCINEモードで撮影しました。コントラストが低く、モノクロに近い独特の表現になって、個人的に結構好きです。上の写真では、木の幹の丸みが良く再現されていて、いい感じです。
DNG RAW で撮影して、後からCOLORをあててもいいと思いますが、その場の感覚も大切にしたいので、私はCOLORをあてながら撮影しました(と、言いつつ心配だったのでDNG RAWも同時記録していたんですが(笑))。
木の葉の上で羽を休めるチョウを発見、慌ててカメラを向けました。
かなりの近接で、オートフォーカスに厳しい条件でしたが、SIGMA fp のAFは迷うことなくスピーディーにピントを合わせてくれました。慌てた時こそカメラに助けて欲しいところですが、fp の素早いAFに助けられました。
しかし、見事な日の丸構図です。技術はカメラが助けてくれても、センスは・・・
里芋でしょうか?台風のせいか、少し黄ばん葉が不思議な模様を描き出していました。
葉のディテールの再現性を見ていると、どこかにフォビオンっぽさを感じます。
勿論、SIGMA fp はベイヤーセンサーを採用しているので、細かいシャープネスや再現性は、フォビオンセンサー採用のカメラには叶わないと思います。それでも、どこかに同じメーカーのカメラである雰囲気が残っていて、フォビオンセンサーでは無い、という事に思ったよりガッカリする必要は無かったと感じました。
道端の小さな地蔵に、多くのお供えがされていて、地元の人々の深い信仰を感じます。
東京でも、ちょっと田舎を歩けば、まるで遠野や安曇野にでも行ったような、田舎の風景を撮影する事が出来ます。少し視野を広くとれば、どこかに近代的なものが写ってしまいますが、うまく切り取ればそういった要素も排除できます。
悪く言えば、写真で嘘をつくわけですが、それも又、写真の真実でしょう。
懐古的な雰囲気を出したくて、colorはCINEに設定しました。
収穫された稲が干してありました。
大型の台風が通り過ぎた後だったのですが、無事に収穫出来たようです。
ただそこにあるだけの風景ですが、ハイレベルなカメラであるにもかかわらず、気軽に構えて撮れるSIGMA fpは、撮る気にさせてくれるカメラです。まさにポケッタブル、これでフルサイズセンサーというのだから驚きです。
台風の後で、まだ茶色く濁った水が流れる用水の入り口です。
先に書いたとおり、撮影時のイメージを重視したくて、COLORをあてながら撮影しましたが、結果的に「風景(LAND)」を使うケースが一番多かったです。
風景というとベルビアのイメージがある為か、彩度が上がるイメージですが、SIGMAの描き出す風景は、日本的な少し落ち着いた風景でした。
前回のテスト撮影で、イノシシが出没したお陰で撮れなかったコスモスの撮影にリベンジです。
台風の影響で散ってしまった花も多かったと思いますが、粘り強く花を付けている小さな群落を見つけてカメラを向けます。
私のテスト撮影も、もう少し腰を据えて、粘り強く撮りたいところですが、あっちへブラブラ、こっちへブラブラ落ち着きなく写真を撮っています。あ、SIGMAはブラブラするメーカーだからいいですね。
すっかり日暮れが早くなって来ました。
秋晴れの夕空に向かってシャッターを切りました。左側は電車の鉄橋なんですが、列車が来るまで待てないところに、自身の粘り強さの無さを感じます。
青空が青く再現されるより青く見えるモード、噂の「ティール&オレンジ」にCOLORモードを設定しました。
せっかく、という言い方も変ですが、せっかくなので夜のスナップに出かけました。
そう、フォビオンセンサーではないSIGMA fp は、夜の撮影も出来るのです。とは言え、低照度に凄く強い、という程では無いようなので、ISO3200までに抑えた方が、画質的には満足度が高いと思います。
上のカットは、ISO3200での撮影ですが、この程度ならクリアーで、滑らかな満足度の高い画になるようです(拡大画像は「画質」の項で)。
SIGMA fp で、特に気になる画質は「JPEG」と「低照度」だと思います。
カメラ内にJPEGで記録した画像とRAW画像をフォトプロで現像した画像の、画質の違いを見てみたいと思います。
上がRAW画像をフォトプロで現像、下がカメラ内にJPEG(COLORモードはナチュラル)で記録した画像となります。
フォビオンの、特にMerrill以前のSIGMAのカメラでは、JPEGとRAWで大きな画質の差がありましたが、SIGMA のJPEGも大きく進歩しており、画質的にRAWを現像したデータとの差はほとんど無いようです。
しかし、上の画像ではRAWから現像したデータ(現像時SIGMAフォトプロでCOLORはニュートラルをあてています)の方が、JPEGの撮って出しよりも少し彩度、コントラストが低くなっているようです。
このあたりの違いまで含めて、JPEG、RAWどちらを選択するか決めた方がいいようです。
実写テスト、最後のカットからの拡大画像ですが、高感度での撮影である事を殆ど感じさせない、なかなかの高画質です。
ISO感度3200での撮影ですが、この程度の光があって、このくらいの感度までなら、画質的には十分高画質を維持できそうです。
超高画質を誇るフォビオンセンサーですが、高感度、低照度にはめっぽう弱く、こうはいかないので、率直に言ってSIGMAでナイトスナップが出来るのが新鮮でした。
一言で言って、撮っていてとにかく楽しいカメラだと感じました。
普段であれば、モニターが稼働式では無い事などに言及して、文句の一つも言うところですが、フルサイズセンサー搭載とは思えない、驚くべきコンパクトさのお陰で、あまり気になりませんでした。
COLORモードがボタン一つで呼び出せるので、どれを選択するか考えながら撮れるのも、撮影の楽しさにを倍増させてくれました。今回テスト写真には使いませんでしたが、フォビオンクラシックブルーなど、少し前のフォビオンセンサーの風合いを再現するモードもあるので、古くからの SIGMA ファンは是非使ってみる事をおススメします。
敢えて、欠点を挙げるなら、現時点ではこのカメラのコンパクトさを最大限活かせるレンズが、今回使用した45mm F2.8 DG DN | Contemporary しか無いのが、ちょっと寂しいです(SIGMA (シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary 実写レビュー)。今後のラインナップ拡充に期待します。
今回は、動画についてはテストしませんでしたが(売りの一つと言っていいシネマDNG RAWの編集経験が無かった為)、落ち着いたら試してみたいです。
「写真」だけで使っていたらこのカメラの半分しか使っていない事になりますので。