お茶の水女子大学舞踊教育学科卒業後、日本航空国際線客室乗務員として勤務。東京ビジュアルアーツで写真を学ぶ。個展「Layered NY」ソニーイメージングギャラリー(2017年)、「Crossing Prague」ライカストア銀座SIX(2017年)、「Lady,Lady,Lady」ソニーイメージングギャラリー 、ライカストア横浜・福岡(2019年)「mosaic of feelings」ライカカフェプラハ(2019年)、「Layered NY」Salon de la photo_パリ(2019年)など。「over the window」キャノンギャラリー銀座、大阪(2023年)。「bloodline」ライカ大丸東京、ライカ阪急梅田(2023年)2018年、ZOOMS JAPAN パブリック賞受賞。写真集 『イグアナと家族とひだまりと』(日本カメラ社)、『over the window』(PURPLE)を出版。
今年のCP+2025の会場で、いちばんの賑わいがSIGMAブースではなかったでしょうか。
ふんわりと、真っ白なカーテンに囲まれ、そこだけ劇場を思わせるような空間の前には長い行列ができ、この静謐で氷のような美しいカメラを、手に取って、見たい、触りたいという皆の熱気に包まれていました。
私はそれを横目に、ブースに置かれた貴重な写真集を拝見しながら、SIGMAが目指す写真への思いに、じんわりと浸っていると、SIGMAの山木和人社長のトークが始まりました。
「beautiful foolishness of things」(美しくも愚かしいこと)というフレーズは、岡倉天心著の『茶の本』の中の言葉とのことで、その頭文字をBFというシンプルなロゴに掲げ、日本の美学を端的に閉じ込めた、挑戦的とも言えるカメラを生み出した熱い思いが伝わってきました。
そして、このカメラを手にする機会が、こんなにも早くおとずれるとは!
はやる気持ちを抑えつつ、何はともあれ、SIGMA BFを手に、街へと繰り出すことにしました。
さて、この美しいSIGMA BFの手応えはいかに。ストリートスナップでは、広角寄りのレンズを使うことが多いので、35mm F2 DG|Contemporary を付けて出動です。
まず、第一印象として、驚くほど起動が早い!ということ。電源ONとほぼ同時と思われるほどの速さで起動、シャッターを押し、画面を見ると、ピントもぴたりと合った画像を確認。これには心底驚きました。「おぬし、やるなあ」と、心がすでに揺らぎ始めています。
とはいえ、準備は万全に。マニュアルで設定する撮り方では、操作に慣れていないと戸惑うので、ここは気持ちを切り替え、ピント、WB、シャッタースピード、ISOはすべてオートに。シャッターを半押しして、ダイヤルを回すことで、露出の±補正が出来るので、それをフル活用しつつ、カラーモードもいろいろ試してみました。
SIGMA BF・35mm F2 DG|Contemporary
絞りF2.0・1/5000秒・ ISO400・カラーモード:CALM
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交差点でのすれ違いざまに、ノーファインダーにて。よく見ると、宙に浮いている、おしゃれなFlying Dog!
SIGMA BF・35mm F2 DG|Contemporary
絞りF2.8・1/640秒・ ISO400・カラーモード:CALM
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雨の日こそ、カメラを持ち、街へでよ!ということで、傘がひしめく渋谷へ。渋谷は人が主役。絵の中も渋谷人。
SIGMA BF・35mm F2 DG|Contemporary
絞りF22・1/320秒・ ISO320・カラーモード:FOV.CLASSIC BLUE
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上空を通り過ぎる飛行機を追いかけ、雲ひとつ無い青空に小さく動くターゲットを画面タッチでキャッチ。
SIGMA BF・35mm F2 DG|Contemporary
絞りF4.0・1/100秒・ ISO8000・-0.67・カラーモード:FOV.CLASSIC BLUE
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雨上がりの夜は、いつもと違う光に満ちていて、つい遠回りをして、なかなか帰れず。
SIGMA BF・35mm F2 DG|Contemporary
絞りF5.6・1/100秒・ ISO1250・カラーモード:FOV.CLASSIC BLUE
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メトロの通路。キラキラした光に吸い寄せられている人を発見。写真を撮ることは、皆の日常。
SIGMA BF・35mm F2 DG|Contemporary
絞りF4.0・1/100秒・ ISO1600・カラーモード:FOV.CLASSIC BLUE
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マジックアワーは一日のクライマックス。ラッシュアワーに突入する駅や人、広告の明かりと通り過ぎる人、すべてがレイヤーになった、東京の夜。
スマートフォンではなく、カメラで日常を撮ってほしい。というコンセプトの通り、ストリートスナップに求めていた操作性の速さと、持っていて疲れない重さと形(これが、とても大切なのです)をすべて満たしてくれるカメラであることは間違いなし。ストラップも片側にしか付けられないので、首から下げるという選択肢はなく、片手で持つように導かれているのは、さりげなさを保つスタイリッシュな提案なのだと思います。
たったひとつ困ったのは、撮ろうと思う瞬間に、人々の目線がカメラに来てしまうこと。
それは、このシルバーボディの佇まいのせい。「あなたは美しすぎるのよ…」と呟きつつ、なるべく手で包み込みながらの撮影スタイルとなりました。このあたりで、もう完全に心を鷲掴みにされている感じです。(笑)
ようやくここで、最大の特徴である、フォルムについて語りたいと思うのですが、言わずもがな、佇まいが目を惹くのは、ソリッドで静謐な美しさ。アルミの削り出しで作るボディは、なんと一台に7時間以上かかるとのこと。すべてが早く、簡単に、という現代の風潮の中、愚かしいほどの逆行性、この時代への挑戦とも言えますが、それこそが日本の美意識に寄り添う「Beautiful Foolishnes」ということでしょうか。え?と思うほど「過激なまでのシンプルさ」という、こだわりの中から生み出されたデザインは、美しい、のひとことに尽きます。
全体の印象は角ばっていますが、上から見ると、やや台形の柔らかなフォルムで、右下側は手にしっくりくるように、優しいカーブがほどこされています。表面右側半分のソフトな凹凸は、滑り止めの役目も果たしているので、構えた時に安定感があり、さらに、その感触がなんとも心地良いのです。この手触り感、触っていたいカメラ、というのもまたSIGMA BFの特徴で、人が手で持った時にどう感じるか、ということまで考えられているデザインだと思いました。刷新されたロゴも、シャットダウンした時に、画面にくるくると写し出されるのが憎い演出。
忘れてはいけないのが、デザイン重視でなく、機能美も兼ね備えているということ。たった3つのボタンとダイヤルひとつ。そのシンプルなボタンに「押す」と「触れる」の2種類の機能があることが、最大のポイントなのです。軽く触れるだけで反応する感圧式ボタンは、今撮った画像をさっと呼び出せたり、バッテリー残量がパッと出てきたり。さらに押す、回すで、何段もの操作をせずに、さまざまな切り替えが出来る、などなど、操作法を学ぶたびに、思わず唸ってしまいました。
さて、ストリートスナップに最適だということがわかった上で、次はポートレート撮影へ。
この夏に向けて、キュートな金魚の浴衣をあつらえたというkanakoさんに、早速モデルになって頂きました。やや暗い場所での撮影でしたが、AF/Cモードでは、振り向きざまでも横顔でも、彼女の大きな瞳を追いかけてくれるので、途中からピントをチェックすることもなく、撮影に集中していきました。
どんどんSIGMA BFに身体が馴染んでいくと、設定もカラーモードも自由自在に変えられるようになります。日常使いだけでなく、じっくりポートレートにも手応えあり。ここでは50mm F2 DG|Contemporaryのレンズのみ使用しましたが、さらにいろいろなレンズの組み合わせを試してみたくなりました。SIGMAレンズの豊富さは誰もが認めるところですので、そこは大いに楽しめるのではないかと、期待は膨らみます。
SIGMA BF・50mm F2 DG|Contemporary
絞りF2.5・1/2000秒・ ISO2000・-2.67 EV ・RAW
(モデル=kanako)
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光が難しい場面では、RAW現像で絵づくりを。
SIGMA BF・50mm F2 DG|Contemporary
絞りF2.5・1/50秒・ ISO3200・-0.33EV・カラーモード:CALM
(モデル=kanako)
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照明がくるくる変化するので、色が強く出すぎないようにCALMでソフトな風合いに。
SIGMA BF・50mm F2 DG|Contemporary
絞りF2.5・1/125秒・ ISO400・-2EV ・カラーモード:MONOCHROME
(モデル=kanako)
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雑念が入らないモノクローム。黒潰れしないギリギリまでアンダー気味に落として、トーンと対話をしつつ。
京都の下鴨神社のお膝元にあるBAR(コーヒー焙煎も)でのこと。この土地の空気感を纏った店主のストイックさと、ここに流れるゆったりとした時間から「しばし儚さを夢みようではないか。ものごとの美しき愚かさに身をゆだねようではないか。」という岡倉天心のことばが思い出されました。刻々と変わる陽光と共に、美しい所作を眺めながら、写真を撮りたい!と思う純粋な気持ちの原点を味わうひと時。静かにお客さまとの対話を楽しみつつ、丁寧なカクテルを差し出す一期一会。写真もまた一期一会。
SIGMA BF・50mm F2 DG|Contemporary
絞りF18 1/50秒 ISO3200 -1EV カラーモード:709 LOOK
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下鴨神社には太古の時代からの原生林があり、そこに流れる小川の水は透き通り、すべてを写す鏡のよう。美はここにあり。
SIGMA BF・50mm F2 DG|Contemporary
絞りF3.2・1/1250秒・ ISO400・-0.33・カラーモード:709 LOOK (撮影協力:watoto)
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芍薬一輪。カウンターからの景色は光と影を楽しむように設が整い、珈琲の香りで満たされる。
SIGMA BF・50mm F2 DG|Contemporary
絞りF2.5・1/1600秒・ ISO400・-2.33・カラーモード:RICH
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削り出しの氷をさらに削る音。イメージがリンクするひと時。
SIGMA BF・50mm F2 DG|Contemporary
絞りF2.5・1/1000秒・ ISO400・-3EV・カラーモード:RICH
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丁寧に作られるカクテルは直感と深い知識から生まれる感性の作品。もちろん、絶品。
SIGMA BF・50mm F2 DG|Contemporary
絞りF2.5・1/26000秒・ ISO320・-1.67・カラーモード:709 LOOK
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少し彩度を下げてみる。色が有るか無いかの間のトーンへ。静寂の心地良さを味わう。
ストリートスナップをする際、私にとっていちばん大切なのは、速写性、そしてピントの正確さなので、これを叶えてくれるSIGMA BFは、かけがえのない相棒となると感じました。画素数は、大きく伸ばす必要がなければ十分ですし、レンズを使いわけることで、ポートレートや物撮りなどの仕事撮影、そして作品作りにも大いに活躍するであろうと思います。それを踏まえて、購入を検討すると良いかと思いました。
「最高レベルの技術は芸術となる」というSIGMAの強い理念とアートへの思い、そして、「Made in JAPAN 」「Made in AIZU」というこだわりが、日本の伝統美へのオマージュであることを、SIGMA BFを通して感じ、あらためて、カメラとは、写真とは、と考える機会になりました。
そして、余談ですが…、
SIGMA BF(ブラック)+35mm F2 DG|Contemporary(ブラック)の購入を決定。これは、最初の一枚から、すでに心は決まっていたような出会いでした。この組み合わせで、街を闊歩するのが楽しみです。大いに、美しくも愚かしいことに耳を澄ましつつ!
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Photo & Text by サトウヒトミ