SONY (ソニー) α7R IV の実写レビューです。
高画素モデルとしてラインナップを重ねて来たSONY「R」シリーズですが、4代目にしてついに「有効画素数約6100万画素」という、未知の領域に突入しました。
フルサイズのセンサーを使用したカメラの中で、現時点(2019.9.8)で最高画素数のカメラであり、故に条件さえ整えば、フルサイズセンサー採用のデジタルカメラの中で、最も高精細な描写のカメラと言えると思います。
今回はそんな、SONY α7R IV のレビューです。
実機を手に取ってみて、最初に感じたのは、各操作が今までより、やり易くなっている事です。
SONY α7RIII は当ブログでもテスト用に幾度となく登場しているカメラです。α7R IV は、そのIIIと比較してボタンの押しやすさやシャッターの感触、グリップの握りやすさなど、先ず、カメラを扱うフィーリングが向上していると感じました。
どうしても画素数に注目が集まりがちな機種ですが、こういった使い勝手にも細やかな手直しが行われているのには、好感が持てます。
正直申し上げて、SONY α7RIV のスペックを見た時、6100万画素に対して、少し懐疑的でした。
「そんな画素数誰が使うんだ」と思いました。極一部のプロカメラマン以外、ここまでの高画素は必要ないのでは?と考えたわけです。
そんな、少しネガティブな気持ちでテスト撮影に出かけました。
撮影日は、雨がふったりやんだりの生憎の天気でしたが、しっとりと湿った葉に、木漏れ日が白く反射して綺麗でした。
SONY α7R IV は、最高クラスの高性能カメラでありながら、手振れ補正や、優れたオートフォーカスのおかげで、特に気を使う必要もなく、いつもどおり撮影出来ました。
又、レイアウトに大きな変更が無いインターフェースも、細かい部分が良く改善されており、操作フィーリングはかなり改善されていると感じました。シャッターのフィーリングは好みの分かれるところかもしれませんが、個人的には優しい感じになって前機種より好きです。
山奥にひっそりと建つ神社の境内には、苔に覆われた石仏が多数安置されていました。長い年月の間に苔に覆われ、風雨にさらされた体は、すり減り丸みを帯びてしまっています。
雨に濡れた石仏の質感を、α7R IV の6100万画素が高精細に描写してくれました。
数十回シャッターを切って感じたのは、操作フィーリングの向上、最高クラスのファインダ―の見え味など、仮に6100万画素でなくても、十分に価値のあるカメラだという事です。
水が豊かな場所で、長い年月人の手が入らない為、境内の石にはびっしりと苔に覆われていました。もののけが出て来そうです。
冒頭に「6100万画素なんていらないよ」とか書いてしまったのですが、テスト写真をパソコンのモニターで確認しているうちに、不思議な事に気が付きました。
高精細で細かいところまで写っている、という事だけでなく、ボケがリアルに再現されているように感じるのです。レンズの生み出すボケ味が、よりリアルに生々しく美しく再現されているように感じたのです。ボケも映像の一部であり当然情報が多い方がなめらかで美しくなるでしょう。
今まで気付かなかった事に気づかせてくれるカメラです。
紫陽花でしょうか?日の当たらない暗いはやしの中で、ひっそりと咲く姿にはかなさを感じてシャッターを切りました。
花の細かいおしべの一本一本まで、6100万画素が精密に写し取ってくれました。
ミラーレスカメラらしい背景の美しい丸ボケも写真全体の質を高めてくれます。
撮影地に選んだ神社は、そこかしこに「水」と「苔」が感じられて、美しい緑に癒されました。
日本でも有数の水の綺麗な場所だったのですが、水が綺麗だと苔の緑もより美しく発色するのでしょうか?
雨が降ったりやんだりの天気も、普段なら億劫に思うだけですが、苔の緑色をみずみずしく引き立てるいいエッセンスになってくれました。
手水にわたされたしめ縄です。
広いダイナミックレンジのおかげで、背景の暗い森の下草と、真っ白な紙の質感を同時にリアルに描写してくれました。
静謐な空気感まで描写してくれるように感じられる描写能力には完全に脱帽です。しかし!ここで一つだけ欠点が。というか、カメラの欠点では無いのですが、標準ズームレンズ「FE 24-70mm F2.8 GM」の開放時の描写の甘さがわかります。
Gマスターですよ!Gマスターの描写の甘さがわかるレベルのカメラに驚くとともに、上のカットに使った単焦点レンズ(今回はFE 135mm F1.8 GM)では殆どそういった事は無かったので、真にGマスターの単焦点レンズを活かしきれるカメラ、と言えるかもしれません。
苔むした岩の上に、小さな祠がのっていました。人口的に削られた石を、自然の苔やシダが覆い、不思議な世界をつくりだしています。
もののけか何かいそうな雰囲気でしたが、都会の生活に荒み切った私の眼には、なにものも映りませんでした。
6100万画素なら写し撮れそうですが、残念、ただリアルにその場の風景が描写されるだけでした。
水神の池に無造作に投げ込まれたような石仏が。
いかほどの月日が流れたのでしょうか?石は水に洗われ、丸みを帯び、苔が生え、ゆっくりと人の手が入った痕跡は消え、自然に帰って行きます。
全ての風景が、肉眼を超えるレベルで、リアルに描写、再現されます。6100万画素なんて不要だとか言ってすみません。
先に書きましたが、対象となる被写体だけでなく、使用している「レンズ」がリアルに再現されるのに驚きました。解像力、ボケ味、ちょっとしたクセ・・・全て再現するリアルがこのカメラにはあります。
6100万画素は必要です。
作例⑤からの拡大です。絞りは半絞りf3.5まで絞ってあります。
レンズはFE 24-70mm F2.8 GMですが、若干の甘さが感じられます。 以前行ったテストで、FE 24-105mm F4 G OSSよりも少し甘いという評価をしたレンズですが(「SONYのフルサイズ用標準ズーム どれがいい?」記事)、α7R IV ではそういった部分がより誇張して再現されてしまいました。
実写テスト2枚目のカットからの拡大です。絞りは1絞りf2.5まで絞ってあります。
今回はカメラのテストだったので、開放ではなく少し絞って撮影を行いました・・・と言うのは建前です。実は、あまりにシビアな描写力に、開放で撮るのが怖かった、というのが真の理由です。
さすがGマスターの単焦点レンズの描写性能は立派で、6100万画素に対してもほぼ破綻のない画を吐き出してくれました。
高感度の描写を見る為にISO12800で撮影しました。
思ったよりノイズが少なく、驚きました。前機種のα7RIII並みという評価のようですが、その通りだと思います。
少し拡大して見てみます。
ノイズは大きく発生していますが、映像エンジンが無理くり画を作ったような感じは無く、細かい部分の諧調も残り自然です。
ISO12800で撮影した事を考えれば、優秀だと思います。
完全に脱帽です。繰り返しになりますが、6100万画素なんて不要だとか言って本当にすみません。
シャープで高解像度であるという事だけでなく、高画素故の滑らかな諧調が、ピントの無い部分にも多くの情報がある事を認識させてくれました。新しい発見のあるカメラだと思います。
レンズの性能を詳らかにする厳しさを持ったカメラでもあり、Gマスタークラスでも太刀打ち出来ない物があるのには驚きました。細密描写を重視して、カメラの能力を最大限生かそうと思ったら、相応のクラスのレンズ、その中でも突出した性能を持ったレンズを使用したいところです。
逆にカメラのシビアさがレンズの特徴を明らかにしてくれるので、オールドレンズ等の、個性を誇張するような表現用途にも使えるかもしれません。
SONY α7RIV は、細密描写だけではない、様々な可能性を感じさせてくれるカメラでした。正直、テストがかなり楽しかったです。