手持ちでも扱えてしまう程の軽さと、非常に高レベルな描写性能を兼ね備えた、ソニー Eマウント用超望遠レンズ FE 400mm F2.8 GM OSS の発表から1年、超望遠レンズのラインナップに FE 600mm F4 GM OSS が新たに加わりました。
FE 400mm F2.8 GM OSS で培った技術をベースにさらに磨きをかけたソニー渾身の1本を、今回も短期間ながら使用する機会を得られました。
又、前回400mmのレビューの際と同様にα9との組み合わせで撮影を行いましたが、今年3月に実施された大幅なソフトウェアアップデートによってAF周りを中心に大幅に性能が上がり、新たな発見もありましたのでこれも併せてレポートしたいと思います。
前回の「FE 400mm F2.8 GM OSS」レビュー記事はこちら
まずは前回と同じ場所で新幹線を。レビュー記事でこんなことを言ってしまうのもなんですが、画質について、もはや何も言うことはありません。素晴らしいです。絞り開放から非常にシャープで、絞り込むのは画質を上げる為ではなく被写界深度のコントロールの為、と言ってしまっても間違いではないと思えます。
メーカーWebページで公開されている、FE 600mm F4 GM OSS のMTFチャートを見ても、上部にピタッと貼り付いているような線を描いていて驚きましたが、実写でも中心から周辺部まで安定した性能を有していると感じました。
400mmのレビューで「ほぼ初期状態のままでのAF追従精度は7割程度という印象」と述べましたが、最新バージョン(Ver.5.01)だと、同じ条件で追従精度が8.5割くらいに上がったような気がしました。
今回カメラのAF設定は「AF-C・フォーカスエリアはゾーンで先頭部分の位置に合わせて都度移動」を基本としました。日中の撮影においては、連写中わずかにピントがずれてしまったコマはあるものの、ほとんどのコマで先頭部分のワイパーや、記号の表記まで鮮明に見えるほどでした。
今回、Ver.5.0で新たに追加された「リアルタイムトラッキング」は試していませんが、少なくとも鉄道のような決まった方向へ動く被写体であれば「ゾーン」や「フレキシブルスポット」でも全く問題ないと思います。
雨の日に中央・総武線の複々線区間にて。
先の新幹線でもテレコンバーターを使用していますが、使用したことで画質が落ちるような様子はほとんど感じられません。むしろ雨による影響の方が気になる程です。
E353系「あずさ」のコマのように、FE 600mm F4 GM OSS に、2倍テレコンバーターとAPS-Cクロップと併用すれば、1800mm相当という弩級クラスの望遠効果が得られます。画素数は約1,000万画素に下がりますが、AF速度・精度はテレコンバーターを使用しない時とさほど変わらない印象です。
今回他の写真も含めて全て手持ちで撮影しましたが、1800mm相当ともなるとフレーミングを維持するだけでも大変で、頑丈な一脚があればと思いました。
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FE 600mm F4 GM OSS は、レンズ先端にカメラ側の各種設定を登録できるファンクションリングと、フォーカスホールドボタンが設けられています。ここに「APS-C撮影」を割り当てると、リングを少し動かす/ボタンを一押しするだけで素早い切替えができます。
このレンズとの組み合わせに限りませんが、使用して気づいたことが一つ。
例えば連写に設定してAPS-C撮影をしたすぐ直後に「引きの構図」でもとフルサイズに切り替えたいような場面(あるいはその逆も)では、SDカードへの書き込みが終わるまではクロップ切り替えに関する設定ができないようです。書き込み時間がより短いUHS-II規格のSDカードを使用すれば回避できるかと思われますが、やむを得ずUHS-I規格のSDカード(特に書き込み速度が速くないもの)を使用する場合は要注意です。
対物側のレンズを少なく抑えたレンズ構成と、軽量かつ堅牢性の高いマグネシウム合金製部品が使用された鏡筒のおかげで実現できた、3,040gというこのクラスとしては驚異的な軽さは、FE 600mm F4 GM OSS の大きな特徴です。
一眼レフで600mm F4レンズを使用した経験がある方であれば、このレンズを持った時、構えた時に間違いなく驚くことでしょう。
α9を装着した状態で超望遠レンズ向けのバックパックに入れて背負って移動しましたが、それなりに重量感はあるものの、中に600mmレンズが入っているという感覚はほとんどありませんでした。本体の軽さは撮影時はもちろん、移動時の疲労軽減にも繋がる強い武器になるはずです。
日を改めて夜の羽田空港へ。展望デッキからの撮影の場合、離陸する機体狙いだと600mmだと個人的には少し長すぎたかな、という感じです。
一方の作業風景のスナップは、200~300mmクラスの「超」が付かない望遠レンズで撮影した時とは一味違う引き寄せ効果が得られました。
今回、レンズの画質の良さもさることながら、ソフトウェアのバージョンアップだけで以前とは全く別物のようになったα9の進化にもとても驚きました。
FE 400mm F2.8 GM OSSのレビューの結びで「正直なところ、前述したように動体に対してのAF追従精度が「百発百中」の域にはまだまだ到達していないと思ったのが今回唯一残念に感じた点ですが、これはレンズの欠点というよりは、ボディ性能の進化の余地がまだあるということではないかと思います。」と記しました。
元々高いポテンシャルを持ったα9だから出来た、ということもあるかもしれませんが、あれからまだ1年も経っていないにもかかわらず、ソフトの改良のみでボディの性能が向上し、撮影が難しい被写体でもより満足のいく結果が得られやすくなったことはとても喜ばしいことです。
鉄道と航空機という動体撮影の中では比較的撮影しやすい被写体で撮影を行いましたが、動きが読めないスポーツや小さな野鳥等のような一眼レフでも難しい被写体でも撮影してみたいと感じたとともに、7割から8.5割に上がったと個人的に感じたAF追従精度が、次の機会には9割に迫る性能になった製品が登場することを期待しています。
※写真データはJPEG・エクストラファインで撮影したものを縮小。すべてクリエイティブスタイル:スタンダード / ホワイトバランス:AWBで撮影。
Photo & Text byフジヤカメラ店スタッフ 浅葉
>>> SONY(ソニー) FE 600mm F4 GM OSS