SIGMA (シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary の実写レビューです。
通常であれば、最初に実写テストからお届けするところですが、デザインの美しいレンズです。
同じく美しいデザインの同社のフルサイズミラーレス一眼カメラ「fp」とのマッチングもとてもいいレンズだと思います(SIGMA fp + 45mm F2.8 DG DN | Contemporary の記事はこちら)。
先ずは SIGMA の言う、ビルドクォリティと操作性から、次に実写テスト、画質の順に見ていきたいと思います。
SIGMAからお借りした、塗装前の製品写真です。フルメタルの鏡筒がとても綺麗です。
塗装前のパーツは、細かい部分までシャープに作りこまれており、シグマの製造技術の高さを感じられるとともに、製品を持つ喜びを満足させてくれそうです。
このままシルバーモデルとして販売出来るんではないか?と思えるくらい、塗装前の状態でも美しく、精密な仕上がりとなっています。
操作面で特筆すべき最初の点は、絞りリングの採用だと思います。
私は撮影の際、「開放」か「絞り込む」のいずれかが多いです。ダイヤルを使った場合、例えばf1.4→f11といった操作の際、ダイヤルを沢山回さなけらばならず、以前から、やりずらいと感じていました。回した量も直観的にわかりづらく、沢山回したつもりでも、絞りはまだf5.6だったりして、ストレスを感じる事もあります。
対して絞りリングは、f1.4→f11といった操作も一瞬で出来、慣れれば、回転した角度によってどのくらい絞られたかが、直観的にわかって便利です。
クリックが1/3に設定されているのも、細かい露出調整が画に反映する、高性能なデジタルカメラに合っていると思います。
もう一つ特筆すべきなのは、マニュアルフォーカスの操作性、具体的にはフォーカスリングを回した際の滑らかさです。
ひと昔前であれば、オートフォーカスレンズのマニュアルフォーカスは、抵抗感の無いスカスカの、使いづらいものでしたが、SIGMA (シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary の操作感は「これマニュアルフォーカスのレンズ?」と思えるくらい、滑らかな抵抗感が感じられ、操作しやすいものです。
以前より SIGMA が取り組んでいる「バイワイヤ方式」が、この為の布石だったんだ!と、妙に納得させられました。
さて、SIGMA のビルドクォリティに感心したところで、実写テストに出発したいと思います。
>>> SIGMA(シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
メーカーの開発コンセプトが「常用単焦点レンズとしての使いやすさを追求した標準レンズ」という事でしたので、SONY a7RIII に SIGMA (シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary を取り付けて、スナップ撮影に出かけました。
駅を降り、気の向くままに歩き始めました。東京は、駅からちょっとはずれれば、古いものが沢山残っていて、スナップ写真を撮るには被写体に困りません。
壊れた木の柵やら、なんやらかんやら、適当にうっちゃってあるだけなのですが、不思議な秩序があるように見えてシャッターを切りました。
広角だとまとまらなかったと思うのですが、初めはやや狭く感じる標準レンズの画角が、上手くイメージをまとめてくれました。45mmという画角は、フレーミングする楽しさのあるレンズです。
ふと上を見上げればボロボロに錆びた鉄格子が。一部穴が空いてしまって、今にも崩れ落ちそうです。
SIGMA (シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary は、ボケ味にとことんこだわったレンズというだけあって、f2.8という、単焦点レンズとしてはそれ程明るくないf値でありながら、ボケが綺麗なレンズです。
f値以上に被写界深度が浅目に感じます。
近接撮影では、さらにボケの美しさが際立ちます。
ピントが合った部分から、ボケていく部分への移り変わりが非常に美しく、すりガラスを通したような、柔らかい極上のボケ味が、被写体を引き立てます。
上のカットでは、白い花の上の葉のボケ方に、このレンズの真骨頂が顕著に見られます。
猫だ!と、言っても看板に描かれた画です。ロボットのおもちゃを抱きしめている姿が、なんともユーモラスで愛らしいです。
SIGMA (シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary は、開放f2.8ですので、このくらい距離を取ると、開放でもこのくらいのボケ感です。f1.4のようなレンズと比較すると、やや物足りない感がありますが、逆に背景のイメージが伝わるので、スナップならこのくらいの方がいいかもしれません。
ピントの合った部分とボケた部分との対比のバランスに魅力があるレンズです。
花の写真をもう一枚。夜の街に咲く花を一輪だけピントを合わせて撮りました。
ボケ感は極上のもので、雨後のしっとりと湿った花の質感がよく再現されていると思います。
アウトフォーカスの部分から宵闇の訪れが感じられる。そんな、雰囲気が伝わる描写をしてくれるレンズです。
夜のスナップに魅力を発揮するレンズと踏んで、そのままナイトスナップに出かけました。
昼間見たら、なんてことはないただの塀ですが、ちょっとしたライトアップや背景の薄暮の藍色が入る事で、ちょっといい雰囲気の写真になりました。
SIGMA (シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary は、開放f2.8で、通常の距離であれば、ピントに極端に気を使う必要も無く、肩の力を抜いてスナップ撮影を楽しめます。対して近接では、極上のボケ味をもって被写体を引き立ててくれる、2つの側面を感じるレンズでした。
消えた電球が、まるで闇夜に浮いたシャボンのように浮かんでいました。
煌びやかなネオンの中では、酔っ払いが大声で大気炎を上げています。
明日になれば泡のように消えてしまうのに。
レンズのせいか、カメラのお陰か、明暗差があってもアンダー部分が完全につぶれる事は稀で、粘り強い印象を受けました。
暗く落ち込んだ部分にも、いくらかの諧調が残り、質感を描写してくれます。
目論みどおり、ナイトスナップには使い易いレンズだと感じました。
このレンズの画質を確認するにあたり「性能がいい」とか「シャープ」とかいう言葉を使いたくありません。
レンズが、物の形や色を正確に写し取るためのもの、以上のものである事を改めて教えてくれる、そんな描写のレンズです。
まぁ、合焦部分は、十分過ぎるほどシャープなわけですが、見るべきところはそこではないでしょう。
ピントを拾った一番手前の花びらから、左奥の花びらに向かってボケていく様が、素晴らしく綺麗です。
輝く花びらの上の水玉の表現など、私のつたない筆致では到底表せない美しさで、SIGMA (シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary の真骨頂を見る思いがします。
欠点は、大きく糸巻型の歪曲収差が出る事です。気になるようなら、カメラのレンズ補正機能をONにして使う事で解決します(若干画角が狭くなります)。
ミラーレス用の Contemporary シリーズは、画質的には非常に高性能で、Artシリーズとなんら遜色ないものが殆どです。
Artシリーズとの違いはこの歪曲収差補正をレンズでするか、カメラのデジタル補正を使うか程度の違いしか無いように思えます。
SIGMA (シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary は、名前は Contemporary ですが、強く Art を感じるレンズでした。
写真を撮るのが楽しくなるレンズです。大きさ、作り、操作感、写りが、複合的に作用して、そう感じるんだと思います。SIGMA の言う「常用単焦点レンズとしての使いやすさを追求した標準レンズ」というコンセプトにも納得させられる使用感でした。
又、作りが非常にいいレンズで、ちょっと変態的ですが、触っているのが楽しいレンズでした(笑)。
写りについては、SIGMAの新しいステージの一端を見た気がします。最高性能という事だけで満足する事無く、最高の「写真」を取る為の道具作りに向け、新たなステージへ一歩を踏み出した印象すら受けます。
まだまだこんな事も出来るんだぞ!という SIGMA の底力を感じるレンズでした。
>>> SIGMA(シグマ) 45mm F2.8 DG DN | Contemporary