KAMLANのレンズをカメラ専門店スタッフが実写レビューします。ラインナップは現在FS 28mm F1.4、FS 50mm F1.1、FS 7.5mm F3.2の3種類です。非常にコストパフォーマンスの良いレンズを詳しく紹介します。
現時点でのラインナップは「FS 28mm F1.4」「FS 50mm F1.1」(マウントはSONY E(APS-Cサイズセンサー用)、FUJIFILM Xマウント、マイクロフォーサーズ)と「FS 7.5mm F3.2」(マイクロフォーサーズ用のみ)の3種類です。
フォーカスはマニュアルフォーカスです。特徴的なのは、絞りにクリックが無い点で(切り替え式ではな無くクリックの機構自体がありません)、この辺りはコストと動画撮影を意識しての事だと思います。写真では、絞りの選択が若干やりずらいかもしれません。
フォーカスリング、絞りリングともに、トルク感のある重めの操作感です。
何と言ってもその特徴は、スペックの割に価格が非常に安いという事です。
残念ながら、レンズの性能は価格に比例するのが常ですので、高い性能を期待するのは難しいと思いますが、オールドレンズに代表されるように、欠点を「味」と捉えて楽しめるケースもあるので、期待しながらテストしました。
今回は、テストカメラにSONY α6500を選択したので、 FS 28mm F1.4 、 FS 50mm F1.1 の2本をテストしました。写真と動画の両方でテスト撮影を行いましたが、動画での撮影も面白かったです。後日Youtubeにテスト映像をUPする予定ですので、ご期待下さい。初めに FS 50mm F1.1 からご紹介したいと思います。
正直申しあげて、ファインダーを覗いた最初の感想は「これオールドレンズ?」でした。ピント合わせの為に拡大表示すると、明らかに描写は甘く、あまりにもコントラストが低い為、動画撮影の為にモニターを見た時には、誤ってLogの設定をしてしまったかと思いました。
ファインダーを覗いただけで、描写の質がここまでわかったのは、初めての経験です。
自転車がお好きな方はご存知かと思いますが、BROOKSは140年前から続く、自転車用革サドルの老舗メーカーです。そのBROOKSの文字がピントが来ているにもかかわらず、ふんわりと霞みがかかったようになっています。
よく言われるように、シャープネスの低いレンズはボケが綺麗なケースが多く、KAMLAN (カムラン) FS 50mm F1.1 の極端に明るいf値と相まって、味わい深いボケ味となりました。
このレンズをテストする季節が春で良かったと思います。ふんわりした描写が、この季節に合っていると感じました。シャープネスの低い曖昧な描写が、どことなく印象派的な写りだと感じました。
写りはふんわりしていますが、f1.1の素晴らしく薄い被写界深度をMFで合わせる緊張感はなかなかで、レンズがシャープでない分ピントの山もつかみにくく、撮影には相応の苦労が伴いました。
非常に柔らかく、色収差の残る描写は、まるでトイレンズの様です。レンズ構成を見ると、f1.1の大口径レンズでありながら、5枚しかレンズが入っていません。
ここまでシンプルなのには驚きです。周辺光量が落ちているお陰で、レトロな雰囲気が出ています。
画質を見る為に少し拡大してみます。
ソフトフォーカスのような柔らかく眠い描写です。明暗差の激しい部分ではパープルフリンジも発生しており、色収差も大きそうです。レンズの性能だけで、ここまでレトロ感が出るものは、なかなか無いと思います。素晴らしく個性的なレンズです。
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描写性能は FS 50mm F1.1 と比較して、FS 28mm F1.4 の方が優秀なようです。
周辺光量落ち、解像感とも、FS 28mm F1.4 の方が優秀でした(それでも周辺光量落ちはありますが)。フルサイズ機に装着して、イメージサークルの大きさを確認しましたが、28mmの方がイメージサークルが大きく、余裕があるようです。
やはり、一般的に設計しやすいと言われる、50mmのレンズでも、f1.1という明るさは設計が難しいようです。
なにやら怪しげなオブジェが・・・と思ったら、子どもが乗って遊ぶ遊具のようです。FS 28mm F1.4 は、50mm程の強烈な個性が無い分、写りも無難で扱い易いレンズでした。強烈な個性を持つ FS 50mm F1.1 の画を見た後だと、シャープに感じます。
たんぽぽの写真が、FS 50mm F1.1 のテスト写真と被ってしまいました。前後のボケも綺麗で、シャープネスも現代的、一般的におススメなのはこちらのレンズです。が、 FS 50mm F1.1 の強烈な個性にテンションが上がった後だったので、逆に少し残念に感じてしまいました。
少し拡大して描写力を見てみます。
柔らかいながらも芯があって、なかなかの描写性能です。ここまで写れば、なかなかコスパの高いレンズと言えるでしょう
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今回テストした KAMLAN の2本のレンズは、いずれも個性的なレンズだと感じました。
特に FS 50mm F1.1 は、収差の多い非常に柔らかく眠い描写で、大抵のレンズがそこそこ写るようになってしまった最近のレンズとは一線を画す、強烈な個性を発揮してくれました。単焦点レンズでありながら、周辺光量がここまで落ちるというのも、あまり聞いたことがありません。
マニュアルフォーカスで絞りのクリックも無く扱いには多少の面倒を伴いますが、それでもこの個性はちょっと他では得られない、ある種の「魅力」を感じました。