RICOH GR IV Monochromeレビュー × 写真家 サトウヒトミ | モノクローム表現の可能性を拡張する名機

目次
はじめに
外観と機能
イメージコントロールを使って【ハイコントラスト編】
イメージコントロールを使って【柔らかなスナップ編】
ポートレート撮影
調色による表現
まとめ
作例に使用した機材
執筆者紹介
フジヤカメラ | 東京都中野のカメラ専門店
はじめに
2005年、デジタル初代「RICOH GR DIGITAL」が、私にとって初のGRでした。フィルム時代から変わらぬシンプルなデザインは、圧倒的にカッコよく、持っているだけで気分が上がるカメラだったのです。
そして2026年の今。GRは年々進化を遂げ、マイナーチェンジを繰り返しながらも、その潔さを保ち続けていることに、感動するばかりです。現在私は、GR Ⅲx 、GR Ⅳ HDFの2台を日によって持ちかえつつ、常に愛用しているのですが、このたび、GR Ⅳ Monochromeという、私にとって初のデジタルモノクローム専用機を手にして新たな世界に触れた驚きを、ここに綴ってまいりたいと思います。
外観と機能
さて、スペックはすでにさまざまな形で紹介されているので、ここでは省略するとして、外観の印象です。まずはモノクロームらしさを感じる、しっとりとしたマットの質感が新鮮で目をひきました。さらにGRのロゴがセミグロスブラックになり、落ち着いた品の良さが際立ちます。
背面は、Fnボタンに赤色フィルターのON/OFF切り替え機能が設置され、ダイレクトキーの下ボタンにイメージコントロールが割り当てられていて、使いたい時に使いやすい配置になっています。
GR Ⅳ Monochromeでは、NDフィルターの代わりに、赤色フィルターがレンズユニットに内蔵されたことにより、赤色フィルターをONにすると、このようにレンズが赤くなります。このフィルターは、特に青い空のトーンを抑え、赤いものは浮き立たせる、という効果があるとのことで、重たい雲がかかった空を写して比べてみました。
<赤色フィルター:OFF>
絞りF10・1/400秒・ISO800・イメージコントロール:ソリッド・赤色フィルター:OFF・jpg
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<赤色フィルター:ON>
絞りF10・1/400秒・ISO800・イメージコントロール:ソリッド・赤色フィルター:ON・jpg
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電源ボタンのライトも、通常のGRの緑から白になっていて、色の無い世界観を感じさせる粋な演出。起動の速さは言わずもがな、さらに高速かつ高精度に被写体にフォーカスできる高機動力を備えているということで、撮影への期待感が高まります。
イメージコントロールを使って【ハイコントラスト編】
まずは、GR Ⅳ Monochromeに新搭載された「グレイニー」「ソリッド」を使ってみました。
グレイニーは粒状感が際立つ銀塩フィルムのような質感、ソリッドはシャープでキリリと引き締まった質感、どちらもモノクロームの重厚感が感じられるモードです。
絞りF6.3・1/50秒・ ISO400 −0.3EV補正・イメージコントロール:グレイニー・赤色フィルター:ON・jpg
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雨が続く中、傘のある風景もまた良しです。街に溢れる広告の光で、通り過ぎる人々をシルエットにしましたが、黒が潰れすぎることもない「グレイニー」の美しい粒状感に驚き、このモードでのストリートスナップの楽しさに没入していきました。
絞りF2.8・1/320秒・ISO3200・イメージコントロール:グレイニー・赤色フィルター:ON・jpg
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ステンレスとガラス、飲茶の湯気。蒸し器の木肌。真っ白な作業服。これだけ違う質感のトーンを、すべて捉える「グレイニー」。硬質なのに柔らかいモノクロームに魅了されました。GR Ⅳ Monochromeのすごさを実感する1枚です。
絞りF3.5・1/13秒・ISO160 +0.3EV補正・イメージコントロール:グレイニー・赤色フィルター:ON・jpg
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この日、気分が最高潮に達したのは、このご婦人のお陰でした。完璧な装いを逃してなるものかと、シャッタースピードを調整しつつ、小走りで追いかけパチリ。後に、RAWで抑えたものを自分なりに調整した画像と比べたのですが、グレイニーの表現の潔さ、粒状感の美しさに完敗でした。「グレイニー」、恐るべしです。
絞りF2.8・1/250秒・ISO3200・イメージコントロール:ソリッド・赤色フィルター:OFF・RAW
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カメラ内RAW現像では、コントロールパネルにあるモードを選べる上に、ブラックを強めたり、粒状感を出したりなど細かなイメージを作ることも自由自在にできてしまいます。雨の繁華街の路面の光も「ソリッド」でシャープに、コントラストもやや強めに、などなどパソコンを使わずとも、思い描いた画作りが可能なことを知ってしまいました。こわいです(笑)
絞りF14・1/5秒・ISO2500・イメージコントロール:ソリッド・赤色フィルター:ON・jpg
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ガラス瓶の美しさと影、映り込んだ風景の幻想的な様子を「ソリッド」で捉えてみました。
シャープさはしっかりと、暗部も潰れ過ぎずに全体のバランスが良い表現ができるのがこのモードの特徴だと思います。
絞りF4.5・1/125秒・ISO4000・イメージコントロール:ソリッド・赤色フィルター:ON・jpg
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大画面に次々と広告が映し出される中、青い空と赤い紅葉に富士山の画面が現れ、赤色フィルターの威力が感じられるシーンだ!と、慌ててカメラを構えたところ、なんと、素敵な女性がスッと目の前を通り過ぎてくれました。速写性、高機動力、手ぶれ補正、すべての威力が発揮された瞬間です。ソリッドに設定していたのも功を奏し、シャープな仕上がりになりました。
イメージコントロールを使って【柔らかなスナップ編】
すっかり硬調なモノクロームを堪能したところで、今度は柔らかな画作りに挑戦することに気持ちを切りかえてみました。これこそ、モノクロームの世界の奥深さであり、豊かさだと思うのですが、GR Ⅳ Monochromeでは、イメージコントロールの設定で、幅広い表現をを可能にしていることに感動を覚えました。それゆえに、どんなイメージで撮影に臨むかをしっかり持っていることの大切さをあらためて肝に銘じつつ…。
絞りF11・0.8秒・ISO250・イメージコントロール:スタンダード・赤色フィルター:ON
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銀座の賑わいの中、次々通り過ぎる人々の動きをスローシャッターでふわふわと煙のように消してみました。三脚を使わずとも、この設定で手ブレせずに撮影出来ることに本当に驚きました。手ぶれからの解放で、撮影の可能性が広がりました。
絞りF2.8・1/2500秒・ISO6400・イメージコントロール:スタンダード・赤色フィルター:ON・jpg
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祭りの休憩時間で寛ぐ人たちとブランコの少女というほっこりした様子が、公園の草の柔らかさと共に目に入ってきました。このあとさらに近づいて撮影しましたが、この余白が公園でのひと時を感じさせてくれるので、遠景のカットを選びました。
絞りF2.8・1/125秒・ISO3200 ・イメージコントロール:ソフト・赤色フィルター:ON・jpg
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花の写真は気持ちの投影と思っているので、表現方法は千差万別。ここでは思い切り優しい気持ちを込めて・・・花びらと、ショーケースのステンレスの光も柔らかくソフトに。けれども、立体感、質感もしっかりと捉えられていて、ただのふんわりに収まっていないところがこのモードの素晴らしいところです。
ポートレート撮影
しっかりと被写体と向き合うポートレート撮影もやってみよう、ということで、向かった先は空港。ちょうど、モデルの方の友人が到着する日とのことで、撮影地になりました。たくさんの人がいる中で、どこでどう撮るかを考えるのが楽しみのひとつでもあります。
絞りF6.3・1/250秒・ISO2000・イメージコントロール:ソリッド・赤色フィルター:ON・jpg
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これから到着する飛行機を待つ様子を撮影するために展望台へ。ガラスに映った人々と空を背景にしてみました。「グレイニー」にするか迷いましたが、硬質なガラス面をすっきり見せ、クールなイメージになるように「ソリッド」を選びました。空は白飛びすることもなくしっかり赤色フィルターで捉えられています。
絞りF8.0・1/8秒・ISO1250・イメージコントロール:ソリッド・赤色フィルター:ON・jpg
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出発ロビーにて。モデルの方には止まってもらい、これから旅に出る人々はスローシャッターでブレるようなシャッタースピードを設定。手ぶれ補正に頼りつつ、やや絞りながら、全体が見えるように設定しました。
調色による表現
イメージコントロールで、さらに色を加え、ドラマティックなシーンを作ってみました。
どのくらい色を加えるかの濃淡も段階的に選ぶことが出来るので、自然な仕上がりから、強い色調整まで試してみるのも良いかもしれません。
絞りF2.8・1/1000秒・ISO200・イメージコントロール:ソフト(調色セピア)・赤色フィルター:ON・jpg
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ここでは、母に登場してもらい、母が感じる世界を思いながら、ノスタルジックな海辺のひと時を追いかけました。ウォームトーンの印画紙で銀塩写真を焼き込んだり覆い焼きしたりしていたことを思い出しつつ、空の階調が、いとも簡単に赤色フィルターの効果で出せてしまっていることに唸るばかりです。すごいな、GR Ⅳ Monochrome。
絞りF16・1/80秒・ISO200・イメージコントロール:ソフト(調色セピア)・赤色フィルター:ON・jpg
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光と波が織りなす砂浜の美しさを、思いのままに操り、表現させてくれるGR Ⅳ Monochromeの可能性を大いに感じました。この日感じた気持ちが、ぎゅっと詰まった1枚は、しっかりプリントして母に渡そうと思っています。
絞りF2.8・1/100秒・ISO200・−2.0EV補正・イメージコントロール:ソフト(調色セピア)・赤色フィルター:ON・jpg
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白飛びを抑えながら手の皺とパールの優しさを、マイナス補正によってまとめています。
マクロモードに切り替えて、ぐっと寄れるのも魅力です。
絞りF2.8・1/200秒・ISO200・イメージコントロール:スタンダード・赤色フィルター:ON・jpg
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海からの帰り道。右手で母と手を繋いでいたため、左手で歩きながら撮った1枚ですがしっかりと写っていました。こんな瞬間も捉えられる早い起動と正確なピントは、やはり、GR ⅣMonochromeならではと思いました。逃したくない一瞬を逃さない!を叶えてくれる安心感は絶大です。
まとめ
GR Ⅳ Monochromeには、モノクローム写真に対して思い込んでいた「自分らしさ」というものを、良い意味で壊してもらったように思いました。もっと自由に、色の無い世界の豊かな色彩、あるいは、無音の中に奏でられる音楽のような世界が描ける、という思いでいっぱいになっています。モノクローム表現の可能性を拡張してくれるGR Ⅳ Monochrome。なんとしても欲しい、絶対欲しい!と、恋心を燃やしております。
作例に使用した機材
RICOH GR IV Monochrome
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執筆者紹介

サトウヒトミ
お茶の水女子大学舞踊教育学科卒業後、日本航空国際線客室乗務員として勤務。東京ビジュアルアーツで写真を学ぶ。2018年、ZOOMS JAPANパブリック賞受賞により、パリで作品「Layered NY」展示。ソニーイメージングギャラリー、ライカストアGinza SIX、キャノンギャラリー銀座、大阪、ライカプラハカフェ、などにて、個展開催。写真集に『イグアナと家族とひだまりと』(日本カメラ社)、『over the window』(PURPLE)、『Layered NY』『Lady ,Lady,Lady』、『Crossing Prague』(私家版)など。
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