はじめに
旧型から新型の進化点まとめ
FE 85mm F1.4 GM IIの気になるポイントを総ざらい!
ボケ
逆光と色収差
連写
サジタルコマフレア
動きもの
旧型ユーザーは買い替えが絶対おすすめ
FE 85mm F1.4 GM IIの作例
まとめ
作例に使用したレンズ
作例に使用したカメラ
関 一也(SEKI KAZUYA)
日本写真家協会正会員(JPS)
ウェディング、ポートレート、風景などを中心に写真家として活動中。
写真や動画のセミナーの講師なども行う。
写真が上達するオンラインサロン『写研部』を運営。
著書
『ポートレートRAW現像入門』(玄光社)
『フォトグラファーのためのポートレートポージング入門』(玄光社)
『風景RAW現像入門』(玄光社)
X:@kazuyaseki86
Instagram: @10kazuya10
TikTok:@sekikazuya
YouTube: KAZUYA SEKI(@kazuyaseki18)
FE 85mm F1.4 GMの後継レンズFE 85mm F1.4 GM IIが登場した。
新旧比較すると、旧型は820gに対して新型は642gと約20%(178g)軽量化されている。特に幅が89.5mmから84.7mmとスリムになっているのが大きな特徴で、持った瞬間にその差は歴然と感じる。
AF性能に関しては約3倍の高速化、動体追従性は最大約7倍を実現。実際に鳥や飛行機などを撮影してみてその追従性の高さは実感できた。リングドライブSSMから2基のXDリニアモーターへの変更はかなり大きなものになっている。そして、自分自身旧型は発売当初に購入したがモーター音がどうしても動画撮影時に気になってしまい売ってしまったのが未だに記憶にある。
FE 85mm F1.4 GM | FE 85mm F1.4 GM II | |
レンズ構成 | 8群11枚 | 11群14枚 |
EDガラス | 3枚 | 2枚 |
XAレンズ | 1枚 | 2枚 |
レンズコーティング | ナノARコーティング | ナノARコーティングII |
最短撮影距離 | 0.85m | 0.85m |
最大撮影倍率 | 0.12倍 | 0.11倍 |
モーター | リングドライブSSM | XDリニアモーター2基 |
フォーカスホールドボタン | 1つ | 2つ |
操作性 | 絞りリング | 絞りリング、アイリスロック、防汚コーティング |
フィルター径 | 77mm | 77mm |
個人的に気になるポイントをいくつかの項目にしてご紹介する。
F1.4-F2-F2.8-F4-F5.6-F8-F11-F16によるボケの変化
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
このくらいの被写体との距離感ではF4くらいから奥の瞳にもピントが合う。絞り込んでも嫌な滲みもなく、解像感も安心して使えるレベルだ。
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
個人的にF2〜2.5あたりのボケ感や解像感が立体感もでて、気持ちがいい。
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
これは怒られるかもしれないが、忖度なしで評価したかったので逆光の影響が分かりやすい最悪の条件で撮影した。
F1.4-F2-F2.8-F4-F5.6-F8-F11-F16それぞれの逆光の出方にも注目して欲しい。
フレアやゴーストは絞ることで出方が変わる。これはどのレンズでも言えることなので覚えていて損はないだろう。
アンテナ部分に注目するとF1.4の開放だとパープルフリンジが少し確認できるが1段絞ると解消される。開放でも修正できる範囲なので非常に素晴らしい。安心して開放側を使用できる。
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
暗所でのポートレートではF1.4はシャッタースピードとISOを稼ぐことができるので非常に心強い。
フレアもいい感じに抑えられているので演出のひとつとして取り入れたくなるほど良い。
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
旧型では最高20枚/秒のAF/AE追従連続撮影に対応(フォーカスモード:AF-C時)していたが、FE 85mm F1.4 GM IIはα9IIIの最高120枚/秒のAF/AE追従連続撮影に対応する(フォーカスモード:AF-C時)。これは短時間勝負でより高確率で撮影したい場合にはかなり有効的だ。連写など必要ないという人もいるかもしれないが、プロの現場では時間が許されず、確実にシャッターをものにしなければならい。120枚/秒はスポーツに限らずポートレートの振り向いた瞬間にもかなり役立つので少しでも無駄な時間を削りたい方には超おすすめ。ただしα9IIIが必須になってしまうのが玉に瑕、玉だけに…笑
アーチェリーのシューティングシーンではプリ撮影がとても役に立った。120枚/秒だと5枚は指から離れた瞬間が写っている。いままで非常に難しかった撮影が1回の撮影で成功してしまうのだ。これぞ文明の力といえよう。
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
拡大
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
明るいレンズで気になるのが周辺のサジタルコマフレア。残念ながら星空で撮影しようとしたが天気に恵まれず、、、期待していた方ごめんなさい。
さて、周辺を拡大したものを確認してみるとサジタルコマフレアは確認できる。85mmと中望遠なのでこればかりは絞らないと仕方ない。しかし開放で周辺の画質がここまでくっきりと写っているのに驚いた。電柱もにじみもなく、しっかりと描写されているのでこれで2〜3段絞ったらと思うと…ごくり。その先はご自身で試してもらいたい。
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
XDリニアモーター2基となって動体追従性能も大幅にUPし、動いている鳥や飛行機にもしっかりとAFが追従した。鳥の瞳AFもしっかりと機能してピントはF1.4でも気持ちいいほどに合っていた。飛行機のシーンでは飛行機だけを強調したかったのでF2で撮影。16:30と周囲は少し暗くなり始めていたがISO400、1/2500秒で撮影できたのも明るいレンズと優秀なAFがあってこそ。もっと暗いタイミングでも挑戦したくなった。
85mm F1.4という画角とF値の明るさ的におすすめのユーザーは間違いなくポートレートユーザーだろう。もちろん、スナップメインの方でも伝えたい被写体だけを浮き立たせたい場合には効果的。一方で風景はF値が明るいとどうしても周辺の解像感に納得するのが難しいかもしれない。しかし絞れば単焦点レンズならではの解像感を得ることができるので選択肢に入れるのはありだ。
旧型と比べても解像感が高く、サイズも小型化されているので旧型のFE 85mm F1.4 GMを持っている方は買い替えが絶対おすすめ。やはり軽いというのは身体にも負担がかからずモチベーションをあげてくれるので正義なのだ。
SONY α9III・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF1.4・1/40秒・ISO320
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
F1.4開放、全身ポートレート。車のヘッドライトもナノARコーティングIIの効果もあってほとんど影響がなく柔らかいフレアがとても美しい。85mmはこのようなシーンに一番向いていると思う。
SONY α9III・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF1.4・1/80秒・ISO1250
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
街灯があまり届いてない薄暗いシーン。手持ちでの撮影でしたので被写体ブレも考慮してシャッター速度が1/80秒になるように撮影した。髪の毛一本一本綺麗に描写されており、背景のボケは二線ボケも無く馴染んでいて美しい。
SONY α9III・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF1.4・1/250秒・ISO400
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
夜の路上スナップ、大きい窓の光を利用して全身に光が当たる場所にて。光だけでも被写体は強調されるところを壁を利用して奥行き感を出しつつ85mm F1.4で撮ると少しミニチュアっぽい印象になる。
SONY α9III・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF1.4・1/250秒・ISO250
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
ストリートスナップ。遠く見せたい部分にピントを合わせるだけで前ボケが簡単にできるので遠近感が出る。立体感を出したい場合やシャッタースピードを稼ぎたい時には最適な画角と明るさを持ち合わせている。
SONY α1・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF1.4・1/640秒・ISO400
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
雨のポートレート。防塵防滴なので雨を怖がらず積極的に使いたくなるのもこのレンズの魅力。背景を整えつつ、被写体を強調したい場合には最高の相棒になるだろう。雨の日にこそ持ち出したくなる一本。
SONY α9III・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF1.4・1/16000秒・ISO250
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
F1.4はボケすぎ?いや、そんなことはない。ボケさせることで魅せたい部分を強調できるし、絞ってもボケは美しいままなので広い範囲(F1.4〜16)調整できると言う点においては非常に有難い。
SONY α9III・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF5.6・1/1000秒・ISO250
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
なんでも開放で撮るのは禁物。寄ったら絞れ!ポートレートで絞りのポイントは奥の瞳がボケすぎていないか気をつける。片目だけピントが合っていて、奥の瞳がボケボケだと立体感は失われてしまう。
SONY α1・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF5.6・1/60秒・ISO200
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
森の中でのスナップ。白樺の美しさが解像感と質感で綺麗に表現できる。解像感がないレンズだとその質感が失われてしまい、魅せたい部分の良さが伝わりにくくなってしまう。周囲のボケもうるさくないので気持ちがいい。
SONY α9III・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF8・1/640秒・ISO250
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
風景スナップ。実はツーリングしているバイクが拡大するとわかるのだが、これだけ小さく写っていても解像度が高く、ボヤっとしていないのに驚く。反逆光という条件でもコントラストがあるのはこのレンズの特徴。
SONY α1・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF11・1/100秒・ISO100
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
F11まで絞った風景。手前から奥まで周辺の線がひとつひとつ綺麗に写っている。中でも右奥の電線もしっかり描写されているのが特に感動した。この画角でこの描写の見られるレンズはそんなに存在しないだろう。
SONY α1・FE 85mm F1.4 GM II
絞りF2・1/4000秒・ISO400
画像にマウスを合わせると拡大表示します
画像をスワイプすると拡大表示します
飛行機を狙って撮った。F2ということもあり、さすがに描写は少しあまくなるだろうと思ったのも束の間。拡大して驚いた。こんなに解像するのか!?と。。逆光でも色のりも良く惚れ惚れしてしまう。
※Adobe Lightroom Classic CCにて現像
(テクスチャ0、明瞭度0、かすみの除去0、シャープネス0、レンズ補正OFF)
モデル:朝花和りぃこ(X:@riiko_lapine)、美咲(X:@mi_saki__33)
FE 85mm F1.4 GMの新型が出るという噂を聞いて、旧型を使っていた自分にとって気になっていたモーター音、画質、AFスピード、大きさ。実際に購入して使用してその悩み全てが解決していた。これもSONYの企業努力を感じられてとても好感が持てる。
このレンズは特にポートレートでの活躍する画角でもある。ポートレートを撮る際に意識していることが人物と背景との割合。自分の場合35mmF1.4のレンズで背景と絡めた場合のポートレートを撮影した際は人物5:背景5にすることが多く、50mmだと人物6:背景4。85mmだと人物7:背景3になるので人物を強調したい場合にはとても効果的な画角となる。85mmがいいのではなく、自分の表現の幅が増えるという意味でも85mmは必須なのだ。
他におすすめの使い方としてはイベントなど周りに人が多く、映り込んでしまう場合には85mmは撮りたい人物だけを浮き立たせてくれるので非常にいい。
最後に簡単にまとめると、SONYユーザーでポートレートを撮影する人、旧型とで悩んでいる人は迷わずこのレンズを使用した方が幸せになれるということだけを伝えたい。
» 詳細を見る
» 詳細を見る
» 詳細を見る
Photo & Text by 関 一也(せき・かずや)