はじめに
LUMIX S9と2種類のレンズキットが発売
LUMIX S5IIとS9の違い
驚くほど小さい!軽い!LUMIX S 26mm F8
新機能ハイブリッドズームとクロップズーム
リアルタイムLUTで楽しむクリエイティブな表現
フォトスタイル「LEICAモノクローム」の魅力
LUMIX S9 作例
作例に使用カメラ
作例に使用したレンズ
まとめ
こばやしかをる
東京都北区出身。写真プリントのデジタルデータ制作を現場で習得。のちに商品・製品企画、フォトギャラリー、写真教室アシスタントなどを経て講師に。撮影・プリント指導を行う他、展示・イベント企画、プロデュース、コンテスト審査員まで、写真に関する幅広い活躍の場を持つ。カメラ・写真雑誌、WEBへの寄稿などライターとしても活動中。日本作例写真家協会(JSPA)会員。主宰するPhotoPlus+にて写真塾、ワークショップも開催している。
https://linktr.ee/kobayashi.kaworu
フルサイズミラーレスカメラLUMIX S9が新登場しました。小型軽量のサイズ、デザインと機能の両立、スマートフォンやSNSとの親和性を重要視した、これまでのSシリーズとはコンセプトを画したカメラです。
昨今、写真は撮っているものの、カメラを使ったことがないという人は少なくありません。
スマホでしか撮影する機会のなかった方や、カメラでの撮影未経験の方にも、スマホ写真では得られない高画質、光学レンズのボケ表現、カメラで撮影することの意義を実感し、〝日常が楽しくなるそんな体験を〟と推奨しているのがLUMIX S9です。
その上で、クリエイティブな表現を楽しむためにカメラとスマホを連動させて使うことを提唱しています。
LUMIX S9 はボディ単体および、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6と、LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO、それぞれのレンズキットが発売されます。
LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6 は広角側にシフトした標準ズームレンズ で、静止画・動画共に使い勝手がよく、私も日頃からよく使っている1本です。全ての焦点距離ですっきりとした描写が得られ、安定感があります。最短撮影距離は0.15mで近接性能も優れています。
もう一つのLUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO は、レンズを数本持ち歩かなくても、なんでも撮りこなせて、旅ならこれ1本だけで済んでしまう便利な高倍率ズームレンズ。このレンズの広角端での最短撮影距離は0.14mで、ハーフマクロ性能を備えています。
さらに、ボディ単体で購入しても〝おまけ〟で付いてくるLUMIX S 26mm F8 は、普段から持ち歩いて撮影が楽しめる、F8固定焦点のマニュアルフォーカスのスナップレンズです。レンズ付きフィルムカメラを彷彿させます。
ボディのカラーバリエーションは、シルバーとブラック。購入後は有償のエクステリア張り替えサービスで緑・赤・青の希望の色に張り替えができます。このようなサービスは初の試みです。
普段、S5IIを愛用していますが、正直なところ街中のスナップ撮影では取り回しが大げさになりかねませんし、結構目立ちます。LUMIXにはAPS-C機が無いので、今回登場したS9は、サブカメラや日常使いとして大いに活躍してくれるでしょう。どこにでも連れ出せるコンパクトなボディは、それだけで魅力的ですし、直線的でフラットなデザインは、レンズを外せばバッグの中にもスッキリと収まります。
S9の背面には、これまでのSシリーズになかったLUTボタンが備わっています。LUMIX独自の機能「リアルタイムLUT」を即座に呼び出し、写真や動画の撮影時にカスタムルックを反映して撮影できる機能です。
S5IIは、AFS/AFC/MFの切り替えレバーと、AFエリアの切り替えボタンが一カ所にまとまり、その横にはAFエリア変更のジョイスティックを装備。操作はすべて右手親指の届く場所にあり、ファインダーをのぞいて構えた時に操作がしやすい設計です。
一方で、S9はファインダーそのものが存在しないため、AFエリア選択は背面モニターのタッチAF、AF ONボタンかシャッターを半押しでピントを固定、AFモードは背面ダイヤルの左側を押下して決めます。
軍艦部を見ると、赤色の録画ボタンが後ろに位置していることや、Sシリーズで定評のある3つ並んだFn.ボタン(露出補正・WB・ISO感度)が存在しません。この辺りは使い慣れていたので、少々操作にまごつきました。また、S9はホットシューではなく、アクセサリーシューです。必要に応じてLEDライトを付けたり、動画撮影時にはマイクの定位置になるでしょう。
LUMIX S5IIと同じ2420万画素のイメージセンサー、L2Technology搭載のヴィーナスエンジンプロセッサ、5軸6.5段Dual I.S.2の手ブレ補正を搭載しているので、これだけ見た目も操作系も異なるのに、写りは同等というのは嬉しいです。
機能面では、メカシャッターを搭載せず、電子シャッターのみとしたのが大きく異なる点です。動きの激しい被写体を撮影すると画像が歪むローリングシャッター現象や、蛍光灯下やLED案内板など、一定の周期で点滅を繰り返す光や状況下において現れるフリッカー現象が懸念されます。日常的な撮影シーンでも、夜や室内の光源下で撮影する時にはシャッタースピードを調整するなどの注意が必要です。
LUMIX S9のボディ単体、または、いずれかのレンズキットを購入するともれなくもらえるF8固定焦点のパンケーキレンズLUMIX S 26mm F8。手にすると驚くほど軽い。それもそのはずなんと58g。
常に持ち歩ける超薄型、小型軽量のこのレンズにはキャップはなく、前玉はフラット。ボディキャップレンズとしての位置づけですね。
MFレンズなので、被写界深度目盛が欲しかった。というのが正直なところ。そんなこともあり、このレンズでの撮影時には、ボディ側の「フォーカスピーキング」機能を頼りに撮影しました。なにぶんファインダーがないので、ピントの山はしっかりと掴んでおきたいものです。
F8固定焦点のパンケーキレンズとあって、写りは上々。すっきりとしたシャープな描写はスナップ撮影に最適で、フィルムライクなLUTが心地よくハマります。
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 26mm F8・絞りF8・1/30秒・ISO640・WBオート・+0.3EV・リアルタイムLUT / Filmlike-2
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最短撮影距離0.25mでの撮影。広角の近接撮影は、周囲の雰囲気を取り込めるスナップらしい写りで好ましい
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 26mm F8・絞りF8・1/30秒・ISO320・WBオート・+0.3EV・リアルタイムLUT / Sample LUT-3
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約1m先にピントを合わせ、パシャっと気軽に撮りました。水面の揺らぎが美しく描写されています
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 26mm F8・絞りF8・1/30秒・ISO125・WBオート・+0.3EV・フォトスタイル / LEICAモノクローム
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周辺も流れることなく、減光もなく、いい感じのパースペクティブ。深度が深くても合焦点が近接すれば背景は自ずとボケます
LUMIX S9には、これまでにないハイブリットズームという機能が搭載されています。ズームレンズのズームリングを操作することで、光学ズームを使っているのに、違和感なく可変していくデジタルズームを併用でき、焦点距離によって記録サイズも自動的に変化していく仕様です。
もう一つのクロップズームは、任意で焦点距離(倍率)を固定できます。単焦点レンズを装着の場合も、焦点距離の約3倍までの拡大ズームが可能になります。1本しかレンズを持ち合わせていない場合でも、焦点距離をかせいでくれる、いざという時に頼れる機能です。
画像の中央部を切り出し、画質劣化することなく望遠効果を得られる機能ですが、ズームの拡大率によって記録サイズが変化します。
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離60mm)
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Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離60mm)クロップズーム85mm/記録サイズS
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Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離60mm)クロップズーム145mm/記録サイズXS
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LUMIX独自の機能リアルタイムLUTは、写真や動画の撮影時にカスタムルックを反映して記録するもので、現像ソフトで行うプリセットと同様の機能です。背面のLUTボタンを押すだけで、好みのLUTを呼び出すことができ、撮影時からイメージを作り込んだ撮影が可能になります。
カメラの中にサンプルLUT3種が内蔵されていますが、新アプリ「LUMIX Lab」と連携することで、アプリに登録されている数々のLUTをカメラ側に転送したり、さらにアプリ内で調整、作成した独自のLUTをカメラの中に追加することができます。
LUTを作ることにハードルを感じていた人にとっても、このアプリ一つで自分好みの色を簡単に作ることができます。撮影後にわざわざPCでRAW現像をする作業時間も簡略でき、誰もがクリエイティブな表現を楽しむことを可能にしてくれました。LUTは39種まで保存可能で、さらには、フォトスタイルと組み合わせることで表現の幅が無限に広がります。
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6・21mmで撮影・絞りF5.4・1/20秒・ISO6400・WBオート・リアルタイムLUT / Vlog_709
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Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6・23mmで撮影・絞りF4・1/60秒・ISO100・WBオート・+0.7EV・リアルタイムLUT / Filmlike-2
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リアルタイムLUTが注目されすぎて、影に隠れてしまった印象もありますが、忘れたくないのが、G9PROIIから搭載されたフォトスタイル「LEICAモノクローム」が加わっていること。ライカがその長い歴史の中で積み上げてきた絵作り思想を受け継いだ「LEICAモノクローム」。ハイライトが明るく、より硬調でダイナミックな印象のモノクロ表現であり、深い黒と白のコントラストが特徴的です。
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離48mm)クロップズーム70mm・絞りF5.6・1/320秒・ISO200・WBオート・フォトスタイル / LEICAモノクローム
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日差しの強さに、よりインパクトを与える印象を受けた。その中にも質感の伝わる奥深い階調表現がある
さらに粒状を加えれば、一層フィルムライクな仕上がりとなり、ストリートスナップを撮影する人にとっては嬉しいフォトスタイルになるでしょう。〝ライカの感触〟をLUMIX S9で手に入れる。そんな喜びを抱きました。それだけでも、このカメラの魅力を感じられるはずです。
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO・200mmで撮影・絞りF8・1/250秒・ISO100・WBオート・リアルタイムLUT / Sample LUT-2
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縁日で賑わいの商店街。夏日の様子と、懐かしさを感じられるいい雰囲気に仕上がった
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO・43mmで撮影・絞りF5・1/60秒・ISO100・WBオート・リアルタイムLUT / Sample LUT-2
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フィルムライクに仕上げた1枚。LUTは重ね付けすることもできる
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO・28mmで撮影・絞りF13・1/2秒・ISO100・WBオート・フォトスタイル / Flat
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喫茶店でサッと撮影した。シズル感がいい。LUMIXの絵作りの良さは、いつも目にするもので感じられる
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO(焦点距離200mm)クロップズーム317mm・絞りF7.1・1/125秒・ISO6400・WBオート・-1.7EV・リアルタイムLUT / Filmlike-2
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LUTを加えたことで、映画のワンシーンのような仕上がりになった。圧縮効果を狙いたい時にクロップズームが活躍してくれる
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6・35mmで撮影・絞りF13・1/2秒・ISO100・WBオート・フォトスタイル / LEICAモノクローム
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日中、NDフィルターなし、手持ち撮影でのスローシャッター。5軸6.5段 Dual I.S.2の手ブレ補正を実感した
Panasonic LUMIX S9・LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6・26mmで撮影・絞りF8・1/40秒・ISO320・WBオート・-1.3EV・フォトスタイル / LEICAモノクローム
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質感を映し出す見事な描写。ハイライトが飛ばない絶妙なコントラスト。白の美しさも黒の引き締まりもバランスがいい
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Photo & Text by こばやしかをる