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2024.07.04
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FUJIFILM GF500mm F5.6 R LM OIS WR レビュー × 荻窪 圭|ラージフォーマットの高画質を活かす高解像望遠レンズ

FUJIFILM GF500mm F5.6 R LM OIS WR レビュー × 荻窪 圭|ラージフォーマットの高画質を活かす高解像望遠レンズキービジュアル


ライター荻窪 圭 イメージ
■フォトグラファー紹介

荻窪 圭

荻窪 圭 (おぎくぼ・けい)
老舗のデジタル系フリーライター。1995年発売のカシオQV-10からデジタルカメラの記事を手がけ、各メディアでカメラやスマートフォンのカメラレビューやコラム、猫写真の連載などを執筆するほか、古地図趣味と写真をからめた歴史散歩本も執筆。最新刊『古地図と地形図で発見!江戸・東京の<はじまり>を歩く』(山川出版社)絶賛発売中。

はじめに。手持ちで撮る500mm

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 本体:女性が持った画像

さすがにモデルさんの手にGFX100S IIとGF500mmF5.6 R LM OIS WRは大きかったので抱いて貰いました。サイズ感はこんな感じ。(モデル:長谷川未紗)

正直なところ、X Summit 2024の製品発表でGマウントの500mm、と聞いたときにムチャするなあと思ったのである。新製品の「GF500mmF5.6 R LM OIS WR」だ。

ラージフォーマットセンサー機はただでさえマウントが大きく、大きなレンズ径が必要となり、結果として大きくて重くなり、頑丈な三脚がないと実用に堪えないのではないか、そもそもGFXに500mmなんて向かないのではないかと思ってしまったのである。富士フイルムさんごめんなさい。

その重さを聞いて驚いた。500mm F5.6で(三脚座やフードを含まないとはいえ)1,375g。重くないじゃないですか。同じくGマウントの望遠レンズ「GF250mmF4 R LM OIS WR」は約1,425gなのでそれより軽いのである。

これなら手持ちでも使えそうだ。しかも「X Summit SYDNEY 2024」ではGF500mmを使用したフォトグラファーがみな手持ちで撮影していたのである。

そこで今回は手持ちでの撮影に挑戦した。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 本体

超望遠だと1億画素の描写力が活きる

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 本体:女性が持った画像

レンズフードのFUJINONの文字が光る「GF500mmF5.6 R LM OIS WR」。左手でうまくレンズを支えてやると重量バランスは良く、持ちやすい。(モデル:長谷川未紗)

「GF500mmF5.6 R LM OIS WR」を装着したGFX100S IIを構えてみた感想は「あ、軽いじゃん」である。1,375g+800gを超える重さになるので非力なわたしにとって軽いわけがないのだが、今までの経験からつい「500mmでこのサイズ感だとこのくらいのずっしり感だろう」という先入観で持ち上げてしまうので、軽く感じるのだ。

構えている写真はフードをつけた状態なので持ち歩くときはもうちょっと短くなる。

手持ちで撮るときは三脚座が邪魔だが、富士フイルムの三脚座は足の部分だけ簡単に着脱できるからすごくありがたい。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 本体:三脚座部分

三脚座の足だけを簡単に脱着できる。ネジを緩めてボタンを押してはずすだけだ。三脚に据え付けた状態でレンズごとさっと外したいときにいい。

三脚に据え付けて狙っているとき、あらぬ方向に撮りたいものが現れても、さっと外して持って行ける。三脚座の着脱が柔軟なメーカーとそうじゃないメーカーがあるのだけど、富士フイルムはとても柔軟でよい。

セッティングはフォーカスリミッターとかOISのオン/オフとかAFプリセットなどがあるけれども、今回は鳥を撮ろうと思ってきたので、フォーカスリミッターは5m以上にセットしてある。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 本体:各種スイッチとリング

左側面の各種設定スイッチと絞りリングとフォーカスリング。

カメラ(GFX100S II)側の被写体検出AFは「鳥」にセット。

被写体検出AF設定画面

被写体検出AFを鳥にセット。鳥を見つけるとそこにフォーカス。顔が認識できるときは瞳に合うので便利。

これが実にありがたい。F5.6とはいえ、さすがに500mmともなると被写体深度がすごく浅いので正確なフォーカスは重要だ。

そして、季節柄カルガモの親子でもいると映えるしありがたいかなととある大きな池へ行ったが……カモの1匹いない。

残念、とぶらぶら池沿いに歩いていると、カイツブリの立派な巣を発見。カイツブリは池に浮巣を作るが水深が浅いと底から巣材を積み上げて作るそうで、ここでは後者だろう。

「GF500mmF5.6」は35mm判換算だと397mm、つまり約400mmになる。カイツブリの巣がちょうどその焦点距離に適した距離にあったのだ。

池の端、巣の邪魔にならない場所にしゃがみ、タイミングを計る。

すると、すすーっと連れが戻ってきた。どっちが雄でどっちが雌かはちょっとわたしにはわからないのだが、つがいであるのは確かだ。

そのタイミングで撮影。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 作例:カイツブリの巣

富士フイルムGFX100S II・GF500mmF5.6 R LM OIS WR
絞りF5.6・1/640秒・+1補正・ISO6400・フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド

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色をきれいに出したかったのでフィルムシミュレーションはVelviaで。影で暗かったので感度は上がったが、フォーカスは巣にいるカイツブリの目にピシッときてた。

もうちょっと寄りたいなと思ったので、35mmクロップをオンにしてみる。それでも「9552×6468」ピクセル、つまり6000万画素くらいの解像度があるので十分だ。

35mmクロップをオンにしたら、巣にいたカイツブリがなにやら巣を整えはじめたので撮影。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 作例:カイツブリの巣(35mmクロップ)

富士フイルムGFX100S II・GF500mmF5.6 R LM OIS WR
絞りF5.6・1/500秒・+0.2補正・ISO6400・フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド

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35mmクロップにしてカイツブリ。巣の上で立ち上がって何か整えていた。動いた瞬間を捉えたいときAF-Cで被写体検出AFがきっちり仕事をしてくれるとありがたい。

ちょっとカイツブリが続くけどご容赦を。

カイツブリはちょっと油断するとすぐ水に潜るのでぷかぷか浮いてる姿を見つけたらいいタイミングで撮らなきゃいけない。

500mm F5.6で撮るにはちと遠い距離だったが、水面に反射するきれいな緑の上から暗い影の方へ向かうカイツブリがいたので、影をしっかり出そうと-1の補正で。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 作例:池に浮かぶカイツブリ

富士フイルムGFX100S II・GF500mmF5.6 R LM OIS WR
絞りF5.6・1/1000秒・-1補正・ISO1600・フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド

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緑の中に赤茶のカイツブリというコントラストが見事。水面の波紋もきれいに捉えてくれた。

階調の豊かさのおかげでいい仕上がりになった。

GFX100S IIの強みはディテールまでちゃんと解像している1億画素によるトリミング耐性と、階調の豊かさによるレタッチ耐性の強さにもあると思う。

ただ、トリミングして使うにはレンズの解像力が必要だ。ディテールが甘いとトリミングしたときにそれが目立ってしまう。

GF500mmは全体を軽量化したことでクオリティに影響を与えてないか、という心配はまったく無用だった。非常に解像力が高く、細部までしっかり撮れているのだ。

何かを吐こうとしているカワウを見つけたので、タイミングを逃してはいけないととりあえず細かいセッティングは後回しにしてシャッターを切ったのだが(こういうとき被写体検出AFが便利すぎる)、なんとも遠くてしかも露出アンダーだったのだ。

だがしかし、2400万画素くらいにクロップし、階調を調整してぐぐっと明るくしたたのがこちらだ。見事にペリット(だと思う)を吐き出す瞬間が捉えられていたのである。このトリミング&レタッチ耐性は素晴らしい。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 作例:木に留まったカイツブリ

富士フイルムGFX100S II・GF500mmF5.6 R LM OIS WR
絞りF5.6・1/800秒・ISO320・トリミング・フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード

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2400万画素程度にトリミングしてもこの描写力はいい。しかも赤いペリットを吐き出す瞬間が予想以上のクオリティで出てきたのだ。

鳥ばかりで終わってもバリエーションが少なすぎるので他の被写体もいこう。

まずは昼寝する猫。かなり遠くからそっと背面モニタをチルトさせて撮影。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 作例:昼寝中の猫

富士フイルムGFX100S II・GF500mmF5.6 R LM OIS WR
絞りF5.6・1/500秒・ISO1250・フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド

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暑い日、日陰で寝そべって昼寝していた猫を遠くからそっと。

続いては船。野鳥を撮りに行ったのだがいい鳥に出会えず、船を撮って帰ってきました。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 作例:川を遡上する小型の船

富士フイルムGFX100S II・GF500mmF5.6 R LM OIS WR
絞りF5.6・1/1000秒・ISO1000・フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード

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川を遡上する小型の船。ちょっとアンダー気味だが、描写もよくAFも正確だ。

最後は夕日。空に薄い雲がかかっていたおかげで太陽がいい感じに赤くゆらいでいたので思わず撮影。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 作例:夕日

富士フイルムGFX100S II・GF500mmF5.6 R LM OIS WR
絞りF8・1/400秒・ISO1000・フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

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500mmで東京から撮った夕日。ノスタルジックネガで雰囲気を出して見た。

このなんてことない夕日の写真、なんかノイズっぽいものがみえるなと思って等倍表示したら、なんと無数の鳥が飛んでいたのだった。肉眼ではまったくわかりませんでした。

GF500mmF5.6 R LM OIS WR 作例:夕日に浮かぶ無数の鳥

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夕日写真の太陽部分を拡大すると、無数の鳥が飛んでいるのも写っていたのだった。RAWで撮っていればもうちょっとディテールが残っていたかも。

作例に使用したレンズ

【商品情報】富士フイルム フジノンレンズ GF500mmF5.6 R LM OIS WR

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富士フイルム フジノンレンズ GF500mmF5.6 R LM OIS WRバナー画像

作例に使用カメラ

【商品情報】富士フイルム FUJIFILM GFX 100S II

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富士フイルム FUJIFILM GFX 100S IIバナー画像

まとめ

かくして、「GF500mmF5.6 R LM OIS WR」は約1370gとラージフォーマット用超望遠レンズにしては軽く抑えてきたけど、クオリティは非常に高く、きっちり1億画素を解像していてディテールがここまでしっかり描写されているのだった。

このレンズ、500mmの単焦点ではあるけれども、ラージフォーマットの1億画素でレンズの解像力もよし、となるとかなりクロップしても使えるわけで、多少画素数は落としてもOKというシーンであれば500mm超の超望遠としても活かせる。しかも、その気になれば手持ちでも可能だ。

ラージフォーマットの高画質と超望遠の両方を満たしたいという人にぜひ。

Photo & Text by 荻窪 圭(おぎくぼ・けい)

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