日々に喜びを与えてくれる、普遍的なデザイン
自分らしく表現できる、ピクチャーコントロール
クリエイティブピクチャーコントロール:メランコリック(適用度70%)
ピクチャーコントロール:スタンダード
恋するほどに美しい、繊細なグラデーション
新たに加わった、ふたつのモノクローム
ピクチャーコントロール「モノクローム」
ピクチャーコントロール「フラットモノクローム」
ピクチャーコントロール「ディープトーンモノクローム」
ピクチャーコントロール「スタンダード」
表現の幅が広がる、手ブレ補正と高感度性能
高精細で緻密な色彩、ピクセルシフト
通常撮影(ピクセルシフト撮影オフ)
ピクセルシフト撮影32コマ
動画も自分らしく
何をとっても楽しい、そう思えるカメラ
まとめ
作例に使用したカメラ
Nikon Z f
作例に使用したレンズ
Nikon NIKKOR Z 40mm f/2 ・NIKKOR Z 50mm f/1.2 S・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
横浜を拠点に活動。日常と山を並行して捉えることにより、自身に潜む遺伝的記憶と死生観の可視化を試みる。撮影、執筆、講師、トークイベント、テレビ出演など、多岐に渡り活動。Steidl Book Award Japan ロングリストノミネート。「日々と写真」主宰。京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)通信教育部美術科写真コース卒業。近著に、写真集『山を探す』(リブロアルテ)、『When an apple fell, the god died』(私家版)、『はじめてのデジタル一眼撮り方超入門』(成美堂出版)ほか。
WEB :http://kyokokawano.com/
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私は、日々の暮らしを豊かにしてくれるものが好きです。器や家具、車、そしてカメラなど、時代を超えて愛される普遍的なデザインが大好きで、そうしたものたちは何度見ても「美しい…」と惚れ惚れしてしまいます。今回ご紹介するNikon Z fもそう。
それもそのはず。往年の名機として名高い「FM2」にインスピレーションを得たデザインなのですから。特に、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)を装着した姿はバランスが良く、移動中もずっと身につけて歩きたくなるほど。手にした瞬間、私の手には少し大きいし、握り心地を安定させるサムレストが無いのは少々不満だけど、それでも所有することが嬉しくなるカメラであることは間違いありません。
ダイヤルやボタンが多く、操作する楽しみを味わえるのも嬉しい点です。ダイレクトに素早く設定できるだけでなく、目で設定を確認できる。マグネシウム合金ボディーやダイヤル類が真鍮製であることは私にとってマストではないけれど、細部にこだわりがあるのは嬉しいことです。
私が一番大切にしていることは、自分らしく表現できるカメラであること。特にこだわっているのは色表現です。今回、Nikon Z fで撮影するにあたり、「自分好みの色が出せるだろうか…」というのが一番の気がかりでした。最近のカメラは、色合いや階調、彩度など、仕上がりを調整できる機能を搭載していますが、それでも思い通りのイメージに仕上がらないことがあります。
ですが、そうした不安はすぐに解消しました。
Nikon Z fでは、ピクチャーコントロールやCreative Picture Controlなどのフィルター機能を使うと自分好みの色味を選ぶことができますが、私は「メランコリック」が好みでした。彩度と輪郭がやわらかい、マゼンタ調のレトロな仕上がりになります。
Creative Picture Controlは、効果の適用度を0〜100の範囲で調整できます。選択した「メランコリック」はやわらかすぎる印象だったので、効果の適用度を70%、明瞭度を+2、色の濃さ(彩度)を+2に設定しました。ホワイトバランスはオート(電球色を残す)を基準にA6.0/G0.25に微調整し、暖かみが感じられるようにしています。
Nikon Z f・NIKKOR Z 40mm f/2・40mm
絞りF2・1/800秒・ISOオート100・WBオート2(A6.00,G0.25)・+1.0EV補正
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Nikon Z f・NIKKOR Z 40mm f/2・40mm
絞りF2・1/800秒・ISOオート100・WBオート2(A6.00,G0.25)・+1.0EV補正
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雰囲気が好みに近いフィルターを選び、さらに自分好みに調整していく。「あ、この仕上がり好きだな」と思う色が出てくると嬉しいですよね。
RAW現像すれば自分好みの色は出せますが、撮影しているその場で色を作り込めるほうが現像の必要がないですし、撮影時のテンションも上がるというもの。なので、カメラに一番求めていることは、自分らしい色を表現できることなのです。
友達が作ってくれた栗の渋皮煮。わざわざ青森から送ってくれたことが嬉しくて、その気持ちを写真に残しました。栗に視線を誘導したくてコントラストの強い光を利用しましたが、「メランコリック」の効果、そしてNIKKOR Z 50mm f/1.2 S のボケのやわらかさも手伝い、ハイライト部からシャドー部まで、なめらかなグラデーションを描いてくれました。
Nikon Z f・NIKKOR Z 50mm f/1.2 S・50mm
絞りF1.2・1/1600秒・ISOオート100・WBオート2(A6.00,G0.25)・+0.3EV補正・クリエイティブピクチャーコントロール メランコリック(適用度70%)
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朝日に輝くサンキャッチャーを毎朝見るのが楽しみのひとつ。このような明暗差の大きいシーンをスマートフォンで撮影すると、ハイライト部やシャドウ部が不自然になりがちですが、豊かな階調で捉えてくれたのはフルサイズ/FXフォーマットによる恩恵なのでしょう。ちなみに、NIKKOR Z 40mm f/2 は小さくて軽いレンズなので、片手でも撮れました。
Nikon Z f・NIKKOR Z 40mm f/2・40mm
絞りF2・1/2000秒・ISOオート100・WBオート2(A6.00,G0.25)・+1.7EV補正・クリエイティブピクチャーコントロール メランコリック(適用度70%)
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夕日を浴び、赤から青へと染まる空と雲。空の平坦な部分もなめらかなグラデーションを描いています。
Nikon Z f・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・70mm
絞りF10・1/80秒・ISOオート250・WBオート2(A6.00,G0.25)・-0.3EV補正・クリエイティブピクチャーコントロール メランコリック(適用度70%)
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葉の緑、海の青、ひとつの色のなかにも様々な色がある。繊細な色を捉えてくれると嬉しくなりますね。ちなみに、海の作品はホワイトバランスを晴天(B6.00,G3.50)に設定し、爽やかな印象で撮影しています。
Nikon Z f・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・36mm
絞りF11・1/40秒・ISOオート360・ WBオート2(A6.00,G0.25)・0.0EV補正・クリエイティブピクチャーコントロール メランコリック(適用度70%)
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Nikon Z f・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・70mm
絞りF11・1/80秒・ISOオート110・WB晴天(B6.00,G3.50)・+0.7EV補正・クリエイティブピクチャーコントロール メランコリック(適用度70%)
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久しぶりに地元横浜を歩いてみたくなりました。と言いますのも、Nikon Z fは、ピクチャーコントロール「モノクローム」のほかに、「フラットモノクローム」と「ディープトーンモノクローム」が新たに加わり、横浜の古き良き街並みを撮影したら面白いのではないか…と思ったからです。
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シャープで高コントラストな仕上がり。シャドー部が引き締まり、ハイライト部は落ち着いた印象。
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影から光へのグラデーションが滑らか。コントラストの強い状況でも撮影しやすい。
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シャドー部から中間調は暗め、中間調からハイライト部は明るめ。さらに、青色は暗く、赤色は明るめで、ドラマチックな仕上がり。
共通:Nikon Z f・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・33mm
絞りF2.8・1/200秒・ISOオート100・WBオート2(A6.00,G0.25)・+0.3EV補正
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横浜のクラシカルな街並みはカラーでの撮影も良いですが、モノクロームで撮ると時代を遡った感覚になりますね。表現力豊かなカメラは、何度見た景色も新鮮に見せてくれます。
余談ですが、Nikon Z fは被写体検出AFに対応しているので、人物、犬、猫、鳥、車、バイク、自転車、列車、飛行機の9種類の被写体を検出することが可能です。この作品は建物がメインなのでシングルポイントAFで撮影しましたが、AF性能を試していたとき、バイクや自転車なども素早く反応してくれていたので驚きました。
個人的に、空のある景色には「ディープトーンモノクローム」、人物・やわらかい素材には「フラットモノクローム」を使用するのが好みです。「モノクローム」は建物との相性が良いと感じました。
Nikon Z f・NIKKOR Z 50mm f/1.2 S・50mm
絞りF7.1・1/200秒・ISOオート100・WBオート2(A6.00,0)・-0.7EV補正
ピクチャーコントロール「ディープトーンモノクローム」
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Nikon Z f・NIKKOR Z 50mm f/1.2 S・50mm
絞りF4・1/60秒・ISOオート100・WBオート2(A6.00,0)・-0.7EV補正
ピクチャーコントロール「フラットモノクローム」
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Nikon Z f・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・42mm
絞りF2.8・1/50秒・ISOオート560・WBオート2(A6.00,G0.25)・-0.3EV補正
ピクチャーコントロール「モノクローム」
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Nikon Z f・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・70mm
絞りF2.8・1/80秒・ISOオート140・WBオート2(A6.00,G0.25)・-0.3EV補正
ピクチャーコントロール「モノクローム」
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Nikon Z fは、自分好みの色を探し出す楽しみもありますが、モノクロームで色情報を制限し、光と影を探し出す楽しみがあることを教えてくれているように思います。
専用のレバー(静止画/動画セレクター)を「B&W」ポジションに合わせると、瞬時に静止画B&Wモードに切り替えられます。「モノクロームのほうが良いかも」と思えるシーンに出会った瞬間、設定を変えられるのが良いと感じました。
早朝や夕方の僅かな光と色、闇に滲む質感。Nikon Z fで、光の少ないシーンを撮影していたとき感じたことがあります。それは、シャドー部の階調が思いのほか見えるということです。暗闇に目をこらすと僅かに物が見えてくる感覚に近いというか…。日本には陰翳に美を求める感覚がありますが、僅かな光も美しく捉えてくれると撮影がさらに楽しくなります。
こちらの作品は画質を落としたくなかったのでISO感度を低くし、1/8秒のシャッター速度で撮影しました。ボディ内5軸手ブレ補正機構により最大8段分(※)の補正効果が得られるので、手持ちでもブレずに撮影できました。手持ちで撮影できると構図やフレーミングの自由度があがります。
※ CIPA 規格準拠。NIKKOR Z 24-120mm f/4 S(望遠端、NORMALモード)使用時。
Nikon Z f・NIKKOR Z 40mm f/2・40mm
絞りF8・1/8秒・ISOオート280・WBオート2(A6.00,G0.25)・-1.3EV補正・クリエイティブピクチャーコントロール メランコリック(適用度70%)
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こちらはISO1800で撮影していますが、平坦な中間部のノイズは気になりません。常用最高感度がISO64000なので余裕といったところでしょう。むしろ、このシーンを撮影していたとき、左下のシャドー部の質感が浮き上がって見えたことに驚きました。
Nikon Z f・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・38mm
絞りF2.8・1/40秒・ISOオート1800・WBオート2(A6.00,0)・-1.7EV補正・クリエイティブピクチャーコントロール メランコリック(適用度70%)
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ちなみに、これまで手ブレ補正が苦手とされてきた画面隅の被写体…この作品の場合、街の灯りもシャープに描写してくれています。フォーカスポイント付近のブレを抑える「フォーカスポイントVR(※)」が搭載されたおかげですね。
※ VR 非搭載の NIKKOR Z レンズ使用で、静止画時のみ。フォーカスポイントが複数時は非可動。
さらに高感度のISO10000で撮影しました。多少ざらつきは出てくるものの、色再現性も気にならないレベル。裏面照射型ニコンFXフォーマットCMOSセンサーと画像処理エンジン EXPEED 7との相乗効果によるものなのでしょう。場所や時間、レンズを選ばず撮影できるのはとても嬉しく思います。
Nikon Z f・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・50mm
絞りF5.6・1/50秒・ISOオート10000・WBオート2(A6.00,G0.25)・-0.3EV補正・ピクチャーコントロール スタンダード
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鉱山に務めていた祖父から譲り受けた鉱物たち。子どものころから大事にしている宝物です。新しく搭載された機能「ピクセルシフト撮影」を使うと質感を緻密に残せる、ということで撮影してみました。
4コマ、8コマ、16コマ、32コマと撮像素子をシフトさせながら撮影し、純正ソフト「NX Studio」で1枚の写真に合成する仕組みなのですが、通常の撮影と比べ、布や鉱物の質感、水晶の透明感など、異なるのが分かりますでしょうか。ぜひ拡大してご覧ください。
Nikon Z f・NIKKOR Z 50mm f/1.2 S・50mm
絞りF11・1/13秒・ISO400・WBオート2(A6.00,G0.25)・-1.3EV補正・ピクチャーコントロール スタンダード
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Nikon Z f・NIKKOR Z 50mm f/1.2 S・50mm
絞りF11・1/13秒・ISO400・WBオート2(A6.00,G0.25)・-1.3EV補正・ピクチャーコントロール スタンダード
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「ピクセルシフト撮影」は三脚が必要ですし、NX Studioを使用して合成するのは手間がかかりますが、それでも、質感を忠実に繊細に伝えたいときには欲しい機能だと感じています。
普段、動画は撮影しないのですが、静止画で撮影するのが楽しいカメラだから動画も楽しいに違いない…ということで、チャレンジしてみました。撮影設定は以下のとおりです。
静止画と同じく、撮影時にCreative Picture Controlを反映したかったので、階調モードはSDRに設定しています。階調モードをN-logで撮影することも可能なので、他社製の動画編集用ソフトでカラーグレーディングを行えば、さらに自分らしい色に仕上げることができるでしょう。
良い写真が撮れたとき「動画も残しておこう」と思ったのは自分でも意外でした。電子手ブレ補正(※)のおかげで、ジンバルを使わなくても十分なほど撮影できる手軽さ。カメラだけで色表現を楽しめる手軽さ。これらの手軽さが重なり、動画を撮ろうという気持ちにさせてくれたのだと思います。
※電子手ブレ補正使用時、レンズに表記されている焦点距離の約 1.25 倍に相当する画角になります。
さらに、Nikon Z fでは、動画の撮影モードにS(シャッター優先オート)が使えるようになり、設定の手軽さが増したのも大きな理由です。カメラが絞りとISO感度を調整してくれるので、あとはシャッター速度を決めるだけ。と言っても、動画撮影のシャッター速度は「1/フレームレートの2倍」が目安とされていますから、今回はフレームレートが4K30pですので1/60秒に設定するだけ。これなら、動画初心者の方もチャレンジできますよね。
Nikon Z fの人気の高さは聞き及んでいましたが、実際使用してみてわかりました。クラシカルでファッション性の高いデザインでありながら、機能は十分に満たしている。そして何より、何を撮っても楽しい、表現力豊かなカメラだからだ、と。
写真に撮り慣れてくると、自分の撮る写真に飽きてくるタイミングが出てくるのですが、そうした気持ちを払拭してくれるほど、表現の可能性を拡げてくれるカメラであることは間違いありません。
趣味として写真を楽しみたい方も、本格的に写真を撮りたい方も、そして動画を撮影したい方にも、おすすめしたいカメラだと思いました。
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Photo & Text by 川野恭子(かわの・きょうこ)