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2023.12.11
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Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena 実写レビュー × 熊切大輔|素晴らしい解像感、表現力を楽しめる高性能のS-Line中望遠レンズ

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena 実写レビュー × 熊切大輔|素晴らしい解像感、表現力を楽しめる高性能のS-Line中望遠レンズキービジュアル


ライター熊切大輔(くまきり・だいすけ)イメージ
■フォトグラファー紹介

熊切大輔(くまきり・だいすけ)

東京都新宿生まれ。
東京工芸大学短期大学部入学。写真技術科第5研究室にて芸術写真などの写真表現を学ぶ。
卒業後、株式会社日刊ゲンダイ写真部に入社プロ野球では読売巨人軍担当、社会面や文化面なども担当する。その後?刊ゲンダイ写真部退社し、フリーとなる。
現在は雑誌媒体を中?に?物・?をテーマに企業オフィシャル撮影・広告など様々なジャンルで活動中。高校や大学、写真教室などで講師として指導も?う。
公益社団法人日本写真家協会会長。東京工芸大学同窓会理事。

はじめに

先日、写真の初心者教室で素朴な質問を受けた。「スマートフォンがよく写るなかでカメラで撮る意味は?違いは?」という内容だった。

様々な要素があるが圧倒的に違うのが、レンズの表現力だと答えた。たしかに昨今のスマホはボケ味も演出することができ更に複数レンズ化するなど進化はしている。しかしその表現はあくまでもデジタル的な処理を踏まえてのものであって本当に良いレンズのボケ味や描写力にはまだまだ敵わないだろう。

ある意味そんなレンズ表現の魅力を体現化したと言っても言い過ぎではないのがこのNIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaなのではないだろうか。

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena本体

調べると「Plena(プレナ)」とは「空間が満たされている」という意味を持つラテン語「Plenum」であり、同時に「完全な」といった使い方もあることがわかる。パーフェクトなレンズ。大胆なネーミングだがそれがニコンの自信のあらわれであることが強く伝わってくる。今回はその描写力と魅力について掘り下げてみたいと思う。

まずレンズ鏡胴を見るとS-Lineレンズのロゴが目に入る。NIKKOR Zレンズ群の中で最も高い基準を満たすレンズにつけられた称号である。そのうえで2019年に登場したNIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctと同じ黄色の筆記体で「Plena」の表記が堂々と記されている。Noctと同様に物創りのこだわりを象徴するイエローサインのシリーズと言ったところだろう。

レンズボディは金属部材を使用しておりその剛性の良さを実感しつつ所有感をしっかり満たしてくれる。重量は約995gで中望遠の単焦点レンズとしては平均的な物となっている。Zfcなど軽量なDX機とは重量バランスが良い組み合わせとは言いにくい。Z 8やZ 9のようなフルサイズ機と相性が良さそうだ。

コントロールリングには様々な機能を割り当てることができ、ファンクションボタンと合わせて使い勝手の良い操作感も魅力の一つだ。

ポートレートの王道の表現を実現させてくれるレンズ

そしてその表現力を、作品を見ながら解説していきたい。

まずは135mmという中望遠に向いている被写体といえば、ポートレートを思い浮かべるだろう。昨今、個人的にモデルを依頼してポートレート撮影を楽しむ写真愛好家も増え、その活躍の場は広がっているのではないだろうか。やはり被写体を印象的に引き立てるボケ味と歪みの少ない描写力はポートレートの王道の表現を実現させてくれる。

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:傘をさすモデル

ニコンZ f・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF1.8・AE(1/640秒)・ISO400・WBオート・RAW・モデル:KANA

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先日某所でモデル撮影会を開催した。あいにくの雨模様で周囲は暗く、厳しい環境であった。しかしf/1.8の大口径レンズは肉眼で感じるよりはるかに光を多く集め、低照度下でも幅広い表現を楽しむことができた。

冷たい雨の中、傘をさすモデルの物思いにふけるようなクールな表情を捉えた。そこに雨粒が良い演出をしてくれる。傘に乗る水滴のみずみずしい輝きと同時に降りしきる雨に光が反射し、ほのかな玉ボケを生み出してくれた。

撮影会も終盤に差し掛かった時に思わぬ光景が生まれた。急激に晴れ間が差し込み、大きく色、彩やかな虹が出現したのだ

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:虹とモデル

ニコンZ f・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF2.5・AE(1/8000秒)・ISO400・WBオート・RAW・モデル:HAYAKAWA

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低い位置までくっきりと出た虹のたもとにモデルを配置し、あたかも虹の橋を渡るかのような構図で表現する事ができたのだ。天気雨の雫の一粒一粒まで細かく捉える解像力は圧巻だ。さらにこのカットにこそPlenaの魅力を発見する事ができる。

特にポートレートだと寄り気味で背景のボケ味を強くという印象があると思うが、引き画にこそレンズ特有の表現が生まれるのだ。望遠で遠方を狙うと圧縮効果がかかり背景はボケにくくなる。しかしPlenaは遠方のモデルをきっちり捉えながらも、その背景を柔らかくぼかし立体的な表現につなげることができるのだ。引き画でのボケ味の表現は大口径レンズならではの楽しみと言っても良いかもしれない。

目線の高さを変えることで中望遠レンズでの表現に変化をつけよう

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:港に佇む人物

ニコンZ 8・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF1.8・AE(1/12800秒)・ISO400・WBマニュアル・RAW

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Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:傘をさす人物

ニコンZ f・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF2.8・AE(1/2000秒)・ISO100・WBオート・RAW

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写真表現が単調になる人の多くは目線の高さを変えていないことに起因している場合が多い。特に中望遠を使うとボケ味の表現が一辺倒になりがちだ。

最近の街の構造は立体的に作られた物が多い。俯瞰での撮影などはレンズ表現の単調さを変えてくれるテクニックと言ってもよいだろう。背景が地面になるので抜け感はなくなるが平面的な表現がアクセントになる。距離のある高さから望遠で引き寄せて被写体を狙う。背景に広がる地面には情報が多い。木々の影、ビル群が起こす光の乱反射、平面的だからこそ表現できる物があるのだ。

絞りの違いによるボケ味、解像感を比較

ここでシンプルに絞りでのボケ味の変化を見てみよう。

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:絞りによる解像感比較F1.8

ニコンZ 8・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF1.8・AE(1/1250秒)・ISO1600・WBマニュアル・RAW

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Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:絞りによる解像感比較F11

ニコンZ 8・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF11・AE(1/40秒)・ISO1600・WBマニュアル・RAW

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F1.8とF11の違いを比較する。両カットともに手前から3つ目の灯籠にフォーカスを合わせた。F1.8の開放での撮影は連続する石灯籠の奥行き感をたっぷりと表現できている。ちょうど灯籠一本分はピントの奥行きを確保できており、気持ちの良い合焦感を感じることができる。

F11では程よい圧縮感を感じさせ、絞ってもよし開放もよしとバランスの良い表現力を実感することができた。
当然解像感も含めたレンズ性能の高さを活かした素晴らしい表現力を持っている。

高い逆光耐性は、夜間の撮影でも実力を発揮

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:ビル

ニコンZ 8・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF5.6・AE(1/6400秒)・ISO200・WBマニュアル・RAW

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逆光でのビルの壁面というハードな被写体を捉えてみた。肉眼では光線が強すぎて直視できないほどの反射光を写した。

いやなゴースト・フレアは殆ど見られない素晴らしい描写力は、ニコン独自の逆光耐性の強いコーティング、メソアモルファスコートとアルネオコートを採用することに起因している。メソアモルファスコートはニコンのレンズ史上最高の反射防止性能を発揮する反射防止コーティングでその効果を大いに実感できた。解像感の高さを後押しするヌケの良さはアルネオコートの効果が高いようだ。

夜間の撮影にもその力を発揮する。

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:熊手

ニコンZ 8・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF2・AE(1/1600秒)・ISO800・WBマニュアル・RAW

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低照度ながら複雑な角度からミックス光源に囲まれる夜祭、酉の市の会場は色味の表現も難しく画もにごりがちだ。スッキリとした切れの良い表現はギラギラした屋台の灯りとキラキラした美しい玉ボケをそれぞれ浮かび上がらせてくれた。

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:大入り袋

ニコンZ 8・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF2.2・AE(1/160秒)・ISO400・WBマニュアル・RAW

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レンズ構成の最適化で口径食を減らして円形度の高い玉ボケになっている。画面の端のボケもほぼ丸形を維持し、均一感のある美しい玉ボケが楽しめるのがPlenaの最大の魅力と言って良いだろう。

一瞬のシャッターチャンスも逃さないAF性能

大型レンズで気になるAFの性能を見てみる。よさこい祭りはすっかりポピュラーなものになった。鮮やかな衣装に包まれた踊り手たちの独創的なダンスは躍動感があり非常にフォトジェニックだ。

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:ダンスする人物

ニコンZ 8・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF1.8・AE(1/640秒)・ISO200・WBオート・RAW

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そんな激しい動きを捉えるAFは、複数のSTM(ステッピングモーター)を採用したマルチフォーカス方式で、スムーズで素早く精度の高いAFを実感できた。

街スナップは想像以上に瞬間性が大事になる。群衆の合間をぬって、鮮やかな靴の女性が現れた。光の中に現れる一瞬の色というシャッターチャンスを逃さないスピードと正確性がワンチャンスを逃さず捉えてくれた。

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:人混み

ニコンZ f・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF5・AE(1/1250秒)・ISO200・WBオート・RAW

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まとめ

今回このNIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaを使ってみて、あらためてレンズ表現の豊かさ、奥深さを感じることとなった。

特に引き画、遠景でのボケ味と立体感は今までにないメリハリを感じた。合焦面は程よい奥行き感でボケすぎず、しかしそこから柔らかいボケ味に自然に流れていく画作りは見事という他ない。

こんな魅力的なレンズがあれば、最高の一枚をサンタクロースがプレゼントしてくれるかもしれない。

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena作例:スナップ(丸ボケ)

ニコンZ 8・NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
絞りF1.8・AE(1/1600秒)・ISO200・WBマニュアル・RAW

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作例に使用したカメラ

Nikon(ニコン)Z 8

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Nikon(ニコン)Z f

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作例に使用したレンズ

Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

【商品情報】Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

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Nikon(ニコン) NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaバナー画像

Photo & Text by 熊切大輔(くまきり・だいすけ)

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