旅行やイベントごと、日々の仕事や日常のさまざまなシーンで、人物写真、ポートレートを撮影する機会は増えています。どうしたら素敵なポートレートを撮ることができるのでしょうか。このブログでは、プロカメラマンの鵜川真由子さんによるポートレート撮影についての基本となる考え方やコツを、シチュエーションごとに8回に分けて進めていきます。構図、自然光、ライティング、焦点距離、背景やボケの活かし方、夜のポートレートなどなど、毎回、鵜川さんが撮影した素敵な作例写真と共にお伝えしていきます。ぜひ参考にしてみてください。
1. 焦点距離とは
2. 標準ズームとの比較
A) 50mmの単焦点レンズ
B) 24mm-70mmのズームレンズ
3. 望遠ズームとの使い方の違い
A) 85mmの単焦点レンズ
B) 望遠ズーム(84mm)
4. 作例の比較紹介
35mm
50mm
85mm
5. 特に使いやすくておすすめのレンズ
Canon RF50mm F1.2 L USM
Canon RF85mm F1.2 L USM
まとめ
株式会社松濤スタジオを退社後、アシスタントを経て独立。広告や雑誌などでポートレイト撮影を中心に活動。アパレルメーカーとのコラボ展の企画など写真を通じて幅広く表現活動を行っている。
2012年 個展「The Secret Garden」開催、TOKYO FRONT LINE PHOTO AWARD入賞
2013年 グループ展「nice to meet you」、個展「Out of the Garden」開催
2015年 個展「NY Love Stories」「Ginza Love Stories」開催
2017年 個展「Rhapsody in Blue」開催
2021年 個展「LAUNDROMAT」「WONDERLAUND」開催、写真集『WONDERLAUND』刊行
前回はレンズの焦点距離についてのお話でした。主にズームレンズを使っての撮影でしたが、今回は単焦点レンズだけに絞ってのお話です。ズームレンズと単焦点レンズのどちらにも優れた点があるため、何をどう使えばいいか迷ってしまうかもしれません。それぞれのレンズの特性を知ることで、適切な選択をするためのヒントにしていただければと思います。
単焦点レンズとは、文字通り焦点距離が一つに固定されたレンズのことです。
焦点距離の数値が小さいほど広角に、大きいほど望遠になります。
ズームレンズのように一本で焦点距離を調整することができないため、画角を変えるにはその都度レンズ交換をする必要があります。何本も持ち歩くことになりますし、被写体との距離を縮めたり構図を決めるためには撮影者が自分の足で動かなくてはいけないなど、本気度や技量が試されるレンズでもあります。
一方で単焦点レンズは画質が優れ、明るいレンズが多いという特徴があります。
開放の絞り値(F値)が小さいほど明るいレンズと呼ばれますが、少ない光の量で写真が撮れるため、シャッタースピードを上げることができ手ぶれの心配が減ります。また絞り値が小さいほど被写界深度(ピントが合う範囲)が浅く、ボケが大きくなっていきます。この美しいボケ味での表現が、単焦点レンズの最も愛される理由の一つでしょう。
レンズの特性を知り、上手に利用することで思い通りの表現を目指しましょう。
こちらは2枚とも50mmの標準レンズ・F値を開放で撮影した写真です。
A)が50mmの単焦点レンズ、B)が24mm-70mmのズームレンズを使用して撮影しました。単焦点レンズの方が絞りをより大きく開けられるため、背景のボケ方が大きくなります。
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こちらは A)85mmの単焦点レンズと B)望遠ズーム(焦点距離は正確には84mm)を使用した時の違いです。
やはり絞りの差で、近い焦点距離では表現できるボケ味が大きく違うのがおわかりいただけるかと思います。
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広角レンズは人物そのものというよりも、その人がいる光景を写しとるという風に考えるとわかりやすいかと思います。レンズは広角になるほど被写界深度が深くなるので、人物とそのバックグラウンドを伝えることが可能です。
広い風景や大自然の中でのポートレート撮影に適しています。
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街中での撮影は、遠近感がついて奥行きのある写真になります。
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明るいレンズは光量が少ない時間帯でも美しい描写が可能です。
程よく画角が詰まってくるため、余計なものが写らずバランスの良い構図になります。
街灯も綺麗な玉ボケに。
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ボケ味を出すだけではなく、絞りを調整して背景を程よく見せることで印象的な構図に。
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絞りを開放にした時のボケの美しさ。人物が際立ちます。レンズの解像度がとても高く、キメの細かい描写になります。
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ポートレート撮影において、特に使いやすくておすすめのレンズは50mmの標準レンズです。今回は キヤノンRF50mm F1.2 L USMを使用しました。
その理由はいくつかありますが、まずはやはりバランス良く安定感のあるポートレートになることです。背景と人物の両方を際立たせることができます。焦点距離の回でも説明した通り、撮影者が肉眼で見ているのと同じような画角で撮れることも使いやすいポイント。一歩前に出たり後ろに下がったりすることで構図のバリエーションも作りやすく、様々なシーンを演出することができるため、どれか一本!というときにはまずはこの50mmレンズをおすすめします。
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そして個人的には85mmもよく使います。やはり描写の美しさはもちろん、標準レンズとは逆に肉眼で見ているのとは違う世界を表現できることが魅力。
今回使用したのはキヤノンRF 80mm F1.2 L USM。こちらも絞りの開放値がF1.2と非常に明るく、程よく長い焦点距離の85mmレンズでは絞りを開けた時のボケ味も格別です。
一味違ったポートレート撮影が楽しみたい方にはお勧めしたいレンズです。
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Photo & Text by 鵜川 真由子(うかわ・まゆこ)