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2023.10.09
写真・動画の撮り方・ハウツー,

ポートレート写真撮影におすすめの単焦点レンズ × 鵜川真由子 | プロが解説するポートレート写真撮影のコツ【第六回】

ポートレート写真撮影におすすめの単焦点レンズ × 鵜川真由子 | プロが解説するポートレート写真撮影のコツ【第六回】キービジュアル

旅行やイベントごと、日々の仕事や日常のさまざまなシーンで、人物写真、ポートレートを撮影する機会は増えています。どうしたら素敵なポートレートを撮ることができるのでしょうか。このブログでは、プロカメラマンの鵜川真由子さんによるポートレート撮影についての基本となる考え方やコツを、シチュエーションごとに8回に分けて進めていきます。構図、自然光、ライティング、焦点距離、背景やボケの活かし方、夜のポートレートなどなど、毎回、鵜川さんが撮影した素敵な作例写真と共にお伝えしていきます。ぜひ参考にしてみてください。


ライター鵜川 真由子(うかわ・まゆこ)イメージ
■フォトグラファー紹介

鵜川 真由子(うかわ・まゆこ)

株式会社松濤スタジオを退社後、アシスタントを経て独立。広告や雑誌などでポートレイト撮影を中心に活動。アパレルメーカーとのコラボ展の企画など写真を通じて幅広く表現活動を行っている。
2012年 個展「The Secret Garden」開催、TOKYO FRONT LINE PHOTO AWARD入賞
2013年 グループ展「nice to meet you」、個展「Out of the Garden」開催
2015年 個展「NY Love Stories」「Ginza Love Stories」開催
2017年 個展「Rhapsody in Blue」開催
2021年 個展「LAUNDROMAT」「WONDERLAUND」開催、写真集『WONDERLAUND』刊行

前回はレンズの焦点距離についてのお話でした。主にズームレンズを使っての撮影でしたが、今回は単焦点レンズだけに絞ってのお話です。ズームレンズと単焦点レンズのどちらにも優れた点があるため、何をどう使えばいいか迷ってしまうかもしれません。それぞれのレンズの特性を知ることで、適切な選択をするためのヒントにしていただければと思います。

1. 焦点距離とは

単焦点レンズとは、文字通り焦点距離が一つに固定されたレンズのことです。
焦点距離の数値が小さいほど広角に、大きいほど望遠になります。

ズームレンズのように一本で焦点距離を調整することができないため、画角を変えるにはその都度レンズ交換をする必要があります。何本も持ち歩くことになりますし、被写体との距離を縮めたり構図を決めるためには撮影者が自分の足で動かなくてはいけないなど、本気度や技量が試されるレンズでもあります。

一方で単焦点レンズは画質が優れ、明るいレンズが多いという特徴があります。
開放の絞り値(F値)が小さいほど明るいレンズと呼ばれますが、少ない光の量で写真が撮れるため、シャッタースピードを上げることができ手ぶれの心配が減ります。また絞り値が小さいほど被写界深度(ピントが合う範囲)が浅く、ボケが大きくなっていきます。この美しいボケ味での表現が、単焦点レンズの最も愛される理由の一つでしょう。

レンズの特性を知り、上手に利用することで思い通りの表現を目指しましょう。

2. 標準ズームとの比較

こちらは2枚とも50mmの標準レンズ・F値を開放で撮影した写真です。
A)が50mmの単焦点レンズ、B)が24mm-70mmのズームレンズを使用して撮影しました。単焦点レンズの方が絞りをより大きく開けられるため、背景のボケ方が大きくなります。

A) 50mmの単焦点レンズ

ポートレート作例(50mm単焦点レンズ)ボーダーモデル

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B) 24mm-70mmのズームレンズ

ポートレート作例(24mm-70mmのズームレンズ)ボーダーモデル

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3. 望遠ズームとの使い方の違い

こちらは A)85mmの単焦点レンズと B)望遠ズーム(焦点距離は正確には84mm)を使用した時の違いです。

やはり絞りの差で、近い焦点距離では表現できるボケ味が大きく違うのがおわかりいただけるかと思います。

A) 85mmの単焦点レンズ

ポートレート作例(85mmの単焦点レンズ)ボーダーモデル

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B) 望遠ズーム(84mm)

ポートレート作例(望遠ズーム)緑Tシャツモデル

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4. 作例の比較紹介

35mm

広角レンズは人物そのものというよりも、その人がいる光景を写しとるという風に考えるとわかりやすいかと思います。レンズは広角になるほど被写界深度が深くなるので、人物とそのバックグラウンドを伝えることが可能です。
広い風景や大自然の中でのポートレート撮影に適しています。

ポートレート作例(35mm単焦点レンズ)黒Tシャツモデル

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街中での撮影は、遠近感がついて奥行きのある写真になります。

ポートレート作例(35mm単焦点レンズ)ボーダーTシャツモデル

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50mm

明るいレンズは光量が少ない時間帯でも美しい描写が可能です。
程よく画角が詰まってくるため、余計なものが写らずバランスの良い構図になります。
街灯も綺麗な玉ボケに。

ポートレート作例(50mm単焦点レンズ)白Tシャツモデル川を背景

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ボケ味を出すだけではなく、絞りを調整して背景を程よく見せることで印象的な構図に。

ポートレート作例(50mm単焦点レンズ)白Tシャツモデル川と橋の背景

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ポートレート作例(50mm単焦点レンズ)ボーダーTシャツモデル

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85mm

絞りを開放にした時のボケの美しさ。人物が際立ちます。レンズの解像度がとても高く、キメの細かい描写になります。

ポートレート作例(85mm単焦点レンズ)ボーダーTシャツモデル

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ポートレート作例(85mm単焦点レンズ)白Tシャツモデル

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5. 特に使いやすくておすすめのレンズ

ポートレート撮影において、特に使いやすくておすすめのレンズは50mmの標準レンズです。今回は キヤノンRF50mm F1.2 L USMを使用しました。
その理由はいくつかありますが、まずはやはりバランス良く安定感のあるポートレートになることです。背景と人物の両方を際立たせることができます。焦点距離の回でも説明した通り、撮影者が肉眼で見ているのと同じような画角で撮れることも使いやすいポイント。一歩前に出たり後ろに下がったりすることで構図のバリエーションも作りやすく、様々なシーンを演出することができるため、どれか一本!というときにはまずはこの50mmレンズをおすすめします。

Canon RF50mm F1.2 L USM

Canon RF50mm F1.2 L USM 製品イメージ

【商品情報】Canon RF50mm F1.2 L USM

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Canon RF50mm F1.2 L USMバナー画像

そして個人的には85mmもよく使います。やはり描写の美しさはもちろん、標準レンズとは逆に肉眼で見ているのとは違う世界を表現できることが魅力。

今回使用したのはキヤノンRF 80mm F1.2 L USM。こちらも絞りの開放値がF1.2と非常に明るく、程よく長い焦点距離の85mmレンズでは絞りを開けた時のボケ味も格別です。
一味違ったポートレート撮影が楽しみたい方にはお勧めしたいレンズです。

Canon RF85mm F1.2 L USM

Canon RF85mm F1.2 L USM 製品イメージ

【商品情報】Canon RF85mm F1.2 L USM

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まとめ

・単焦点レンズとは焦点距離が一つに固定された(ズームできない)レンズのことです
・単焦点レンズには画質が優れ明るいレンズが多い特徴があります
・美しいボケ味での表現が単焦点レンズの愛される理由の一つでしょう
・広角レンズはその人がいる光景を写しとるという風に考えるとわかりやすいと思います
・明るいレンズは光量が少ない時間帯でも美しい描写が可能です
・ポートレート撮影において特に使いやすくておすすめのレンズは50mmの標準レンズです
・肉眼で見ているのとは違う世界を表現できることが魅力の85mmもよく使います

Photo & Text by 鵜川 真由子(うかわ・まゆこ)

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