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2023.10.16
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FUJIFILM GF55mmF1.7 R WR レビュー × 曽根原 昇 | 自然で柔らかく美しいボケ味が魅力の標準単焦点レンズ

FUJIFILM GF55mmF1.7 R WR レビュー × 曽根原 昇 | 自然で柔らかく美しいボケ味が魅力の標準単焦点レンズキービジュアル


ライター曽根原 昇(そねはら・のぼる)イメージ
■フォトグラファー紹介

曽根原 昇(そねはら・のぼる)

信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し、雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。写真展に「冬に紡ぎき -On the Baltic Small Island-」(ソニーイメージングギャラリー銀座)、「関東牛刀ここにあり」(富士フォトギャラリー銀座)など、ほか多数。

はじめに

FUJIFILM GFX 100 II+GF55mmF1.7 R WR本体正面

富士フイルムの「GF55mmF1.7 R WR」は、富士フイルムの中判ミラーレスカメラ「GFXシリーズ」用に発売された標準単焦点レンズです。

大きな特徴は、「GF80mmF1.7 R WR」と並んで開放F1.7というGFXシリーズ用交換レンズとしては最も明るい大口径レンズであることと、35mm判換算で44mm相当という自然な画角をもつことにあります。

GF55mmF1.7 R WRの外観デザインと操作性

GF55mmF1.7 R WR本体正面

GFXシリーズ用レンズ(以下GFレンズ)の標準レンズ、もしくはそれに準ずるレンズは、本レンズの他にも「GF50mmF3.5 R LM WR」や「GF63mmF2.8 R WR」があります。本レンズの大きさは最大径×長さが94.7×99.3mmで質量は780gと、それら2本のレンズに比べて随分と大きくて重いといえます。

大きくて重い理由は本レンズが開放F1.7の大口径レンズだからであって、大口径ながらも描写性能を確保するために、10群14枚のレンズ構成のうちに1枚の非球面レンズと2枚のEDレンズを含むという、大変贅沢な設計がとられています。

GF55mmF1.7 R WR本体側面

なかなか重厚感と高級感のあるレンズですが、操作系に関してはいたってシンプルで、フォーカスリングと絞りリングが備えられるのみ。こうしたところは標準レンズらしい無駄のなさというか潔さであるように感じます。

GF55mmF1.7 R WR本体上面Aポジション

その絞りリングには、GFレンズやXFレンズではお馴染みの「リングロック解除ボタン」が装備されています。絞りリングをF22から「A」ポジションや「C」ポジションにする場合、あるいはその逆の場合も、絞りリングロック解除ボタンを押しながら絞りリングを回します。

GF55mmF1.7 R WR本体上面Cポジション

XFレンズユーザーには絞りリング状の「C」ポジションは馴染みがないかも知れません。これはカメラ本体のコマンドダイヤルで、絞り値(F値)を設定するためのもの。操作方法を好みや撮影スタイルに合わせて選べるのは良いですね。

GF55mmF1.7 R WR本体フード付き

花型のレンズフードが付属しています。ロックボタン付きのしっかりした造りで、着脱もしやすいです。

GF55mmF1.7 R WRの作例と所感

GF55mmF1.7 R WR作例(海岸線俯瞰)

GF55mmF1.7 R WR・55mm(35mm判換算44mm)で撮影
絞りF1.7・1/1400秒・ISO80・AWB・フィルムシミュレーション PROVIA/スタンダード

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むしろ絞り込みたい条件の撮影シーンですが、レンズの描写性能を確認したいので、あえて開放で撮ってみました。結果は、周辺部に至るほど解像性能が甘くなるという、レンズとしては当たり前のものでしたが、解像性能の低下率が非常に低く、拡大しなければ良く分からないといった程度のもの。全体的には絞り開放でも非常に優れた解像性能のレンズであることは間違いありません。APS-Cサイズやフルサイズでもなく、大きな中判カメラ用レンズのF1.7でこの性能はかなり驚異的です。

GF55mmF1.7 R WR作例(自転車)

GF55mmF1.7 R WR・55mm(35mm判換算44mm)で撮影
絞りF4.0・1/60秒・ISO400・AWB・フィルムシミュレーション Velvia/ビビッド

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スナップ的に撮影をしてみました。絞り値は少し絞ったところのF4。ここまで絞ると開放ではわずかに見られた周辺の甘さも完璧といって良いほど解消されます。解像感はさらに向上し、これならどんなに大きくプリントしても、ちょっとくらい無茶なトリミングをしても、まったく問題なく耐えてくれるのではないかと夢が膨らんできます。中判ミラーレスカメラの底知れない可能性に驚くばかり。

GF55mmF1.7 R WR作例(扇を持った女性)

GF55mmF1.7 R WR・55mm(35mm判換算44mm)で撮影
絞りF1.7・1/1700秒・ISO400・WB 7000K・フィルムシミュレーション ASTIA/ソフト

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焦点距離55mmは、GFXシリーズカメラの撮像センサーの対角線長と同じ。パースペクティブの誇張がほとんどなくなる画角で、人のまなざしに近い自然さがあるとされています。それは実際に撮影しても実感できることで、この自然さが絶妙な被写体との距離感を作ってくれるため、スナップやポートレートまでの撮影を存分に楽しませてくれました。35mm判換算での焦点距離が44mm相当になるといえば、「ああ!」と納得される人もいるのではないでしょうか。

GF55mmF1.7 R WR作例(ベンチに座った女性)

GF55mmF1.7 R WR・55mm(35mm判換算44mm)で撮影
絞りF5.6・1/120秒・ISO400・AWB・フィルムシミュレーション ASTIA/ソフト

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ポートレート撮影をもう一題。まわりの状況込みで人物全体をいれて撮りましたが、得られた画角はまさに自然です。絞り値をF5.6としましたが、さすが中判だけあってそれでも背景は思いのほか大きくボケます。絞り値による被写界深度の幅が大きいのは中判の魅力のひとつ。自然な画角をもつ本レンズで、最適な表現のできる絞り値を探す楽しみがあるというものでしょう。

GF55mmF1.7 R WR作例(花)

GF55mmF1.7 R WR・55mm(35mm判換算44mm)で撮影
絞りF4.0・1/40秒・ISO400・AWB・フィルムシミュレーション Velvia/ビビッド

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最短撮影距離は0.5mです。あまり近接撮影は得意でないと思われるかもしれませんが、焦点距離55mmの中判用レンズ、かつF1.7の大口径でGFレンズの高い描写性能を保証しながらであることを考えると、実はかなり優れた近接撮影性能だと言えます。テーブルフォトや花の撮影などでも十分なサイズで印象的な写真が撮れることと思います。ちなみに前述の「GF50mmF3.5 R LM WR」の最短撮影距離は0.55m、「GF63mmF2.8 R WR」の最短撮影距離は0.5mとなっています。

GF55mmF1.7 R WR作例(ビル)

GF55mmF1.7 R WR・55mm(35mm判換算44mm)で撮影
絞りF2.8・1/40秒・ISO3200・AWB・フィルムシミュレーション PROVIA/スタンダード

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F1.7の大口径レンズだから暗所撮影でも安心と言いたいところですが、スナップ撮影や風景撮影では何でもかんでも絞り開放とはいかないものです。上の写真は絞り値とISO感度の折り合いを考えて絞りをF2.8、ISO感度を3200として、画面全体のシャープネスと質感を保ちながら表現してみました。ただ、今回使用した「GFX100 II」は高感度性能も手ブレ補正機能も非常に優秀ですので、レンズの性能の高さと合わせ、もっと攻めた撮り方もあったのではないかと反省しました。本当に可能性の高いカメラシステムです。

作例に使用したカメラ

FUJIFILM GFX 100 II

【商品情報】富士フイルム GFX 100 II

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富士フイルム GFX 100 IIバナー画像

作例に使用したレンズ

FUJIFILM GF55mmF1.7 R WR

【商品情報】富士フイルム GF55mm F1.7 R WR

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富士フイルム GF55mm F1.7 R WRバナー画像

まとめ

本文中では書ききれなかったけどとても大切なこととして、本レンズの「ボケ味の良さ」があります。相対的に被写界深度の浅くなる中判カメラにとっては大切なことですが、本レンズのボケ味は、破綻なく自然で、柔らかく美しいという、まさに優等生レンズのそれでした。ちょっと硬めのボケ味が多いXFレンズを常用している筆者としては羨ましくなるほどです。

選択肢の多い標準レンズの一翼を担うレンズだけに、他の標準レンズとの比較が難しくなるところですが、開放F値の大きさ、最新設計ならではの描写性能の高さ、本来の意味で自然な画角の採用という意味では、性能面と使い勝手の良さにおいて目下最高レベルのレンズだと思います。

35mm判換算で50mm相当に拘るのなら「GF63mmF2.8 R WR」ということになりますし、自然な画角の標準レンズを望みつつ携帯性を重要視するなら「GF50mmF3.5 R LM WR」を選ぶのが正解でしょう。そこに来て、中判ならではの高い描写性能と浅い被写界深度を望みながら、さらに自然な画角をも手に入れたいというなら、本レンズ「GF55mmF1.7 R WR」の一択になります。価格についてそれなりの覚悟が必要になることは、言うまでもありません。

Photo & Text by 曽根原 昇(そねはら・のぼる)

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