旅行やイベントごと、日々の仕事や日常のさまざまなシーンで、人物写真、ポートレートを撮影する機会は増えています。どうしたら素敵なポートレートを撮ることができるのでしょうか。
このブログでは、プロカメラマンの鵜川真由子さんによるポートレート撮影についての基本となる考え方やコツを、シチュエーションごとに8回に分けて進めていきます。
構図、自然光、ライティング、焦点距離、背景やボケの活かし方、夜のポートレートなどなど、毎回、鵜川さんが撮影した素敵な作例写真と共にお伝えしていきます。ぜひ参考にしてみてください。
はじめに
焦点距離とは
ポートレート撮影に適した焦点距離
レンズによるイメージの変化【35mm】
レンズによるイメージの変化【50mm】
レンズによるイメージの変化【70mm】
レンズによるイメージの変化【86mm】
レンズによるイメージの変化【100mm】
おすすめのシーンと焦点距離
広角レンズ
35mm 作例
標準レンズ
50mm 作例
65mm 作例
中望遠レンズ
88mm 作例
105mm 作例
まとめ
作例に使用したカメラ
Canon EOS R5/EOS RP
株式会社松濤スタジオを退社後、アシスタントを経て独立。広告や雑誌などでポートレイト撮影を中心に活動。
アパレルメーカーとのコラボ展の企画など写真を通じて幅広く表現活動を行っている。
2012年 個展「The Secret Garden」開催、TOKYO FRONT LINE PHOTO AWARD入賞
2013年 グループ展「nice to meet you」、個展「Out of the Garden」開催
2015年 個展「NY Love Stories」「Ginza Love Stories」開催
2017年 個展「Rhapsody in Blue」開催
2021年 個展「LAUNDROMAT」「WONDERLAUND」開催、写真集『WONDERLAUND』刊行
ストロボライティング、屋内・屋外でのポートレートに続き、今回は焦点距離についてのお話です。
ポートレートの撮影で重要なのが、焦点距離です。焦点距離は、レンズの中心点からイメージセンサー(フイルム面)までの距離のことで、それによって撮れる写真の範囲(画角)が変わります。
焦点距離の違いによって見え方がどのように変わるのか、被写体をより魅力的に見せるにはどんな画角や背景を選べばいいのか、作例をもとに、ご紹介していきたいと思います。
被写体にピントを合わせた際のレンズの中心である「主点」から撮像素子(イメージセンサー)までの距離のこと。
一般的にはmm(ミリメートル)単位で数字を使って表されます。単焦点レンズの場合は24mm、50mmなどそのレンズの焦点距離を。ズームレンズの場合は24mm-105mmなど焦点距離の両端の数字が使われます。
35mmフルサイズの一眼レフカメラでは50mm前後を標準レンズと呼びます。28mm、35mmなど標準レンズより焦点距離の数字が小さいものを広角レンズ、100mm、200mmなど大きいものを望遠レンズと呼びます。
広角レンズは画角が広く、望遠レンズは画角が広くなるなど視覚的に大きな違いが現れるため、シチュエーションごとにどの焦点距離のレンズを使うかを選択する必要があります。
背景をぼかして人物をメインにしたい時、人物をメインにしながら背景も活かす場合、バストアップなど、それぞれにとって最適なレンズは何なのか、作例を見ていただきながらご紹介したいと思います。
レンズの特性を知り、上手に利用することで思い通りの表現を目指しましょう。
焦点距離の違いによって見え方がどのように変わるのか、作例を見ていただきましょう。
今回はズームレンズを使いました。単焦点レンズよりも細かく調整ができて初心者の方でも使いやすいため、少しずつ画角や焦点距離を変えながらいろんな表現を試してほしいと思います。
※被写体と撮影者の立ち位置、絞り値 F4 はすべての写真で同じです。
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人物と背景の広い範囲が写っています。被写界深度(ピントが合う範囲)が深いため後ろの建物のボケ感が少ない分、背景の状況もよくわかります。被手前のものが大きく、奥のものが小さく写るため、遠近感のある写真になります。
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余白が少なくなり、被写体と背景のバランスがいい画角になりました。
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人物に迫り、背景が少し詰まってきました。ボケ感がやや強くなってきました。
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人物にグッと寄り、背景から浮き上がるような印象的なポートレートになります。
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被写界深度が浅く写りこむ範囲が狭いため、撮りたい対象が際立っています。
ボケ感がより強く出ていて人物のインパクトが強くなりました。
広角レンズではパースがつくため、人間の目で見るよりも画面に広がりが出たり奥行きを感じられます。どんな場所・状況で撮っているかがわかるため写真の中にストーリーが生まれます。手前のものが大きく写るので遠近感を使った視覚的な効果も狙えます。
人物だけを撮るのではなく、その場の空気感も一緒に写し込むという方がわかりやすいかもしれません。
焦点距離が短いレンズほど画面が歪んでしまう点には注意が必要ですが、それも表現の一つとして利用すればインパクトの強い写真になります。
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標準レンズは肉眼で見ている画角とほぼ同じように写るため、目の前の場面をありのまま描写できます。広角レンズのように広がりはない分、背景と人物のバランスがよく両方が程よく引き立ちます。
絞りを開放にすれば程よいボケ感も出たり、寄りも引きも撮れるなど様々な場面で活躍してくれるオールマイティなレンズです。
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人物に寄って背景をぼかしたり、バストアップの撮影の時には中望遠レンズがおすすめです。画面の歪みが少なく、ボケの効果も大きくなります。
焦点距離が長くなるほど被写界深度が浅くなり、絞りを開ければ開けるほどボケ感が強くなります。人物の後ろにある色や光を利用して美しい背景を演出して印象的なポートレートに仕上げましょう。
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レンズの焦点距離を変えるだけで様々なシーンが作り出せることがおわかり頂けたと思います。
目で見ているものと違って写ってしまう時や思い通りの表現ができないという場合に、焦点距離について見直してみるといいかもしれません。
慣れてくると感覚的に選択できるようになるので、それまでは少し考えながら色んな方法を試して繰り返し撮ってみてください。
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Photo & Text by 鵜川 真由子(うかわ・まゆこ)