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2023.08.24
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Nikon NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レビュー × 落合憲弘 | 開放F値F2.8通しの望遠ズームレンズ

Nikon NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レビュー × 落合憲弘 | 開放F値F2.8通しの望遠ズームレンズキービジュアル


ライター落合憲弘イメージ
■フォトグラファー紹介

落合憲弘

落合憲弘(おちあい・のりひろ)
1963年、東京生まれ。1988年よりフリー。学生の頃より歌って踊れる(撮って書く)スタイルを標榜し「写真に一途ではない」姿勢を悪びれることなく貫いた結果、幸か不幸か見事、器用貧乏に成り下がり今日に至る。人目を忍ぶ趣味、多数。2023年カメラグランプリ外部選考委員

開放F値「F2.8」通しの望遠ズームレンズとしては、明確に小さく軽い作り! 

「暑っ、暑っ、軽っ! 暑っ、小っ! 暑っっ!」

これが、このレンズを初めて使ったときの率直な第一印象だ。レンズではなく気候に起因する魂の叫びが大部分である点は、現代日本の亜熱帯化(というほかはなさそうな状況)に免じて許していただきたく思っているのだが、いや、でも、マジで、シャッターをきるのも大変なほどの酷暑って一体ナンなの!? こりゃー来年あたりは、摂氏40度超えがアタリマエ〜みたいな話になりそうな・・・。

そんな淀む空気の中、汗をフキフキ使ってみたニコン「NIKKOR Z 70-180mm f/2.8」。実際に手にしてみると、開放F値「F2.8」通しの望遠ズームレンズとしては、明確に小さく軽い作りになっていることがわかる。このレンズ、まずはそこが最大の魅力であると認識して差し支えないだろう。

大きさや重さを評価するときは、「何を比較対象(基準)にしているのか」が重要なポイントだ。ワタシの場合は、自ら所有していたことのあるニコンFマウントの70-200mmが、まずは「身に染みついている基準」となった。いちばん近いところでは「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II」と「AF-S NIKKOR 70-200mm F/4G ED VR」(いずれも現在は旧製品扱い)がこれに該当するのだが、歴代のFマウント70(80)-200mmF2.8を使ってきていたワタシも、使用するボディがD750になる頃から、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR IIよりAF-S NIKKOR 70-200mm F/4G ED VRを重宝するようになっていた。いうまでもなく、寄る年波とともに機材の軽量化を求めるようになった結果である。

今回の撮影機材

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8
Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8

今回「NIKKOR Z 70-180mm f/2.8」を使ったとき、まず初めに「開放F2.8通しなのに70-200mmf/4クラスのサイズ感と重さだな」と感じたのは、そんな経験が裏付けとなっての印象というわけだ。NIKKOR Z 70-180mm f/2.8は、AF-S NIKKOR 70-200mm F/4G ED VRと、まぁまぁ似通った大きさ&重さなのである。

フィルター径は、両者ともに67mm。ニッコールの70-200mmf/2.8軍団が概ね77mmであることを考えると、「この明るさ(f2.8)にしてフィルター径67mm!」は、同種f/4レンズと同等のサイズであることを前提に、大きな利点のひとつとしてカウントしてもバチは当たらないだろう。例えばPLフィルターなど、値の張るアクセサリーを必要とする撮影スタイルであるならば結果、日常発揮しうる経済効果も高くなるというものだ。

そして、写りの方にも心配はない。個人的には、そのためのテレ端180mm、すなわち「明るさ(開放F2.8)」と「サイズ」と「重さ」と「描写性能」のバランスを徹底して追い込んだ結果「テレ端は200mmではなく180mmに抑えるのがベスト」との判断が下されたものと考えている。その割り切りの効果は絶大だ。少なくとも、旧世代のAF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR IIより、開放時の描写ははるかに安定しているように感じられる。

また、最短撮影距離の短縮という要素も、その「バランス」の中に含まれていたものと想像する。本レンズは、70mm時に0.27m、180mm時に0.85mまで、ナニゲにグンと"寄る"ことができるのだ(最大撮影倍率は70mm時に0.48倍)。

この地味にスゴい実力は、現行Zマウントの望遠ズームのカナメとなっている「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」(70mm時0.5m、200mm時1.0m、最大撮影倍率0.2倍)を上回るものであり、FマウントのAF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II(ズーム全域1.4m、最大撮影倍率0.11倍)や「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR」(ズーム全域1.1m、最大撮影倍率0.21倍)、AF-S NIKKOR 70-200mm F/4G ED VR(ズーム全域1m。最大撮影倍率0.27倍)を凌駕する良好な使い勝手をいざなうことになっている。つまり、既存の70-200mmたちよりも「撮れるモノが格段に増えている」のだ。

「テレ端マイナス20mm」という数字に得体の知れぬ物足りなさを覚える向きも存在するのではないかとも思う。しかし、コトの本質はソコではなく「0.27~0.85mのショートな最短撮影距離」と「約795gのライトな質量」の実現に見いだすべきだ。そうすることで生み出され得る数多の恩恵に気づいてこそ、本レンズの存在意義は浮き立つことになる… そんな風に感じた次第である。

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:松ぼっくり

Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・180mmで撮影・プログラムAE
絞りF2.8・1/200秒・ISOオート(ISO180)・WBオート・JPEG

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合焦部分に若干のコントラスト低下と、ごくわずかなユルさを感じさせるが、絞り開放&ほぼ最短距離での撮影を考えれば満点の仕上がり。一昔前の同種ズームレンズでは、周辺部に近いピント位置でこのレベルの仕上がりを得るのは困難だった。っていうか、そもそも一眼レフの別体位相差AFでは、この状況下でこの位置に正確にピントを合わせること自体が難しかったようにも思う。

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:セミ

Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・180mmで撮影・プログラムAE
絞りF2.8・1/200秒・+0.7EV補正・ISOオート(ISO360)・WBオート・JPEG

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中途半端なボケの場合、意識して大きなボケを作っているときにはまったく気にならない、ほんのちょっとの煩雑さが前面に出てくることがあるのだが、そんなときはその描写を絵柄に活かしてしまえばいい。撮り手の工夫によって、さまざまな描写を見せてくれるレンズである。

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:錆びた柵

Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・115mmで撮影
絞りF4・AE(1/125秒)・-1.3EV補正・ISOオート(ISO125)・WBオート・JPEG

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一段絞ってf4で撮影したときの丸ボケはこんな感じ。近接撮影なので、必然的に背景は大きくボケている=後ボケには有利な状況ではあるが、撮影焦点距離は115mmでテレ端に非ず。あらゆる面で"余裕"を感じさせるところこそ、最新設計の強さの表れなのかも?

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:古びた牛乳瓶

Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・115mmで撮影
絞りF2.8・AE(1/125秒)・-1.3EV補正・ISOオート(ISO720)・WBオート・JPEG

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旧来の70-200mm f/2.8たちよりハッキリ小さく軽いので、持ち運び時の負荷が明らかに低減されるのがウレシイNIKKOR Z 70-180mm f/2.8。我が写真人生における一眼レフ末期において、ニッパチではなくAF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VRの方を最後まで手元に残していた思考&嗜好からすると、ほぼ同じサイズ感のNIKKOR Z 70-180mm f/2.8は間違いなく"買い"の一本になり得るように感じた。

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:足

Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・70mmで撮影
絞りF5.6・AE(1/80秒)・ISOオート(ISO320)・WBオート・JPEG

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この「開放f/2.8」とは思えない取り回しの良さは、撮影時のハンドリングには好影響しか与えない。とりわけ、手持ちで背面液晶モニターを見ながら行うライブビュー撮影との良好なコンビネーションは、旧来の「f/2.8の70-200mm」の比ではないといっていいだろう。望遠レンズでそのような撮り方をすることの是非はともかく、ミラーレスの時代にドンピシャなコンセプトがしっかり活きていることは確かだ。

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:トンボ

Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・TC-2.0×使用(360mmで撮影)
絞りF6.3・AE(1/400秒)・−1.0EV補正・ISOオート(ISO320)・WBオート・JPEG

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テレコンバーターとの併用も積極的にアピールされているNIKKOR Z 70-180mm f/2.8。個人的には、Z TELECONVERTER TC-1.4×によるテレ端252mm化や、Z TELECONVERTERTC-2.0×によるテレ端360mm化より、そもそも重視されている近接撮影能力のさらなる向上が得られる点(最短撮影距離はそのままに焦点距離が伸びるので被写体がより大きく撮れる)に旨味を感じるテレコンとのコンビネーションだった。ちなみに、レンズ単体の最大撮影倍率0.48倍はワイド端での値。TC-2.0×を使用した場合は、140mm時に0.96倍の最大撮影倍率が得られるということになる。

テレコンバーター比較

Z TELECONVERTER TC-1.4xとZ TELECONVERTER TC-2.0x
Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:マスターレンズのみ

(テレコンなし)
Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・プログラムAE
絞りF2.8・1/3200秒・ISOオート(ISO100)・WBオート・JPEG

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Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:TC-1.4×使用

(Z TELECONVERTER TC-1.4x)
Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・TC-1.4×使用(250mmで撮影)・プログラムAE
絞りF4.0・1/1250秒・ISOオート(ISO100)・WBオート・JPEG

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Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:TC-2.0×使用

(Z TELECONVERTER TC-2.0x)
Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・TC-2.0×使用(360mmで撮影)・プログラムAE
絞りF5.6・1/1800秒)・ISOオート(ISO100)・WBオート・JPEG

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Z 7IIの45MPだと、2倍テレコン使用時、ごくわずかに描写が甘くなるような印象を抱くことがあった・・・というか、それが見えてしまうのは高解像度機の功罪でもあるワケなのだけど、「画像検証」ではなく「写真鑑賞」であれば、まったく問題にならない事象であるのも事実。見えすぎちゃって困るのは、マスプロアンテナだけじゃなかったってことですネ(話のネタが古っ!)。

滑らかなズームリングで瞬時に画角調整できる

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:雲

Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・160mmで撮影
絞りF11・AE(1/5000秒)・ISOオート(ISO100)・WBオート・JPEG

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上質な手応えを有するズームリングで細かな画角調整ができることのありがたさは何物にも代えがたいと実感したシチュエーション。空を見上げてササッと画角を決め撮った1枚にも、太陽黒点がバッチリ写ってくれた。

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:歩行者

Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・130mmで撮影
絞りF2.8・AE(1/250秒)・ISOオート(ISO100)・WBオート・JPEG

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開放時の周辺光量落ちは、まぁそれなりといったところ。必要に応じて、あるいはシチュエーションに合わせてカメラまかせ(デフォルトではヴィネットコントロールON)にすりゃ問題はないだろう。とかナンとか言いつつ、ワタシは例によって終始「周辺光量補正オフ」で撮っていた。それが好きなのだからしょうがない。

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:ハト

Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・180mmで撮影
絞りF2.8・AE(1/400秒)・ISOオート(ISO100)・WBオート・JPEG

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F2.8のピントはとても「薄い」。ましてや望遠レンズともなればなおさらだ。このときは、Z 7IIでは本来、鳥に対しては機能しないはずの瞳認識がときどき発動するも、結局は通常のオートエリアAFでカタをつけることに。測距点選択がけっこう暴れた。

Nikon(ニコン)Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:ビル

Nikon Z 7Ⅱ・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・180mmで撮影
絞りF3.2・AE(1/1000秒)・ISOオート(ISO100)・WBオート・JPEG

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ズームリングは適切に回転角が小さく抑えられており、またそのシルキーな手応えも上位のレンズに劣らない仕上がり。それでいて、実勢価格はNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sのおおよそ半分なのだから、その存在意義と魅力は誰の目にも明らかだろう。つまり、NIKKOR Z 70-180mm f/2.8とNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sには、各々互いを侵さぬ魅力を有するということ。見事なラインアップである。

Nikon(ニコン)Z 50でも使ってみた

Nikon(ニコン)Z 50・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8
Nikon Z 50・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8
Nikon(ニコン)Z 50・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 作例:バス

Nikon Z 50・NIKKOR Z 70-180mm f/2.8・TC-2.0×使用(180mm /35mm判換算270mm相当で撮影)
プログラムAE(絞りF2.8・1/1000秒)・ISOオート(ISO100)・WBオート・JPEG

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傍目には「レンズがデカすぎ」にも見える装着バランスも、実際に構えてみると「レンズだけを持っている」感覚でZ50ボディまでホールドできることから、意外なほどイイ感じで使うことができた。ただし、手ブレ補正レスになってしまう(レンズにVRの装備がなく、Z50にもボディ内VRがない)ところが、現代の感覚においては最大のウイークポイント。というワケで、Z50にはゼイタクにNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sを組み合わせるのが、シアワセへの近道だろう。そう思う。うむ、間違いない。

まとめ

・開放F値「F2.8」通しの望遠ズームレンズとしては、明確に小さく軽い
・開放F2.8通しなのに70-200mmf/4クラスのサイズ感と重さ
・最短撮影距離は、70mm時に0.27m、180mm時に0.85mまで、ナニゲにグンと"寄る"ことができる
・テレコンバーター併用時には近接撮影能力のさらなる向上が得られる
・上質な手応えを有するズームリングで細かな画角調整ができる

作例に使用したレンズ

Nikon NIKKOR Z 70-180mm f/2.8

【商品情報】Nikon NIKKOR Z 70-180mm f/2.8

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Nikon NIKKOR Z 70-180mm f/2.8バナー画像

作例に使用したカメラ

Z 7II/Z 50

作例に使用したテレコンバーター

Z TELECONVERTER TC-1.4x/Z TELECONVERTER TC-2.0x

Photo & Text by 落合憲弘

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