特徴/操作性
画質劣化の非常に少ない高性能テレコンバーター
高速なオートフォーカスはほとんど損なわれない
テレコンバーターである事のメリット
実写レビュー
マスターレンズの性能を殆ど損なわない優れた光学設計
オートフォーカスのスピードにも劣化は殆どみられない
撮影倍率も1.4×になる
被写体認識との相性も良い
テレコンの有無による解像感の比較
NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S
オートフォーカススピード
撮影倍率も1.4×になる
メリット・デメリットとおすすめユーザー
コンパクトな機材で画質の劣化を最小限に2種類のレンズが楽しめる
着脱の手間がかかる点はテレコンバーターのデメリット
望遠撮影をする全てのZマウントユーザーにおすすめ
作例に使用したカメラ
作例に使用したレンズ
まとめ
Nikon Z TELECONVERTER TC-1.4×は、装着しても画質が殆ど劣化しない非常に高い光学性能を持ったテレコンバーターです。
デジタルカメラはレンズ性能に非常に敏感で、特に4000万画素を超えるような高画素機になるとわずかな画質の劣化も写りに影響を及ぼします。
しかし、Nikon Z TELECONVERTER TC-1.4×は非常に高い光学性能を持っており、マスターレンズの性能を殆ど損なう事なく使える高性能なテレコンバーターです。
実際に使用してみて、オートフォーカス性能においても装着する事でスピードが遅くなる事が殆ど無い事にも驚かされました。
今回のテストで使ったNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sとの組み合わせでは絞りが1段暗くなり望遠端ではF8となりますが、それによる影響を殆ど感じさせないのです。
描写性能だけでなくレスポンスや操作性という意味でもマスターレンズの性能を損なう事なく、高速で快適な撮影が楽しめました。
最近は600mmまでの望遠ズームが一般的になり、なにもテレコンバーターを使わなくても最初から性能の良い超望遠ズームを使えば良いのでは?という意見もあると思います。しかし、敢えてテレコンバーターを選択する事のメリットもあるのです。
600mmまでの超望遠ズームの多くが2kg前後の重量となりますが、例えばNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR SとZ TELECONVERTER TC-1.4×の重量は合計で1.7kg以下とだいぶ軽量です。又、400mmまでで使う時はテレコンを外してより軽量かつ明るいズームレンズとしても使えます。
性能を損なわないテレコンバーターは、1本のレンズを2本のレンズとして使える魔法のようなレンズなのです。
Z TELECONVERTER TC-1.4×が装着できるレンズはズーム・単焦点ともに数本用意されていますが、今回はそんな中でも特に人気の高い超望遠ズームレンズNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR SにZ TELECONVERTER TC-1.4×を装着して140~560mmの望遠ズームとして実写テストを行いました。
作例1:F10 1/800 ISO800 露出補正±0 焦点距離:560mm
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装着しても画質の劣化はほとんど無く、テレコンバーターの存在を忘れてしまうほどです。
テレコンバーターは、焦点距離が足りない時に補助的に装着するというイメージでしたが、このくらい高性能になるとむしろ積極的に活用したくなります。
今回テスト撮影を行った動物園では、撮る動物によってハマる焦点距離が大きく違うので、場所によってテレコンをつけ外ししながら撮るのが効率的だと感じました。
作例2:F8 1/800 ISO400 露出補正-0.3 焦点距離:560mm
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月は写真に撮ると意外と小さくて、焦点距離を100で割ったくらいの大きさでセンサーに記録されます。例えば560mmのレンズで撮ると、センサー上には5~6mmくらいの大きさで記録されるという事です。
テスト機はフルサイズのZ 8、テストレンズはZ TELECONVERTER TC-1.4×を装着したNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sでしたが、あまり迫力のある大きさには撮れませんでした。
しかし拡大して見るとかけぎわには凸凹のクレーターがはっきりと見えるので、高性能故にトリミングの自由度も高そうです。
作例3:F9 1/640 ISO2800 露出補正±0 焦点距離:560mm
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Z TELECONVERTER TC-1.4×を装着していても、オートフォーカスのもたつきを体感することはありませんでした。
NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR SのAFがもともと速いという事もあると思いますが、テレコン無しでももっと遅いレンズは沢山あるので、テレコンを装着してこの快適さは驚きです。
望遠レンズで動く被写体を撮影する際に使われる事が多いテレコンバーターだけに、これは嬉しいポイントです。
作例4:F9 1/800 ISO800 露出補正±0 焦点距離:560mm
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私はできるだけ動物を正面から捉えたいと思うタイプなのですが、そうすると動物までの距離が遠くなって普通の望遠レンズではもう少し寄りたいと思う事が多々あります。
多摩動物園のレッサーパンダは正面からだと動物を横から撮る事になってしまう事が多く、かといって横から撮ると動物までの距離が長くなってしまうジレンマに陥ります。
そんな時、テレコンを装着して400mm→560mmにできると、不満に感じていたもうひと寄りが出来て大変便利でした。装着する事でマイナスとなる要因が殆どないテレコンバーターはポジティブに使えて良いです。
作例5:F11 1/125 ISO3200 露出補正+0.3 焦点距離:560mm
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テレコンバーターを装着すると、最短撮影距離は殆ど変わらずに画角が狭くなるので実質撮影倍率があがる事になります。
ワーキングディスタンスが大きくとれる望遠マクロは、昆虫などの小さくて動く被写体に最適です。
560mmでマクロ撮影!?と最初は思うのですが、ズームレンズならワイド側で被写体をフレーミングしてズームで拡大できますし、強力な手ぶれ補正がフレーミングを助けてくれるので、思った以上に使いやすいのです。
作例6:F9 1/640 ISO1250 露出補正+1.3 焦点距離:560mm
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今回装着したNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sとの組み合わせではボケ味も悪くないものでした。
Nikonの、特にSラインのレンズにはボケ味が良いものが多いですが、それを損なう事無く再現できていると思います。
開放F値が暗くなるのは手ぶれしやすい近接でマイナスとなりそうですが、マクロ撮影の場合は被写界深度を稼ぐ為にどちらにしてもある程度絞らなければならないので、欠点とは言えないでしょう。
作例7:F9 1/2500 ISO800 露出補正-0.7 焦点距離:560mm
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オートフォーカス性能を殆ど損なわないZ TELECONVERTER TC-1.4×は、被写体認識との相性も非常に良いと感じました。
被写体認識AFの登場により望遠レンズでの撮影が格段にやりやすくなったと思いますが、テレコンバーターを使ってもその性能が損なわれないのは大きなメリットです。
作例のような前ボケを使った表現などは、被写体認識AFを使う事で非常にスピーディーに行う事ができるようになりました。
作例8:F9 1/640 ISO2500 露出補正±0 焦点距離:560mm
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被写体認識オートフォーカスを頻繁に使うようになって感じる事に、カメラとレンズ両方が高性能でないと機能を活かし切れないという事があります。
オートフォーカスの優劣は基本的にカメラで決まる事が多いですが、動く被写体に対した場合、カメラの高速さに俊敏に応えるレンズの存在が不可欠なのです。
Z TELECONVERTER TC-1.4×は、マスターレンズのフォーカススピードを殆ど損なわないので、そういった意味でも安心です。
人気の2本の望遠ズームレンズ「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sと」で「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」の、テレコン装着時とレンズ単体での画質を比較してみます。
いずれもSラインのレンズでレンズ単体では非常に高性能ですが、テレコンバーターを装着しても殆ど画質の劣化はみられませんでした。
一眼レフ全盛の時代からカメラを使っている身としては、画質の劣化が殆ど無い(しかもズームレンズ!)事に驚きを隠せません。
レンズのみで撮影
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Z TELECONVERTER TC-1.4×を装着して撮影
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先ずは高性能で人気のNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR SとZ TELECONVERTER TC-1.4×の組み合わせです。
それぞれ望遠端、F値開放で撮影し一部分(2960×1973ピクセル)を切り出した画像ですが、等倍で見ても画質の劣化は殆ど開く、風景写真などでも使えるレベルだと思います。
70-200mmは望遠端がもう少し長ければと思う事が多いレンズですし、テレコンバーターを装着た望遠端でも開放F4と比較的明るいので特におすすめできる組み合わせです。
レンズのみで撮影
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Z TELECONVERTER TC-1.4×を装着して撮影
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今回のテスト撮影でも使用したNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR SとZ TELECONVERTER TC-1.4×の組み合わせは、最近流行りの600mmまでのズームに近い画角となるおすすめの組み合わせです。
作例のとおり画質の劣化は感じられず、オートフォーカスのスピードに関してもレンズ単体と殆ど変わらないので、軽量コンパクトかつ2通りの使い方ができるという点でもおすすめです(それぞれ望遠端、F値開放で撮影し一部分(2960×1973ピクセル)を切り出した画像)。
野鳥などある程度トリミング前提で撮る場合でも、画素数が少なくなるのを最小限に留める事ができます。
冒頭でも述べましたが、画質だけでなくフォーカススピードも殆ど変わらないので、装着する事で使用感が劣化しないのもZ TELECONVERTER TC-1.4×の大きなメリットです。
野鳥など動く被写体を撮影するケースが多い超望遠の撮影では、フォーカススピードが落ちない事は失敗が少なくなり歩留まりを良くする事につながります。
レンズが高速に駆動すると被写体認識AFを100%活かせるので、特に高性能な被写体認識AFを搭載したZ 9、Z 8ユーザーには嬉しいポイントです。
作例9:F9 1/640 ISO720 露出補正±0 焦点距離:560mm
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テレコンバーターは装着しても最短撮影距離は殆ど変わらないので、撮影倍率がおよそ1.4×になる点もメリットのひとつです。
フィルム時代と違って強力な手ぶれ補正が搭載されている最近のミラーレスカメラでは、望遠や超望遠でのマクロ撮影でもフレーミングがしやすく、非常に使いやすくなりました。
テレコンバーターを装着したらマクロ撮影にも活かしたいところです。
作例10:F9 1/640 ISO3200 露出補正±0 焦点距離:560mm
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Z TELECONVERTER TC-1.4×は重量わずかに220g、装着時の厚みはわずかに2cm程しかない小さなレンズです。
これだけコンパクトな機材で、1本のレンズを2本のレンズとして使えるメリットは大きいと思います。
勿論、レンズ性能を損なわないという事が大前提となりますが、Z TELECONVERTER TC-1.4×は非常に高性能な光学設計を持っているので、その点でも安心して使える事は大きな価値と言えるでしょう。
これはZ TELECONVERTER TC-1.4×だけのデメリットではないのですが、テレコンバーターは通常のレンズ交換より手間がかかるのが短所です。
レンズとテレコンの両方を着脱しなければならないからですが、多くのデジタルカメラはレンズを外すとセンサーがむき出しになってしまうので、できるだけセンサーをオープンにしない順番でレンズを外すなどの工夫が必要になります。
今回テストを行った動物園でもどこで着脱を行うかを多少考えながら撮影しました。
望遠撮影をしているともう少し長い焦点距離が欲しいと思う事が頻繁にあると思います。
Nikon Z TELECONVERTER TC-1.4×は、レンズ性能を殆ど損なわずに焦点距離だけを伸ばせる理想的なテレコンバーターです。
Zマウントユーザーで望遠撮影をメインにしている方なら、是非購入を検討して欲しい優れた製品だと思います。
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Photo & Text by フジヤカメラ 北原