いま最も気になっているレンズ「Voigtlander ULTRON 27mm F2 X-mount」
ULTRON 27mm F2 X-mountの特徴
「ULTRON 27mm F2 X-mount」の第一印象は?
絞り開放から実用性能!人気の準標準レンズ
MFのフォーカシングが面白い
描写を作例とともにチェック
作例に使用したレンズ
Voigtlander ULTRON 27mm F2 X-mount
作例に使用したカメラ
FUJIFILM X-E4
まとめ
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアル、コマーシャルで活動。またカメラ・写真雑誌、WEBマガジンで写真のHOW TOからメカニズム論評、カメラ、レンズのレビューで撮影、執筆を行うほか、写真ワークショップ、芸術系大学で教鞭をとる。使用カメラは70年前のライカから、最新のデジタルカメラまでと幅広い。著書に『赤城写真機診療所MarkⅡ』(玄光社)、『フィルムカメラ放蕩記』(ホビージャパン)など多数。
いま、個人的に最も気になっているレンズであるコシナ・Voigtlander ULTRON 27mm F2 X-mountを使用してみた。
本レンズは“パンケーキ” レンズの仲間に加えられるのだろうが、この愛称はすでに使い古された感もある。
鏡筒の厚みは富士フイルムのXシリーズカメラのボディのキャップより少し厚いくらいである。本レンズのニックネームはあらためてボディキャップレンズ、あるいは厚めの“ビスケット” レンズと言い換えてもいいかもしれないが、どうだろうか。
この鏡胴の厚みを可能としたのはMF仕様であることもその理由だろう。AFレンズは、鏡筒の中にAF駆動用のモーター、CPUなどデバイスのためのスペースが必要になるため、この厚みの中にデバイスを仕込むのはたいへんだ。製造上も面倒な工程になることが想像される。
つまり、本レンズの素晴らしく小さいサイズはMFであることを前提として企画、設計されているからこそ実現できたものと考えられる。
レンズの第一印象を述べれば「小さいのに余裕がある」ように感じることだが、矛盾するように聞こえるかもしれないが、これが既に本レンズの総合的な結論になってしまいそうだ。
なぜ、そう感じるのか。これは鏡筒の材質デザインに凝っていること、距離目盛り、被写界深度指標のしっかりした表記、用意されたドーム型フードなど、モノとしての立ち上がりがとても良いことだろう。
したがって、Xマウントカメラ、いずれにもよく似合うが、フラットなタイプのX-Proシリーズ、X-Eシリーズとはとても相性がいい。
その昔は、徹底して光学性能を追い込むには、鏡筒やレンズの口径は大きいほうがいいという常識があったようだが、本レンズには当てはまらないようだ。
鏡筒のカラーはブラックとシルバー。ボディの色に合わせることができる。でも写真のようにブラックボディにシルバーカラーのレンズも似合う。
フードをつけて大きくなってしまったのでは本レンズの大きさの特性が失われることになる。このためドーム型のフードが用意された。色はブラックのみ。
絞り開放から完全な実用性能を誇る。特別に線が細いという印象はないけれど、絞りによる描写性能の変化は小さい。
至近距離、絞り開放値近辺のみ、球面収差の影響だろうかハイライトが少し滲むようだが、わずかな絞り込みでこれらは解消される。ボケ味にはクセはないが、至近距離では想定よりかなり大きくボケる。
フォーカスを決める位置は撮影者が被写体を一番見せたいところであって、このことを踏まえながらフォーカス位置や絞りを決めてゆきたい。
昨今は35mmフルサイズで40mmのレンズ、それと同等の画角になる単焦点レンズが人気のようで、本レンズもこの仲間になる。
40mmは、かつてのフィルムコンパクトカメラに多く採用された焦点距離だが、画角的に準標準レンズ的な立ち位置にあり、スナップや記念写真などに使いやすいため重宝された。本レンズは実焦点距離は27mmだから、被写界深度が深いことも特徴で、少し絞りこめばすぐにパンフォーカス効果を得ることができる。
構造的にフォーカスリングの幅が短いので本レンズにはレンジファインダーカメラ用のレンズのように指当てが採用された。縦位置撮影時には多少コツは必要になることがあるが、コシナが長年培ってきたロータリーフィーリングの心地よさはさすがである。
この言葉で表すことのできない感覚は実際に触れてみないとわからないかもしれない。慣れると、これだけMFのフォーカシングが面白いレンズはないとさえ思うのだ。
本レンズは電子接点を採用しているので、フォーカシングと同時に表示画像が拡大されMFのフォーカシングはとてもやりやすい。Exifにもきちんと情報が記録される。
日中晴天下には、絞り込むことができるので、フォーカシングに極度に神経を使う必要もなかろう。
街中撮影では、少し絞り込んで距離目盛りを見ながら、目測で距離設定を行い、フォーカス時間をゼロにして、素早く撮影したほうがスマートだし、撮影効率はかなり上がるはずだ。
FUJIFILM X-E4・Voigtlander ULTRON27mm F2 X-mount
F5.6・1/400秒・ISO1600
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至近距離、真俯瞰から撮影。日陰の条件だが、うまく階調を繋いでくれる印象。合焦点はとてもシャープだ。
FUJIFILM X-E4・Voigtlander ULTRON27mm F2 X-mount
F8・1/3800秒・ISO1600
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今回はカメラのサイドポケットに本レンズを装着したX-E4を忍ばせておき、本業撮影の移動中にもこれはというイメージを集めたが、この写真も駅のホームでの光景だ。
FUJIFILM X-E4・Voigtlander ULTRON27mm F2 X-mount
F8・1/3800秒・ISO400
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梅雨の晴れ間。明暗差の大きな条件だ。カメラの性能とレンズの性能が協力しあって生み出したように思える描写だ。歪曲収差も十分に補正されている。
FUJIFILM X-E4・Voigtlander ULTRON27mm F2 X-mount
F8・1/850秒・ISO400
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都市の混沌のようなものを出したくて、絞り込んで撮影した。フォーカシングは目測で2mと設定しているがパンフォーカスになった。
FUJIFILM X-E4・Voigtlander ULTRON27mm F2 X-mount
F2・1/1000秒・ISO400
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絞り開放、至近距離。軟らかい調子だが合焦点には芯がちゃんとある。焦点距離、F値の明るさからみると、極端にボケは大きくない。
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Photo & Text by 赤城 耕一 (あかぎ・こういち)