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2023.08.21
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Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmレビュー × 藤井智弘 |機動力に優れるライカSL超望遠ズームレンズ

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmレビュー × 藤井智弘 |機動力に優れるライカSL超望遠ズームレンズキービジュアル


ライター藤井智弘(ふじい・ともひろ)イメージ
■フォトグラファー紹介

藤井智弘(ふじい・ともひろ)

藤井智弘(ふじい・ともひろ)
東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年に写真展を開催後、写真家になる。カメラ専門誌、WEBでの撮影や執筆、各種撮影や写真講師等で活動。作品では、国内や海外の街を撮影している。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。デジタルカメラグランプリ(DGP)審査員。NHK文化センター柏教室講師。
ホームページ: https://fujiitomohiro.amebaownd.com/
Instagram: https://instagram.com/fujiitomohiro
Twitter: https://twitter.com/FujiiTomohiro

はじめに

中望遠100mmから、超望遠400mmまでカバーする望遠ズームレンズ。ライカSLレンズでは、これまで望遠ズームはバリオ・エルマリートSL f2.8-4/90〜280mmのみだったので、バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmは2本目のラインナップとなる。

そしてライカSLレンズで初めて400mmをカバーした。400mmをカバーするズームレンズと聞くと、大柄で重量級になるのを想像するが、全長は約198mm、重さは約1530g。明るさをF5〜6.3に抑えているせいか、超望遠域のズームレンズとしては小柄だ。今回使用したライカSL2-Sに装着したまま、やや小振りのカメラバッグに収まったほど。機動力の高さがうかがえた。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmの特徴

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmをSL2-Sに装着した画像

Leica SL2-Sに装着。フルサイズ対応の超望遠ズームレンズとしては小型だ。バランスも良く、三脚座を下にして置いても前や後ろに倒れることがない。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを縦に置いた画像

シンプルながら重厚感のある仕上がり。ライカであることを感じさせるデザインだ。モノトーンに「100-400」の黄橙色が映える。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmをズーミングした画像

400mm側にズーミング。鏡筒が伸びて、堂々としたスタイルになる。ズーミングもスムーズだ。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmにレンズフードを装着した画像

レンズフードを装着。金属製で一体感がある。脱着にロックボタン等はないが、カチッとはまって心地よく扱える。

スッキリとした鏡筒に細かな配慮を感じさせるデザイン

外観はライカらしい重厚感のある趣。高級感が漂い、手にする満足感が味わえる。他のライカSLシステムのズームレンズは、先端側にフォーカスリング、手前側にズームリングという配置だったが、100〜400mmは逆に先端側がズームリング、手前側がフォーカスリングという配置だ。

手持ち撮影した際にもズーミングがしやすく、フォーカスリングは三脚に据えてMFでじっくり撮影するのに使いやすいレイアウト。どちらのリングにもラバーが巻かれていて、滑りにくく指先へのフィット感も上々だ。おかげで微妙なコントロールも行いやすい。ズーミングの動きも、トルクの回転が安定していてスムーズだ。

三脚座は台座がアルカスイス互換の形状になっていて、アルカスイス互換の雲台なら、クイックシューを使用せずにそのまま挿入できる。スピーディーな脱着ができて、アクティブな撮影の強い味方になる。また台座部分はネジを回すと取り外すことも可能。手持ち撮影時に三脚座が邪魔にならない。細かい仕様だが、こうした配慮が快適な撮影に繋がる。

ユニークなのが、鏡筒には一切レバーやボタンなどスイッチ類がないことだ。現在は多くの望遠、超望遠ズームレンズには、AF/MFの切り替えレバーやファンクションボタン、フォーカスリミッターなどを装備しているが、バリオ・エルマーSL f5-6.3/100〜400mmには何もない。

そのため鏡筒は非常にスッキリしている。ライカはボディもボタンやレバー類を極力減らし、シンプルな操作を重視しているが、レンズにもその姿勢が伝わってくる。スイッチ類が多い他社の望遠ズームレンズに見慣れていたせいか、AFが普及する以前のクラシカルな雰囲気にも感じられる。だが光学式の手ブレ補正は搭載し、手持ち撮影でも安定した撮影が可能だ。AFの動きも速く、動く被写体にも素早く追従した。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmをSL2-Sに装着した正面からの画像

前玉と後玉の表面にはアクアデュラコーティングを採用。水滴や汚れをはじくので、水辺でも安心して撮影ができる。フィルター径は82mm。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmの三脚座画像

三脚座はアルカスイス互換になっていて、アルカスイス互換の雲台にそのまま固定できる。アルカスイス互換ユーザーには嬉しい仕様だ。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを上から撮影した画像

レボルビング機能を持ち、90度ごとにクリックも設けられている。そのため横位置から縦位置の変更もスピーディーで正確だ。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmの三脚座の台座部分を取り外した画像

三脚座の台座部分は取り外すことができる。手持ち撮影時に邪魔にならず、バッグへの収納もしやすい。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmの性能をチェック

レンズ構成は16群22枚。100mm側は絞り開放から解像力が高く、周辺まで均一の描写だ。F8に絞ると尖鋭度はさらに高くなる。そして400mm側も高い解像力が得られた。

100mm側よりわずかだが解像感が弱く見えるが、拡大して感じられる程度。どうしても気になる人は、ライカSL2/SL2-SのJPEG設定からフィルムモードに入り、コントラストやシャープを調節するか、RAWで撮影して現像時に明瞭度の調節を行うと、よりキリッとした写真に仕上がるだろう。

さらにバリオ・エルマーSL f5-6.3/100〜400mmは、テレコンバーターのエクステンダーL 1.4xに対応。装着すれば最長560mm相当の超望遠撮影が可能になる。コンパクトで、装着してもAF速度や描写の低下は感じられず、一体感のある使い心地だ。「もう少し望遠が欲しい」というシーンに威力を発揮する。これはレンズと一緒に手に入れたい。

筆者がLeica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを構えている画像

400mmをカバーする望遠ズームレンズながら小型で手ブレ補正も内蔵し、手持ち撮影も余裕だ。今回の撮影も、すべて手持ちで行った。

エクステンダーL 1.4xの画像

100〜400mmと同時に登場したエクステンダーL 1.4x。F値は1段暗くなるものの、手軽に焦点距離を1.4倍に伸ばすことができる。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmとカメラの装着面の画像

エクステンダーはコンパクトなので、装着してもそれを感じさせない。重量バランスもほとんど変わらず、優れた使い勝手を維持できる。

まとめ

400mmの超望遠域をカバーする望遠ズームとしては小柄で軽く、取り回ししやすいレンズだ。鏡筒の質感の高さや操作性の良さ、そして高い描写性能はさすがライカだ。またライカのレンズとしては入手しやすい価格も大きな魅力。

これまでライカというと、レンジファインダーの印象が強いせいかスナップでは定番なものの、スポーツや乗り物など望遠撮影のイメージが少ないかもしれない。しかしこのレンズはそれを覆し、様々な望遠撮影のシーンで活躍できる。

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmの作例

Leica SL2-Sとバリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを組み合わせ・400mmで撮影した飛行機の画像

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Leica SL2-SのフォーカスモードをAF-Cに設定し、フォーカスエリアをゾーンで離陸する旅客機を400mm側で撮影。手持ちでも安定して構えられ、動体を楽に追うことができた。

Leica SL2-S・バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・400mmで撮影
絞りF8・1/1000秒・ISO200・AWB・DNG(RAW)+JPEG

Leica SL2-Sとバリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを組み合わせ・169mmで撮影した飛行機の画像

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手前から駐機する飛行機、けん引される飛行機、着陸してきた飛行機、さらに船。すべてが重なった瞬間を、望遠の圧縮効果で切り取った。スムーズに回転するズームリングのおかげで、それぞれの動きを見ながら最適な画角にできた。

Leica SL2-S・バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・169mmで撮影
絞りF8・1/1000秒・ISO200・AWB・DNG(RAW)+JPEG

Leica SL2-S・386mmで撮影した飛行機の画像

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離陸してビル群の上空へ向かう旅客機。わずかに柔らかい描写だが、拡大して感じられる程度だ。

Leica SL2-S・バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・386mmで撮影
絞りF7.1・1/1000秒・ISO200・AWB・DNG(RAW)+JPEG

Leica SL2-Sとバリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを組み合わせ・100mmで撮影した建物の中から飛行機を眺める人

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建物の中から飛行機を眺める人たちをシルエットにして100mm側で狙った。超望遠域をカバーしながら小型なので、軽快に撮影できる。

Leica SL2-S・バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・100mmで撮影
絞りF11・1/60秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG

Leica SL2-Sとバリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを組み合わせ・379mmで撮影した公園のスワンボートの画像

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公園のスワンボートを逆光で撮影。フレアは出ず、シャープさのある描写だ。ボケも崩れていないのがわかる。

Leica SL2-S・バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・379mmで撮影
絞りF6.3・1/250秒・−0.3EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG

Leica SL2-Sとバリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを組み合わせ・400mmで撮影した鳥と池のボートの画像

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羽繕いをする鳥と池のボート。のんびりした光景を400mmの圧縮効果で表現した。羽根の質感再現はとても高い。

Leica SL2-S・バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・400mmで撮影
絞りF6.3・1/400秒・−0.3EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG

Leica SL2-Sとバリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを組み合わせ・400mmで撮影したお寺の屋根とスカイツリーの画像

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お寺の屋根とスカイツリーを400mmで切り取った。超望遠で街の風景を狙うと、肉眼とは異なる世界が見えてくる。しかも小型なので手軽に持ち歩ける。

Leica SL2-S・バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・400mmで撮影
絞りF6.3・1/400秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG

Leica SL2-Sとバリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを組み合わせ・179mmで撮影した古い食器の画像

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最短撮影距離は、100mm側で1.1m、400mm側で1.59m。フリーマーケットで見かけた古い食器をクローズアップした。

Leica SL2-S・バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・179mmで撮影
絞りF6.3・1/640秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG

Leica SL2-Sとバリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを組み合わせ・400mmで撮影した都電の画像

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すれ違う都電。向かってくる都電にフォーカスポイントを設定し、AF-Cで撮影。AFは正確にピントを合わせ続けた。

Leica SL2-Sとバリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mmを組み合わせ・400mmで撮影した猫の画像

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路地で出会ったネコ。驚かさないように400mm側で狙った。シャッタースピード1/50秒で手持ち撮影だが、手ブレ補正のおかげでブレずに撮れた。

Leica SL2-S・バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・400mmで撮影
絞りF6.3・1/50秒・−0.3EV補正・ISO800・AWB・DNG(RAW)+JPEG

Leica SL2-Sとバリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm、エクステンダーL 1.4xを装着・560mmで撮影した飛行機

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エクステンダーL 1.4xを装着して560mmで飛行機をアップで撮影。手軽に焦点距離を伸ばしながら、描写力も機動力も落ちないのが嬉しい。

Leica SL2-S・バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・エクステンダーL 1.4x・560mmで撮影
絞りF11・1/320秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG

作例に使用したカメラ

Leica SL2-S

【商品情報】Leica SL2-S

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作例に使用したレンズ・エクステンダー

Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm・エクステンダーL 1.4x

【商品情報】Leica バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm

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【商品情報】Leica エクステンダーL 1.4x

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Photo & Text by 藤井智弘(ふじい・ともひろ)

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