はじめに
ライカSLレンズにも引き継がれたf2/50mm
ズミクロンSL f2/50mm ASPH.の特徴
ライカSLレンズとしては非常にコンパクト
ライカSL2-Sとの組み合わせでズミクロンSL f2/50mm ASPH.の性能をチェック
まとめ
ズミクロンSL f2/50mm ASPH. 作例
作例に使用したレンズ
Leica 11193 ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
作例に使用したカメラ
Leica 10880 ライカ SL2-S
東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年に写真展を開催後、写真家になる。カメラ専門誌、WEBでの撮影や執筆、各種撮影や写真講師等で活動。作品では、国内や海外の街を撮影している。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。デジタルカメラグランプリ(DGP)審査員。NHK文化センター柏教室講師。
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https://twitter.com/FujiiTomohiro
ライカのレンズの名称は、主にF値によって分けられている。F1.4はズミルックス、F2.8はエルマリート、などだ。そしてF2のレンズをズミクロンと呼んでいる。
レンジファインダーのライカレンズでは、f2/50mmは長い歴史を持っている。古くは1933年のズマールに始まり、1939年にズミタールへ。そして1953年にズミクロンが登場する。
絞り開放から安定した描写力を持つズミクロンは、ライカレンズの定番として支持され、一眼レフのライカRシステムでもズミクロンR f2/50mmは、そのシステムが終了するまで世代交代しながらラインナップされた。
35mmフルサイズミラーレス、ライカSLシステムでは、まず登場したのがアポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.だ。ライカMレンズで話題になった通り、アポ・ズミクロンは極めて高い解像力を持つのが特徴だ。4000万画素オーバーが当たり前になった現代らしいレンズといえる。
そして新たに登場したのが、アポ仕様ではないスタンダードタイプのズミクロンSL f2/50mm ASPH.だ。
一見してすぐ感じるのがライカSLレンズとしては非常にコンパクトなことだ。アポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.は解像力を重視し、大柄で重さも740gもある。
しかし今回のズミクロンSL f2/50mm ASPH.は370gしかなく、手に取ると驚くほど軽い。しかし質感の高い鏡筒の仕上げや、カチッと心地よく固定されるレンズフードの感触は、やはりライカであることを感じさせる。
ミラーレス用のレンズらしいシンプルな外観。重厚感のある外観がライカらしい。
ここではライカSL2-Sで使用した。ライカSL2-Sは35mmフルサイズミラーレスの中では決して小柄とは言えないものの、ズミクロンSL f2/50mm ASPH.を装着すると小さめのカメラバッグに収まり、軽快に持ち歩くことができた。ホールディングのバランスも良く、撮影も軽快に楽しめる。
AFには新開発されたリニアダイレクトドライブ方式を採用。静かでスムーズなフォーカシングだ。歩きながら街のスナップを撮影していたが、AF速度に不満を持つこともなかった。フォーカスリングが大きく、MFも快適だ。
なお現行のローレットを持つライカMレンズのフォーカスリングはすべて金属製だが、ライカSLレンズはゴムが巻かれている。滑りにくくタッチも良好なのだが、伝統的なライカMレンズと、現代的なライカSLレンズでは、フォーカスリングにシステムの違いによるそれぞれの思想が感じられた。
レンズ構成は8群9枚。そのうち非球面レンズを3枚使用している。描写は絞り開放から解像力が高い。しかしアポ・ズミクロンが持つパキッとしたシャープさではなく、角が取れたような優しい雰囲気。伝統的なライカレンズの描写を受け継いでいる印象を受ける。
また逆光にも強く、周辺光量の低下もごくわずかだ。1段絞ると尖鋭性が増し、立体感が伝わってくる。そして最短撮影距離が0.25mと短いのも特筆したい。
アポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.より小さく、しかも軽い。とても扱いやすいレンズだ。
フィルター径はアポ・ズミクロンと同じ67mm。
レンズフードはズミクロンSL f2/35mm ASPH.と共通の花弁型。金属製で質感が高く、脱着時の適度なしっかり感が心地いい。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF5.6・1/400秒・−0.7EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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絞りF5.6に設定。解像力は高く、ボートの木の質感がよく伝わってくる。木の葉の解像も実用十分だ。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF2.8・1/200秒・+0.7EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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50mmは肉眼で見た印象をそのまま切り取る感覚で撮影できる。ライカSL2-Sとの組み合わせは決してコンパクトではないものの、AFのレスポンスも良く快適に撮影できた。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF2.開放・1/800秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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カーディガンの網目の再現は申し分ない。アポ・ズミクロンのようなカリッと立ち上がるようなシャープさではないが、それが伝統的なライカらしい写りを感じさせる。背景のボケも自然だ。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF2.8・1/800秒・−0.3EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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硬すぎない描写力を持つ。ボケ味も素直なので被写界深度から外れたところも違和感がなく、立体感が伝わってくる。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF2.8・1/500秒・−0.3EV補正・ISO100・WBデイライト・DNG(RAW)+JPEG
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絞りは開放から1段絞ったF2.8。背景の点光源のボケはカクカクせず円形に近い。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF2開放・1/2500秒・ISO100・WBデイライト・DNG(RAW)+JPEG
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とても強い逆光のため、わずかにフレアっぽさがあるものの、メリハリを維持した写りだ。逆光にも十分強いと言える。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF2開放・1/640秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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ガチャの景品をクローズアップ。0.25mまで寄れるので、被写体に思い切って近づくことができる。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF4・1/100秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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小型で軽く、AFもスピーディー。撮りたいと思った光景に出会った際にすぐ反応できる。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF2.8・1/250秒・−0.7EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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近接撮影でも描写が甘くならず、遠景と同様の高い解像力が得られた。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF2開放・1/400秒・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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どこか優しい雰囲気を感じさせる描写は、柔らかい雰囲気を表現したいシーンにピッタリだ。
Leica SL2-S・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF8・1/800秒・+0.7EV補正・ISO100・AWB・DNG(RAW)+JPEG
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電線のフチに色付きがなく、色収差がよく補正されているのがわかる。
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Photo & Text by 藤井智弘(ふじい・ともひろ)