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2023.07.24
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FUJIFILM フジノン XF8mmF3.5 R WR レビュー × 赤城耕一 | 律儀で真面目な、高性能のXシリーズ超広角単焦点レンズ

FUJIFILM フジノン XF8mmF3.5 R WR レビュー × 赤城耕一 | 律儀で真面目な、高性能のXシリーズ超広角単焦点レンズキービジュアル


ライター赤城 耕一 (あかぎ・こういち)イメージ
■フォトグラファー紹介

赤城 耕一 (あかぎ・こういち)

東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアル、コマーシャルで活動。またカメラ・写真雑誌、WEBマガジンで写真のHOW TOからメカニズム論評、カメラ、レンズのレビューで撮影、執筆を行うほか、写真ワークショップ、芸術系大学で教鞭をとる。使用カメラは70年前のライカから、最新のデジタルカメラまでと幅広い。著書に『赤城写真機診療所MarkⅡ』(玄光社)、『フィルムカメラ放蕩記』(ホビージャパン)など多数。

Xシリーズ超広角単焦点レンズが登場

驚きの富士フイルムXシリーズ超広角単体レンズの登場だ。このフジノンレンズ XF8mmF3.5 R WRはXシリーズレンズで最広角、35mm判換算12mm相当の画角となる超広角単焦点レンズである。

対角線の画角は約121度。アングルによっては撮影者の手足も写ってしまいそうになるので注意せねばならない。このレンズを装着したXシリーズのファインダーやモニターをみると、肉眼ではすぐ目の前にあるものですら、遥か遠くにあるように見える。びっくりである。

FUJIFILM X-S20に装着したフジノン XF8mmF3.5 R WRの商品画像

高い光学性能とレンズの小型化を実現

こんなにすごい超広角レンズなのにサイズ感も驚き。

全長は約52.8mmで重量は215gと軽量。これは素晴らしい。F3.5のF値もこのクラスのレンズとしては十分に明るい方だろう。APS-C専用設計の特徴をサイズにも光学性能にも生かしているのだろう。

レンズ構成は9群12枚と外観ではわからないほどゴージャスである。うち、非球面レンズ3枚とEDレンズ2枚を採用。

超広角レンズで問題になりやすい歪曲収差や球面収差、非点収差を抑制しているが、これだけ凝った設計なのに小型軽量であることが驚きであるが、これも非球面レンズとEDレンズの効果的な配置により小型・軽量化を達成したものだという。

フィルターアタッチメントサイズは62mmとこれも口径は小さい。高い光学性能とレンズの小型化は相反する場合もあるのだが、このレンズには当てはまらないようだ。

レンズ名のWRは防塵防滴であることを示している。鏡筒は10カ所にシーリングを施した防塵・防滴・耐低温(-10度)構造となっており、レンズの最前面にはフッ素コーティングを施している。

絞り羽根の枚数は9枚の円形絞りだ。超広角レンズであるから、ボケ味云々を追求するのは野暮かもしれないが、本レンズの最短撮影距離は0.18m。最大撮影倍率は0.07倍となっている。

FUJIFILM フジノン XF8mmF3.5 R WRの商品画像

とにかく、コンパクトで軽いレンズである。その昔、超広角レンズを持て余したのは、重量級で持ち出しづらいということもあったかも。

FUJIFILM フジノン XF8mmF3.5 R WRの絞り環の画像

絞り環には「A」ポジションがあり、ロック機構が設けられている。ボディ側でのダイヤル操作で絞りを設定したい人にも違和感なく使うことができる。

「XF8mmF3.5 R WR」の第一印象は?

最短撮影距離の短い超広角レンズは被写体に可能な限り迫った位置から撮影したくなるものである。

と、なれば撮影条件やフレーミング、被写体の位置関係にもよるが、デフォーカスの部分も気になるものである。現代の認識では超広角レンズであってもボケの形を考慮しなければならないわけだ。

現代のレンズであるから残存収差補正がきっちり行われているのはあたりまえのことだが、カメラ内の画像処理と光学面とが協力して、より性能を追い込んでいるのだろう。描写の第一印象ではとてもしっかりと律儀で真面目な性格。曲がったことの嫌いな高性能の超広角レンズに見えた。とても信頼できるものだ。

フォーカシングはインナーフォーカス方式を採用している。レンズ構成の中央部を動かし素早く合焦位置にフォーカスを追い込む仕組みだ。撮影距離により全長は変わらず、かつAFは気持ちよく、素早く動作することは高く評価したい点だ。

レンズ性能は予想通り、開放絞りからきっちりとしたコントラストの高い描写。超広角レンズにありがちな四隅が引っ張られるような感じがほとんどないし、周辺光量低下も想定よりも気にならなかった。8mmという実焦点距離を考えると驚きの高い性能である。

もちろんパースペクティブはかなり強いが、歪曲収差がよく補正されているため、カメラを水平垂直に構えることに留意して、被写体と正対することで、パースペクティブを抑制できる。Exifを見なければ使用レンズの焦点距離がわからない写真ができれば使いこなしは成功だろう。

個人的には、フォーカスクラッチ方式を採用してもらえば、素早くMFに切り替えることもできるので、距離指標を利用した目測スナップにも十分役立てたと思うが、残念ながら見送られている。

MFに切り替えた時は、ファインダー内や背面LCDの下部に距離指標バーが表示されるので、そちらを利用してくれということなのだろう。

描写を作例とともにチェック

FUJIFILM X-E4・XF8mmF3.5 R WRで撮影した看板を持っている人形の画像

FUJIFILM X-E4・XF8mmF3.5 R WR
F5.6・1/850秒・ISO400

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明暗差の大きい条件だけど、デフォルト設定でこれだけ階調が繋がっていることには驚きしかない。カメラ側の性能とレンズの描写のマッチングの良さを感じる。

FUJIFILM X-E4・XF8mmF3.5 R WRで撮影した庭で干している洗濯物と布団の画像

FUJIFILM X-E4・XF8mmF3.5 R WR
F8・1/600秒・ISO400

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梅雨の晴れ間。8mmで撮影する被写体なのかよというと困るけど、路地で引きがないため、これはこれで意味はあると考えたい。

FUJIFILM X-E4・XF8mmF3.5 R WRで撮影した鉄橋下の画像

FUJIFILM X-E4・XF8mmF3.5 R WR
F5.6・1/85秒・ISO400

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鉄橋下。パースペクティブを思い切り強調してみたが、この被写体なら、あまり違和感がない。日陰の条件だがディテール描写に優れる。

FUJIFILM X-T5・XF8mmF3.5 R WRで撮影した立葵の画像

FUJIFILM X-T5・XF8mmF3.5 R WR
F3.5・1/2200秒・ISO400

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立葵に最短撮影距離に迫り、絞りを開放としてみた。合焦点のシャープネスは見事。さすがに被写界深度は浅くなるが、背景の描写は独自のものがある。

FUJIFILM X-E4・XF8mmF3.5 R WRで撮影したツタが絡んでいるフェンスの画像

FUJIFILM X-E4・XF8mmF3.5 R WR
F11・1/125秒・ISO400

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被写体に対してカメラを正対。パースペクティブを抑え込んでみると、使用レンズの焦点距離がわからなくなる。描写の均質性も素晴らしい。

FUJIFILM X-E4・XF8mmF3.5 R WRで撮影した街中の紫陽花の画像

FUJIFILM X-E4・XF8mmF3.5 R WR
F11・1/350秒・ISO400

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紫陽花に思い切り迫り、少し街の光景が見えるようにフレーミング。カメラは少し仰角なのだろうパースペクティブが強調されている。

作例に使用したレンズ

富士フイルム フジノンレンズ XF8mmF3.5 R WR

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富士フイルム フジノンレンズ XF8mmF3.5 R WRバナー画像

作例に使用したカメラ

富士フイルム X-E4 / X-T5

【商品情報】富士フイルム X-T5

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富士フイルム X-T5バナー画像

まとめ

・高い光学性能ながら小型軽量の超広角レンズ
・最短撮影距離は0.18m
・最大撮影倍率は0.07倍
・素早く動作するAF
・しっかりと律儀で真面目な描画

Photo & Text by 赤城 耕一 (あかぎ・こういち)

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