はじめに
Leica Q3の魅力
単焦点レンズ一体型で、潔くカメラ一台で出かけられる
6030万画素CMOSセンサーを搭載し、デジタルズームの幅も広がった
動物や人物撮影など、高い精度で素早いピント合わせが可能になった
ズミルックスf1.7/28mm ASPH.の美しい描写力
ボケ味を引き出す、マクロモード撮影
「デジタルズーム」(クロップ)撮影を使いこなす
「ライカ・パースペクティブ・コントロール」で画面の歪みを補正
黒の締まりがとても美しい「モノクロHC」
まとめ
作例に使用したカメラ
Leica Q3
文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。またYouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。カメラや写真が好きな人が集まるアトリエ「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。
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ライカのフルサイズカメラは大きく分けて3つのラインナップがある。歴史を引き継いだクラシカルなデザインで、レンジファインダーを搭載するM型ライカ、ミラーレス一眼のSLシリーズ、そしてレンズ一体型のQシリーズから選ぶことができる。
初めてのライカを購入するなら、どのシリーズにするかで迷う方もいるだろう。今回は発売されたばかりのライカQ3の魅力をご紹介していきたい。
筆者はライカM11とライカQ2モノクロームを使い分けをしているが、Qシリーズの魅力の一つといえば、気軽にスナップを楽しめることだろう。
例えばM型ライカを持って旅に出かけるとなると、欲張って色々とレンズを持ち歩きたくなるが、Q3は単焦点レンズが一体になっているため、潔くカメラ一台で出かけられる。
レンズは初代のQから継続して「ズミルックスf1.7/28mm ASPH.」を搭載している。ズミルックスならではの美しいボケとピント面のシャープさをコンパクトながらも楽しむことができる機種として人気があるシリーズだ。
まずはライカQ3の外観からご紹介していきたい。
今までのQシリーズと同様にシンプルながらも高級感のあるデザインで、ライカらしさもしっかりと引き継いでいる。ボタン数を少なくすることで、操作を簡素化し、速写性がある。レンズ鏡筒をくるっと回転させれば、マクロモードに切り替えが可能だ。
通常は30cmまで近づけるが、マクロ設定時は17cmまで被写体に寄ることができる。
M型ライカでも最新のズミルックスなど最短撮影距離が短いレンズもあるが、ライカQ3はマクロ撮影ができるため、風景からポートレート、テーブルフォト、料理写真など一台でいろんな被写体をカバーできる。
ライカQシリーズの進化を振り返って見ると、初代のライカQは2420万画素のセンサーを搭載し、28mmの焦点距離だけでなく、デジタルズームを使用することで35mmと50mm相当の画角を得ることができた。
ライカQ2は4730万画素となり、35mm、50mmに追加して、75mm相当のデジタルズーム撮影が可能になった。
そして、今回のライカQ3はさらに高画素の6030万画素を実現し、90mm相当の画角を得ることができる。それにより、28mmから35mm、50mm、75mm、90mmと広角から中望遠までカバーする。高画素化することで、より高精細な表現を楽しめるだけでなく、デジタルズームの幅が広がっている。
【28mm】
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【35mm】
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【50mm】
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【75mm】
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【90mm】
共通データ
Leica Q3
絞りF1.7・1/8000秒・ISO100・RAW+JPEG
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実際に撮影してみると、28mmはその場の広がりをしっかりと活かすことができ、90mmでクロップしてみると、一隻の船が際立ちやすくなっている。
デジタルズームの焦点距離の変更はボタン操作で行うことができる。画角(クロップ)に合わせてファインダー内にブライトフレームが現れて、レンジファインダーのような感覚で撮影を楽しめる。
また記録画素数を6000万画素、3600万画素、1800万画素の3種類から選択でき、JPEGだけでなく、RAWも設定した画素数での記録が可能。
風景や街並みなど被写体のディテールをしっかりと伝えたいときは6000万画素、連写の持続をさせたいときやファイルサイズを小さくしたいときなどは3600万画素や1800万画素といった選択ができる。
オートフォーカスに関しても進化している。今まではコントラストAFのみの搭載だったが、ライカQ3から像面位相差AFが追加になっている。また空間認識AFも新たに追加されているため、より精度が高く、素早いピント合わせが可能になっている。
また人物や動物を認識してピント合わせができるようになったため、動きの予測がしにくいペットやボケを生かして撮影するポートレートなども撮影がしやすくなっている。
Leica Q3
絞りF1.7・1/2000秒・ISO100・RAW+JPEG
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猫が歩いている姿を撮影。背景までしっかりと写るように、ローポジションでカメラを構えた。背面液晶モニターを可動できるため、低い位置の撮影も簡単に行うことができる。
動物認識を使用すると、猫の顔を優先してピント合わせを行ってくれる。
ライカQシリーズの魅力はレンズ一体型の身軽さ、マクロ撮影を行えたり、ワンタッチでさまざまな焦点距離を得られる利便性、そして、ズミルックスの描写力だろう。
撮影していると、開放絞りF1.7の「ズミルックスf1.7/28mm ASPH.」の描写の美しさにうっとりとしてしまう。
Leica Q3
絞りF1.7・1/1250秒・ISO100・−1.6EV補正・RAW+JPEG
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木漏れ日が一部分の葉だけに当たっていたのが美しかったので撮影した一枚。露出をマイナスに補正することで、影の部分が暗くなり、光が当たる葉を強調することができている。
上の写真のピント位置を等倍で見てみると、開放絞りF1.7から葉のディテールを細かく描写し、葉脈が浮き出た立体感まで感じることができる。6030万画素になったことで、ズミルックスの描写をさらに引き出せているように感じる。
Leica Q3
絞りF1.7・1/6400秒・ISO100・RAW+JPEG
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漁港にあった器具にぐっと寄りながら撮影。背景を大きくぼかしたいと思い、F1.7に設定している。
ピント面の錆の質感や金属のディテールを細かく描写してくれている。それでいて、背景を見てみると、とろけるように大きくボケているのがわかる。
鉄の棒などの輪郭を馴染ませるようにぼかしてくれるため、背景のボケがうるさくならずに、品のある美しいボケ味を堪能することができる。そのおかげで写真に立体感が生まれる。ボケの美しさから、ズミルックスらしさを感じることができるだろう。
せっかくだから、このボケの美しさを引き出しながら撮影を楽しみたい。28mmの広角となると、被写界深度が深いため、ぼけを生かそうと思うとコツが必要になる。
大きく背景をぼかしたい場合は被写体にぐっと近づきながら、撮影してみよう。被写体に近づけば、近づくほど背景がぼけやすくなるが、マクロモードに切り替えれば17cmまで被写体に寄ることが可能になる。
Leica Q3
絞りF2.8・1/2500秒・ISO100・RAW+JPEG
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マクロモードに切り替えて、最短撮影距離の17cmぎりぎりまで近づいて撮影を行った。漁港にあった網にぐっと近づきながら撮影を行っている。
Leica Q3
絞りF1.7・1/160秒・ISO100・RAW+JPEG
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OPENの文字にぐっと寄りながら撮影。背景が大きくボケることにより、自然と看板へ目線が誘導される。
Leica Q3
絞りF1.7・1/50秒・ISO500・RAW+JPEG
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同じF1.7で撮影していても、被写体と程よく離れて撮影すると、背景がボケすぎず、背景の情報が伝わりやすいボケ感になる。
広角側だけでなく、50mm、75mm、90mmもうまく利用しながら撮影するのがおすすめだ。28mmだと背景の写り込む範囲が広いため、背景にいろんなものが写ってしまう場合がある。
デジタルズームを使用することで、写り込む範囲が狭くなるため、背景を整理して撮影することができる。背景をどのくらいフレーミングしたいかに合わせて、ズーミングするのも良いだろう。
Leica Q3
絞りF1.7・1/250秒・ISO100・+0.3EV補正・RAW+JPEG
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手前の植物だけでなく、背景のカフェの雰囲気も表現したかったため、35mmで撮影している。
Leica Q3
絞りF1.7・1/8000秒・ISO100・RAW+JPEG
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50mmで撮影。手前にあった枯れ木にピントを合わせて、背景を大きくぼかして撮影している。背景を程よく整理して、枯れ木の背景が青のグラデーションになるようにした。
Leica Q3
絞りF1.7・1/200秒・ISO100・RAW+JPEG
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75mmで店先の木に取り付けれた小瓶を撮影した。28mmで撮影すると、余分なものがたくさん写ってしまったので、75mmにクロップすることで、背景を整理しながら、ボケを生かして撮影できている。
Leica Q3
絞りF1.7・1/250秒・ISO100・+0.6EV補正・RAW+JPEG
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店先のミニトマトを撮ろうと思ったが、被写体と距離があったため、90mmにクロップして撮影している。少し離れたところにある鉢を引き寄せて撮影できるため、思い通りの構図で撮影することができた。
そして、今回新たにライカ・パースペクティブ・コントロールという機能が搭載されている。建物などを歪みなく真っ直ぐに撮影したいときにおすすめの機能になる。
例えば、建物を下から撮影すると、建物の上の方が小さく写り台形型になってしまうと思うが、ライカ・パースペクティブ・コントロールを使用することで、被写体の歪みを補正しながら撮影することができる。
撮影時に白い枠が出て、どのようにクロップして補正するのか示してくれるため、構図を決定しやすい。歪みを補正するためにクロップされるため、28mmの広角で撮影するのがおすすめだ。
Leica Q3
絞りF1.7・1/320秒・ISO100・RAW+JPEG
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下から撮影すると、建物が台形に歪み、まっすぐ撮影できていないのがわかる。
Leica Q3
絞りF1.7・1/320秒・ISO100・RAW+JPEG
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上の写真と同じ場所から撮影しているが、ライカ・パースペクティブ・コントロールを使用することで、歪みがなく、真っ直ぐに撮影できているのがわかる。
ライカQ3になり、進化ポイントもかなり多いが、個人的にはライカQ2から搭載された「モノクロHC」という絵作りがとても好みだ。
ハイライトからシャドーまで階調豊かに表現しながらも、程よいコントラストで黒の締まりがとても美しいモノクロの効果になる。最後に「モノクロHC」で撮影した写真をご覧いただきたい。
ライカQ3はレンズ一体型の身軽さと、ズミルックスの美しい描写力、そして、ライカならではの美しい表現力を一台で楽しめるカメラになっている。そして、新しい技術もどんどん積極的に取り入れているため、撮り手に合わせてさまざまな表現を楽しめる。
Leica Q3
絞りF1.7・1/8000秒・ISO100・−0.6EV補正・RAW+JPEG
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Leica Q3
絞りF1.7・1/5000秒・ISO100・−0.6EV補正・RAW+JPEG
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Leica Q3
絞りF1.7・1/6400秒・ISO100・−0.6EV補正・RAW+JPEG
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Leica Q3
絞りF1.7・1/6400秒・ISO100・−1.3EV補正・RAW+JPEG
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Leica Q3
絞りF1.7・1/5000秒・ISO100・−0.6EV補正・RAW+JPEG
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Leica Q3
絞りF1.7・1/500秒・ISO100・−0.3EV補正・RAW+JPEG
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Photo & Text by コムロミホ