TAMRON(タムロン)20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062) の実写レビューです。
50mmをズーム域に含まないユニークな「新標準ズーム」20-40mm F/2.8 Di III VXDの解像感、フレア/ゴースト、フリンジなどの描写性能、実際に使った使用感などをレビューします。
果たして20-40mmは標準レンズといえるのか!?TAMRONらしい独自性と挑戦に満ちたレンズです。
特徴/操作性
20-40mmは果たして標準ズームと言えるのか!?新しいジャンルを提案するTAMRONらしい挑戦に満ちたレンズ
非常にコンパクトな大口径ズームレンズ
広角端で最大撮影倍率1:3.8を実現する優れた近接性能
実写レビュー
スナップ用レンズとして最適なコンパクトさと画角
上を向いて歩こう、下を向いて歩こう
広角レンズの魅力を最大限発揮できる高い近接能力
テーブルフォトにも便利な画角は、旅のおともにもピッタリ
画質
解像感
周辺部画質
フリンジ
フレア/ゴースト
ライバルレンズとの比較
TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXDとの比較
SONY FE PZ 16-35mm F4 G
ウイークポイントとおすすめユーザー
スナップ用レンズとして最適な、高速なAFと適度な画角
50mmを含まない事のデメリット
感じたままにシャッターチャンスを狙うスナップシューターや動画撮影にもおすすめ
まとめ
20-40mmというズーム域のレンズを果たして標準ズームと言えるのか?TAMRONから20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)が発表された際の感想です。最初はAPS-Cサイズセンサー用のレンズだと思っていました。
賛否はさておき、35-150mmなどの独創的な焦点域のレンズを発売してきたTAMRONらしい挑戦に満ちたレンズです。
実際に使用した感想としては、人気のスナップシューターRICOH GRが採用する28mmを中心としたズームレンズで、ストリートスナップに最適な画角という印象です。(標準レンズと言えるのか?の答えについては後ほど)
焦点域以外のもうひとつの特徴は、F2.8の大口径レンズでありながら非常にコンパクトに設計されている事です。
ひと昔前のレンズメーカーの看板レンズに、24-70mm f3.5-5.6といった、リーズナブルな価格で軽量コンパクトな標準ズームがありましたが、それと同じくらいのサイズ感です。
焦点域と併せて、小さいという特徴もTAMRON(タムロン)20-40mm F/2.8 Di III VXDがスナップシューターとして使いやすい要因となっています。
あくまで個人的な意見ですが、広角ズームは近接に弱いと用途が限定されてしまい、価値が半減してしまうと思っています。
その点TAMRON(タムロン)20-40mm F/2.8 Di III VXDは広角端で最短撮影距離は0.17m、最大撮影倍率1:3.8と近接にかなり強く、便利に使えました。被写体に近寄った後に、ズームを使って背景の入り方を調整できるのは、広角ズームならではの楽しさです。
さて、冒頭の「20-40mmは果たして標準ズームと言えるのか!?」という問いについてですが、個人的な意見としては言えません(笑:TAMRONさん、すみません)。レビューについても広角レンズとして扱っていますのでご承知おき下さい。
TAMRON(タムロン)20-40mm F/2.8 Di III VXD を使い始めて先ず感じたのは、20-40mmという焦点域が思った以上に使いやすいという事です。
先に書いたとおり、スナップシューターとして高い評価を得る「GRIII」が搭載する28mmを中心とした画角なので当然と言えるかもしれません。GRIIIxが採用した40mmを含む事も、通常の広角レンズとは違う点です。
コンパクトで目立たずにさりげなく撮影できるのも街中ではありがたい特徴で、普段使いのコンパクトなレンズという意味では正に標準レンズと言えます。
今回のテスト撮影はたまたま計画していた旅行中に行いました。あまり目的も決めずに知らない街をブラブラと散歩するだけでも十分楽しめるのは、写真をやっている者の特権で、点と点を結ぶ観光旅行とは違う楽しさがあります。
午後3時くらいの飲み屋街はまだ寝静まっていて、夜の華やかさは微塵も感じられませんが、雑然とした建物、看板、錆びた鉄や乗り捨てられた自転車までがどこか魅力的に感じます。
先日、写真家のハービー・山口さんが「年をとると標準レンズが長くなる」といった事を仰っていましたが、今回のテストでは28mm前後の画角を多用したので、俺もまだまだ若いのかと、根拠のない自信が湧いてきました。
とは言え、超広角レンズはスナップなどでは持て余す事も事実です。そんな時は、上を向いたり下を向いたりとアングルを工夫するのがおすすめです。
作例では欅の幹のでこぼこが面白くてシャッターを切りましたが、背景に大きく広がった枝葉をフレーミングするのは超広角レンズ無しでは難しい表現だと思います。
近接に強く被写体に近づく事でボケを大きくする事もできるので、構図をシンプルに整えられるのも便利な点です。
足元を広くフレーミングできるのも広角レンズを使うメリットの一つです。
地面は背丈以上には引いて撮れない被写体ですので、広い範囲を撮ろうと思うと広角レンズを使うしかありません。
標準レンズを装着したカメラで地面ばかりを見て被写体を探すことは稀だと思いますが、レンズの特性に合わせて被写体探しの心持を変えてみるのも面白いのではないでしょうか。
先に述べたとおり、広角レンズは寄れないと価値が半減してしまうと思っています。その点、TAMRON(タムロン)20-40mm F/2.8 Di III VXD は広角端で17cmまで寄れるので、最短撮影距離を意識する事無く撮影できました。
ボケを大きくする要素は3つ、F値、焦点距離、被写体までの距離、ですが、近くに寄って撮れば、大きなボケを表現に活かす事ができます。
尚且つ、広角ズームは背景をどれくらい入れるかをズームを使って調整できる事も大きなメリットです。
作例は望遠端と広角端それぞれ撮影してみて、シンプルな構図と丸ボケの美しさから40mmで撮影したカットを採用しました。
河川沿いを散歩していて見つけた、ちょっとした光景ですが、背景がどのくらい入るかなどを考えながらのんびりと撮るのも楽しいものです。はたから見れば、いい年のおじさんがカメラを構えてああでもないこうでもないする姿は少々滑稽かもしれませんが、運よく人通りも無かったので、思う存分シャッターを切るまでの時間を楽しめました。
下の作例は同じ場所でワイド端の20mmを使っていますが、背景の入り方が大きく変化してだいぶ趣の違う写真になっているとおもいます。皆さんはどちらがお好みでしょうか?
旅の途中、見知らぬ街で入るいい雰囲気の食堂や喫茶店で写真を撮った事がある方も多いのではないでしょうか。
作例は歩き疲れてちょっと休憩した際に撮影しました。なんてことのない一瞬ですが、逆光によりできたメガネのレンズの影が、何となく面白くてシャッターを切った一枚です。20mmにより背景が広々とフレーミングできる上、高い近接能力と明るいF値のおかげで超広角レンズとは思えない大きなボケとなっています。
何より座ったままでも広い範囲を構図に納める事ができるので、旅先でのちょっとしたテーブルフォトにもぴったりです。
手前の金網をボカして入れる事で、写真に雰囲気を出す効果を狙って撮影しています。
連なる直線をメインの被写体に据えているので、同じく直線で構成された金網がいいアクセントになったのではないでしょうか。
一般的に標準レンズと言われる50mmよりもわずかに画角が広い40mmは最近人気の焦点距離で、個人的にもとても使いやすく感じます。惜しいのは、明るいとは言えf2.8、レンズによってはf1.2などといった明るいF値がある、単焦点レンズのような極端な表現はできない事です。
現代のミラーレスカメラ用レンズらしく、超広角を含む焦点距離でも開放から非常にシャープで高い解像感を持っています。
特にズーム域のちょうど中間となる30mm前後は描写性能が高くなると感じました(作例は29mm F2.8で撮影)。
望遠端や広角端ではわずかに画質が低下しますが、それでも高いレベルの描写性能を持っている事に変わりありません。
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開放から周辺部まで均質に高い解像力を持っており、周辺部での像の流れや眠さもほとんど感じられません。
作例では私の好みで周辺光量補正をOFFにしてあるので周辺部が少し暗くなっていますが、勿論、補正をONにすればほぼ均一な明るさで撮る事も可能です。
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逆光など明暗差が激しい場合にわずかにフリンジが発生する事がありました。
発生の割合が高い訳ではなく、激しく発生する訳でもないので、写真として問題となる事は少ないでしょう。画像処理による除去も比較的簡単にできそうです。
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逆光の際にフレア/ゴーストが発生する事がありました。
レンズ枚数が多いズームレンズらしい、少しゴチャゴチャとしたゴーストなので、撮影条件や被写体によっては気になるかもしれません。風景などでフレアやゴーストをどうしても避けたい場合は、手や板のようなものを使って別途ハレ切する必要がありそうです。
新しいコンセプトのレンズであり、比較対象を選ぶのに苦労しますが、先ずは同社の広角ズームレンズ17-28mm F/2.8 Di III RXDを挙げてみます。
通常35mmまでで設計される大口径広角ズームですが、望遠端を28mmとする事で軽量コンパクト化を計ったレンズで、望遠端をほぼ標準の40mmとしている20-40mm F/2.8 Di III VXDとはコンセプトが大きく異なるレンズです。
どちらを選ぶかは17mmに重きを置くか、40mmに重きを置くかにつきますが、一般的に使いやすいのは20-40mmだと思います。又、近接性能に強く、重量が50gほど軽い点も見逃せません。
TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD | TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD | |
---|---|---|
画角 | 94°30'- 56°49' | 103°41'-75°23' |
重さ | 365g | 420g |
最短撮影距離 | 0.17m (WIDE) / 0.29m (TELE) | 0.19m (WIDE) / 0.26m (TELE) |
最大撮影倍率 | 1:3.8 (WIDE) / 1:5.1 (TELE) | 1:5.2 (WIDE) / 1:6 (TELE) |
今回のレビューは基本的に写真用レンズとして行いましたが、軽量でコンパクトな広角レンズという位置づけなら、TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXDは動画用レンズとしても使い勝手が良さそうです。
ジンバルに搭載する事を考慮した軽量な広角レンズとしてはSONY FE PZ 16-35mm F4 Gがあります。パワーズームを搭載しているので、同社のシネマカメラに取り付ければカメラ側から電動ズームによる操作が行えるなど、動画用としてメリットが多いレンズです。シネマカメラSONY FX30との組み合わせならブリージング補正が効く事も見逃せません。
TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXDの利点はコストパフォーマンスの高さとF2.8の明るさ、軽量コンパクトである事ですが、動画用に限定して考えるとかなり迷うライバルレンズと言えます。
TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD | SONY FE PZ 16-35mm F4 G | |
---|---|---|
画角 | 94°30'- 56°49' | 107°-63° |
重さ | 365g | 353g |
最短撮影距離 | 0.17m (WIDE) / 0.29m (TELE) | 0.28(W)-0.24(T) |
ブリージング補正 | 非対応 | 対応 |
35mmを中心としたスナップ用レンズとして考えると、スペック的にしっくり来るレンズです。
特に誇張される遠近感を活かした街中のスナップなどに最適で、シャッターチャンスを狙った撮影だけでなく、遠近感の誇張を活かした表現も楽しめるレンズとなっています。
オートフォーカスが高速な事もスナップに使いやすい要因のひとつです。
一般的に「標準」と言われる50mmを含まないデメリットが感じられる事もあります。
今回のテスト撮影でも、特に望遠っぽい表現をしたいと思った際には、画角的にもボケ感的にも40mm f2.8は微妙に物足りないケースがあり、変な言い方ですが50mmがレンズの中心に据えられる事の意味を再認識させられる結果となりました。
今回は試しませんでしたが、APS-Cサイズセンサーを搭載したVLOGCAM ZV-E10やシネマカメラのFX30などと組み合わせれば30mm~60mm相当の標準ズームとなるので、そういった使い方も念頭に置いているのかもしれません。
広めの画角がメリットとなる、シャッターチャンスを優先したスナップシューターとしておすすめのレンズだと感じました。
じっくりと表現を楽しむには、単焦点レンズなどと比較して少し物足りないケースもあるかもしれませんが、高速なAFとコンパクトなサイズ、ワイドな画角はシャッターチャンスをものにするにはぴったりです。
ブレの目立たない焦点距離である事、ジンバル撮影に向いている超広角を焦点域に含む事、自撮りしやすい20mmを含む事などから、VLOGや動画撮影にもおすすめのレンズと言えるでしょう。
・50mmを含まない新ジャンルの標準ズームです
・大口径f2.8通しのレンズとしては非常にコンパクトにデザインされています
・近接性能にも優れており、ワイドマクロとしても使いやすいレンズです
・高速なAFとシャッターチャンスに強い画角でスナップにぴったりです
・ジンバルや手持での動画撮影にも向いています
・APS-Cサイズセンサーカメラに装着して明るい標準ズームとして利用しても良さそうです
レンズ選びの参考にしていただければ幸いです。
【商品情報】TAMRON(タムロン)20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)
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