TAMRON(タムロン)50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD の実写レビューです。
フルサイズに対応した標準域をカバーする超望遠ズームレンズの、解像感、フリンジなどの画質、オートフォーカス性能や操作性などの使用感を、実際に撮影した実写をもとにレビューします。
たった50mm、されど50mm。標準域を含む広いズーム比は、望遠レンズと呼ばれる焦点域を一本のレンズで全てカバーできる、利便性の高いレンズです。
特徴/操作性
標準50mmを含む広いズーム比は、幅広い撮影目的に対応
コンパクトな設計によりフットワーク良く撮影できる
TAMRON(タムロン)こだわりのフィルター口径67mm
実写レビュー
最初に驚いたのは利便性よりも高い光学性能
標準50mmを含む事と、高い近接性能により多彩な表現が可能
コンパクトな設計は天候に左右されるフィールド撮影でも使いやすい
純正と比べても違和感なく使えるオートフォーカス
画質
解像感
フリンジ
近接での解像感
ライバルレンズ、旧製品との比較
TAMRON 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD との比較
SONY FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS
おすすめしたいユーザーとウイークポイント
望遠レンズでの撮影を1本のレンズで行いたいユーザーにおすすめ
野鳥、動物撮影から、風景写真までに対応
シチュエーションによってはAF/MF切り替えスイッチが無い事がウイークポイントに
まとめ
400mmまでをカバーする超望遠ズームと言えば100mmからスタートするのが一般的ですが、TAMRON(タムロン)50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD はワイド端を50mmからとする事で、ズーム比8倍という望遠ズームとしては異例の高倍率を実現しています。
個人的には同じサイズで望遠端が500mmになる、ないしはテレコンバーターが使えるなど、長焦点側の強化をした方が良いのでは?と思ったのですが、実際に使用してみるとワイド端が強化される事でより幅広い被写体に対応できるようになったと感じました。
そのひとつが風景写真で、50mmから使える事で自然な広がりのあるフレーミングが可能となり、24-70mmの標準ズームとのつながりも良く、400mmの強力な圧縮効果やボケの大きさを利用できるので、面白い写真が撮れそうな予感がします。
4倍から8倍にズーム比が広がっているにもかかわらず、サイズが殆ど変わっていないのも秀逸です。
今回のテスト撮影では、雨が降る中、傘をさしながらの不自由な撮影を余儀なくされましたが、テストボディに使ったα7IVとの合計重量は1.8kgほどで、多少無理すれば片手でもシャッターを切る事ができました。
レンズ全長が183.4mmと比較的短いので、一般的なショルダータイプのカメラバックに縦に収納できるのも、持ち運びの面で大きなメリットとなります。
多くのTAMRONレンズが採用するフィルター口径67mmを採用しているのもポイントです。
ソフトやC-PL、NDなど一定以上レベルのカメラマンならフィルターワークを積極的に行う方も多いと思いますが、画質に極力影響を与えないようなフィルターを選択するとそこそこの値段になってしまうので、1サイズで各レンズにフィルターを使いまわせると、コストの面でも非常に助かります。
望遠レンズのテストではお馴染みの多摩動物公園で撮影を行いました。台風通過直後でいつ雨が降り始めるかわからにような雲行きだったので、先ずは野外の動物から撮影を始めます。アップダウンの多い園内を、少々慌てながら移動する際には、TAMRON 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD の軽量コンパクトさが大きな武器となりました。
レンズに慣れる為に、最初は比較的動きの少ない動物から撮影しましたが、動物瞳AFの合焦も問題無く、いつもどおりのTAMRONレンズの使用感です。
驚いたのはその描写性能の高さで、8倍に拡張されたズーム比を感じさせない高い解像感を持ち、曇り空の低コントラスト下でもエッジの聞いたシャープな描写に先ずは驚かされました。
ほどなく土砂降りの雨となりました。幸いにも多摩動物公園には屋根のある観察スペースもあるので、そういった場所を使って撮影を続けました。
作例は雨宿りにつかったユキヒョウ舎から撮影しましたが、針葉樹の葉が細かい部分まで破綻なく解像されていて、コントラストも高くレンズ性能の高さがうかがえます。
先に述べたとおり、ワイド端が50mmである事から風景写真など幅広い用途に対応できるレンズだと思いますが、解像感などの描写性能の部分でも安心して使えそうです。
ワイド端が50mmからとなった事で、100mmではかなわない広がりのある写真が撮れるようになりました。ボケも綺麗で近接にも強いので、標準マクロとして背景を大きく取り入れた写真を撮る事ができます。
作例は雨から逃れて昆虫館で撮りました。多摩動物公園での雨天の撮影は、普段はみられない動物の表情が撮れる魅力もあるのですが、機材を雨からまもりながらの撮影はいつもより疲労がたまるのも事実です。
そんな時は昆虫館やコアラ館など屋内展示をしている場所で撮影すれば、人もすくなくて撮影も晴れた日とあまりかわらずできるので、おすすめです。
TAMRON 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD の最大撮影倍率は、ワイド端で1:2、テレ端でも1:4と高いレベルにあるので、望遠マクロとしても使えます。
昆虫館のチョウは人に慣れているとは言え近づけば逃げてしまうので、300mmを超える超望遠で狙えるのは非常に便利です。
画角が狭すぎてチョウをフレームに入れるのに手こずる際は、ズームをワイド側にして被写体の場所を確認できるのもズームレンズならではの使い勝手の良さと言えるでしょう。
広い敷地を持つ多摩動物公園では400mmでは足りないと感じる事もあります。しかし、雨の中では焦点距離よりもレンズのコンパクトさが大きな威力を発揮してくれました。
作例は傘をさしながら撮影しましたが、なんとか普段通りにフレーミングする事ができたのは、カメラ、レンズ合わせても2kgを大きく下回る重量のおかげです。雨の中ならではの猛禽類の表情を捉える事ができました。何度も訪れた事がある動物園だったので、400mmに合った被写体を選びながら効率良く回れたのも、悪天候を乗り切れた要因です。
雨の撮影はかなり不安だったのですが、雨の日にしか見られないような動物たちの表情が見られて、来て良かったと思えるテスト撮影になりました。
濡れネズミになりながら逃げ込んだ先は、昆虫館と並んで雨を避けられる展示のコアラ館です。
人気の展示スペースですが、平日の午前中、しかも外は大雨という事で見学者もまばら、スヤスヤと気持ちよくお昼寝中のコアラを自由なアングルで快適に撮影できました。
今回の撮影は、レッサーパンダ(展示前で作例は撮れず)→ユキヒョウ→オランウータン→コアラ館→フライングゲージ(猛禽類)→昆虫館(作例は順不同)とかなりの距離を歩きましたが、軽量コンパクトな機材のおかげで負担は少なかったと思います。
被写体認識は動物と鳥を切り替えながら使いましたが、純正レンズと遜色ない快適な使い心地でした。
若干フォーカスがもたつく事もありましたが、光の少ない悪条件と望遠側F6.3という暗いF値が原因と思われ、純正レンズでも同様の結果だったと思います。
手前の柵までの距離が長いとオートフォーカスの性質上どうしても柵にピントが合ってしまう事などは、他メーカーのカメラやレンズでも起きる事なので、いつもどおりの使用感で違和感なく撮影できました。
鳥認識も問題なく使えました。作例ではレンズと柵までの距離を短く取り、柵を大きくアウトフォーカスにする事で鳥を正確に認識するようにしています。
こんなちょっとした工夫が、動物園で何回か撮影していると自然と身についてきました。
雨の中、人もまばらだった事もあってか、いつも以上に動物たちのサービスが良かったように感じます。「お!こんな雨の中に人が来たぞ!」というように興味津々にこちらを注目される事も多かったので、長靴やカッパ、機材をまもるビニール袋などの準備さえすれば雨の動物園撮影、おすすめです!
8倍の高倍率ズームでありながら性能的にもハイレベルで、風景写真など高い解像感を要求される撮影にも十分に対応できる描写性能を持っているレンズです。
作例1を拡大して解像感を見てみます。
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解像感だけでなくコントラストが高いのも特徴で、曇り空のフラットな光の中でも眠くなる事無くくっきりと写るのも風景向きと言えます。
超望遠ズームというと、何となく野鳥や飛行機、モータースポーツなどの動きものを撮るレンズというイメージがあったのですが、あまり先入観にとらわれずに幅広い被写体で使ってみたい、そんな気分にさせてくれるレンズです。
テスト撮影が雨の中という事もあり、あまり激しい明暗差での作例が少ないのですが、今回のテストではフリンジの発生を確認する事はできませんでした。
作例を拡大してフリンジの発生を確認してみます。
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XLD、LDレンズを適切に配置し、色収差を良好に除去してあります。
余談ですが、作例は遊具の下で雨を避けるオランウータンですが、先のユキヒョウなどは雨が強くなったら直ぐに飼育舎の中に入ってしまいましたが、オランウータンは雨に直接当たらない場所で大雨を楽しんでいるような節があり、動物によって反応の仕方が違うのが少し面白かったです。
TAMRON(タムロン)50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD は高い近接能力を持っている事も特徴のひとつです。
ここでは近接時の解像感を見てみたいと思います。
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近接でも高い解像感を維持しています。
50mmからの画角、高い近接能力、軽量コンパクトな上、高い描写性能を持っている。TAMRON 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD は、スペックだけでなく性能面でも幅広いシチュエーションに対応できるレンズと言えるでしょう。
一言で言えば50mmが必要か不要かの違いになります。今回の動物園での撮影で50mmの出番は少なかったですが、トリミングで逃げる事ができる望遠と違い、広い範囲が撮れるという事はレンズでつくりだすしかないので、着実に用途や使用範囲が広がる事は間違いないでしょう。
TAMRON 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD を、100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD と比較した際のウイークポイントは価格で、倍近い値段の差をユーザーがどう判断するかがポイントとなるかもしれません。
SONY FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS は、高い描写性能で定評のあるEマウントユーザーには定番の望遠レンズです。
伝統的なスペックはそれだけ設計しやすいとも取れ、無理のない安定した描写と、900gを切る一般ユーザーでも扱いやすい重量、サイズが魅力です。
しかし、野鳥や今回テストローケーションに選んだ動物園などで使おうと思うと、望遠端300mmはいかにも中途半端で、もう少し大きく撮れればという欲求不満がたまるレンズとも言えます。TAMRON 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD を使えば、より本格的な望遠撮影が可能となるので、写真を趣味にして望遠レンズを使った撮影をメインに据えるなら、TAMRONを選ぶのが正解かもしれません。
一般的に「望遠」と呼ばれる焦点域を殆ど全てカバーしている、望遠レンズを使った撮影を1本で全てカバーできるレンズという印象です。
高倍率であるおかげで、開放F値は明るくはありませんが、長焦点側の400mmを使えばボケや背景の整理はお手の物なので、F2.8通しの大口径レンズが得意とする部分を、ある程度補う事が可能なのも強みと言えます。
ひと昔前であれば、開放F値の暗い、F値が可変するズームレンズは性能的に一段劣るものが多かったですが、TAMRON 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD は性能的にもかなりハイレベルなので、そういった意味でも望遠撮影を1本で全てカバーできるレンズと言えるでしょう。
望遠というと真っ先に思い浮かぶ被写体は野鳥や鉄道、モータースポーツなどですが、ズーム域の中に50mmが含まれる事と最大撮影倍率が1:2である事から、本格的な風景写真にも対応できる懐の広さを持ったレンズです。
風景写真に持っていける超望遠レンズの登場で新しい世界が開ける気がして、個人的にこれは結構大きな事に思えました。
かつて、風景写真を得意とした写真家の竹内敏信先生も300mm F2.8といったそれまで風景写真ではあまり使われなかったレンズを積極的に使っていた記憶がありますが、より気軽に使える超望遠ズームレンズの登場に、新しい表現の可能性を感じます。
今回のテスト撮影で少し不満に思えたのは、レンズ鏡筒にAF/MFの切り替えスイッチが無い事です。
動物園の撮影では、柵や生垣など被写体との間に邪魔者が入ってしまう事が多く、MFに切り替えて撮影しなければどうしようもない事態が多々発生します。
カスタムスイッチに機能を割り当てればいい事ですが、個人的にはわかりやすくAF/MFの切り替えスイッチがあればいいのに、と少し残念に思いました。
・ズーム域を標準50mmからとする事でより幅広いシチュエーション、被写体に対応できる望遠ズームレンズです
・ワイド端1:2、テレ端1:4 の高いマクロ性能を持っています
・他TAMRONレンズと組み合わせてフィルターワークがやり易い、フィルター口径67mmです
・8倍のズーム比を持つレンズとは思えない高い描写性能を持っています
・オートフォーカスや被写体認識についても純正と比較して遜色ないレベルです
レンズ選びの参考にしていただければ幸いです。
【商品情報】TAMRON(タムロン)50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
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