グレードの高いレンズからラインナップをスタートしたCanon(キヤノン)RFレンズの中で、RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM は待望のリーズナブルな価格帯の広角ズームレンズです。
今回のプロフェッショナルレビューはフォトグラファー伊藤亮介さんにコンパクトで取り回しのいい広角ズームをレビューしていただきます。
絞り込んだ、パンフォーカスに近い状態でのフレーミングは、風景写真をライフワークとする伊藤亮介さんの得意とするところで、作例の多くがF値の暗いズームレンズの使い方としてとても参考になります。手を使ったハレ切りなど、ちょっとした工夫でレンズの性能を最大限活かす方法も必見です!
【はじめに】
【基礎解説・特徴】
実写レビュー!
ゴーストの発生とその対処法
RF広角ズームレンズ3本を撮り比べ!
RF15-35mm F2.8 L IS USM(15mm・35mmで撮影)
RF14-35mm F4 L IS USM(14mm・35mmで撮影)
RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM(15mm・30mmで撮影)
作例ギャラリー
まとめ
広角・標準・望遠の各ズームレンズを揃える時に、従来では大三元レンズと小三元レンズをひとつの基準にして考えるのが一般的だったのではないだろうか。しかし、キヤノンのRFレンズにおいては、これ以外にもうひとつの選択肢が加わった。
今回登場したRF15-30mm F4.5-6.3 IS STMと、すでに発売されているRF24-105mm F4-7.1 IS STMとRF100-400mm F5.6-8 IS USMを揃えると、超広角域の15mmから超望遠域の400mmを3本のレンズでカバーすることができる。いずれも開放F値は可変タイプのモデルで、価格を抑えつつ携行性に優れた廉価版レンズとなっている。
このような開放F値が比較的暗い製品をシリーズとして揃えられたのは、装着するカメラがミラーレス機であることがひとつのポイントになりそうだ。ファインダーへダイレクトに反映される一眼レフカメラとは違い、ミラーレスカメラの場合はEVFや背面の液晶モニターがゲインアップされて、実際の撮影でレンズの暗さによる視覚的な影響を受けることはない。もちろんレンズの開放F値が暗ければシャッター速度は遅くなるものの、そこは進化した高感度性能と強力なボディ内手ブレ補正機能などが搭載されているカメラを使ってカバーしてほしい、というメッセージが込められているのだろう。
レビュー用として届いたRF15-30mm F4.5-6.3 IS STMを早速手に取ると、単焦点レンズと錯覚するような軽さにまず驚かされる。あらためてスペックを確認してみると、その重さは390g。一般的な大口径タイプの単焦点Lレンズよりもよっぽど軽く、機材の重さが撮影時の負担になるのを軽減してくれる。レンズ本体はシンプルにまとめられていて、レンズ鏡筒部に必要最低限のスイッチが設けられスッキリとした仕上がりになっている。
ちなみに前述した廉価版シリーズのRF15-30mm F4.5-6.3 IS STMとRF24-105mm F4-7.1 IS STM、RF100-400mm F5.6-8 IS USMの3本の総重量は1420gになる。携行性に優れている小三元タイプのレンズRF14-35mm F4 L IS USMとRF24-105mm F4 L IS USM、そしてこれにRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMを加えた総重量の2610gと比較すると、約1.2kgも軽い。
さらにもうひとつ注目したいのは、RF15-30mm F4.5-6.3 IS STMとRF24-105mm F4-7.1 IS STM、RF100-400mm F5.6-8 IS USMのフィルター径がすべて67mmで統一されている点だ。フィルターを多用する風景の撮影などでは、レンズの口径がバラバラだとサイズごとにフィルターを買い揃えなければならず、意外と大きな出費になることも多い。しかしこれら3本のズームレンズなら、PLフィルターやNDフィルターをそれぞれ1枚ずつ用意すれば使い回すことができるのも大きなメリットといえる。
ズームリングをテレ端30mmにした時と、ワイド端15mm時にした時の比較。
30mmの時にはレンズが繰り出さず、15mm時にレンズの繰り出し量が最大となる。ただ、繰り出す量は僅かなので、カメラバッグなどに収納するときに特段困るようなことはないだろう。
EOS R5に装着したRF15-30mm F4.5-6.3 IS STM。サイズ的にコンパクトに纏められ、重量面でも負担にならない。レンズ先端部のリングはコントロールリングとピントリングを兼用していて、鏡筒側面のスイッチでどちらかの機能を割り当てる。
フィルター径はスタンダードな67mm。保護フィルターと比べるとPLフィルターの価格は高く、サイズアップするごとに価格が跳ね上がる。フィルターを多用するユーザーにとっては意外と見逃せない点だ。
手ブレ補正スイッチの上部に設けられているのが、フォーカス/コントロール切り換えスイッチ。ピントリングとしての機能も兼ねているため、リングを回してもカチカチというクリック感はなくスムーズに動く。
超高画素機のEOS R5に対してRF15-30mm F4.5-6.3 IS STMがどのように描写するのか興味津々だったが、結論からいえば解像感の高い写真を次々と生み出してくれた。ズーム全域にわたって解像力に不満はなく、あえていえば画面中心部と比べると周辺部で若干の甘さは感じるものの、超特大プリントにでもしない限りほとんど気にならないレベルの仕上がり具合になった。
その中で唯一気になったのは、レンズ前面に強い光が当たるようなシーンでの撮影だ。ゴーストが発生する場面が何度かあり、本レンズにフードの装着は欠かせない。ただ、フード自体は浅く遮光効果はそれほど期待できないため、場合によっては手のひらなどでレンズ前面に光が当たらないように配慮する必要がある。とはいえ超広角域での撮影ではかざした手が写り込むこともあり、その点については少々悩ましいところだ。
本レンズはMFに切り替えると、ワイド端でマクロ撮影も可能になる。ただ、屋外で花などを写す時には風で揺れていることが多いため現実的にはなかなか難しく、カメラ側のメニューでMFへ切り替えるといったひと手間も必要になる。MFでのマクロ撮影は、室内の静止している花や小物などの撮影方法と考えておいた方が無難だろう。
Canon(キヤノン)EOS R5・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・15mmで撮影
絞りF14・1.6秒・ISO100・WB太陽光・JPEG
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超広角レンズは狭い場所で使うと、描写の面白さが際立つ。ここでは狭い切り通しで、苔むした崖を誇張させて表現した。このような時に少し奥側にピントを合わせると、被写界深度が足りなくなって画面右端の崖はボヤけて写ってしまう。右端の崖をしっかりと描写するには、かなり手前でピントを合わせて絞り込んで写すのがコツだ。
Canon(キヤノン)EOS R3・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・15mmで撮影
絞りF8・1/125秒・ISO800・WB太陽光・JPEG
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都心のビル群を15mmの画角で見上げて撮影。このような捉え方ができるのも超広角レンズならではだ。被写体とは少し距離があるため、f8程度まで絞ればパンフォーカスで表現することができる。
Canon(キヤノン)EOS R3・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・15mmで撮影
絞りF8・1/160秒・ISO1600・WB太陽光・JPEG
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ビルの合間を縫って走るゆりかもめ。画角が広く、サイド方向からでもゆりかもめの編成すべてを一枚に収めることができた。このようなシーンでは被写体ブレを起こさないように、できるだけ速いシャッター速度で写したい。
Canon(キヤノン)EOS R5・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・17mmで撮影
絞りF18・0.4秒・ISO100・WB太陽光・JPEG
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夕暮れの岩礁が連なる海岸。パンフォーカスで描写し、かつ波をスローシャッターで捉えるためにf18まで絞り込んで撮影した。カメラのデジタルレンズオプティマイザを「標準」にして撮影すると、先鋭感の高いクッキリとした描写が得られた。
Canon(キヤノン)EOS R5・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・30mmで撮影
絞りF6.3・1/125秒・ISO800・WB太陽光・JPEG
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AFの最短撮影距離付近で捉えたカマキリ。MFに切り替えるとワイド端の15mm時に0.128mまで近づける。その場合はカメラ側でMFへの切り替えも必要となり、動く昆虫など速写性を求められるシーンでは対応するのが少々難しい。
Canon(キヤノン)EOS R3・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・30mmで撮影
絞りF6.3・1/30秒・ISO1600・WB太陽光・JPEG
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色収差が目立ちやすい場面ではあったものの、カメラ側のレンズ補正機能をすべてオンにして撮影すると色収差はほとんど発生せず、絞り開放の近接撮影でもシャープに解像して納得のいく描写になった。別記事で同じ場面をRF24mm F1.8 MACRO IS STMでも撮影しているので、解像感や背景のボケ具合などを比較してほしい。
【共通】Canon(キヤノン)EOS R5・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・15mmで撮影・絞りF14・1/5秒・ISO200・WB太陽光・JPEG
夏の強い光が差し込む切り通し。崖に光が当たった部分を中心にフレーミングしていると、ゴーストが発生していることに気がついた。そこでレンズ前面に光が当たらないよう手のひらで覆ったところ、ゴーストはなくなって思い通りの描写になった。ちなみに手をかざして撮った1枚目には、右上部に自身の手が少しだけ写り込んでいたことも付け加えておこう。超広角レンズの撮影でハレ切りをする時は、余計なものが写り込んでいないか撮影直後にしっかりとチェックしておきたい。
Canon(キヤノン)EOS R5・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・23mmで撮影
絞りF8・1/800秒・ISO100・WB太陽光・JPEG
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沈みゆく太陽と海辺の表情を手持ちで写す。海岸の砂の表情が実にキメ細かく再現されていて、レンズが持つ解像性能の高さを実感する。太陽は雲によってディフューズされていたので、このシーンでゴーストは発生していない。
Canon(キヤノン)EOS R5・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・30mmで撮影
絞りF8・1/500秒・ISO100・WB太陽光・JPEG
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同じシーンを30mm域で撮影。テレ端でも描写力の高さは変わらず、シャープ感のある心地いい写真に仕上がった。
RFレンズの広角ズームレンズには、大口径タイプのRF15-35mm F2.8 L IS USM、F4通しのRF14-35mm F4 L IS USM、そしてRF15-30mm F4.5-6.3 IS STMの3本がラインアップされている。その画角や解像力の違いを確認するために、同じ場面を3本のレンズでそれぞれワイド端とテレ端で撮り比べてみた。
画角については、RF15-35mm F2.8 L IS USMとRF15-30mm F4.5-6.3 IS STMが15mmスタートなのに対し、RF14-35mm F4 L IS USMのみ14mmスタートになっていて、現時点ではRFズームレンズにおける最広角の焦点域を持つ。広角レンズで1mm違うと画角の変化が大きいことは、作例を見ればおわかりいただけるだろう。
一方、解像力においてワイド端・テレ端でもっとも優れていたのがRF15-35mm F2.8 L IS USMだった。画面中心部はもちろん、周辺部でもしっかりと解像し、他の2本のレンズとは一線を画す描写だ。ただ、誤解のないように補足すれば、RF14-35mm F4 L IS USMとRF15-30mm F4.5-6.3 IS STMの描写が悪いという訳ではなく、RF15-35mm F2.8 L IS USMの解像力が一歩抜きん出ている、ということになる。解像性能については結果的に価格順となったが、RF15-30mm F4.5-6.3 IS STMはRF14-35mm F4 L IS USMに肉薄する描写力を備えている。
【3レンズ共通】Canon(キヤノン)EOS R5・絞りF14・0.6秒・ISO200・WB太陽光・JPEG
Canon(キヤノン)RF15-35mm F2.8 L IS USM 15mm作例
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Canon(キヤノン)RF15-35mm F2.8 L IS USM 30mm作例
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ワイド端・テレ端ともに、画面全域にわたって高い解像感が得られた。ただ、他の2本のレンズと比べると大きくて重く、真夏日に汗だくになって撮影している自分にとっては、その重さに少々辟易したのも事実だ。
Canon(キヤノン)RF14-35mm F4 L IS USM 14mm作例
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Canon(キヤノン)RF14-35mm F4 L IS USM 35mm作例
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他の2本のレンズとは異なり、広角端が14mmスタートのレンズ。広角端が1mm分広いと、画角にこれだけの違いが出る。RF15-35mm F2.8 L IS USMと比べると、画面中央部・周辺部ともにわずかに解像感は劣る。
Canon(キヤノン)RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 15mm作例
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Canon(キヤノン)RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM 30mm作例
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画面周辺部の描写は、RF14-35mm F4 L IS USMよりも少し甘く感じられる。ただ、総合的に必要十分な描写力を持ち合わせているので、実用上はそれほど気にする必要はないだろう。
Canon(キヤノン)EOS R5・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・15mmで撮影
絞りF8・1/60秒・ISO100・WB太陽光・JPEG
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木の一部分に光が当たる様子に惹かれてカメラを向ける。単純化した構図で切り取ると、硬い幹や葉の質感がキッチリと描写されて満足のいく仕上がりになった。
Canon(キヤノン)EOS R5・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・15mmで撮影
絞りF6.3・1/6秒・ISO5000・WB太陽光・JPEG
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手持ちで夜の風景を写す。EOS R5に装着した時には、協調制御により最大で7段分の手ブレ補正効果が得られる。この強力な手ブレ補正機能のおかげで、低速域のシャッター速度でもブレずに写すことができた。ライトの光条は美しく描写されているが、その周辺部は少し滲んだ描写となり小さなゴーストも発生している。
Canon(キヤノン)EOS R5・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM・22mmで撮影
絞りF18・1/4秒・ISO100・WB太陽光・JPEG
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夕焼けの時間帯に不思議な形をした雲が出現した。このような時には急いで撮影しないと、雲の赤みがすぐに薄れてしまう。雲だけを撮ると単調になるため、手前の岩礁部を入れて空間性を意識しながら作画した。瞬時にさまざまなフレーミングに切り替えられるのもズームレンズの強みだ。
・RF15-30mm F4.5-6.3 IS STMは予算をできる限り抑えたい、少しでも軽い機材を望むユーザーに最適なレンズ
・高画素機にも対応した高い解像力を持つ
・レンズ前面に光が当たるようなシーンでは、ゴーストの発生に注意する。実際にゴーストが発生している時には、ハレ切りをして対処する
・撮影シーンは限られるものの、MFに切り替えればマクロ撮影も可能に
・最大で7段分の手ブレ補正機能により手持ち撮影の幅が広がる
・レンズを購入する前に、フィルターの口径も必ずチェックしよう
・屋外で雨天時などの使用機会が多い場合は、防塵防滴仕様のLタイプ広角ズームレンズの選択がベター
【商品情報】Canon(キヤノン)RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM
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