Nikon(ニコン) FXフォーマット(フルサイズセンサー)カメラ用のマイクロレンズAF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDの実写レビューです。
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDは2006年3月発売のNikon(ニコン) 一眼レフ用のマイクロレンズの定番として、15年近く販売が続けられているベストセラーレンズです。
今回は定番の一眼レフカメラ用のマイクロレンズを最新のフルサイズミラーレス一眼カメラZ7IIに取り付けて、描写性能だけでなく、ミラーレスカメラで使用する際の相性、使い勝手などを実写レビューを中心にご紹介します。
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特徴/操作性
Nikon(ニコン) AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDの特徴は、高い描写性能を持っている事です。Nikon(ニコン)のマイクロレンズはマニュアルフォーカスレンズの時代から性能には定評が有りますが、AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDも高い描写性能を持ち、高画素のデジタルカメラでの使用も視野に入るレベルとなっています。
今見るとスペック的には大きな特徴の無い中望遠のマイクロレンズに見えますが、発売当初はメーカー公称値で3段分の手ぶれ補正機能や、ナノクリスタルコートといったNikon(ニコン)の最先端の技術を投入して設計されたレンズでした。
今回のテストは4575万画素のフルサイズミラーレス一眼カメラで行いましたが、噂に違わぬ高い描写性能を見せてくれました。
最短撮影距離は0.314m、等倍までのマクロ撮影が可能で、花、昆虫、商品撮影等のクローズアップ撮影や、程よい焦点距離、遠近感を活かしたポートレート撮影等、多目的に使用できるレンズです。レンズ内モーターの採用で、比較的速いオートフォーカススピードもレンズの汎用性を広げてくれていると思います。
残念なのはマニュアルフォーカスの使用感で、個体差もあるとは思いますが、今回のテストでは、やや滑らかさに欠け微調整がしずらいという印象持ちました。
余談ですが、Nikon(ニコン)のデジタルカメラの大半は、絞り値の表示に実効F値を採用している為、近接撮影では開放でもF2.8とは表示されず、実効F値が表示されます。等倍に近い撮影では開放でもF5.6程度の表示がされますが、故障では無いので注意しましょう。
鏡筒の操作部はフォーカスリング、フォーカスモード切替スイッチ、手ぶれ補正スイッチ、そしてマイクロレンズらしくフォーカス制限切替スイッチが付いています。
フォーカス制限スイッチは遠景:∞-0.5m、全ての撮影距離:FULLの二種類で、近距離のみに制限する事はできません。オートフォーカスに対する自信の表れともとれますが、個人的には一般的なマクロレンズ同様、近接のみに限定出来る方が便利な気がします。
フォーカスリングには今では珍しくなってしまった距離窓を備え、リングの動作に連動して表示が動きます。これにより、ファインダーを見る事無く大雑把にピントの距離を合わせておく事も可能です。
フィルター径 |
62mm |
最短撮影距離/最大撮影倍率 |
0.314m/1.00倍 |
最小絞り |
f/32 |
絞り羽根 |
9枚(円形絞り) |
長さ |
116mm |
重量 |
約750g |
実写レビュー
10年以上前に発売された一眼レフ用のレンズですが、今後の使われ方や画質の確認をシビアに行う為、テストボディにはミラーレス一眼カメラのNikon(ニコン)Z 7IIを選択、FTZマウントアダプターを装着して行いました。
作例の共通設定は、各レンズ補正OFF、ピクチャーコントロールはスタンダード、記録モードはJPEGに設定しています。
マクロ撮影の一番人気はやはり花でしょう。個人的には普段はほとんど撮影しない被写体ですが、撮り始めると面白く夢中になってしまいました。
定評のあるNikon(ニコン)のマイクロレンズだけあって開放にも関わらずピント面は非常にシャープです。
撮影しはじめてすぐに、4,000万画素を超えるミラーレス一眼でも性能的に十分対応出来ると確信しました。
15年前には存在していなかった4000万画素オーバーのミラーレス機でも十分通用するシャープネスを持ったレンズです。
開放でも必要十分な解像性能を持っていますが、絞った事でより被写体の質感が際立ち、7IIの性能を引き出せたと思います。色味もNikonらしく派手さはないものの、忠実な色再現でリアルだと思います。
前後共にボケは柔らかく綺麗で、対するピント面はシャープというマクロレンズとして理想的な描写です。
近接撮影はだけでなく、ポートレート撮影でもボケ美しさは写真に好印象を与えてくれるでしょう。
ボケ自体は非常に美しいですが、開放~F5.6くらいまで口径食の影響で点光源がラグビーボール状になってしまいます。次のカットで確認してみましょう。
手前の花のピントが甘い事には目をつぶって頂くとして(笑)、背景の点光源が画面周辺部に向かってラグビーボール状に変形しています。
素直な歪み方なので、それ程気になる事は無いと思いますが、条件によっては目立つ事もあるので、ボケの量と口径食のバランスをみながらある程度絞る必要があるかもしれません。
F8~F11辺りまで絞る事で画質もピークを迎え、尚且つ円形絞りのおかげでボケがちゃんと円形になるので、特に被写界深度が極端に浅くなる等倍に近いマクロ撮影ではこのあたりが使い頃と言えるかもしれません。
スナップに使うには画角が少し狭いですが、Nikon(ニコン)Z 7IIとFTZマウントアダプターを使った組み合わせでも、速く、高精度なAFのおかげで町中のスナップも快適でした。
フォーカス制限を∞~0.5mに入れておけば、ピントが大きく迷う事を防げるので、通常のレンズと同様に一瞬を逃さず撮影する事が出来ます。
フォーカスを制限は近距離のみにする事は出来ないのは残念ですが、∞から最短といった極端な事でなければ問題は無さそうです。
画質
定評のあるNikon(ニコン)のマイクロニッコールという事で、最新の高画素なミラーレス一眼カメラに使っても十分対応出来る描写性能を持っています。作例1の写真を拡大して解像感を見てみましょう。
花びらの内側に生えた産毛もしっかり写っています。作画意図により開放で撮っていますが、少し絞り込めばより克明に描写できるでしょう。
またこのカットはAF精度を確認する為、あえてAFで撮影しましたが、しっかり狙った位置にピントがきています。
ミラーレス一眼カメラは画面全体でオートフォーカスを使う事が出来、必要ならば拡大表示にしてピントを確認する事も出来るので、光学ファインダーの一眼レフよりもマクロ撮影のピント合わせの難易度がグッと下がっていると感じました。
まとめ
Nikon(ニコン) AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDは本来一眼レフカメラ用に設計されたレンズですが、ミラーレス一眼カメラのNikon(ニコン)Z 7IIとの組み合わせでも、専用のZマウントレンズと遜色無いレベルの使用感で使う事が出来、画質的にも高画素のボディに十分通用するレンズだと思います。
今回もマウントアダプターを使っての使用という事で、MFの多用を覚悟していましたが、AFのズピード精度とも満足いくレベルで、良い意味で期待を裏切られました。又、一眼レフ、ミラーレスどちらでも使えるという事もAF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDの強みの一つと言えるのではないでしょうか。
Photo & Text by フジヤカメラ 田中