Nikon(ニコン) AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G の実写レビューです。
スペック的にあまり目立たない一眼レフカメラ用の標準レンズですが、高性能な事から評価が高く愛用者の多いレンズです。
今回は高画素のフルサイズミラーレス一眼カメラNikon Z7 IIに装着して画質やフルサイズミラーレス一眼カメラでの使用感などについて、実写レビューを中心にご紹介します。
Nikon(ニコン) AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G の特徴は、リーズナブルな価格の割に高性能な事です。
2011年6月発売と、一眼レフ用のレンズとしては設計が新しい事もあり高性能で、コストパフォーマンスの高いレンズと言えるでしょう。
例えばF値の暗い標準ズームレンズと組み合わせて2本購入しても、価格的に大口径標準ズームレンズ1本より安くなる上、単焦点レンズは性能的にも高いレベルにあるので、初心者が高性能レンズに触れるという意味でもおすすめです。
いかにも単焦点レンズというコンパクトなデザインは、フィルム時代のレンズを彷彿とさせます。
残念ながらマウントアダプターを使ってZシリーズカメラに装着した際のデザイン的なバランスが良いとは言えませんが、軽量なレンズなので使用上の違和感は感じません。
デジタル一眼レフカメラなら、大柄なD6から比較的コンパクトなD780といった機種まで、デザイン的にも違和感無く装着出来ます。
今回のテストでは、フルサイズミラーレス一眼カメラのZ7 IIを使いましたが、マウントアダプターを介してのオートフォーカスの動きも良好に感じました。
厳密に言えば性能的に専用のZマウントのレンズの方が良好なのは間違いないですが、過去の資産を活かすという意味でも、価格がリーズナブルという意味でも、コンパクトで高性能な一眼レフ用のレンズは価値が高いと思います。
マニュアルフォーカスの操作感も悪くありませんが、今回のテスト撮影ではオートフォーカスが良好だった為、一度も出番がありませんでした。
フィルター径 | 58mm | 最短撮影距離/最大撮影倍率 | 0.45m/0.15倍 |
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最小絞り | F16 | 絞り羽根 | 7枚(円形絞り) |
長さ | 52.5mm | 重量 | 185g |
Nikon(ニコン) AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G は、噂に違わぬ高性能なレンズです。
開放から高い解像度を持ったレンズで、四隅がわずかに甘くなる以外は画質も画面全体で安定しており、価格を感じさせないレベルの高さだと思います。この作例は、絞ってパンフォーカスにしても良かったのですが、遠景をすこしでもボカしたかった事と、ヴィネットコントロールをOFFにして周辺光量を落としたかったので、敢えて開放を選択しました。
開放から安心して使えるハイレベルなレンズです。
画質の良さは解像度だけではありません。Nikon(ニコン)らしい大きく素直なボケにより、背景を大きくボカした単焦点レンズらしい表現を楽しめます。
Nikon(ニコン)の単焦点レンズは、価格による画質の良し悪しやボケ味の違いが少なく、写りに統一感があるので、どのレンズを選んでも外れが少ない気がします。
素直なボケ味は大口径レンズを選ぶ際の重要なポイントの一つなので、こういった部分の良さもAF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gが評価される要因の一つなのでしょう。
標準の50mmはF1.8の被写界深度の浅さと併せて構図をまとめ易く使い易い画角です。
実際に目で見た光景から、ファインダーを覗いた際のイメージが想像し易いのです。
作例1では露出をオーバーにして夏の雰囲気を、この作例では結果的にアンダー気味になった露出のおかげで夏らしさを表現出来ました。凄く暑い日で、すでにへとへとです。
開放F1.8でも十分にシャープなレンズですが、絞る事で画面全体の画質の均一性が増します。
作例1で四隅がわずかに甘くなると書きましたが、F8まで絞り込むと周辺までほとんど画質変化のない、非常に高い解像度を維持する写りになります。
全体的な解像感も向上し、まるでZシリーズ用のSラインレンズを使っているような錯覚すら覚えました。
レンズがコンパクトなおかげで、普段ならカメラを出すのを億劫に思うような被写体にもレンズを向けようと思えます。
コンパクトで取り回しがいいのも、スナップ撮影のような気軽にシャッターを切りたい撮影では強みとなり、撮影枚数に響いて来ますが、AF-S NIKKOR 50mm f/1.8GとZ7 IIの組み合わせはそういった意味でも合格です。
コンパクトでフットワークがいい機材のお陰で、暑い中の撮影もなんとか進めて行けそうな気がして来ました。
Nikon(ニコン) AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G は、絞り込むごとに素直に画質が向上して行きます。
F2.8まで絞って撮影していますが、開放時よりもシャープに抜けが良くなっており、より高画質を求めたいならある程度絞って撮る事を検討していいでしょう。オーバー露出にしてパステル調の色バランスを狙いましたが、Z7 IIの映像エンジンEXPEED 6が期待に応えてくれました。
数値の変化が素直にアウトプットに変化を与えるあたりは、Nikonの道具らしい使い易さを感じます。
近接、開放では若干画が眠くなりますが、柔らかいボケで好感が持てます。
前ボケ、後ろボケともに統一感がある美しいもので、最短撮影距離45cmは標準レンズとしては月並みですが、写りとしてはマクロ的な雰囲気も十分持たせる事が出来ました。
表現の幅が広いのは標準レンズの大きな長所の一つなので、せっかくなら様々な表現にチャレンジしたいところです。
一眼レフ用のレンズらしく、開放では画面周辺部に向かって口径食が発生します。
今回のテスト撮影では背景に丸ボケが多く入るようなシチュエーションは殆どありませんでしたが、場合によっては気になるかもしれません。7枚羽根の円形絞りが採用されているので、ボケの量が十分なら多少絞って使う事を検討してもいいかもしれません。
作例は夕方撮影したものですが、こういったシチュエーションでも低ISO感度で撮れる事も大口径レンズのメリットとして見逃せません。
開放から優れたシャープネスを発揮するレンズですが、絞るとより解像感が増すので、F1.8とF8の作例をそれぞれ拡大して画質を見てみます。
はじめに開放F1.8で撮影した作例1の画像です。
グラウンドの質感が良く再現されていてシャープです。
これよりも左隅になるとやや眠くなって来ますが、ここまでシャープなら通常は問題無いでしょう。
次に作例4のF8まで絞って撮った画像を拡大して見てみます。
画面左上隅の画像ですが、高い解像度を維持しています。
画面隅の画像でありながら、先ほどの画像よりもシャープネスが増しており、非常に高画質なレンズだと思います。
ナノクリスタルコートを使ったレンズでは無いため、逆光耐性が極端に高い訳ではありませんが、設計された時代を考えると悪くない性能を持っています。
完全逆光で撮影した作例を見てみます。
F11まで絞っているので綺麗に光芒が発生しています。
ゴースト、フレアも発生していますが、この条件とレンズの価格を考えると優秀な部類と言えるでしょう。
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Photo & Text by フジヤカメラ 北原