Voigtlander (フォクトレンダー) のマイクロフォーサーズマウント用、F0.95の中望遠レンズ NOKTON 60mm F0.95 MFT の実写レビューです。
Voigtlander (フォクトレンダー) はこれまで、マイクロフォーサーズ用に、F0.95の大口径レンズを4本ラインナップして来ましたが、NOKTON 60mm F0.95 MFT は、その第5弾となるレンズです。
初めてレンズを手にした感想は「デカ!」でした。
f0.95という、極端に明るいf値を実現する為には、レンズは必然的に大きくなってしまいます。その対価として NOKTON 60mm F0.95 MFT は、マイクロフォーサーズマウントのレンズの中でも、トップクラスのボケの量を誇るレンズとなっているのです。
フジヤカメラのブログを3年程やって来て、気付いた事があります。それは「デカいレンズにハズれ無し」です。
ブラックマジックデザインポケットシネマカメラ4Kや、Panasonic GH5 などの、動画ユーザーが好んで使うカメラが、マイクロフォーサーズマウントを採用しています。
Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 60mm F0.95 MFT は、動画ユーザーに、フルサイズ並みのボケを提供する、という意味でも価値のあるレンズで、メーカーもそういったユーザーを想定して商品開発をしているようです。
動画向きに、絞りのクリックをキャンセルする機能が付いているのは、そういった姿勢のあらわれだと思います。
レンズの大きさ、重さを考慮して、テストカメラにはOLYMPUS EM-1Xを選択し、テストに出発します。
新緑が美しい紅葉の葉を、美しいボケの海から浮かび上がるように撮影しました。
ここまで明るくピントの薄いレンズを、ピントの合う範囲を気にしながら使うのももったいないと思い、背景のボケの大きさを優先して開放での撮影を基本としました。
同じ画角ならフルサイズセンサーのカメラより焦点距離が短くなってしまう、マイクロフォーサーズのカメラを使っている事を忘れてしまう大きなボケに、ファインダーを覗くのが楽しくなってきます。
川辺に咲く黄色い花を、少し上から俯瞰するように撮影しました。
35mm判換算で、中望遠レンズとなる120mmの画角は、風景を切り取って行くのに丁度いい画角でした。
スペックだけみると風景写真というイメージの湧かない Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 60mm F0.95 MFT ですが、素晴らしく綺麗なボケ味は、開放を使って情感豊かに風景を撮るのにも向いていると思いました。
川の土手に立つ木が、夕日を浴びた新緑を輝かせていました。
ある程度被写体との距離を取っても十分な背景ボケを確保できる NOKTON 60mm F0.95 MFT は、風景写真で構図を整理するのにも便利に感じました。
マイクロフォーサーズのボディとしては大柄の OLYMPUS OM-D E-M1X との相性も良く、大きさ、重さのバランスがいいと感じました。
NOKTON 60mm F0.95 MFT の最短撮影距離は34cm、撮影倍率は1:4までなので、マクロもそこそここなします。
このカットは、小さなスズランの花を、ほとんど最短撮影距離で撮影しています。
近接撮影で、開放のf0.95を使うのは、少々ナンセンスな気もしますが、1,2センチ後ろにある被写体すら大きくボケてしまう面白さを伝えたくて、開放で撮影しています。
前のカットと同様、最短撮影距離付近での撮影です。
NOKTON 60mm F0.95 MFT のヘリコイドリングは、360度まではいかないまでも、かなり大きく回転角を取ってあるので、精密なピント合わせも比較的やり易いと思います。
さらに、ピントリングの動き、重さも良好な為、非常に被写界深度が薄く難しいレンズでありながら、比較的ストレスなくフォーカスが行えました。
敢えて難点を言うと、遠景~近景~遠景など、ピントリングを大きく回す動作が繰り返されると、トルクのあるヘリコイドリングを回すのに少し手が痛くなりました。
小川に下ろした紅葉の枝を、少し離れた位置から撮影しました。
マイクロフォーサーズは、被写体から距離を取った際のボケの量に、どうしても不満が残るケースが多いと思いますが、NOKTON 60mm F0.95 MFT が作り出す大きなボケは、そういった不満を解消してくれます。
さらに、 Voigtlander (フォクトレンダー) のレンズの中でもトップクラスのボケの美しさには、それと同じかそれ以上の魅力があると思います。
ピントさえしっかり合えば、性能的にもかなり高いレベルにあるレンズです。
開放f値が極端に明るいレンズは、やや眠くなる事が多いのですが、NOKTON 60mm F0.95 MFT はかなりシャープなレンズです。
開放ではピントが合う範囲が極端に薄いので、被写体との距離をある程度離す必要がありますが、ジャストにピントが来れば、驚くほどシャープなレンズです。
逆光線の夕日に輝くたんぽぽの綿毛を撮影しました。
条件によっては、ゴーストやフレアが入るケースもありますが、逆光にも比較的強く、この写真でもコントラストは十分です。
明暗差が大きい際のパープルフリンジも、Voigtlander (フォクトレンダー) のレンズではたまにある短所ですが、NOKTON 60mm F0.95 MFT については大きく目立って発生する事はありませんでした。
まだ青々と茂る麦の穂が、夕日に照らされていました。
今回撮影地に選んだ場所は、谷戸と呼ばれる谷間の地形だった為、日が暮れるのが速く、かなり慌てて撮影する事になりましたが、その分、強い夕日と影のコントラストが味わえて、楽しい撮影でもありました。
マニュアルフォーカスのレンズは、ピント合わせに時間がかかるのが常なので、今回はOLYMPUS EM-1XのFnボタンにピントの拡大を割り当て、迅速で正確なピント合わせが出来るようにしました。
谷戸は谷間の地形となる為、日が陰るのが少し周りより早くなります。
そんな、日が陰ったあとの風景ですが、若葉が明るく照らされていた時以上に、瑞々しく明るく感じてシャッターを切りました。
暗く落ち込む背景に対して、手前の若葉が明るく見えるほどです。NOKTON 60mm F0.95 MFT の大きく美しいボケ味が、イメージを上手く切り取ってくれました。
すっかり日も陰り、夕暮れ近くなった谷戸の小川沿いに、元来た道を引き返す途中で撮影しました。
だいぶ薄暗くなってからの撮影でありながら、開放f0.95を使ったおかげで、シャッタースピードは1/400という高速シャッターを切る事が出来ました。
裏を返せば、日中は1/8000でも開放での撮影は難しいという事ですので、やはりこういったレンズには、NDフィルターは必須と言えると思います。
今回の撮影では、Kenkoの高品質NDフィルター Pro1D Lotus ND64 を用意して、必要に応じて着脱しながら使いました。
Kenko Pro1D Lotus ND は、非常に高品質で、画質への影響もほぼ無いフィルターなので安心して使えます。
ドライルーブ処理と、枠に切られたローレット加工のおかげで、フィルターの着脱がやり易いのも、頻繁に付け外しが必要になるNDフィルターには便利です。
先に書いたとおり、超大口径の、特殊と言っていいスペックのレンズですが、写りについても良好でした。
一部拡大して解像感を見てみたいと思います。
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かなりシャープで、Voigtlander (フォクトレンダー) の超高性能タイプのレンズラインナップであるAPO-LANTHARを彷彿とさせます。
極端な大口径レンズは、開放での描写が少し眠いケースが多いですが、この写りは素晴らしいです。
マクロ域での描写も見てみます。
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流石に少し甘い描写になっています。
エッジの部分に見られる緑色のフリンジも、この拡大でこの程度であれば少なく、優秀な部類に入ると思います。
近接~遠景まで、優秀な描写性能と言っていいと思います。特に3m~の中景前後の描写性能はAPO-LANTHAR並みと言ってよく、開放f0.95のレンズとは思えない非常に優秀なものでした。
先に書いたとおり「デカいレンズにハズれ無し」で Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 60mm F0.95 MFT は、ボケ味まで含めて非常に優秀なレンズでした。
言い方が悪いですが、少々ゲテモノ的なスペックだったので、特殊な用途を考えましたが、極一般的なポートレートや風景などで、他のレンズに大きく差をつける写りの良さ、個性を持っていると思います。
特にボケの美しさは、今まで経験した Voigtlander (フォクトレンダー)? のレンズの中でも、最高レベルにあると感じるほどで、このレンズの最大の魅力と言えるかもしれません。
大きく、重く、高額なレンズは、持ち歩くにも、購入するにも相応の覚悟が必要ですが、それに見合った写りの良さ、個性的なアウトプットで撮影者に応えてくれると思います。
>>> Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 60mm F0.95 MFT