先日の「7.5mm f2.8 fish-eye」「35mm f1.2」に続いて、七工匠 のレンズを試してみました。前回は、標準の大口径レンズとフィッシュアイレンズ、という少しクセのある焦点域のレンズで、実際写りにも強い個性が感じられました。
今回は、「25mm f1.8」「55mm f1.4」の2本(いずれもAPS-Cサイズセンサー用)を試しましたが、前回同様のインパクトを見せてくれるでしょうか!?
東京も梅雨入りし、テスト撮りが厳しい季節となりました。運良く休日が梅雨の晴れ間となり、雨上がり後、散歩しながら撮影をしまいた。
愛機の SONY α6400 にレンズを装着し、ライブビューの拡大を使ってピント合わせをする段階で「おや?」と思いました。明らかにピントがシャープなのです。
あれ?
正直少し残念な気持ちになります。七工匠(しちこうしょう)らしい、強烈な個性を期待したのに。
写りが良くて残念に思うのもどうかと思いますが・・・
レンズのインパクトが期待どおりでは無かったので、被写体にインパクトを求めました。
とある寺の境内の奥、なかなかインパクトのある「千手観音像(?)」が鎮座していました。背景の田んぼ、低く垂れこめる雲と併せて、アジアのどこかの田舎で撮影されたような異国情緒を感じます。
周辺部の流れなどに 七工匠 らしさが出ていますが、全体としては、まあまあな写りに見えます。拡大して解像感を見てみます。
思ったより普通です。
アウトフォーカスな部分に向かってボケが崩れていくような感じはありますが、ピントが合った部分のシャープネスなどは、悪くなく、普通です。
普通なのに少し残念に感じてしまいます。私は 七工匠(しちこうしょう) に何を求めているのでしょうか?
気を取り直して(?)いつもどおりに撮る事にしました。
以前テストした 七工匠(しちこうしょう)35mm f1.2 と比べてシャープとは言え、それでもそこは 七工匠 、写真全体としては柔らかく、周辺は大きく流れ、コントラストも低目で、フィルムで撮ったような、少し懐かしい描写は変わりません。周辺部のクセのあるボケ感も健在です。
レンズのインパクトは35mm f1.2ほどではありませんでしたが、マニュアルフォーカスでピントを合わせてじっくり撮る楽しさは、同様です。
この時期、花と言えばアジサイですが、あえて日陰に咲くツバキの花を撮りました。
雨の中の撮影はあまり好きではありませんが、雨上がり後の撮影は、植物が水を含んで色濃くなるような気がして好きです。木の幹などが、濡れて黒くなるので画に締まりが出るのも、写真としてはプラスに働く事が多いでしょう。
7Artisans (七工匠) 25mm F1.8 では、近接になるとボケが大きくなるせいか、先ほどのボケのクセが気にならなくなって来ます。
美しいレンガ作りの橋脚が、橋の下の池に反射して、シンメトリーな情景を作り出していました。
こういう時、35mm(35mm判換算)くらいの画角がスナップに向いているという事を思い知ります。持っていたレンズが50mmだったら、このカットは撮らなかったかもしれません。
7Artisans (七工匠) 25mm F1.8 は価格相応に歪みのあるレンズですが、このくらいだとさほど気にならないと思います。
撮影を開始した時は薄日が差すくらいの天候でしたが、夕方近くなり、かなり雲行きが怪しくなって来ました。
先ほどの橋を遠くから眺めて撮影したカットですが、程よい周辺光量落ちがちょっとドラマチックな風景に仕立て上げてくれました。
7Artisans (七工匠) 25mm F1.8 は、25mmという画角、買い易い価格、フィルムライクな、少し古くさい写り方、といった特色から、スナップ向けのレンズとしてかなりおススメ出来ると思います。
同じ日に 7Artisans (七工匠) 55mm F1.4 を併せてテストしました。
まだ青々としたモミジの葉の背景に、ピンクが綺麗なツツジの花を入れてアクセントにしました。
曇り空の低いコントラストが幸いして、全体に諧調豊かな写真になりました。
前後のボケを重視する中望遠レンズらしく、先ほどの25mmと違って前後のボケは綺麗で、このくらいの大きさで観ると、もっと高級なレンズで撮影したように見えます。
季節なので、アジサイの花を撮りました。実は、先に書いた25mmのテストでも、3割程アジサイを撮ったのですが、テスト写真がアジサイだらけになってもつまらないと思い、全てボツにしました。
色々なカラーバリエーションがありますし、派手でないのにボリューム感のあるアジサイの花は、実にフォトジェニックです。
先のカットでもわかるとおり、 7Artisans (七工匠) 55mm F1.4 のボケ感は、とても綺麗です。
アジサイは色だけでなく、形のバリエーションがあるのも撮影していて楽しい被写体です。
7Artisans (七工匠) 55mm F1.4 は、色ノリも良く、七工匠 のレンズで撮っているのを忘れてしまうほどの写りです。
少し拡大して解像感を見てみます。
勿論高級レンズには遠く及びませんが、2万円を大きく下回る金額のレンズである事を考えると、かなり頑張っていると思います。
ピント部分にも、周辺にモヤのかかったような写りは、性能が悪いと言うよりは、柔らかいと表現した方がしっくり来る気がします。
花の写真ばかりで申し訳ないのですが、個人的に会心の一撃だったカットです。レンズの柔らかさと被写体、背景が、偶然ですがうまくマッチして、それぞれを引き立ててくれました。
7Artisans (七工匠) 55mm F1.4 の、白い被写体のまわりにうっすらとハレーションが出るような柔らかさが、白いふんわりしたイメージの花に上手くはまってくれたと思います。
神社の手水ですが、節水の為、手をかざすと水が出る仕組みになっています。最近は神社もハイテクですね。
7Artisans (七工匠) 55mm F1.4 は、先ほどの25mm同様、いやそれ以上に良く写るレンズです。
前回の七工匠 35mm f1.2 がちょっと変態的な写りだったので、期待(?)してしまったのですが、ちゃんとしたレンズでした(35mm f1.2の記事はこちら→七工匠(しちこうしょう) レンズレビュー Part1 記事)。
最近個人的にハマっているインドの炊き込みご飯「ビリヤニ」を食べて、撮影終了!
このボケ味は食べ物を撮るのにも良さそうです。
背景にうっすら見えるのはジュースです。
さて、今回2本の 7Artisans (七工匠) レンズをテストしましたが、いずれも価格を考えたら、なかなかのレンズでした。
特に 55mm f1.4 は多きな欠点も見当たらず、低予算で「マニュアルフォーカスレンズに慣れたい」「ボケの大きいレンズを試したい」という方にもおススメ出来るレンズだと思います。
しかし!個人的には 七工匠 と言えば 35mm f1.2 の様な、ゴーストをモニターで確認しながら撮るような、強烈な個性、ハッキリ言えば「性能が悪い」を期待してしまうので、今回のテストは、ちょっと残念な結果でした。
(まあまあの性能なので、レンズとしては本当におススメです)