夕景撮影のテクニック × 写真家 吉村和敏 | 美しい時間を収める方法を徹底解説

目次
はじめに
夕景は雲の状態を見極めることが大切
夕景撮影に必要な機材
現場での段取りとカメラ設定
地上の対象物と組み合わせる
太陽が沈んでからが勝負
「マジックアワー」と「ブルーモーメント」の撮り方
まとめ
執筆者紹介
フジヤカメラ | 東京都中野のカメラ専門店
FUJIFILM X-H1・XF16-55mmF2.8 R LM WR
絞りF10・1/220秒・ISO400・WBオート・RAW・手持ち
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朝から小雨が降り続き、空には重たい雲が垂れ込めていた。ところが夕方、雲の切れ間から突然、眩しい太陽が顔を出した。
(撮影地/カナダ、ニューファンドランド)
はじめに
秋は、夕景を撮るには絶好の季節だ。夏に比べて空気中の水蒸気や霞が減り、大気が澄んでくるため、遠くの景色までくっきりと見渡せるようになる。日が傾くにつれ、西の空には赤やオレンジ、パープルといった色が幾層にも重なり、目の前でドラマチックな光のショーが幕を開ける。
ただ、美しい夕景に出会えたからといって、カメラを向けさえすればいい作品が撮れるわけではない。どの時間帯を狙うのか。いつシャッターを切るのか。画面に何を取り込み、どんな構図にするのか。そして、絞りやシャッタースピードをどう設定するのか。フィールドでの一つひとつの判断が、作品の仕上がりを大きく左右する。
ここでは、長年にわたって夕景と向き合ってきた経験をもとに、撮影現場ですぐに役立つテクニックを紹介していこう。
FUJIFILM GFX100S II・GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR
絞りF5.6・1/40秒・-0.33補正・ISO250・WBオート・RAW・三脚
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夕焼けに染まる空。鮮やかなオレンジ色だけを狙うと、変化に乏しい写真になってしまう。空のなかに潜む微妙な色の移ろいを見つけ出すことで、作品に奥行きが生まれる。
(撮影地/台湾、澎湖)
夕景は雲の状態を見極めることが大切
心揺さぶる夕景に出会いたいなら、必ずしも晴れの日を選ぶ必要はない。むしろ狙い目は曇りの日だ。中でも、雨が続いたあと、天候が回復に向かい始めるタイミングの空がいい。
より正確にいえば、空を覆っていた雲が少しずつ流れ、西の空に切れ間がのぞいたときが絶好のチャンスとなる。そのすき間から太陽が顔を出し、やがて地平線へと沈んでいく。残照を受けた上空の雲は赤やオレンジに染まり、条件が揃えば、空全体が真っ赤に燃え上がる。
FUJIFILM GFX 50R・GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR
絞りF11・1/40秒・-0.33補正・ISO200・WBオート・RAW・三脚
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上空に雲が広がり、西の水平線付近だけが切れているときは、見事な夕焼けに出会えるチャンスだ。切れ間から顔を出した太陽が沈むと、雲が一斉に真っ赤に染まり始める。
(撮影地/北海道、利尻)
過去を振り返ってみても、強く印象に残っている夕景の作品のほとんどは、直前まで曇りや雨だった日のものだ。だから、撮影予定の日に天候が崩れていても、簡単に諦めてはいけない。まずは天気予報を確認し、夕方に晴れ間がのぞく見込みがあるなら、迷わずカメラを持って現場へ向かおう。
FUJIFILM GFX100S II・GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR
絞りF8・1/13秒・-0.33補正・ISO250・WBオート・RAW・三脚
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頭上に雲が広がっていると、空全体が燃え上がるような夕焼けが現れることがある。撮影中、バイクに乗った若者たちが不意に画面へ入ってきたが、構わずシャッターを切った。
(撮影地/台湾、澎湖)
もちろん、雲がほとんどない快晴の日でも、美しい夕景に出会えることがある。空気の澄んだ秋は、太陽が沈んだあと、西の地平線に沿って鮮やかなオレンジ色の光の帯が現れる。その色は上空へ向かうにつれて徐々に青みを増し、やがてディープブルーへと移り変わっていく。雲が織りなす色彩のドラマとはまた違った、シンプルで清らかな黄昏のグラデーションを楽しめるのだ。
Canon EOS 5D Mark II・EF24-70mm f/2.8L USM
絞りF10・1.6秒・ISO100・WBオート・RAW・三脚
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晴れ渡った一日の終わり。太陽が地平線に消えると、西の空にオレンジ色の帯が浮かび上がる。天空の青と溶け合いながら広がるグラデーションに、しばし見とれた。
(撮影地/北海道、函館)
夕景撮影に必要な機材
カメラは、ミラーレス、一眼レフ、フィルムカメラなど、基本的には何を使ってもかまわない。最近はスマートフォンでも夕焼けを綺麗に撮れるようになったが、本格的な作品づくりを目指すなら、やはりレンズ交換式のカメラを選びたい。
レンズも、広角、標準、望遠と、どの焦点距離であっても夕景は狙える。中でも一押しは、24mm前後の広角レンズだ。空や雲をたっぷりと画面に取り込み、黄昏のスケール感を存分に表現できる。
OLYMPUS E-P2・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6
絞りF3.2・1/80秒・ISO320・WBオート・RAW・手持ち
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息をのむほど美しい空の色と、そのグラデーションに心を動かされ、思わずカメラを向けた。手前に水面を取り入れたことで、色彩の広がりをいっそう感じられる作品になった。
(撮影地/東京都、月島)
空の面積を減らし、夕日に照らされた街並みや樹木をしっかり見せたいときは、50〜100mm程度の標準〜中望遠レンズを使うといい。自然な遠近感で風景を描写でき、落ち着いた印象の作品になる。
PENTAX 645・smc PENTAX-A645 150mm F3.5
絞りF8・1/30秒・フジクロームベルビア100・三脚
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150mm(35mm判換算約95mm)のレンズで、夕日を浴びて真っ赤に染まる家屋や納屋だけを、画面いっぱいに引き寄せた。
(撮影地/カナダ、プリンス・エドワード島)
さらに200mmや300mmといった望遠レンズを使えば、沈んでいく太陽を迫力ある大きさで捉えられる。山の稜線や木々のシルエットと重ねれば、圧縮効果によって、ひと味違った夕景の表情を生み出せるだろう。
PENTAX 645D・smc PENTAX-FA645 150-300mm F5.6 ED [IF]・絞りF16・1/125秒・+0.7補正・ISO400・WBオート・RAW・三脚
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西の空に薄い雲がかかると太陽の眩しさが和らぎ、丸い輪郭がくっきりと写ることがある。こうした条件なら、カメラ任せのオート撮影でも十分に美しい夕日を捉えられる。
(撮影地/愛媛県、今治)
PENTAX 645D・smc PENTAX-FA645 150-300mm F5.6 ED [IF]
絞りF9.5・1/60秒・+0.7補正・ISO400・WBオート・RAW・三脚
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薄曇りの一日だったが、夕方になって海に沈む太陽が姿を見せた。カメラを構えていると、サップボードに乗った人が現れ、物語を感じさせる作品になった。
(撮影地/アメリカ、ハワイ島)
最近のデジタルカメラは高感度性能が飛躍的に向上し、ISO感度をかなり上げてもノイズが目立ちにくくなった。ボディ内手ブレ補正も強力で、手持ち撮影の自由度は、ひと昔前とは比べものにならないほど高まっている。夕景だからといって、必ずしも三脚が必要なわけではない。
ただ、太陽が傾くにつれて、あたりの明るさは急速に失われていく。ISO感度を低く保ち、しっかり絞り込んで風景の隅々までシャープに描写しようとすれば、手持ちではどうしても限界がある。特に日没後から夜にかけては、三脚が欠かせない相棒になる。あわせてケーブルレリーズを用意しておけば、シャッターボタンを押す瞬間の微振動も防げる。
海辺で波や水面を霧のように滑らかに表現したいときは、NDフィルターを使うといい。夕焼けの空は意外に明るく、スローシャッターに設定したくても思うように速度を落とせないことがある。NDフィルターで光を減らせば15〜30秒の長時間露光が可能になり、寄せては返す波が、柔らかく幻想的なベールへと姿を変える。
PENTAX 67 II・smc PENTAX67 200mm F4・絞りF32・10秒・フジクロームベルビア100・NDフィルター使用・三脚
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マジックアワーの淡いピンクやパープルが、川面の飛沫までも染め上げる。スローシャッターを使えば、水の流れを霧のように柔らかく写すことができる。露光時間は10〜15秒ほどで十分だ。
(撮影地/カナダ、ケベック)
空と地上の明るさの差が大きい場面では、ハーフNDフィルターも心強い味方になる。夕空は明るいのに足元は暗い。そんな状況では、空に露出を合わせれば地上が黒く潰れ、地上に露出を合わせれば空が白く飛んでしまう。ハーフNDで上半分だけ明るさを抑えれば、夕焼けの色を残しながら、地上のディテールもしっかりと拾える。
撮影現場で意外なほど頼りになるのが、スマートフォンだ。「Yahoo!天気」や「MyRadar」といった気象アプリを使えば、雲や雨雲の動きをリアルタイムで追える。「日の出日の入」アプリなら、日没の時刻に加えて、太陽がどの方角に沈むのかまで把握できる。夕景は、太陽の位置がわずかにずれるだけで、画面の印象ががらりと変わる。現場で慌てないためにも、日の入り時刻と方角を事前に調べ、どこに立てば夕日と向き合えるかを掴んでおきたい。
この他、小型の懐中電灯も用意しておくと安心だ。太陽が沈むと、あたりは想像以上の速さで闇に包まれる。海岸や山道など足場の悪い場所から帰るとき、手元や足元を照らす明かりが欠かせない。
現場での段取りとカメラ設定
撮影地には、日の入りの30分前には到着しておきたい。夕景の光は刻一刻と移ろうため、日没間際に駆けつけて構図を練っているようでは、シャッターチャンスを逃してしまう。明るいうちに周囲を歩いて立ち位置を見定め、三脚を立てて、カメラをセットしておこう。
名の知られた夕景スポットでは、すでに誰かが陣取っていることも少なくない。早めの到着は、準備を整えるためだけでなく、いい場所を確保するためにも重要になってくる。
立ち位置が決まっても、ひとつのフレーミングにこだわりすぎないことが大切だ。光の角度は変わり続け、雲も流れていく。数カット撮影したら場所を移動し、広角レンズで空を大きく捉えたり、望遠レンズで建物を入れて撮ってみたりと、レンズ交換をしながらさまざまな構図を試してみるといいだろう。
PENTAX 645・smc PENTAX-A645 150mm F3.5
絞りF16・1/8秒・フジクロームベルビア100・三脚
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まずは150mmの横位置で、灯台の陰に夕日を隠す構図を狙った。続いて場所を移し、レンズを200mmに替えて縦位置で構え、灯台と夕日を並べて画面に収めた。
(撮影地/カナダ、ノバ・スコシア)
PENTAX 645・smc PENTAX-A645 200mm F4
絞りF16・1/125秒・フジクロームベルビア100・三脚
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撮影モードは、「絞り優先オート」で十分に対応できる。絞りはF8〜11あたりに設定し、ISO感度は100〜400程度を基本にする。三脚を据えるなら、シャッタースピードが遅くなってもブレの心配はいらない。思い切ってISO100まで下げ、ノイズを極力抑えた滑らかな描写を狙ってみよう。
夕景撮影で意識したいのは、豊かな色彩をいかに的確に描写するかだ。シャドー部分に引っ張られて、明るい空の露出がオーバーになってしまうこともある。撮った画像を液晶モニターで確かめながら、露出補正ダイヤルでこまめに補正をかけていく。どんな被写体でも、マイナス0.7EV、適正、プラス0.7EVの3カットを押さえておけば安心だ。
ホワイトバランスはオートでも問題ない。JPEGの他にRAWで記録しておけば、現像の段階で色温度を自在に調整できるので、現場で頭を悩ませる必要はない。一方で、夕焼けをどんな色合いで見せたいかによって、あえて設定を変えてみるのも面白い。「曇天」や「日陰」を選ぶと暖色寄りに振れ、空の赤やオレンジがいっそう深みを増すこともある。
地上の対象物と組み合わせる
沈みゆく眩しい夕日だけにカメラを向けても、美しい写真は撮れる。だが、光と地上にある何かを組み合わせることで、作品の印象はぐっと強まり、撮り手の個性が表れる一枚になっていく。
FUJIFILM GFX 50S・GF120mmF4 R LM OIS WR Macro
絞りF11・1/200秒・+0.67補正・ISO200・WBオート・RAW・三脚
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沈む夕日だけにレンズを向けると、どうしても平凡な絵になりがちだ。入江に係留された数隻の漁船を前景に置くことで、画面にリズムが生まれた。
(撮影地/カナダ、プリンス・エドワード島)
建物、樹木、車、人と、題材は何でもいい。黄昏の光に包まれると、普段見慣れたものが、まったく違った表情を見せてくれる。また、地上のモチーフが加わることで、「いつ、どこで撮ったのか」という手がかりが生まれ、作品に物語が宿っていく。
PENTAX K10D・smc PENTAX-DA 50-200mm F4-5.6 ED
絞りF8・1/60秒・ISO100・WBオート・RAW・三脚
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夕空だけでは画面が間延びしやすいので、地上の被写体と組み合わせるのが効果的だ。望遠レンズで2本の木を大きく写すと、まるで木々が語り合っているかのような雰囲気が生まれた。
(撮影地/北海道、美瑛)
ただし、夕空を背景に地上の被写体を撮ろうとすると、明るい空に露出が引っ張られ、手前のものは黒く潰れてシルエットになってしまう。もちろんそれもひとつの表現だが、ここで提案したいのは、逆光ではなく順光で撮るという発想だ。
多くの人は、夕日の方角にばかりレンズを向ける。そこで一度、後ろを振り返ってみよう。太陽とは反対側の東の方角にカメラを向けると、地上にあるすべての物が、低い角度から差し込む光をたっぷりと浴び、濃い色をまとって輝いているはずだ。
PENTAX K20D・smc PENTAX-DA* 16-50mm F2.8 ED AL [IF] SDM
絞りF9・1/8秒・ISO100・WBオート・RAW・PLフィルター使用・三脚
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夕日を正面から受け止める建物群。PLフィルターを使うと空や海の色が深みを増し、画面全体の色彩が引き締まる。
(撮影地/ギリシャ、サントリーニ島)
ビルや車の窓ガラスに夕焼けが映り込んでいたら、それを主題に構図を組み立ててみるのも面白い。太陽そのものが写っていなくても、夕日を撮っていることに変わりはない。シルエットでは得られない、被写体の豊かな色と質感を捉えた一枚になる。
PENTAX *ist DS・smc PENTAX-DA 18-55mm F3.5-5.6 AL・絞りF5.6・1/90秒・ISO200・WBオート・RAW・手持ち
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鮮やかな夕日に照らされると、街の表情は劇的に変わる。眩しい太陽はあえてフレームの外に置き、光に染まった部分だけを切り取ると、力強い作品に仕上がる。
(撮影地/東京都、大手町)
太陽が沈んでからが勝負
夕景撮影は、太陽が沈んだら終わりではない。むしろ、ここからが面白い。
日没後、空にまだ明るさが残っている時間を「マジックアワー」と呼ぶ。眩しい夕日が沈むと、地上からフッと影が消える。太陽という強い光源を失った空が、今度は巨大なディフューザーとなり、ピンクやパープルの柔らかな光で風景全体を包み込むのだ。コントラストは和らぎ、色彩は淡く溶け合っていく。
この光の中では、何にカメラを向けても絵になる。ビルが林立する街並みを撮っても、日中のように明暗の差が強くなりすぎず、しっとりと情感のある一枚に仕上がる。
SONY α7R III・FE 24-70mm F2.8 GM
絞りF6.3・0.8秒・+1.3補正・ISO1000・WBオート・RAW・三脚
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夕日が沈んだ直後から始まるマジックアワー。派手な色彩こそないものの、静かな暮らしの気配が漂う風景を撮ることができる。積極的にカメラを向けたい時間帯だ。
(撮影地/京都府、伊根)
ポートレートにも最適だ。直射日光の下では、顔に濃い影が落ちたり、眩しさで目を細めたりしがちだが、日没後の穏やかな光なら肌をなめらかに描き出せる。特に女性を撮るときは、肌の質感を美しく見せながら、夢の中にいるようなロマンチックな雰囲気を演出しやすい。
映画の世界でも、この時間帯の光は特別なものとして扱われてきた。テレンス・マリック監督の『天国の日々』は、一日の終わりのわずかなひとときに現れる光を生かした映像で知られる。撮影ではその日の最も美しい瞬間をひたすら待ってカメラを回し、ほかに類を見ない詩的な画面を生み出した。
PENTAX K20D・smc PENTAX-DA 17-70mm F4 AL [IF] SDM
絞りF11・1秒・ISO100・WBオート・RAW・三脚
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ロマンチックな色彩に包まれるマジックアワー。淡い光を受け止める白い被写体を添えるのがコツだ。白い漁船は、この時間帯の光ととりわけ相性がいい。
(撮影地/北海道、釧路)
マジックアワーの終わりには、「ブルーモーメント」と呼ばれるもうひとつの特別な時間帯がある。
マジックアワーが続くのは、季節や場所、天候にもよるが、おおむね40〜50分ほど。ピンクやパープルの光が薄れ、いよいよ夜が来るかと思ったそのとき、空はもう一度、表情を変える。暖色の余韻が消えるのと入れ替わるように、急速に青みを増していくのだ。地上にはまだほのかな明るさが残っているのに、空だけが深く澄んだブルーに包まれる。この薄明のひとときがブルーモーメントで、続くのはわずか10〜15分ほどにすぎない。
この時間の空を満たすのは、他のどの時間帯にも見られない独特の青だ。日中の青空のような明るさや軽やかさはなく、群青や藍を溶かし込んだように深い。それでいて決して重たくはなく、暗さが増すほど、むしろ透明感が際立ってくる。夢の続きを見ているような、どこか現実離れした色だ。
PENTAX 645N II・smc PENTAX-FA645 33-55mm F4.5 AL
絞りF19・20秒・フジクロームフォルティア・三脚
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ブルーモーメントの時間帯には、ビルの窓明かりに加えて外灯や信号の灯りもあえて画面に取り込むと、街の息づかいが伝わってくる。
(撮影地/東京都、新宿)
この青と見事に響き合うのが、街灯や家々の窓明かりだ。空がまだ青さを保っているうちに、地上ではひとつ、またひとつと明かりが灯りはじめる。深い青と、暖かな黄色。補色に近い2つの色が一枚の中で引き立て合い、昼の風景とも真夜中の夜景とも違う、この時間だけの情景が生まれる。夜景を撮るなら、ブルーモーメントこそ最適な時間帯だ。
「マジックアワー」と「ブルーモーメント」の撮り方
日没後はあたりが急速に暗くなるため、三脚は必ず使った方がいい。ISO感度は200〜400程度に抑え、シャッタースピードを遅くして光をじっくり取り込んでいく。高感度に強いカメラであっても、低感度で撮ったほうが空の階調や色の深みを生かしやすく、何よりグラデーションを滑らかに表現できる。
露出は絞り優先オートでかまわないが、日没前よりも明暗差が大きくなるため、補正の幅は広めに取っておくと安心だ。まず適正露出で1枚撮り、続けてマイナス1EV、プラス1EVまで振って数カット押さえておけば、必ず狙いどおりの明るさの1枚が手に入る。
FUJIFILM GFX 50S・GF32-64mmF4 R LM WR
絞りF11・0.4秒・ISO320・WBオート・RAW・三脚
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夕暮れの鮮やかな色彩に染まった漁港。空を2、入江を1の比率で配置し、三分割法を意識して構図を決めた。
(撮影地/カナダ、ニューファンドランド)
ブルーモーメントでは、ホワイトバランスを「太陽光」に固定しておくのもひとつの手だ。オートのままだと、カメラが繊細な色彩を補正しようとして色転びしてしまうことがある。
FUJIFILM GFX 50S・GF23mmF4 R LM WR
絞りF10・4.5秒・+0.33補正・ISO400・WB太陽光・RAW・三脚
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深い青に沈む空に外灯の暖かな色を添えたことで、ブルーモーメントならではの印象的な一枚になった。
(撮影地/カナダ、ドーソン・シティ)
まとめ
日の入りの30分前には現場に立ち、太陽が沈んだ後もその場を離れない。燃えるような夕焼けが淡い色彩へと変わり、やがてブルーモーメントの深い青に包まれるまで、およそ1時間。夕景撮影は、光の移ろいを始まりから終わりまで見届ける長丁場になる。
太陽が地平線に消えた途端、カメラを片づけて帰っていく人は少なくない。だが、本当のクライマックスは、その後にやってくることが多い。最後までその場に立ち続けた人だけが、思いがけない光景に出会えるのだ。
執筆者紹介

吉村 和敏(よしむら かずとし)
吉村和敏(よしむら・かずとし)
写真家。
1967年、長野県生まれ。カナダでの暮らしをきっかけに写真家としてデビューする。以来、国内外を巡る旅を重ねながら、自ら定めたテーマを長い歳月をかけて丹念に取材し、作品集として世に送り出している。詩人・谷川俊太郎との共著『あさ/朝』『ゆう/夕』(アリス館)がベストセラーとなり、注目を集めた。主な写真集に『BLUE MOMENT』『MAGIC HOUR』(以上、小学館)、『Du CANADA』(日経ナショナル ジオグラフィック社)、『RIVER』(信濃毎日新聞社)、『ハッピードリンクショップ』(丸善出版)などがある。
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@kazyoshimura
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