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2024.04.16
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Leica M6 レビュー × 写真家 John Sypal(ジョン・サイパル)

Leica M6 レビュー × 写真家 John Sypal(ジョン・サイパル)キービジュアル


ライターJohn Sypal(ジョン・サイパル)イメージ
■フォトグラファー紹介

John Sypal(ジョン・サイパル)

1979年、アメリカ・ネブラスカ生まれ。2004年、ネブラスカ大学を卒業後に来日し、2005年より写真展を多数開催。2010年にTotem Pole Photo Galleryへ加入、2012年より「随写」シリーズをはじめ、多くの作品を発表し続けている。また、東京の写真文化を日常的に取材し、「Tokyo Camera Style」と題したブログやインスタグラムを通して積極的に発信している。写真集に『Tokyo Camera Style』(Thames & Hudson社)、『随写』(禅フォトギャラリー)、『銀園』(禅フォトギャラリー)、『Nebraska, The Good Life』(ケンズ)がある。

はじめに「私のライカM6史」

私とライカM6の歴史は2001年に始まります。アメリカの大学にて、写真クラスの教授が持っていたM6を初めて見たのがその年でした。私は当時ニコンの一眼レフを持っていたのですが、M6の斜めに配置されたフィルム巻き戻しレバーが印象的でした。

その1年後、日本での留学中に、東京・谷中の裏道にあった質屋のショーウィンドウでM6を見つけました。そのM6はエレガントでかっこよくて、一目惚れした瞬間でした。その時「ライカは運命だ」と思いました。

やっと手に入れたファースト・ライカは大学卒業後に来日した2004年、中古のライカM6TTLでした。そのM6TTLは1年後、ライカMPに買い換えたため今は手元にありません。

Leica M6 本体:巻き戻しレバー
斜めに配置されているフィルム巻き戻しレバー
Leica M6 作例:KODAK PORTRA160で撮影した民家と空

谷中にて Leica M6 (Original)・LeicaズミクロンM 35mm F2(7枚玉)
・絞りF16・1/250秒・KODAK PORTRA160

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2012年頃、前述の教授から「自分のM6を譲りたい」とメールが届きました。日本に送られてきた航空便の小包からM6を取り出した時のことを鮮明に覚えています。私が本当に初めて目にしたM6そのものが、自分の手にあるのです。使い古され、外装もそれにふさわしいものでした。

先生は1986年以来、年間少なくとも500本以上のフィルムを撮影したそうです。この一台にはすでに豊かな歴史が刻まれていました。ライカは単なる「機械」ではありません。そのもの自体のオーラを持っているのです。

私はこの20年あまり、ライカを首から下げずに家を出たことはありません。近所のコンビニに行くときでさえ持っていくほどです。

Leica M6 作例:KODAK PORTRA160で撮影した街中

Leica M6 (New)・LeicaズミクロンM f2/35mm ASPH.
・絞りF8・1/250秒・KODAK PORTRA160

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Leica M6 作例:ILFORD HP5 で撮影した街中

Leica M6 (New)・LeicaズミクロンM f2/35mm ASPH.
・絞りF8・1/250秒・ILFORD HP5 (ISO400)

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ここ数年でインターネットを中心にライカM6への関心が急上昇し、中古の市場価格も高騰しています。フィルムカメラの製造を続けるライカは、2022年10月にM6の復刻を発表しました。

私はライカからM6のプロモーションを依頼され、ドイツのウェッツラーにあるライカ本社で新品のM6を受け取りました。 それまで新品のフィルムカメラを買ったことがなかった私は、ピカピカのM6をピカピカの箱から取り出し、最初のフィルムを装填した時、不思議な感動に包まれました。

フィルムカメラ全般に言えることかもしれませんが、ライカは特に、これから一生楽しむことができるのだと考えると、はるかに特別なものに感じます。ユーザーやオーナーというより、人間よりも寿命が長いそのカメラの旅の「管理人」になったような気分になるのです。ライカのような感動を与えてくれるカメラは、人生をより興味深いものにしてくれます。

Leica M6 作例:KODAK PORTRA160で撮影した猫

Leica M6 (Original)・LeicaズミクロンM 35mm F2(7枚玉)
・絞りF2.8・1/60秒・KODAK PORTRA160

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Leica M6 作例:ILFORD HP5で撮影した広場を走る子供

Leica M6 (New)・LeicaズミクロンM f2/35mm ASPH.
・絞りF11・1/250秒・ILFORD HP5(ISO400)

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ライカM6旧型・新型のちがい

使用するにあたって、新型・旧型M6のちがいはほとんどありません。

旧型M6を使い慣れた人が新型M6で最もすぐに気づくちがいは、露出計の表示です。旧型M6では「適正露出」を知らせる表示が2つの矢印の点灯だったものが、新型M6ではファインダーの下部に丸い点が表示されるようになりました。これはMPと同じです。

ライカM6旧型・新型の比較の画像

2つ目のちがいはカメラの重量です。真鍮製のトッププレートとボトムプレートを採用した新型M6はわずかに重くなっています。

旧型M6のブラッククロームメッキとは異なり、新型カメラの仕上げはM11と同じセミマットブラック塗装です。

私は新型M6を使用して1年半になりますが、ボディの縁やストラップの接続部分の塗装が少しだけ剥げています。新品のカメラについた傷はいつだって受け入れがたいものですが、私はこの新しいM6が良い経年変化を遂げると信じています。まあ、カメラは使われるために作られているものですしね。

ライカM6旧型・新型の比較の画像
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新型M6についた傷の画像
新型M6についた傷…。

レンズはズミクロン35mm

私はライカの50mmと21mmのレンズを持っているのですが、35mmレンズ1本で概ね満足しています。

私の写真の約9割は35mmレンズで撮影しているといってもいいでしょう。私はズミクロンのファンなのです。旧型M6にはズミクロンM35mm F2(7枚玉)(以下、7枚玉)を、新型M6にはズミクロンM f2/35mm ASPH. (以下、ASPH.)を付けて出かけます。

この2本のズミクロン、何がちがうのかと聞かれることが多いのですが、言葉にするのは難しいですね。どちらのレンズにもそれぞれの個性があるんです。

例えるなら、ASPH. はシャキッとしたシャーペンのようで、7枚玉は削った鉛筆のようです。ASPH. は光学設計の傑作であり、写真に現れるあらゆる線や質感をシャープに描写するのに対して、7枚玉はシャープでありながら、伝説的な「ライカの輝き」で画像を描写する、クラシックな外観を備えています。

 LeicaズミクロンM35mm F2を装着した旧型Leica M6の画像
旧型Leica M6 + LeicaズミクロンM 35mm F2(7枚玉/ブラック)
 LeicaズミクロンM f2/35mm ASPHを装着した新型Leica M6の画像
新型Leica M6 + LeicaズミクロンM f2/35mm ASPH.(シルバー)
Leica M6 作例:ILFORD HP5で撮影した民家

Leica M6 (Original)・LeicaズミクロンM 35mm F2(7枚玉)
・絞りF11・1/250秒・ILFORD HP5(ISO400)

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Leica M6 作例:ILFORD HP5で撮影した猫

Leica M6 (New)・LeicaズミクロンM f2/35mm ASPH.
・絞りF2.8・1/125秒・ILFORD HP5(ISO400)

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私の最適な組み合わせ

私の写真に対する基本的なアプローチはかなりシンプルです。1台のカメラに1本のレンズ、そして1種類のモノクロフィルムを使います。 私の場合、ライカM6にズミクロンM35mm、そしてイルフォードHP5(ISO400)フィルムという組み合わせです。

モノクロフィルムは自宅でKodak HC-110という現像液で現像し、暗室でプリントをします。何千本ものフィルムを通して、このプロセスは私のニーズに合わせて合理化され、効率的になっていきました。

このプロセスのすべての段階が、私に喜びと満足感を与えてくれるのです。

Leica M6 本体:全体
新型Leica M6 + LeicaズミクロンM f2/35mm ASPH. + イルフォード HP5フィルム

今回掲載した写真は、イルフォードHP5のモノクロネガと、この記事のためにKodak ポートラ160のカラーネガフィルムで早春の上野周辺を撮り下ろした写真をスキャンしたものです。

Leica M6 作例:KODAK PORTRA160で撮影した猫

Leica M6 (Original)・LeicaズミクロンM 35mm F2(7枚玉)
・絞りF4・1/250秒・Kodak Portra160

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シャッター音と巻き上げレバー

良いカメラには良いシャッター音が必要だと思いませんか?

ライカMのシャッター音の優雅さについては、これまでも多くの人によって語られています。シャッター音に加えて、フィルム繰り出しレバーの滑らかな感触は、耳と親指に心地よい刺激を与えてくれます。

シャッターを切るたびに、この上ない満足感を味わうことができます。

レザーカバー

新型M6の合成皮革は手触りがよく、しなやかで見た目も美しい。柄はオリジナルのカバーリングより少し控えめで、いいアップデートだと思います。

私の旧型M6に貼られているのは別メーカーのレザーシートです、ライカの新しい革に張り替えたいところ…。

Leica M6 本体:合成皮革
新型M6の合成皮革

触覚から感じる期待感

現在のライカMカメラは、フィルムもデジタルも、デザイン的には1954年に発売されたライカM3をベースに、それぞれ若干の変更が加えられているのですが、特にボディ側面の湾曲は手にしっくりと馴染むよう設計されています。

どう説明したらいいのか…親近感と興奮を与えてくれます。M6を手にすると、世界がさらにフォトジェニックに見えるのです。触覚からも可能性や期待を感じます。

Leica M6 作例:KODAK PORTRA160で撮影した猫と鳩

Leica M6 (Original)・LeicaズミクロンM 35mm F2(7枚玉)
・絞りF8・1/250秒・Kodak Portra160

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Leica M6 作例:KODAK PORTRA160で撮影した街中

Leica M6 (Original)・LeicaズミクロンM 35mm F2(7枚玉)
・絞りF11・1/250秒・Kodak Portra160

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おわりに

良いカメラとは、写真を撮りたくなるカメラ。

良いカメラとは、手に取りたくなるカメラ。

良いカメラは「手」だけでなく、「心」にもフィットする。

私にとってライカM6はそんなカメラです。

私にとってM6は道具以上の存在で、端的に言えば「仲間」なのです。

Leica M6 作例:KODAK PORTRA160で撮影した鏡に映る写真家ジョン・サイパル

Leica M6 (Original)・LeicaズミクロンM 35mm F2(7枚玉)
・絞りF8・1/250秒・Kodak Portra160

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作例に使用したカメラ

【商品情報】Leica 10557 [ライカ M6]

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