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2024.03.27
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Leica M10 レビュー × 写真家 サトウヒトミ | fall in Leica「Leica M10」

Leica M10 レビュー × 写真家 サトウヒトミ | fall in Leica「Leica M10」キービジュアル


ライターサトウヒトミ (さとう・ひとみ)イメージ
■フォトグラファー紹介

サトウヒトミ (さとう・ひとみ)

お茶の水女子大学舞踊教育学科卒業後、日本航空国際線客室乗務員として勤務。東京ビジュアルアーツで写真を学ぶ。個展「Layered NY」ソニーイメージングギャラリー(2017年)、「Crossing Prague」LeicaストアGINZA SIX(2017年)、「Lady,Lady,Lady」ソニーイメージングギャラリー 、Leicaストア横浜・福岡(2019年)「mosaic of feelings」Leicaカフェプラハ(2019年)、「Layered NY」Salon de la photo_パリ(2019年)、「over the window」キャノンギャラリー銀座、大阪(2023年)、「bloodline」Leica大丸東京、Leica阪急梅田(2023年)。2018年 ZOOMS JAPAN パブリック賞受賞。写真集 『イグアナと家族とひだまりと』(日本カメラ社)、『over the window』(PURPLE)を出版。

はじめに

2017年GINZA SIXにLeicaストアがあることを知り、ふらりと立ち寄った時のこと。
「まずは持ってみてください」と、にこやかに手渡されたのがLeica M10でした。
それが私のLeicaとの出会い ”fall in Leica” の始まりです。

最初の驚きは、不意に持たされた時に感じた、ほどよい重量感、あるいは軽量感ともいえるのですが、すべてがストンと腑に落ちた「心地よさ」でした。そして、手の中にしっくりとおさまるボディの厚みについて「Leicaのデジタル機では、初のフィルム機と同じ33.7mmで、ドリームサイズと呼ばれているのですよ」と、説明を受け“そうなんだ、やっぱりね”と、何がやっぱりなのかもわからず、Leicaとはそういうものなのだと納得してしまったのでした。

そして、一枚シャッターを切った時のカシャッという音にはっとしながら、さらに、背面に映し出された画像を見た時の驚きは衝撃と言えるほど、言葉では言い表せない「何か」でした。今でも、それが何なのかはうまく説明出来ないのですが、これはきっとLeicaに魅了されるいちばんの理由なのだと思います

プラハへ fall in Leica

そして、Leica M10を手にした瞬間から、なぜか、プラハで撮りたいという気持ちが高まり翌月にはもう、Leica M10と共にプラハへ。

レンズは Leica ズミクロンM f2/28mm ASPH. と Leica ズミクロンM f2/50mm の2本。

Leica M10 本体1
Leica M10+Leica ズミクロンM f2/28mm ASPH.
Leica M10 本体2
Leica M10+Leica ズミクロンM f2/50mm

さて撮るぞ!と、まずはLeica ズミクロンM f2/28mm ASPH.で街に繰り出したものの…

プラハの薄曇りの静かなイメージとは程遠い、8月の観光客でごった返す暑いプラハ。
どこを撮っても思い描くプラハらしさを感じられず、苦戦の1日目。

Leica M10 作例:夕日

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/28mm ASPH.
絞り F 5.0 ・1/500秒・+1EV補正・ ISO 200 ・RAW

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夕暮れに塔に登って撮ったヴルタヴァ川に掛かるカレル橋がこの日のたった一枚のプラハのイメージとなりました。観光客もシルエットになれば、街に溶け込んでしまいます。

気持ちを切り替えて、翌日からはLeica ズミクロンM f2/50mmで行こうと心に決めて、いざ出陣!

Leica M10 作例:カフカのポスター

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/50mm
絞りF2.8・1/125秒・+1EV補正・ISO100・RAW

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フランツ・カフカの街プラハ。いたるところにカフカの写真や土産物が。プラハのイメージの根底にあったのは彼の小説であったように思います。

Leica M10 作例:河岸

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/50mm
絞り2.8・1/90秒・+1EV補正・ISO100・RAW

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穏やかなヴルタヴァ川の流れは、この街の歴史の中で変わらぬ景色。ここに生きる人々にとって、川は特別な意味があるような気がしました。この写真は、LeicaストアGINZA SIXでの写真展「crossing Prague」のメインイメージとなりました。

Leica M10 作例:ウエディング

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/50mm
絞りF5.6・1/250秒・ISO100・RAW

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この美しい花嫁を取り巻く不穏な情景は、私の中で色々な物語をかきたてられる一枚となり、その後の作品の中に何度も登場することになりました。

広角レンズで、見たもの以上に何かを収める、という、これまでの私流のストリートスナップの撮り方をやめて、標準50mmレンズで、心の的を絞って、撮りたいものを撮ろう!という姿勢に変わったことから、しっかりとプラハに居る人々を見据える目が開いたように思います。これが、Leicaから教わった、最初の大きな出来事でした。

春夏秋冬、日常を撮る

そうはいっても、もともと広角レンズ好きの私としては、28mmは日々の友。持ち歩く頻度が高いのもこのレンズです。私の持っているLeica M10はシルバークローム。これに軽快なLeica ズミクロン28mmをつけて首から下げ、数々のレジェンドの写真家がひょいと首から下げている様を思い浮かべながら、悦にいることもしばしば。

いうまでもなく、フォルムのスマートさ、無駄のない造作はLeicaすべての機種の根幹ですが、私はLeica M10のシルバークロームを圧倒的に美しいと感じています。ブラックペイントが人気ですよ、と言われても、私のLeicaのイメージ、もっと言えばカメラのイメージはシルバークロームなのです。(ドヤ顔ですみません、、、)

つまみを回してベースプレートを開ける時、またバッテリーを入れて蓋を閉める時にぶつかる”カーン”という金属の音が、シルバーの鈍い光と相まって、美しいと感じます。これは神聖な時間であり、丁寧な手作業というLeicaらしさを感じられることの一つで、このひと手間があることが、Leica M10の愛おしさでもあります。

さて、ではどんな写真をLeica M10 + Leica ズミクロン28mmで日々撮っているかといえば…

Leica M10 作例:桜と人物

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/28mm ASPH.
絞りF2.0・1/1000秒・ISO200・RAW

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春は桜、ということで、毎年どんな風に桜を切り取ろうかとソワソワする季節ですが、なんとなく行かずにはいられないのが、新宿御苑の桜が葉桜に変わる頃。薄桜色と若緑のコンビネーション、そして一面に広がる桜の絨毯を撮るのには28mmが最適です。桜を楽しむ人に、ここは主役となってもらいました。(モデル:takumi)

Leica M10 作例:たんぽぽの綿毛

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/28mm ASPH.
絞りF2.0・1/1500秒・ISO100・RAW

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たんぽぽの綿毛の群生が、まるで動いて迫りくるような感じがしたのでぐっと寄ってみました。オートフォーカスだとピントが定まりにくいですが、Leica M10のマニュアルフォーカスはストレスフリーです。

Leica M10 作例:イチョウと人物

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/28mm ASPH.
絞りF2.8・1/90秒・ISO100・RAW

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桜と同じく、銀杏の葉が地面にいっぱいになる世界は、秋の楽しみでもあります。素敵な被写体となる人々がいてくれたら、それはもうパラダイス。

Leica M10 作例:雪

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/28mm ASPH.
絞りF2.8・1/180秒・ISO3200・RAW

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雨の日も雪の日もなんのそので、防塵防滴の強さを発揮してくれるLeica M10。東京に雪が降ることは滅多にないので、そんな日は街に繰り出すのがストリートスナッパーの癖です。

ポートレート

なんといっても人を撮る時の距離感が、Leicaを持って変わったことの一つ。Leica M10を見て、殆どの方が「それはフィルムカメラですか?」と尋ねます。その時点で、相手の気持ちがすっと、撮られることに真剣になるのが感じられて、こちらも真剣勝負にスイッチが入ります。ポートレートを撮る時には、Leica ズミクロン50mmで構え、かなり短時間で撮ります。お互いの集中力が保てる間だけですが、そんな緊張感がたまらなく好きです。
最近、日本の工芸作家の方々を撮らせて頂く機会に恵まれています。作家の皆さまは、それぞれ、自分の世界を持っていらっしゃるので、どなたも「いい顔だなー」と惚れ惚れしてしまいます。(作家敬称略)

Leica M10 ポートレート作例 画家:松原賢

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/50mm
絞りF2.0・1/90秒 ISO400 RAW

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銀座のど真ん中での存在感が圧倒的でした。いつもはニコニコ顔の優しいおじいちゃんですが、一瞬見せる作家の顔は厳しさと芯の強さを持ったダンディズムを感じました。
(画家:松原賢)

Leica M10 ポートレート作例 陶芸家:古谷宣幸

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/50mm
絞りF2.0 ・1/90秒・ISO400 RAW

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写真は苦手なんですよ、という照れも、あっという間に消えて真剣勝負のフォトセッションに挑んでくださいました。信念のある作風と相まって人となりが見えてくる瞬間をキャッチ。
(陶芸家:古谷宣幸)

Leica M10 ポートレート作例 陶芸家:土楽窯七代目 福森雅武

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/50mm
絞りF2.0・1/90秒・ISO400・RAW

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豪傑でファッショナブルな姿からは御歳80歳とは思えぬ色気を漂わせ、ただ立っているだけで、人生の機微が感じられた稀有な方。モノクロームは、そんな気持ちの表現でもあります。
(陶芸家 土楽窯七代目 福森雅武)

作品制作

Leica M10で撮ることの難しさ、そして快適さでもあるマニュアルフォーカスですが、
ストリートスナップの際、なかなかピントが確認しにくいことがあります。そんな時にはライブビューに頼りながら、デジタル万歳ということで、大いに活用しています。けれど、ピントはもちろん合っていてほしいですが、多少のずれもまたLeicaらしさであり、最近は目測での撮影にも随分慣れてきました。

さて、作品制作ですが、プラハに出かけて以来、いろいろな国にLeica M10と共に旅をしてまとめたものが増えてきました。そんな中から、少し取り上げてみたいと思います。

Leica M10 作例:ショップ店員

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/50mm
絞りF2.8・1/60秒・ISO800・RAW

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とあるコスメショップのキャッシャーで、楽しそうにおしゃべりしている店員さん。こちらからカメラを構えても、Leica M10は姿を消したかのように視界に入らない様子。このボディの小ささならではの圧迫感のない撮影ができるのはLeicaの良さでもあります。
(写真集『Layered NY』より)

Leica M10 作例:カップル

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/28mm ASPH.
絞りF2.0・1/45・ISO3200・RAW

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回転扉から出る時にお店の中に居たカップルを瞬撮したもの。後からデータを見ると、良くこの値で撮れたなと思いますが、28mmレンズならではの瞬間です。回転扉をもう一周して撮りたいくらいでした(笑)。
(写真集『Lady in moment』より)

Leica M10 作例:キス

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/28mm ASPH.
絞りF4.8 1/125秒 ISO800 RAW

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ありがとうのkissはニューヨークの至るところで見られますが、構図や二人の関係性などのタイミングがばっちりなことは意外に少ないのです。物語があちこちで繰り広げられるニューヨークは、いつでも撮るモードでいるためにLeica M10の小さなボディは最適です。

Leica M10 作例:ホテルでの朝食

Leica M10・Leica ズミクロンM f2/28mm ASPH.
絞りF2.4・1/90秒・ISO1600・RAW

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パリのホテルでの朝食のワンシーン。隣に座っていたyellow gentleman!
これはもう、絶対に撮らなくてはと、席を立つ時に1枚パチリ。

これからは…

新たに新機種も出たりと、Leicaはこれからもどんどん素晴らしいカメラを生み出してくれることと思いますが、私にとってのファーストLeicaであるLeica M10はずっと手放すことはないでしょう。今は35mmで、新たな作品を撮ってみたいという気持ちがあり、Leica アポズミクロンM f2/35mm ASPH.が気になっているところですが、それとは逆に、オールドレンズの、どこか頼りなげな感じの写りに心惹かれたり、いわゆるレンズ沼に、ゆっくりと落ちていくところかもしれません。

まとめ

・ほどよい重量感、あるいは軽量感ともいえる、すべてがストンと腑に落ちた「心地よさ」
・ボディの厚みがLeicaのデジタル機では初の、フィルム機と同じ33.7mm
・背面に映し出された画像を見た時の驚きは衝撃と言えるほど、言葉では言い表せない「何か」でした
・フォルムのスマートさ、無駄のない造作はLeicaすべての機種の根幹
・人を撮る時の距離感が、Leicaを持って変わったことの一つ
・マニュアルフォーカスはLeica M10で撮ることの難しさ、そして快適さでもある

Photo & Text by サトウヒトミ (さとう・ひとみ)

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