フジヤカメラ

 

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2023.04.21
メーカー・プロインタビュー,

富士フイルム開発陣インタビュー × 赤城耕一【カメラ・レンズ編】| Xシリーズ第5世代の登場とこれからの展開を聞く

富士フイルム開発陣インタビュー × 赤城耕一【カメラ・レンズ編】キービジュアル


ライター赤城 耕一イメージ
■フォトグラファー紹介

赤城 耕一

東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアル、コマーシャルで活動。またカメラ・写真雑誌、WEBマガジンで写真のHOW TOからメカニズム論評、カメラ、レンズのレビューで撮影、執筆を行うほか、写真ワークショップ、芸術系大学で教鞭をとる。使用カメラは70年前のライカから、最新のデジタルカメラまでと幅広い。著書に『赤城写真機診療所MarkⅡ』(玄光社)、『フィルムカメラ放蕩記』(ホビージャパン)など多数。

X-T1、X-T2、X-T3、X-T4、X-T5の商品画像

はじめに

富士フイルムが発表したXシリーズの第5世代。原点回帰と謳う「X-T5」に込められた思いとは。XFレンズの展開や、フジヤカメラでも節目節目で話題をさらっているというXシリーズの市場での動向から中古商品の動き、さらに気になるX-ProシリーズやGFXの今後の展開まで、富士フイルム開発陣へ赤城耕一氏に切り込んでいただいた。

インタビュー参加者の集合写真

インタビュー参加者の皆さん

富士フイルム株式会社<br>イメージングソリューション事業部<br>プロフェッショナルイメージンググループ<br>商品企画グループ マネージャー<br>渡邊 淳氏イメージ

富士フイルム株式会社
イメージングソリューション事業部
プロフェッショナルイメージンググループ
商品企画グループ マネージャー
渡邊 淳氏

富士フイルム株式会社<br>イメージングソリューション事業部<br>イメージングソリューション開発センター<br>技術マネージャー<br>入江 公祐氏イメージ

富士フイルム株式会社
イメージングソリューション事業部
イメージングソリューション開発センター
技術マネージャー
入江 公祐氏

富士フイルムイメージングシステムズ株式会社<br>コンシューマー営業本部 広域チェーン営業部<br>兼・量販営業部<br>カメラ専門店・ECグループ<br>野口 貴史氏イメージ

富士フイルムイメージングシステムズ株式会社
コンシューマー営業本部 広域チェーン営業部
兼・量販営業部
カメラ専門店・ECグループ
野口 貴史氏

フジヤカメラ 商品部 内野イメージ

フジヤカメラ 商品部 内野

富士フイルム 第5世代Xシリーズ

それぞれの役割が明確になった第5世代Xシリーズ

赤城 耕一氏(以下 赤城):第5世代にあたる「X-T5」、「X-H2」、「X-H2S」の特徴をお聞きしたいのですが、その前に、「第5世代」というのは正式な呼称なのでしょうか?

富士フイルム株式会社 渡邊 淳氏(以下 渡邊 ):はい、正式です。第4世代くらいから明確に呼称するようになりました。第5世代ではイメージセンサーとプロセッサーが新しくなりました。APS-Cサイズで初となる高画素な約4020万画素のイメージセンサーを「X-T5」と「X-H2」に採用したことと、第4世代まででは追い込み切れていなかったAFでの動体補足性能を、「X-H2S」でプロの要求にも応えられるようにしたというのが、大きな2つの方向性となっています。

赤城:私は「X-T1」、「X-T2」、「X-T3」と歴代Tシリーズを使いつづけてきたのですけど、「X-T4」はスルーして「X-T3」を使いつづけていました。ところが「X-T5」を触らせてもらったら「これはうちに来てもらわないといけないだろう!」という、それくらい大きな違いを感じて購入したのですよ。

渡邊:「X-T5」を企画するときには、ある課題意識をもっていました。サイズと重量が、性能が進化するたびに大きくなっていたのですが、「X-T4」はXシリーズ・フラッグシップとしての役割と、動画対応という重責があったため、さらに大きなサイズの仕様になりました。

そうした経緯があって次の「X-T5」を考えたとき、フラッグシップとしての役割はX-H2シリーズ(X-H2・X-H2S)に担ってもらって、X-Tシリーズは原点回帰として「小型軽量高画質」であることと「操作する楽しさ」を追求しようということとしました。
第5世代のXシリーズカメラとしての高性能を満たしながら、目指したところのバック・トゥー・オリジンが達成できたと思います。

赤城:本当のことをいうと買うつもりはなかったのですが(笑)、本当にまったく別モノという印象に驚いて、つい買ってしまったくらいです。

渡邊:ありがとうございます(笑)

赤城:ところで、「X-H2」と「X-H2S」が、第5世代のフラッグシップモデルということは理解できましたが、そうなると「X-T5」の位置づけはどうなるのでしょうか?ミドルクラスというにはスペックが高すぎて変ですよね?

渡邊:社内では「主力機」とか「メインストリームモデル」と呼んでいます。大きなレンズを使うなどのヘビーユースの場合はグリップのしっかりしたX-Hシリーズを、そこまでではなくとも写真が趣味で普段から持ち歩いて楽しみたいといったご要望には、趣味性の高い「X-T5」が向いていると考えております。

また、動画撮影性能はX-Hシリーズの方が強化されていますので、より本格的に動画を撮影したいという場合は「X-H2」や「X-H2S」の方が適しています。

赤城:XシリーズのカメラはAPS-Cサイズセンサーを採用していることが重要で、APS-Cサイズセンサーだからこそフルサイズに比べて相対的に小型軽量化に成功していますよね?

渡邊:その通りです。APS-Cサイズセンサーに拘っているひとつの理由が、システムを小型軽量にできることです。

赤城:そうすると、「X-T1」から世代が進むにつれて多機能化も進んでしまったために、「X-T4」は思いのほか「おデブさん」になってしまった。それを解消するために第5世代では役割分担を明確にすることで、本来の小型軽量路線に立ち返ることができた、ということで合っていますか。

渡邊:はい、ご理解の通りです。「X-T5」は静止画撮影の比重を高めていますが、それも「X-H2」や「X-H2S」より小型軽量化を達成できた理由のひとつになっています。「X-T4」ではバリアングル式だったモニターですが、「X-T5」で3方向チルト式が復帰したのもそのひとつです。

また、今回は、約2616万画素と約4020万画素の2種類のイメージセンサーが用意できたことと、プロセッサーも進化したことで、中身(性能)的にもラインアップのなかで差別化することができましたし、外観的にもX-H2シリーズと「X-T5」のそれぞれでデザインを特徴づけることができました。デザインで当社製品を選んでくださる方も多くいらっしゃいますので、そうしたところは強く意識しながら商品ラインアップを考えています。

赤城:耐久性についてはいかがでしょうか。X-H2シリーズと「X-T5」で違いはありますか?

渡邊:耐久性については基本同じです。

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「画質を維持しながら高画素化」は技術的に可能だった

赤城:「X-H2」と「X-T5」はAPS-Cサイズセンサーでは初となる4000万画素オーバーを達成していますが、そうした高画素化への要望というのはあるものなのでしょうか?

渡邊:実は、そこまで多くあったわけではありません。ただ、APS-Cサイズセンサーのポテンシャルとして、画質を維持しながら高画素化することは技術的に可能だったのです。

一方で「X-H2S」はスピード性能、レスポンスの良さを考慮して積層型の約2616万画素のセンサーを採用しましたので、ラインアップ上のバランスを考えて「X-H2」と「X-T5」の2機種は約4020万画素の高画素機としました。我々としては、Xシリーズのラインアップを広げるためにも、高画素機の可能性を提案したかったという想いが強かったです。

赤城:少し意地悪な質問になりますが、「X-H2」と「X-H2S」で撮った写真を、このフロンティアでA3サイズくらいにプリントしたとしたら、ご自身では見分けはつきますか?

(※富士フイルムの現像機「フロンティア」がインタビュー会場にありました。「フロンティア」は、富士フイルムならではの高品位プリントサービスを提供するミニラボ。)

富士フイルム株式会社 入江 公祐氏:シビアにみれば階調性などで高画素機の方が有利な点があるのは確かですが、A3サイズくらいのプリントでは多くの場合違いはわかりにくいと思います。

赤城:でも、店頭でプライスタグを見ると画素数が表記されていること多いではないですか。販売店でのマーケティングとしては、やはり画素数が多い方が有利に働くのではないですか?

フジヤカメラ 内野(以下 内野):現在も高画素の需要は高いですが、先程入江さんが仰っていたように、諧調などシビアに見られる方やトリミングを多用される方等、高画素が必要な理由をはっきりとお持ちの方が多いように感じます。

赤城:やっぱりそうですよね。だからこそ買う方としては悩ましいんですよ。それほど大きな価格差があるわけでもないところがまた。しかし私、体は大きいけどカメラは小さい方が好みですので、どうしても原点回帰した「X-T5」に肩入れしたくなってしまいます。

渡邊:「X-H2」と「X-T5」は、イメージセンサーもプロセッサーも同じものを採用していますので、撮れる写真の画質は基本同じになります。後はお客様の使い方や表現、好みに合わせて選んでいただくことになりますね。

赤城:私は古い人間ですので、フィルム時代は絶対にトリミングしてはダメといわれて育ってきたクチでした。それでも今では当たり前のようにトリミングしちゃいます。

それは時代に合わせてワークフローが変わったということなので、悪いことではないと思っていますが、そうなってくると、「X-H2」や「X-T5」の約4020万画素や、「GFX 50S II」の約5140万画素、「GFX100S」の約1億200万画素などの高画素には、逆にありがたみを感じることもあります。

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X-T5は価格も原点回帰!?

赤城:いま、カメラやレンズの価格がどんどん上がっているわけですが…、「X-T5」はそんななかでも、わりと買いやすいというか、とても頑張っているなという感じを受けます。でもこれ、ユーザーとしては嬉しいのですけど、メーカーとしてはもう少し高く売りたかったというのが本音としてありませんか?

渡邊:私個人の思いになってしまいますけど、「X-T5」につきましては価格も原点回帰できないかと考えていました。何しろコンセプトがバック・トゥー・オリジンですので、サイズだけでなく価格も元に戻せないかと。

赤城:お!そうでしたか。でも富士フイルムの皆さんが努力してくれたおかげで、われわれも高性能な「X-T5」を安く買えるというわけですね。

渡邊:原価の高騰などもあって、完全に元に戻すのは難しかったのですが、「自分がカメラを買うなら…」とはいつも考えていまして、多くの人がちょっと頑張れば手が届くくらいの値段にできるよう頑張りました。

赤城:素晴らしいですね。確かに、GFXシリーズなどもプロやハイアマチュアの必須アイテムだと考えれば、決して夢のカメラというほどでなく、ちょっと頑張れば買える価格に設定されていますものね。例えばフジヤカメラさんの無金利ショッピングローンを利用するなどして(笑)

内野:下取りサービスもありますのでぜひご利用ください。実際に「X-T5」が発売されたときは、「X-T4」を下取りに出される方が多くいらっしゃいました。

赤城:フジヤカメラさんとしては、「X-T5」が発売されたときの印象は大きかったですか?

内野:大きかったですね。最初の予約台数は過去最高を記録しています。「X-H2」の発売からそれほど間が空くことなく「X-T5」の予告がされたこともあって、発表されて直ぐに予約が殺到しました。

赤城:過去最高とはすごいですね。

内野:さきほどお話にもでましたように、ちょっと頑張れば手が届く価格のX-Tシリーズ最新モデルを待ち望んでいた人が多かったのだろうな、というのが感想です。

赤城:フジヤカメラさんは結構強く富士フイルムのカメラ推していますよね?そんな風にお見受けします(笑)

内野:はい、積極的におすすめしています(笑)

富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 野口 貴史氏(以下 野口):ありがとうございます!

内野:おかげさまで、当店の富士フイルムさんの2022年の販売実績は、カメラとレンズのどちらも好調で、過去最高を記録しました。

赤城:ここでも過去最高ですか。すごいですね。

内野:はい。2020年以降の販売実績の伸び率がとても順調です。2020年、コロナ禍が始まった最中に「X-T4」が発売されましたが、他のカメラが苦戦を強いられているなか、「X-T4」は本当に大人気でした。2020年は富士フイルムさんに救われた年として感謝しています。

野口:フジヤカメラさんに取り扱っていただいているレンズ交換式デジタルカメラで、「X-T4」が発売された年は、本当にすごいシェアをとっていただいてこちらこそ感謝しています。

赤城:素晴らしいことですけど、具体的な理由はあるのでしょうか?

内野:新製品の発売が少なかったり、コロナ禍で一気にいろいろなものが供給難になったり、ということもあると思います。ですが、やはりX-Tシリーズ自体に人気があるというのが一番大きな理由ではないかと思います。

赤城:ステイホームが叫ばれていた時期でもありますし、部屋の中でたくさんあるダイヤルをいじっているのが楽しいからという理由もありませんかね(笑)

内野:そうですね(笑) 見て楽しむ、触って楽しむも、X-Tシリーズの良さのひとつですから、そこに魅力を感じた方も多かったのではないかと思います。

赤城:そうしたX-Tシリーズならではの、いわゆるダイヤルオペレーションも、初代から一貫して大切にされているところがまた良いですね。

渡邊:そうですね。実は一番大切にしていることかもしれません。

赤城:先進の機能や高画質といったことももちろん大切だけど、モノとしての魅力があるところも多くのユーザーに受け入れられているところでしょうね。仮に外に撮影に行けないとしても、X-Tシリーズがあれば部屋の中でガマンできるかもしれない(笑)

内野:生産終了モデルも中古品として当店では販売されるわけですが、実は過去のモデルの人気が再燃して中古の相場が上がっていくという、富士フイルムさんのデジタルカメラ特有の現象が起こっています。

具体的には、「X-Pro2」や「X-Pro3」、「X-E4」など、デザインが魅力的だったり小型化に優れていたりするモデルが人気です。なかでも「X-Pro2」は2016年発売のカメラですが、人気が再燃して現在の相場は3年前より上がっています。

赤城:えっ!そんなことが起こっているのですか!?

内野:デジタルカメラは時がたつにつれて相場が下がっていくのが普通ですが、2020年以降の富士フイルム製品のように再び相場が上がるというのは、なかなか珍しいケースです。
手に入らないとなると欲しくなるというのが人情でもありますし…(笑)

赤城:そういう意味では、ぜひ教えてもらいたいのがですね、「X100V」、どこにいっても売ってないのですけど、これはなぜでしょうか?

渡邊:皆様にご迷惑をお掛けしております。ここ数年は、小型であることとフィルムカメラ的なスタイルが老若男女を問わず受け入れられ、「X100V」の人気が世界的に非常に高まっています。当社と致しましても最大限の努力はしていますが、需要に対して生産が追い付いていない状況です。

赤城:スゴイことですね。それではバックオーダーをたくさん抱えているのですね。それはメーカーとしては嬉しい状況ではないですか?

渡邊:たくさんのオーダーをいただいているのは確かに嬉しいことではありますが、ご要望に応えきれていないわけですから非常に心苦しさを感じています。

X-T4の商品画像
X-T4
X-Pro2の商品画像
X-Pro2

趣味性の高いダイヤルオペレーションについて

赤城:「X-T5」はシャッター速度ダイヤルを備えていて、これを個人的にとても気に入っています。ダイヤル主体の操作系には、富士フイルムとしても拘りがあるところですか?

渡邊:現状では、シャッター速度ダイヤルとモードダイヤルの2種類の操作系をもったカメラを展開していますが、オリジナルとしてはシャッター速度ダイヤルの操作系になります。

ただ、当社のカメラを使ったことのない方は、やはりモードダイヤルの操作系の方が分かりやすいと感じる方も多くいらっしゃると思いますので、ラインアップとしては2種類を用意させて頂いております。

赤城:絞りリングを備えたレンズも多くそろっていて良いですね。

渡邊:ありがとうございます。シャッター速度ダイヤルや絞りリング、それから露出補正ダイヤルやISO感度ダイヤルも、機種によって搭載可能なものは搭載するようにしています。

赤城:見た目のカッコ良さというのもありますでしょうか?

渡邊:はい、ダイヤルを中心とした操作系は、当社のカメラの大きな特徴のひとつとして大切にしています。

ダイヤルによる操作系の画像
Xシリーズの大きな特徴であるダイヤルによる操作系

「40MP推奨レンズ」でなくてもXシリーズは十分楽しめる!

赤城:レンズの話ですけど、御社のレンズの描写性能はどれも非常に優秀だと思います。ですけど、それについて富士フイルムはレンズの光学性能の高さを基本としているのか、それともカメラ内のデジタル補正を前提として設計しているのか、どのようにお考えでしょう?

渡邊:基本的には、光学性能で追い込みたいと考えています。例えば、優先度として小型軽量性の重要度が非常に高いレンズの場合は、デジタル補正も合わせて、画質とサイズのバランスを見極めることになります。

赤城:約4020万画素の「X-H2」と「X-T5」では推奨レンズを公開していますね。

渡邊:良く誤解されてしまうのですが、どのレンズでもきちんと40MPを解像しています。「40MP推奨レンズ」というのは、その中でも、「開放絞りから解像性能を満たしているレンズはこれ!」という意味で公表しているつもりです。でも、なかなか本意が伝わりきっていないと反省しております。

赤城:「40MP推奨レンズ」以外を使うときはちょっと絞って使ってくださいね、という意味でしょうか?

渡邊:「40MP推奨レンズ」以外のレンズでも、絞り開放から画面のほとんどの部分はきちんと解像できます。しかし、絞り開放から周辺も含めた画面全体で完全な解像性能が欲しい、といった場合には少し絞ってお使いいただくことをお勧めします。

赤城:正直言いますと、私などは、「40MP推奨レンズ」でも、そうでなくても、まったく画質に問題を感じることがありません。だから、以前から所有している古いタイプのレンズでも満足して使っていますよ。

とはいっても、例えば星景写真を撮る方なら、周辺部の点光源を絞り開放で正確に写したいでしょうから、私とは評価軸が異なるだろうことも理解できます。

渡邊:そうですね。使われる方それぞれで評価のされ方は変わると思います。ただ、ボディの性能がどんどん向上していますので、レンズの方もリニューアルするなどして、ボディ側のポテンシャルを最大限に活かせるよう、引き続き相乗的にアップデートしていくようにしたいと考えています。

赤城:これも個人的な考え方なのですけど、ミラーレスカメラになれば、性能はそのままで、サイズは小さくなると思っていたんですよ。ミラーレス化による小型軽量化を楽しみにしていました。でも実際は…

渡邊:市場では大きくなっているものもありますね。もちろん、小型軽量化は常に意識して製品開発をしています。

クオリティーと小型軽量化のバランスをとりながら、どう開発を進めていくかは第一優先といっても良いくらい大きな課題です。特に当社はXシリーズでAPS-Cサイズセンサーを採用していますので、ボディだけでなく、レンズの小型化も大きな課題だと考えています。

40MP推奨レンズ一覧の画像
40MP推奨レンズ(富士フイルムHPより)

「XF35mmF1.4 R」は安定の神レンズ

赤城:今現在、売れているレンズといったら、どのあたりになりますか?

内野:フジヤカメラの2022年までの結果を見ると、断トツで「XF35mmF1.4 R」が1位です。2位の「XF10-24mmF4 R OIS」と倍くらいの差があります。

「XF35mmF1.4 R」は、「XF33mmF1.4 R LM WR」が登場したりして、一時的に1位でなくなることがあっても、しばらくするとまた返り咲いたりするという、まさにXシリーズユーザーにとっては神レンズといって良いポジションにいると思います。

赤城:「XF35mmF1.4 R」は、XFレンズのなかでも初期に登場したレンズなのにすごいですね。絞り開放だと適度に柔らかくなる甘さが残っているところが良いのかな?

確かに、僕も良くいうことだけど、最新鋭のレンズと違って絞りを変えるほどに描写の特性も変わるところに、昔ながらのレンズの面白みがあって楽しいですよね。

内野:そうですよね。シャープ過ぎないところが、良い意味で富士フイルムのカメラと相性が良いと受け取られているのではないかと思います。最新鋭の良く写るけど大きく重い標準レンズとはまた違った、かつての王道的な標準レンズの良さがありますね。

赤城:王道的な昔ながらの楽しみをもったレンズとともに、最新鋭の非の打ちどころがないレンズを同時にラインアップしてくれているのが、富士フイルムの良いところでしょうね。どちらかひとつしかないと、選ぶ側としてはつまらなく感じてしまう。

内野:最新鋭のレンズにも力を入れてくれているところが良いですよね。
そういえば、「XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR」が登場した時には、AF性能の高い「X-H2S」と同時に購入される方が多くいらっしゃいました。

渡邊:そうなんですね。購入された方は、どういった被写体を撮られる方々が多かったですか?

内野:あくまで印象ではありますけど、野鳥などを撮られる方が多いように感じます。野鳥撮影ですと鳥の色を綺麗に出せる富士フイルムで、AF性能が進化した「X-H2S」と、超望遠の「XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR」がほぼ同時に登場したのですから、非常に有力な選択肢になったのではないでしょうか。

渡邊:フジヤカメラさんでは「XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR」が売れているようですけど、これは結構意外でしたね。

内野:18-135mmは旅行に最適な高倍率ズームということもあってか、毎年7月、8月にご購入される方が多いですね。

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インタビューの様子

根強い人気のX-Proシリーズ、今後の展開は?

赤城:中古価格が高騰しているという、X-Proシリーズは今後どうなっていくのでしょう?

渡邊:「X-Pro3」は「X-Pro2」から4年ほどの年月を経てだしました。結果的に、X-Pro3はかなり尖った仕様のカメラになりましたので、同じように尖った新しいX-Proシリーズのカメラを、いつわれわれが納得して出せるようになるかは、まだ決定はできない状態です。

赤城:X-Proシリーズはレンズ交換式のXシリーズカメラとして最初に登場したカメラで、個人的にも思い入れが強く、もしなくなってしまうようなことになったら悲しいなと…

X-Proシリーズのカメラは、X-Hシリーズはもちろんのこと、X-Tシリーズと比べても趣味性が高い独特なレンズ交換式カメラではないですか。ある意味異色のカメラがあるというのはラインナップを充実させるという意味でもよいことだと思いますし、実際に要望も多いのではないですか?

渡邊:ラインアップを検討するなかで、次のモデルはどうするのかも常に議論しております。

赤城:そうだ!GFXシリーズもですよね。例えば、フィルムカメラの「GF670 Professional」みたいな、レンズ一体型の中判デジタルが出る予定とかはありませんか?

渡邊:具体的な予定はありませんが、レンズ一体型のGFXは、実は多くあるご要望です。

将来のことをここで具体的にお答えすることはできませんが、Xシリーズにしても、GFXシリーズにしても、お寄せいただくご要望は真剣に受け止めつつ、それぞれのモデルの特徴を明確に出せるという判断ができた時点で、それを新しいモデルとして発売するという方針は変わりません。

今後も、お客様の期待に応えるラインアップを皆で企画していきたいと考えています。

GFX100の商品画像
GFX100
X-Pro3の商品画像
X-Pro3
富士フイルム製カメラ・レンズの商品画像

まとめ

・原点回帰と謳う小型軽量高画質、操作する楽しさを追求した「X-T5」
・本格的に動画を撮影したいなら「X-H2」や「X-H2S」
・「X-T5」は頑張れば手に届く価格に
・過去のモデルの人気が再燃<
・神レンズ「XF35mmF1.4 R」は昔ながらのレンズの面白みが人気の秘密!?

インタビュアー 赤城 耕一
Photo & Text by 曽根原 昇

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