野鳥撮影をはじめよう × 菅原貴徳 道具の選び方と心構え

はじめに
野鳥観察・撮影をはじめるのに、冬は適した季節。種類、数ともに豊富で、都内近郊でも1日に50種類近くの鳥を見ることができるほど。まずは水辺がおすすめで、カモ類やサギ類の他、のちに登場するハクチョウ類やカワセミのような鳥の姿が見つかる。
OM SYSTEM OM-D E-M1 MarkⅢ・M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO・300mm(35mm判換算600 mm)
絞り優先AE(絞りF4・1/640秒)・+0.7EV補正・ISO400・ドライブ:静音+連写L
フォーカスモード:シングルAF+MF・WB晴天・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【アオジ】[東京都|1月|15時]
夏の間は葉に阻まれ見つけづらかった森の小鳥たちも、木々の葉も落ちた今なら発見が容易で、多くの出会いが期待できる。
例えば黄色が鮮やかなアオジ。少しの緑地があれば、冬の間は平地の都市公園でもよく見られる鳥で、遊歩道脇でよく種子を探している。春が近づくにつれ警戒心も薄れていき、桜が咲く頃に繁殖地の山へ帰っていく。
【商品情報】OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
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野鳥撮影の道具
レンズ -必要なレンズ焦点距離の目安-
野鳥を撮影するには超望遠レンズが必要。理由は、鳥を大きく写したいというのもそうだが、無理な接近で鳥にストレスをかけてほしくないため。
初心者だからと短いレンズでなんとかしようとするのではなく、むしろ初心者ほど長いレンズを使い、鳥との距離をとりながら撮影したほうが、結果的に撮影のチャンスも多く、上達も早くなると思う。
メインのレンズとして、最低でも600mm相当、可能であれば800〜1000mm相当域の望遠があると望ましく、適宜テレコンバーターで延長する。広角や中望遠も用意できると、写真のバリエーションが出る。以下の作例を例に、自身がどんなスタイルで撮影をしたいのかを選ぶ参考にしてほしい。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO・400mm(35mm判換算800mm)
絞り優先AE(絞りF4.5・1/160秒)・-0.3EV補正・ISO320・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【ジョウビタキ】[熊本県|2月|16時]
小鳥の撮影では、最低800mm相当はほしいところ。このジョウビタキは、比較的人通りの多い都市公園を縄張りにしていたので、約8メートルの距離まで近づくことができた。実際には、ここまで近づける状況は全体の一部なので、小鳥の撮影を視野に入れるなら、800〜1000mm相当のレンズは必須と言える。
【商品情報】OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
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OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO + MC-14・700mm(35mm判換算1400mm)
マニュアル(絞りF8・1/2500秒)・ISO400・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【クロツラヘラサギ】[鹿児島県|2月|14時]
湖の対岸、40メートルほど離れた場所で休息しているクロツラヘラサギの群れを見つけたのだが、距離が遠かったため、1.4倍のテレコンバーターを使用して1400mm相当で撮影した。
このように鳥との距離を埋めようがない状況も少なくないので、テレコンバーターがあると便利だ。テレコンバーターには2倍のものもあるが、画質、F値の低下をどの程度許容できるかにより使い分ける。筆者の場合、1.4倍は日常的に使い、2倍の使用頻度は高くないが、猛禽類など、警戒心の強い鳥の撮影では鳥との距離を取るために積極的に使用する。
【商品情報】OM SYSTEM テレコンバーター M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14
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OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO・150mm(35mm判換算300mm)
マニュアル(絞りF3.2・1/1250秒)・ISO200・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【コハクチョウ】[埼玉県|2月|7時]
300mm相当で撮影したコハクチョウ。一般には望遠域だが、野鳥撮影においては中望遠からやや広角のイメージ。主に人に対する警戒心が薄い、大型の水鳥の撮影に限られる。鳥の周辺の雰囲気を入れ込むのには重宝する。
【商品情報】OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
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OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO・12mm(35mm判換算24mm)
マニュアル(絞りF4.5・1/3200秒)・ISO400・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【ナベヅル】[鹿児島県|2月|14時]
24mm相当で撮影したナベヅルの群れ。風景の中を連なって飛ぶ様子を写し込む意図で広角レンズを使用した。大型の水鳥の撮影では、バリエーションのためにも、広角レンズが1本あると便利。
【商品情報】OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
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カメラ -筆者がM3/4(マイクロフォーサーズ)を使用する理由-
筆者のメインシステムは、OM SYSTEM(オーエムシステム)のセット。センサーサイズはM3/4(マイクロフォーサーズ)規格なので、レンズ表記の2倍の望遠効果が得られる。上述のとおり野鳥の場合は思ったように近づけないことが最初の障害になるので、同じサイズのレンズを使用しても、望遠効果が得られるメリットは大きい。
最近流行の被写体認識AFも、画面に占める鳥のサイズが大きい方が精度が上がるように感じている。手ブレ補正の効きがダントツで優れていることも、野鳥を探して軽快にフィールドを歩き回るスタイルに合致している。

筆者の基本セット。300〜1000mm相当をカバーするものを1台。1.4倍と2倍のテレコンバーターも用意。もう1台のボディは、24〜40mm相当、または80〜300mm相当のレンズを付けておき、風景的な作画を狙えそうなシーンに備えておく。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO・400mm(35mm判換算800mm)
マニュアル(絞りF4.5・1/3200秒)・ISO320・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【ナベヅル】[鹿児島県|2月|10時]
動体撮影に関しては、ミラーレス機よりも一眼レフの方が有利と言われてきたが、ファインダー表示の遅延解消に加え、被写体認識AFのような「ミラーレスならでは」の機構が進化したことで、使いやすさの面で上回ってきた、という判断をしている。
「鳥のどこか」にピントを合わせるのであれば従来の方式でも可能だが、「顔」に正確に合焦させるには、カメラが鳥を認識し、顔に当たる部分にフォーカスをしてくれた方が便利。
【商品情報】OM SYSTEM OM-1
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OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO・500mm (35mm判換算1000mm)
マニュアル(絞りF5.6・1/4000秒)ISO640・ドライブ:ProCapSH1 (120コマ/秒)
フォーカスモード:シングルAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【カワセミ】[埼玉県|1月|14時]
また、ミラーレス機ならではの機能として、プリ連写機能(OM SYSTEMの場合プロキャプチャーモード)も見逃せない。シャッターを押し込む前のコマを記録できる、時間を遡れる機能だ。
例えば、このカワセミの撮影シーンでは、カワセミが飛び立ったのに反応してシャッターを押し込んだのだが、メディアには飛び出す前から飛び去るまでの一連が記録されていた。ローリングシャッター現象の影響が比較的小さいのも、マイクロフォーサーズの強みである。
双眼鏡
カメラ・レンズの他に必要な機材として、双眼鏡をおすすめしたい。超望遠レンズがあれば双眼鏡は不要と考える方も多いが、本格的に野鳥撮影を行うのであれば欠かせない。倍率は8から10倍程度、対物レンズの口径25〜32mm程度のものがよく、撮影機材との重量バランスを見て選ぶと良い。

左は10倍・33mm口径。右は10倍・25mm口径。明るさや視野の広さは、口径が大きい方が有利だが、それに伴って価格、重量とも上がる。また、写真用レンズと同様、EDレンズなど高級素材を使用したものは性能も価格も上がる。手頃な1台を手に入れた後、明るさが欲しいのか、高倍率が欲しいのかで2台目を選ぶ手もある。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO・500mm (35mm判換算1000mm)
マニュアル(絞りF5.6・1/200秒)・ISO800・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:IS Off
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【タシギ】[埼玉県|1月|16時]
視野が広く、ピントも深く見える双眼鏡は、野鳥を見つける道具としても、観察する道具としても優れている。実際筆者も、フィールドではカメラを構える時間はごく一部で、多くの時間を双眼鏡での観察に割いている。
例えばこのタシギは、「いかにも鳥がいそうな」水際を双眼鏡で流し見ていた時に発見したもの。このような色彩の鳥がじっとしていると、肉眼では見落としてしまいがちだが、双眼鏡の視野で拡大してみると発見が可能。
鳥を見つけたら、その鳥が何をしているのかを観察する。この場合であれば「休息」で、その行動をやめない距離が、撮影のために近づいてもよい距離の目安になる。それ以上の接近はストレスになるのでやめよう。
野鳥撮影のコツのひとつは、鳥を前にした時に焦らないこと。出会いの回数を上げることで、「少ないチャンスで撮らねば」と焦る必要がなくなり、離れた位置から早めに鳥を発見できれば、気づいたら鳥が目の前にいて瞬間で逃げられてしまう、ということも回避できる。
双眼鏡はカメラ以上に長く使える機材なので、よく見比べて目に合うものを選ぶと良い。
望遠鏡
さらに高精細な観察をする際には、望遠鏡を使う。フィールドスコープとも呼ばれ、天体望遠鏡と違い、上下が反転せずに見えるのが特徴。三脚が必須で、やや特殊な道具だが、双眼鏡と比較しても、見える像の美しさや、観察で得られる情報の量は桁違いに優れている。筆者は、遠くの野鳥の確認・識別や、行動観察で活用している。

三脚と雲台
ブレとの戦い、と言われる超望遠での撮影だが、カメラ・レンズの手ブレ補正機能の進化によって、手ブレを防ぐというよりも、構図の安定という意味合いで三脚を使用する機会が増えている。
三脚が活きるシーンのひとつは、観察や経験で鳥を待つべき場所が絞れた時。事前に構図や高さを整えておくことで、鳥が現れた時に小さな動きで、鳥を驚かさずに撮影できる。鳥は追いかけるよりも、待ち伏せたほうが近くで撮影できる可能性が高いことも知っておくと良い。
もうひとつ、筆者がよく三脚を使用するのは飛翔撮影をする時。ビデオ雲台またはジンバル雲台を載せた三脚を使用する。鳥の動きを追う際の「軸」として使うイメージなので、動きがスムーズであることを基準に選んでいる。

先立って登場したナベヅルの撮影のように、動体の撮影がメインと分かっているときはジンバル雲台をよく使用する。振り子の要領で、力を入れずとも素早くレンズを触れるのが特徴。構造上、静止した鳥を撮影する際には、シャッターを押し込む際のブレに注意する必要がある。
【商品情報】GITZO マウンテニア三脚2型3段 GT2532
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【商品情報】Leofoto PG-1 ジンバル雲台
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ビデオ雲台は、動体の追いやすさと、安定感に優れ、野鳥撮影において最も使いやすいと感じる。抵抗の大きさを調整できる機種もあり、載せる機材の重さに応じた設定が可能だ。油圧式のものは、冬季は動きが硬くなる場合もあるので、使用シーンを想定しながら店頭で相談してみると良い。
【商品情報】GITZO システマティック三脚3型4段ロング GT3543LS
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【商品情報】sachtler FSB 8 MkII フルーイドヘッド 〔S2069-0001〕
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【商品情報】GITZO GS3321V75 システマティックビデオアダプター3型75mm
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おわりに
いかがだっただろうか。上述のように、冬は野鳥撮影をはじめるのに適した季節。自然に散歩していても鳥が目に入ってくるので、撮影に挑戦したいと考える方も多いと思う。
一方で、鳥たちも冬を越すために必死であることを忘れず、生活を邪魔しないリスペクトを持って臨んでほしい。機材選びもその大事な過程のひとつだ。その気持ちを忘れなければ、必ずや心躍るシーンに出会えるはず。ぜひ、野鳥と向き合う時間を楽しんでほしい。
まとめ
・鳥にストレスがない距離で撮影するため超望遠レンズを
・800〜1000mm相当域の望遠がおすすめ
・テレコンバーターがあると便利
・被写体認識AFと手振れ補正機能が優れたOM SYSTEMのセット
・観察に双眼鏡と望遠鏡を活用
・構図の安定のために三脚を使用
Photo & Text by 菅原貴徳(すがわら・たかのり)

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