1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、11歳で野鳥観察をはじめる。東京海洋大学、ノルウェー留学で海洋学を、名古屋大学大学院で海鳥の生態を学んだ後、写真家に。様々な景色に調和した鳥たちの暮らしを追って、国内外を旅することがライフワーク。近著に写真集『木々と見る夢』 (青菁社)、『散歩道の図鑑 あした出会える野鳥100』(山と渓谷社、写真担当)、『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)などがある。
日本自然科学写真協会(SSP)会員。
野鳥観察・撮影をはじめるのに、冬は適した季節。種類、数ともに豊富で、都内近郊でも1日に50種類近くの鳥を見ることができるほど。まずは水辺がおすすめで、カモ類やサギ類の他、のちに登場するハクチョウ類やカワセミのような鳥の姿が見つかる。
OM SYSTEM OM-D E-M1 MarkⅢ・M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO・300mm(35mm判換算600 mm)
絞り優先AE(絞りF4・1/640秒)・+0.7EV補正・ISO400・ドライブ:静音+連写L
フォーカスモード:シングルAF+MF・WB晴天・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【アオジ】[東京都|1月|15時]
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野鳥を撮影するには超望遠レンズが必要。理由は、鳥を大きく写したいというのもそうだが、無理な接近で鳥にストレスをかけてほしくないため。
初心者だからと短いレンズでなんとかしようとするのではなく、むしろ初心者ほど長いレンズを使い、鳥との距離をとりながら撮影したほうが、結果的に撮影のチャンスも多く、上達も早くなると思う。
メインのレンズとして、最低でも600mm相当、可能であれば800〜1000mm相当域の望遠があると望ましく、適宜テレコンバーターで延長する。広角や中望遠も用意できると、写真のバリエーションが出る。以下の作例を例に、自身がどんなスタイルで撮影をしたいのかを選ぶ参考にしてほしい。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO・400mm(35mm判換算800mm)
絞り優先AE(絞りF4.5・1/160秒)・-0.3EV補正・ISO320・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【ジョウビタキ】[熊本県|2月|16時]
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OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO + MC-14・700mm(35mm判換算1400mm)
マニュアル(絞りF8・1/2500秒)・ISO400・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【クロツラヘラサギ】[鹿児島県|2月|14時]
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OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO・150mm(35mm判換算300mm)
マニュアル(絞りF3.2・1/1250秒)・ISO200・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【コハクチョウ】[埼玉県|2月|7時]
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OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO・12mm(35mm判換算24mm)
マニュアル(絞りF4.5・1/3200秒)・ISO400・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【ナベヅル】[鹿児島県|2月|14時]
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筆者のメインシステムは、OM SYSTEM(オーエムシステム)のセット。センサーサイズはM3/4(マイクロフォーサーズ)規格なので、レンズ表記の2倍の望遠効果が得られる。上述のとおり野鳥の場合は思ったように近づけないことが最初の障害になるので、同じサイズのレンズを使用しても、望遠効果が得られるメリットは大きい。
最近流行の被写体認識AFも、画面に占める鳥のサイズが大きい方が精度が上がるように感じている。手ブレ補正の効きがダントツで優れていることも、野鳥を探して軽快にフィールドを歩き回るスタイルに合致している。
筆者の基本セット。300〜1000mm相当をカバーするものを1台。1.4倍と2倍のテレコンバーターも用意。もう1台のボディは、24〜40mm相当、または80〜300mm相当のレンズを付けておき、風景的な作画を狙えそうなシーンに備えておく。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO・400mm(35mm判換算800mm)
マニュアル(絞りF4.5・1/3200秒)・ISO320・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【ナベヅル】[鹿児島県|2月|10時]
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OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO・500mm (35mm判換算1000mm)
マニュアル(絞りF5.6・1/4000秒)ISO640・ドライブ:ProCapSH1 (120コマ/秒)
フォーカスモード:シングルAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:S-IS AUTO
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【カワセミ】[埼玉県|1月|14時]
カメラ・レンズの他に必要な機材として、双眼鏡をおすすめしたい。超望遠レンズがあれば双眼鏡は不要と考える方も多いが、本格的に野鳥撮影を行うのであれば欠かせない。倍率は8から10倍程度、対物レンズの口径25〜32mm程度のものがよく、撮影機材との重量バランスを見て選ぶと良い。
左は10倍・33mm口径。右は10倍・25mm口径。明るさや視野の広さは、口径が大きい方が有利だが、それに伴って価格、重量とも上がる。また、写真用レンズと同様、EDレンズなど高級素材を使用したものは性能も価格も上がる。手頃な1台を手に入れた後、明るさが欲しいのか、高倍率が欲しいのかで2台目を選ぶ手もある。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO・500mm (35mm判換算1000mm)
マニュアル(絞りF5.6・1/200秒)・ISO800・ドライブ:静音+連写
フォーカスモード:コンティニュアスAF+MF・WB晴天・追尾被写体設定:鳥・手ブレ補正:IS Off
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【タシギ】[埼玉県|1月|16時]
さらに高精細な観察をする際には、望遠鏡を使う。フィールドスコープとも呼ばれ、天体望遠鏡と違い、上下が反転せずに見えるのが特徴。三脚が必須で、やや特殊な道具だが、双眼鏡と比較しても、見える像の美しさや、観察で得られる情報の量は桁違いに優れている。筆者は、遠くの野鳥の確認・識別や、行動観察で活用している。
ブレとの戦い、と言われる超望遠での撮影だが、カメラ・レンズの手ブレ補正機能の進化によって、手ブレを防ぐというよりも、構図の安定という意味合いで三脚を使用する機会が増えている。
三脚が活きるシーンのひとつは、観察や経験で鳥を待つべき場所が絞れた時。事前に構図や高さを整えておくことで、鳥が現れた時に小さな動きで、鳥を驚かさずに撮影できる。鳥は追いかけるよりも、待ち伏せたほうが近くで撮影できる可能性が高いことも知っておくと良い。
もうひとつ、筆者がよく三脚を使用するのは飛翔撮影をする時。ビデオ雲台またはジンバル雲台を載せた三脚を使用する。鳥の動きを追う際の「軸」として使うイメージなので、動きがスムーズであることを基準に選んでいる。
先立って登場したナベヅルの撮影のように、動体の撮影がメインと分かっているときはジンバル雲台をよく使用する。振り子の要領で、力を入れずとも素早くレンズを触れるのが特徴。構造上、静止した鳥を撮影する際には、シャッターを押し込む際のブレに注意する必要がある。
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ビデオ雲台は、動体の追いやすさと、安定感に優れ、野鳥撮影において最も使いやすいと感じる。抵抗の大きさを調整できる機種もあり、載せる機材の重さに応じた設定が可能だ。油圧式のものは、冬季は動きが硬くなる場合もあるので、使用シーンを想定しながら店頭で相談してみると良い。
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いかがだっただろうか。上述のように、冬は野鳥撮影をはじめるのに適した季節。自然に散歩していても鳥が目に入ってくるので、撮影に挑戦したいと考える方も多いと思う。
一方で、鳥たちも冬を越すために必死であることを忘れず、生活を邪魔しないリスペクトを持って臨んでほしい。機材選びもその大事な過程のひとつだ。その気持ちを忘れなければ、必ずや心躍るシーンに出会えるはず。ぜひ、野鳥と向き合う時間を楽しんでほしい。
Photo & Text by 菅原貴徳(すがわら・たかのり)