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2022.11.12
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LEICA SL2 レビュー × 若木信吾 | 夏と秋 おわりとはじまり

LEICA SL2 レビュー × 若木信吾 | 夏と秋 おわりとはじまり

フォトグラファー 若木信吾氏によるLEICA(ライカ)SL2の実写レビューです。

「ずっと同じ人を撮り続ける」というテーマを掲げた筆者が撮る幼馴染みの写真は、どこかとぼけているような表情に信頼感と温かさを感じます。

LEICA(ライカ)SL2との組み合わせには、アポ・ズミクロン SL f2/35mm、50mm、90mmをチョイス。すっと引き込まれる文章と共に夏のおわりと秋のはじまりの風景をお楽しみください。


ライター若木信吾(わかぎ・しんご)イメージ
■レビュアー紹介

若木信吾(わかぎ・しんご)

1971年静岡県浜松市生まれ。写真家。ニューヨーク州ロチェスター工科大学写真学科卒業。雑誌・広告・音楽媒体など幅広い分野で活動中。映画制作にも携わる:監督作品に『星影のワルツ』『トーテム~song for home~』『白河夜船』(原作:吉本ばなな)などがある。浜松市の書店BOOKS AND PRINTSのオーナーでもあり、最近は若芽舎というレーベルを作り、絵本シリーズの出版も手がける。
ウェブサイト: https://shingowakagi.mystrikingly.com/
instagram @shingowakagi

LEICA SL2商品画像

毎年急な気温の変化が始まると季節が変わったなと感じる。夏を撮ろうとか秋を撮ろうとかあえて思ったことはないのだが、秋には気持ちのいい風が吹くのにつられてシャッターを押してしまうことがあるし、夏は波の音にシャッターのタイミングを委ねることも多々ある。

季節の移ろいに誘われて

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した野原の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF8・1/1600秒・−1.3EV補正・ISO200・WB daylight・RAW

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最近は老眼も始まって全体的な視力も落ちて、ファインダーを覗いても見えているのか見えていないのか自分でもわからない時がある。シャッターを押すタイミングは視覚以外の部分に任せても大丈夫な気もしている。風景写真を撮る時は今までもそうしてきたとは思うが、今の方が視覚だけに頼ることを意識的にしなくなったと思う。その方が風景の中に飛び込んでいく感覚がある。

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した庭の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF6.3・1/320秒・−1.3EV補正・ISO100・WB daylight・RAW

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信頼できるカメラとは

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.で撮影し夕焼けの画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.
絞りF6.3・1/250秒・−0.3EV補正・ISO200・WB オート・RAW

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そういう時ほど信頼できるカメラが必要になってくる。レンズの描写力とオートフォーカスの具合、機動性、シャッターの反応の良さとか。カメラ一台持ってぶらりとするときはあまりバックモニターを長い時間見つめない。画面全体からくる雰囲気の確認はするが、それ以上は帰ってからデスクトップで見る楽しみにしておく。モニターの大画面で見た時、気に入った写真はやはり風や波にシャッターを押してもらったものだと再確認する。

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した垣根の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF10・1/50秒・−1.3EV補正・ISO100・WB オート・RAW

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LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50/mm ASPH.で撮影した海や空の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF5.6・1/320秒・ISO100・WB オート・RAW

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LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50/mm ASPH.で撮影した海と人物の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF10・1/160秒・ISO100・WB オート・RAW

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以前、葉山御用邸の海に買ったばかりの8×10を持って行って、撮り初めのようなことをした。なんでもない防波堤の写真だが、気に入っている。その記憶がずっとあるからこの海にはとても親近感がある。

夏のビーチと秋の静かな浜辺

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50/mm ASPH.で撮影した防波堤の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF9・1/200秒・ISO100・WB オート・RAW

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この夏、子供の夏休みで行った時には、ビーチの至る所に人がいるのを見て驚いた。夏は「ビーチ」という言葉がよく似合う。海の家もとても繁盛していた。

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.で撮影した賑やかなビーチの画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.
絞りF8・1/1000秒・−0.3EV補正・ISO200・WB オート・RAW

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LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.で撮影した海の家の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.
絞りF8・1/1000秒・−0.3EV補正・ISO200・WB オート・RAW

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1カ月後にひとりで同じ場所に行ってみた、この時は同じ海辺とは思えないくらい閑散としていた。海の家の建物もバラされてあとかたもなくなっていた。その場所はビーチではなく、よく知っている静かな浜辺に戻っていた。

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50/mm ASPH.で撮影した浜辺の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF16・1/100秒・ISO100・WB オート・RAW

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アポ・ズミクロン 50mm

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50/mm ASPH.で撮影したビーチの画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF16・1/160秒・ISO100・WB オート・RAW

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アポ・ズミクロンの50mmはライカM10でもずっと愛用しているので、何も心配はいらない。LEICA(ライカ)SL2のフォーカス性能の良さは人物撮影などでは抜群に発揮するが、ふと見上げた枝葉が幾重にもかさなっているときにはマニュアルフォーカスにすることが多い。最近はフォーカスエイドも使い慣れた。帰り道の壁にかかる葉の影たちにもとても惹かれる。壁との距離は一定しているが、そこに見える葉の影たちはシャープなものもあればぼやけているものもあって、それらが壁の平面状に見せる擬空間は写真そのものだ。こういう時もマニュアルフォーカスを楽しめる機会だ。

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50/mm ASPH.で撮影した葉の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF16・1/20秒・ISO100・WB オート・RAW

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アポ・ズミクロン 35mm

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50/mm ASPH.で撮影した壁の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.
絞りF6.3・1/20秒・ISO100・WB オート・RAW

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実家の浜松にはだいたい毎月帰っているが、一泊するくらいの短い滞在なので、特別どこかに写真を撮りにいく機会は少ない。この数年はコロナ禍もあって、幼馴染みにもなかなか会うタイミングを失っていたが、先日やっと会うことができた。これもこのカメラレビューのおかげだと思う。

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した田んぼの画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF5.6・1/320秒・ISO100・WB オート・RAW

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LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した家の草木の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF13・1/125秒・-1.3EV補正・ISO100・WB オート・RAW

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LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した男性の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF9・1/400秒・-1.3EV補正・ISO100・WB オート・RAW

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LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した男性と車の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF13・1/125秒・-1.3EV補正・ISO100・WB オート・RAW

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ずっと同じ人を撮り続けるというのは、僕の写真のテーマのひとつだ。そこには何か特別な信頼というか、相手も死ぬまで僕が写真を撮っているだろう、でも別に撮らなくなったってこれからもこうしてたまに会ってファミレスにお茶しにいくだろうと信じて疑わないところに関係性が成り立っている。そんな関係性の中に身を置く時にライカのようなカメラは抜群に威力を発揮する。僕がスナップショットで求めているのは瞬発力的な表現ではなく、いつもの変わらなさがより正確に緻密に描写されているかだ。この日は相手との距離が近いことを想定して35mmを選んだ。描写力や性能は、もう語る必要もないが、そのカメラ自体が自然と出す存在感で、この人はちゃんといい写真を撮るだろうと相手に思わせる力がある。ライカSL2はライカM10よりも大きいがカメラのサイズはあまり気にならない。

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した飲食する男性の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF7.1・1/125秒・-1.3EV補正・ISO1600・WB オート・RAW

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LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した語らう男性の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF4.5・1/125秒・-1.3EV補正・ISO800・WB オート・RAW

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LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影したファミレスでくつろぐ男性の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF4.5・1/125秒・-1.3EV補正・ISO800・WB オート・RAW

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カメラの扱いをみてこの人はちゃんと写真を撮る人だなと思うことがある。ちゃんと道具として丁寧な扱いをする人はいい写真を撮るだろうと想像できる。ぞんざいな扱いをしたり、大きな音を立てて無理に扱う人は、ポーザーだなと感じるし、腫れ物でも扱うように恐々と触っている人は被写体に集中できないだろう。ライカがしっくりくるには年季が必要だという人も多いと思うが、実際はその逆だと思う。持った瞬間に、こいつは長く付き合う相手だなと思わせてくれるところがあるからだ。ライカのホールド感はファインダーを覗いた時の左右バランスの良さに尽きる。ライカSL2においても単焦点レンズとの組み合わせは水平のバランスがちょうどよく保てる。ライカSLのレンズ群が焦点距離に関わらず同じ大きさに作られていることは理由があるのだ。

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した電話ボックスの画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF9・1/1000秒・−1.3EV補正・ISO200・WB daylight・RAW

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LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した広い野原の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF8・1/1000秒・−1.3EV補正・ISO200・WB daylight・RAW

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LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した男性が腰かけている画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF9・1/400秒・−1.3EV補正・ISO200・WB daylight・RAW

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アノニマスフォトが昔から好きで、誰が撮ったのか、写っているのが誰なのか全くわからないのだが、そこには確実に何か嘘ではないものがあるのがわかる。写真が真実を写すものかどうかは昔から怪しいわけだが、写真を撮っている人の視点とか、写っている被写体の撮影者に対する気持ちのようなものがアノニマスフォトにはよく写っているように思う。それはプロフェッショナル性より撮影者と被写体の関係性が本物かどうかに重きが置かれるからだ。簡単にいうと、前者は大勢の他者に見せることを目的としているが、後者は撮影者、または被写体、もしくは彼らに近しい人々だけが見ることを目的に撮られている。そういう、プライベートフォトを全くの赤の他人が見た時の匿名性の中に見出す人間同士が向き合っている温かさのようなものにとても惹かれる。

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.で撮影した2人の男性が立っている画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.
絞りF8・1/1600秒・−1.3EV補正・ISO200・WB daylight・RAW

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友達を家まで送って行った時にレンズを90mmに交換した。ポートレートをしっかり撮っておきたいと思うことがある。「歳をとったなぁ」と改めて確認するためだ。しかしその写真より本人は若返ることはないから、時を経て写真を見ると「若いなぁ」と思うのだ。そういう意味でもポートレートはたまに撮っておくといい。

アポ・ズミクロン 90mm

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.で撮影した男性のアップの画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.
絞りF5・1/800秒・−1.3EV補正・ISO800・WB daylight・RAW

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僕の幼馴染は子供の頃からカメラを向けてもレンズを見ない。そっぽをむくか、目をつむってしまうかのどちらかだ。それはもう彼にとってはそれがトレードマークだから、もうそうされることに全く違和感はないが、たまにこちらも目線のきたポートレートをとりたくなって喋りかけて意識をこちらに向けさせてシャッターチャンスをねらう。オートフォーカスとシャッターの反応の良いライカSL2は見事目線のきている写真を撮れる率が高い。しかしやはり後で見直した時にその写真ははずしてしまうことが多い。そうやって無理して掠め取ったような写真はなんだか気分が良くないし、やっぱり本人らしくないのだ。カメラなしの時は普通に目を見て話すから、それでいいのだと思う。

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.で撮影した笑顔の男性の画像

LEICA SL2・アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.
絞りF5・1/1250秒・−1.3EV補正・ISO800・WB daylight・RAW

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作例に使用したカメラ

Leica(ライカ)SL2

作例に使用したレンズ

Leica(ライカ)アポ・ズミクロン SL f2/35mm ASPH.・SL f2/50mm ASPH. ・SL f2/90mm ASPH.

まとめ

・LEICA(ライカ)SL2のフォーカス性能の良さは人物撮影などで抜群に発揮
・カメラ自体が自然と出す存在感
・ライカのホールド感はレンズとのバランスもいいので、ファインダーを覗いた時の左右バランスが良い
・オートフォーカスとシャッターの反応の良いライカSL2は見事目線のきている写真が撮れる

Photo & Text by 若木信吾(わかぎ・しんご)

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