1本で広角から望遠までをカバーする「高倍率ズームレンズ」。タムロン18-400mmF3.5-6.3 Di IIVC HLDは、これに「超望遠」というキーワードがプラスされた、とても魅力ある1本です。デジタル一眼レフ(APS-Cサイズセンサー)専用レンズなので、35mm判換算ではなんと600mmの超望遠画角 ! 加えて、コンパクトなサイズも嬉しいです。早速試してみました。
今回はニコンのカメラを使いました。D500です。外観は単焦点のSPシリーズを連想させる、柔らかな曲線基調のデザインです。長さ121.4mm、重量705gというボディサイズは、高倍率のズームとは思えません。ましてやこれが超望遠ズームということになると、その小ささには驚いてしまいます。18-400mmですから、ズーム比は22.2倍。これだけの画角変化を1本のズームレンズで楽しめるなんて、技術の進歩はありがたいと心から感じます。ちょっと遠くに咲いている花や、遠くに見える動物も引き寄せることが可能です。これはとても助かりますね。
タムロン18-400mmF3.5-6.3 Di II VC HLDのレンズ構成は11群16枚。LD(異常低分散レンズ)や非球面レンズなどを効果的に配置することで、色の滲みや歪みを抑制しています。これはフタユビナマケモノ。関東地方の動物園でも飼育されているのですが、ここまで近くで見ることができたのは初めて。これまでのイメージとは異なる、愛嬌のある表情を見せてくれました。
カピバラも、こんなに近いです。広角28mm(フルサイズ換算)で寄って撮影。両足を揃えて横を向いた向いたところですが、なにやら別の物に見えてしまいます。タムロン18-400mmF3.5-6.3Di II VC HLDのAF駆動には「HLD」を採用。独自開発のAFモーターは、優れた機動力と省電力を実現しています。スムーズなピント合わせができたので、ストレスを感じませんでした。
AFは心地良いです。迷うこともなくスパッと合ってくれます。手ブレ補正機構のVCも搭載されているので、ファインダーを覗いているだけでもその効果がハッキリと感じ取れます。手前から遠くまでを1つのズームリングでコントロールできる。これまでよりも更に望遠側が伸びるので、楽しさが増しました。いつも撮りに行っている動物園でも、もうこれは大活躍です。地方に出掛ける際などは、できるだけ荷物は小さくしたいものです。でも望遠は必要なので、コンパクトでしかも広角が使える「望遠ズーム」、これはとても便利だと感じたわけです。
ここから先は、購入したタムロン18-400mmF3.5-6.3 Di II VC HLDを、愛機キヤノンEOS 7D Mark IIに装着して撮影しています。買ったのはいいけど、それからずっと、休日といえば雨という日々。これも雨の中で撮影しています。前回の「オレため」で出掛けた、長野県茅野市にある横谷渓谷・王滝の紅葉です。手前の岩を画面に入れたくなくて、構図に気を使いました。
こちらも横谷渓谷・おしどり隠しの滝です。画面右側には旅館が建っていて、滝壺には汚れた泡が浮いていたので、この2つを避けてフレーミング。適当な場所と画角を探して、気付いたら傘を差すのを忘れて撮影に没頭していました。レンズ濡れちゃったけど、大丈夫かな・・・(笑)ちなみに、タムロン18-400mmF3.5-6.3 Di II VC HLDには簡易防滴構造が施されています。
新潟県長岡市・山古志の風景。このレンズを購入後、初めて晴れました。手前の雑草を少し残してワイド感のある構図にしたかったので、タテ位置を選択。奥には山を配置してみました。適度に柔らかな木々のコントラストは、柔らかい雰囲気があって好みです。3段繰り出し式の鏡胴を採用するなど、タムロン18-400mm F3.5-6.3 Di II VC HLDには新しい技術が搭載されています。
新潟県南魚沼郡・大源太湖遊歩道にて。目の前に聳える山は大源太山です。その角張った様子から、「東洋のマッターホルン」とも呼ばれているそうです。護岸工事をしていたので、湖には浮きがあり、画面の右側にはボートがありました。これをカットして撮影しています。ズームレンズはこういうときにも威力を発揮します。思い通りに撮れたときは、とても嬉しいものです。
遊歩道を歩いていたら、紅葉の映り込みを発見。とても興味深かったので、望遠にして狙ってみました。PLフィルターは使っていません。水彩画のような雰囲気があり、なかなか幻想的な風景でした。水面の反射しているところを画面に入れないため、ズームを微調整しながら構図を決めています。適度なトルクがあるので、希望するポジションに、正確に止めることができました。
全国名水百選にも選ばれている、新潟県中魚沼郡にある湧水池「龍ヶ窪」で撮影。この竜の口からは、湧き出たばかりの水が出てきます。つまり、飲めます ! 意外と暗くて、シャッタースピードは1/20秒と遅かったのですが、手ブレ補正のおかげで助かりました。滑らかな曲線基調の外観デザインは手にもフィットしやすく、自然にしっかりとホールディングできるようです。
11月3日、新潟県長岡市・山古志で行われた闘牛のワンシーンです。激しくぶつかり、動き回る牛を追うのはなかなかハードでしたが、そうした動きにも追従してくれました。長い望遠レンズを使うのもいいけれど、会場を動き回っていくつかのポジションから撮影するので、コンパクトで軽いのは助かります。とても有意義な撮影ができました。とても気に入っている1本です。
ここまで書いていて、望遠端400mm(フルサイズ換算600mm)の写真がないことに気付いてしまいました ! というわけで、再び神戸での1カット。ハシビロコウがいたのでレンズを向けてみたら。。。モモイロペリカンが同じポーズを作って画面に入り込んできました。見事に重なってしまったけど、面白いシーンでした。今後もこのレンズで写真をたくさん撮りたいです。
実際に撮影した写真をパソコンで見てみると、解像感が高くてGood ! 単焦点を持ち歩くとさすがに疲れてしまうような状況でも、ズームなのでとても便利だと感じました。レンズも持ちやすいですし、ズームリングも適度なトルクがあります。焦点距離の表記は18、35、50、70、100、200、300、400でした。まさに期待通り、とても使いやすいレンズだったのです。
そんなわけですっかり気に入ってしまったので、なんと買っちゃいました ! キヤノン用です。これがあれば、動物園で動物を大きく撮影しつつ、案内の看板などもその場所で撮れます。これでかなり撮影時間を短縮できそうです。また、撮影ツアーに参加したときなど、その機動力を活かして、好みに応じた構図を狙うこともできます。とても便利な1本なんですよ !
Photo & Text by 高山景司
>>> TAMRON (タムロン)18-400mmF3.5-6.3 Di II VC HLD