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2024.01.12
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Nikon Z 8 レビュー【動画編】 × 金子元気|動画の使い勝手もスゴイ!Nikon Z 8

Nikon Z 8 レビュー【動画編】 × 金子元気|動画の使い勝手もスゴイ!Nikon Z 8キービジュアル


ライター金子元気(かねこ・げんき)イメージ
■ビデオグラファー紹介

金子元気(かねこ・げんき)

プロフィール
金子元気(かねこ・げんき)
1985年神奈川県横浜市生まれ。朋友学院高等学校美術・デザインコース卒業。東放学園映画専門学校プロモーションビデオ科卒業。その後、フリーランスを経験し、2014年に株式会社pingsetを設立。 現在、妻(写真家フジモリメグミ)と かねこ書房を運営し、YouTubeチャンネル「genkikaneko」で自身の作家作品を公開中。
YouTube: genkikaneko

はじめに

金子元気さん撮影風景

私が何者かについてですが簡単に。7年くらいのフリーランス経験を経て、友人と2014年に株式会社pingset(ピンセット)という会社を設立しました。仕事はディレクター、カメラマン、エディターなどをしており、広告を中心に企業のさまざまな映像制作を行っています。映像作家としての作品も制作し、YouTubeで公開しています。

普段の仕事

Nikon Z 8操作風景

広告プロダクションなどから技術としてのオファーをいただくこともあり、予算や企画や媒体によって扱うカメラも様々です。演出によっては特殊機材を扱い、関わる人数によってカメラのセットの仕方も変化していきます。

そんな筆者がカメラマンとして培った技術やアイディアからニコンZ 8というカメラを紐解きながら、これから映像作品の制作をしてみたいという方のヒントになればと思っています。

という事で今回は、私が普段のプライベートでカメラを持ち歩きながら撮影するスタイル(持ち歩くことが可能なスタイル)を準えながら、Z8の持つ可能性を紹介していきます。

まずは謝罪を……

Nikon Z 8本体イメージ

まず、謝罪からお伝えさせていただけたらと思っています。

日々開発がすすみ、進化するムービー機材において、正直Nikonさんのムービーは何歩も、いや、何十歩も遅れていると思っておりました。関係各所、そして愛好されているユーザーの皆様、申し訳ございませんでした。

今回Nikon Z 8についてレビューする機会をいただき、直接触れることでその偏見は打ち砕かれ、この記事を書いている今も動揺しております。

Nikon Z 8の「N-RAW」はすごく便利

Nikon Z 8作例

Nikon Z 8のもっとも注目するべき点は、「N-RAW」ではないでしょうか!?

RAWを一回味わってしまうと、今までの何だったの?ってくらい調整が楽で、いきなりルックが良くなります。ですがまだまだRAW収録を可能にするカメラって少ないんですよね。

外部出力でRAWが出せるカメラは増えてるんですが、それって仕事現場だから可能になるんですよね。リグを組み、アームやモニターを付けて、それに必要なバッテリーを余分に用意して、そうやって大きく重たくなって初めてRAWが撮れるカメラになるんです。それってなかなか気軽とはいいがたい物がありますよね。

Z 8はRAW動画を「持ち歩いて撮る」っていうレベルにまでハードルを一気に下げて、写真を撮る事と同じにしてくれているんだと思うんです。

収録のフォーマットについて

まずはZ 8で収録可能なフォーマットについて、筆者の見解を書いておこうと思います。

・H264 8bit、H.265 10bit
FHDから8Kまで選択でき、データレート的には軽量に入るので仕事やプライベートにおいて基本的にはこれですよね。

・ProRes 244、RAW
映像業界においては標準なフォーマット、これで収録しとけばどんな編集ソフトでも対応できるんですが、データレートが非常に重くRAWだと660GBのメディアで30分前後の収録時間。CFexpressについてはまだまだ高価で何枚も買い揃えることはできないと感じる。4.1K~5.4Kの選択肢がある。

・N-RAW
proressに比べて約半分のデータレート。画質はproressと同等。
4.1K~8.3Kが選択でき、4.1K時は最大で120Pまで設定可能。

今回はそこそこのPCでも楽しめる事をお伝えしたいので、N-RAWの4.1Kで50P高画質の設定で58分の収録が可能だったのでこれに決めました。

余談ですがZ 8では標準と高画質の2パターンが選択でき、それぞれで約2倍程度のデータレートの違いがあるんですが、他社のカメラ内RAW収録できるカメラにおいては圧縮比を4~8パターンほど選択することができるので、Z 8もこのようになっていくとより使い勝手が良くなると感じました。

編集素材はPCに合わせたい

ということで、今回はN-RAW/ SDRで撮影を試みることにしました。

編集に使用するマシンは、ノート型PCで、スペック:Intel(R) Core(TM) i7-11370H、RAM16 GB、NVIDIA GeForce RTX3050TI Laptop GPU。
編集ソフトはDavinci の無料版でトライするので読者の方もチャレンジできると思います。

8Kのオーバーサンプリングで記録できる機能もあり、画質については十二分だと感じるので4.1Kをチョイスしました。よくあるクロップモードになってしまう煩わしさがないこともポイントが高いと感じました。

スナップのように撮影してみましょう

今回使用するものは、これだけ。

Nikon Z 8バッテリー、フィルター

カメラ、レンズ、バッテリー2~3本、NDフィルター(128までの物があると明るいレンズのときはおすすめです)

ワンオペでの煩わしいアクセサリーなど付けずにハイクオリティーな画が撮れるのが、このカメラの最大の長所ですよね。動画だから色々な画角で撮らなきゃとか、手ブレが、、とか考えてしまうかもしれませんが、好きな単玉一本でいいんです。

手ブレ補正もめちゃくちゃ強化されていて、他社さんのデジタルによる手ブレ補正の安っぽい感じは一切なく、ナチュラルな補正でそこそこの望遠レンズの手持ち撮影でも問題なくこなせると思います。残念ながら今回は85mmまでしか借りておらずなので、すみません。

そして撮り方については、スナップのように自分の好きな画をファインダーで覗いて、RECボタン押して、10秒数える。これだけ。ここで突然興味を失った方がいらっしゃるかもしれないんですが、これには理由があるのでまだページを閉じないでいただきたい。

ファインダーを使う事でカメラと体の接点を増やすことができるので、手ブレが軽減できるんです。なおかつモニターを使わずにファインダーを使用することで、電池の消費が抑えられるという理由もあり、バッテリーを心配だからと5個も6個も持ち歩かなくてもいいんです。太陽光下でのモニター撮影は見づらい場面もどうしてもあるので、クオリティーの高いZ 8のファインダーを使わない手はないんで、おすすめです。

フィルター

設定の補足として、今回は実験も含めてSDRをチョイスしてみました。

理由としては、N-Logの最低感度が800からという部分と比較し、SDRは最低感度が64から設定できるので、ノイズも少なく気軽な撮影には向いていると感じたからです。※N-Logについての見解については後ほど書くとします。

オペレーション

Nikon Z 8本体上面

当初は私の好みの画角40mmで行きたいとNIKKOR Z 40mm f/2をお借りしていましたが、NIKKOR Z 50mm f/1.2 Sを試しにつけてみたら解放のボケが楽しく、いろいろ撮ってみたくなってしまったので予定を外れて50mmを選びました。

まずボディーに触れて感動したことは、ホールドしやすいボディーと、縦横4軸チルト式のモニターでした。

従来のチルト式に加えて、縦型でもチルトしてくれるので様々な用途での活躍を感じました。最近主流のバリアングルモニターでは、ストラップに引っかかるし、モニターが隠れて見えないし、ホールドしながらのタッチ操作が出来ないわで、チルト式がまたはやらないかなと感じでいたので非常に嬉しかったです。モニター画質については、きめ細かく見えるのでピント合わせもしやすいと感じました。

今回はAFテストも兼ねて、常にフルタイムAFを選択し、オートエリアAFに設定しました。Z 8のAF機能の優秀さについては称賛の声をよく聞くので特にここに書く必要はないでしょう。検知が優秀がゆえにフォーカスが意図しない場所にいってしまう事もあるので、そんなときはAFロックボタンを併用してみてほしいと思います。

そしてMF設定への移行が素晴らしく、スイッチやメニューから設定をいじる必要はなくフォーカスリングを回すだけでMFに切り替わるので、両方使いたい私には非常に使い勝手が良かったんですがREC中に拡大フォーカスが出来ない事が判明し、これはちょっと残念でした。

AFの話に戻りますが、いまいちな部分もあったので紹介したいと思います。
それは画面タッチAFによるフォーカスの移り変わりです。

画面をタッチすると瞬時にフォーカスが切り替わってしまい、反応がいい反面、スムーズにフォーカスが移ってほしい一連の長回し撮影などには向いていないのかもしれないと感じました。(これ設定の問題なんでしょうかね?わかる方いらっしゃったらぜひ教えていただきたいです)。

動画の編集

今回の作品はVLogと作品の中間の様なニュアンスになると思います。組み写真を組むように距離感や構図が連続にならない様に前後を入れ替える調整を加え、ストーリーができ上がるように編集しました。

SDRの素材にはピクチャープロファイルで設定した色が付いているので、スピーディーに仕上げることが出来るんですね。これって毎回グレーディングしなければいけないハードルを下げるし、大きい事じゃないでしょうか!?

あとN-RAWについてが気になる部分かと思いますが、しっかり恩地を感じる事ができました。連続するイメージでは、どうしても前後のカットで明るさやホワイトバランスがマッチしない場面がでてきますがそういった調整が非常にイージーでした。

私の場合は、撮影時はホワイトバランスを4500k固定で撮っておいて編集時に調整をしています。夕方6500Kのイメージから室内の2700Kくらいの室内灯の変化は多きすぎたので、編集で大幅に調整しましたが、ここまで出来てしまうのではRAWだからですよね。10bitではこうもうまく行かない場合が多いんです。

調整前
調整後

N-Log vs SDR 比較撮影

メインの撮影はSDRで収録しましたが、N-logとの比較も行ってみました。

SDRではピクチャープロファイルが適用でき、好みの設定で撮影できるので撮影しやすい利点と、低感度から扱えるので運用しやすいのがポイントです。

表示されたままのデータが記録される様なので、白飛びについては気を付けたほうがいいというデメリットもあるんですが、ノイズが少ないのでアンダーで撮っておいて持ち上げるという撮り方が正解なのかもしれません。

N-Logはやはりダイナミックレンジが素晴らしく、RAWにより破綻の少ない編集が可能なので露出がシビアなシーンでは間違いなくこちらを選択すべきだと思いました。

Log撮影ではコントラストがぬるい映像が表示されるので、コントラストを通常表示するビューアシスト機能がついているのですが、これには調整ができないという面があり、非常にもったいなく感じました。(※N-Logの撮影には外部モニターの使用を推奨されています)

そして最低感度が800スタートで、低感度のSDRに比べてノイズが多く、暗い場面ではISO3200くらいでもノイズが目立つことがあるので、ノイズリダクションも視野にいれる必要がありそうです。

テスト動画では、日中と夜での感度テストと合わせてSDRとN-Logを比較してみましたので、ぜひ見比べていただけたらと思います。

作例に使用したカメラ

【商品情報】Nikon Z 8

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Nikon Z 8バナー画像

作例に使用したレンズ

【商品情報】Nikon NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

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Nikon NIKKOR Z 50mm f/1.2 Sバナー画像

まとめ

今回はZ 8のポテンシャルを生かしながらもハードルを下げた撮影を紹介させていただきましたがいかがだったでしょうか。皆さんの動画制作のヒントに少しでもなれたら幸いです。Z8にはまだまだ色々な使い方が想像できてわくわくしますが、長くなりすぎてしまったので今回はこの辺にて、すみません!!また機会がありましたらレビューを楽しみにしていただけたらと思います。

Z 8の夜間撮影も行ったので良く撮れていたら?自身のYouTubeなどで公開しようと思っていますので、もし興味のある方は私のチャンネルにも遊びに来てくださいね。

pingset 金子元気でした。

Photo & Text by 金子元気(かねこ・げんき)

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