SIGMA 17mm F4 DG DN|Contemporary の特徴と魅力
シグマのミラーレス専用レンズとしては最広角
鋭いキレ味はさながら“カミソリワイド”
実用性はもちろん趣味性も高い
伝説の広角専用カメラを彷彿とさせる
SIGMA 17mm F4 DG DN|Contemporary の作例
作例に使用したレンズ
SIGMA 17mm F4 DG DN|Contemporary
作例に使用したカメラ
SIGMA fp L
SONY α7R V
まとめ
1974年東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、さまざまな職業を経て写真家に。広告や雑誌などを手掛けるかたわら、スナップやドキュメンタリーの作品を精力的に発表している。近年の写真展に「#shibuyacrossing」(ソニーイメージングギャラリー)、「煩悩の欠片を燃やして菩提の山へ走れ」(ナインギャラリー)など。昨年9月には『いい写真を撮る100の方法』(玄光社)を出版。日本写真家協会会員。
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7本をラインアップする「Iシリーズ」に、50mm F2 DG DN | Contemporaryとともに加わったのが、今回紹介する17mm F4 DG DN | Contemporary(以下17mmF4)だ。「Iシリーズ」は小さいけれどよく写る単焦点レンズという立ち位置で、これまで20mmから90mmまでをカバーしていた。
コンセプトからいえば、これ以上広いレンズが出ることはないだろう…と思っていたところに、不意打ちのようにこの17mmF4が現れた。単焦点で17mmというと前玉もそれなりに大きくなりそうだが、F4だとこんなに小さくできるのか、というのが第一印象だ。
ちなみにシグマのミラーレス専用レンズ(DG DN/DC DN)のうち、単焦点ではもっとも画角が広い。
「Iシリーズ」のラインアップはF2の明るめのレンズと、小型化を優先したF2.8〜F3.5のレンズに分類できる。このレンズは後者に分類できるが、この後者がなかなかの個性派揃いなのだ。
17mmF4も絞り開放からシャープなキレ味を持つ。シグマには「カミソリマクロ」という愛称を持つマクロレンズ(70mm F2.8 DG MACRO|Art)があるが、さしずめ17mmF4は“カミソリワイド”といったところか。
ファインダーをのぞくと、気持ちがいいほどシャープでクリア。重箱の隅をつついても何も見つからず、こうしたレビューを書くには少々困ってしまう。ソニーEマウントの実写では、うっかりカメラの歪曲収差補正をオフにしていたのだが、画面の端に水平な直線を写せば樽型の歪みがわかるものの、サイズとスペックを考えたら十分優秀といえる。
このすっぴん、すなわち補正オフで歪みが多すぎると、補正で画角が大幅に狭まったり、画面周辺の甘さにつながってくる。ちなみに補正を前提に設計されているレンズなので、この記事ではRAW現像で補正をオンにしたものを掲載しているが、自然風景など歪みが目立たない状況では補正オフでもいいかもしれない。
超広角レンズを使うシチュエーションはさまざまだが、とりわけ自然風景では草花への接近戦が多くなってくる。そこで気になる最短撮影距離は12cm、レンズ先端からのワーキングディスタンスは約5cmで、多彩なアングルや構図が作れそうだ。
またこの画角になると太陽や光源が写り込みやすいのだが、そんな状況でも問題なし。鏡筒の中から「逆光? それがどうした?」といった余裕の声すら聞こえてきそうだ。その鏡筒も含め、ピントリングや絞りリング、さらにフードまでアルミ削り出し。手にしたときの満足度も高い。
広い視界を丸ごと、スパッと鋭く切り取った描写は、使う側の腕も試される。強い遠近感は画面に迫力を生み出すが、一方で構図の甘さにも容赦がないのだ。
主題への寄りが足りないと散漫な写真になり、それが自然風景では接近戦が多くなる理由でもある。また風景や建築ではわずかな傾きも目立ちやすい。17mmという焦点距離はそうした難しさも内包している。
これは僕の個人的な意見だが、画角が変化するズームでその都度焦点距離を選ぶのと、単焦点で常にその画角越しに世界をのぞいていくのとは感覚が違ってくる。とりわけ超広角は画角の中に取り込まれる情報が多く、遠近感も相まって独特な緊張感がある。17mmF4はポケットに収まるほど小さく、それもまた気持ちを高ぶらせてくれる。
この感覚、どこかで味わったなぁ…と考えて、かつて愛用していたハッセルブラッドSWC/Mを思い出した。広角レンズの最高傑作とも称されるカールツァイス・ビオゴン38mmF4.5が固定された超広角専用中判カメラだ。
あれはフルサイズ換算で21mm相当の画角だったが、森羅万象すべてを切り取る凄みがあり、数値以上に画角が広いような感覚があった。それは独特なカメラの形状も影響していると思うが、17mmF4をfp/fp Lに装着すると、それはまさに現代版のSWC/Mなのだ。
ソニーの純正レンズに存在しないスペックなのでソニーEマウントで使うのももちろんいいのだが、ぜひfp/fp Lでこのレンズを使ってほしいと思う。そして森羅万象をスパッと切り取る快感を味わってほしい。
シグマfp L・シグマ17mm F4 DG DN | Contemporary
絞りF8・1/60秒・ISO100・+0.3EV補正・WBオート・カラーモード「ティールアンドオレンジ」・JPEG
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僕が超広角レンズのありがたさを感じるのは、標準ズームではとても収まらないようなスケールの建築物に出会ったとき。建築物の撮影では周辺までシャープに写すのが理想。その点でもこのレンズは非常に頼もしい。
ソニーα7R V・シグマ17mm F4 DG DN | Contemporary
絞りF4開放・1/160秒・ISO100・+1.7EV補正・WBオート・RAW
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公園の遊具で遊ぶ息子を、そのすきま越しに撮ってみた。前ボケが効いて遠近感、そして曲線が効いてリズムが生まれた。標準ズームの広角端ではなかなかこのような絵は作りにくい。
ソニーα7R V・シグマ17mm F4 DG DN | Contemporary
絞りF4開放・1/60秒・ISO100・WBオート・RAW
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僕に「Here is Sensoji temple?」と尋ねてきた、インド系と思われる渋い男性。Yesと答えるとスマホで雷門を撮り始めたので、僕もその様子を撮った。写真ではわかりにくいが、レンズ先端が彼の頭とぶつかりそうな近さで撮影している。
シグマfp L・シグマ17mm F4 DG DN | Contemporary
絞りF5・1/15秒・ISO100・-0.3EV補正・WBオート・カラーモード「ティールアンドオレンジ」・JPEG
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狭い路地も17mmの画角が生きるシチュエーション。手前を横切る通行人を、1/15秒のスローシャッターで取り入れてみた。レンズにもカメラにも手ブレ補正はないのだが、シャッターを押す動作がブレの要因なので、こういうときは1枚目を捨てるつもりで連写で撮る。
シグマfp L・シグマ17mm F4 DG DN | Contemporary
絞りF8・1/320秒・ISO100・WBオート・カラーモード「ティールアンドオレンジ」・JPEG
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逆光への強さはご覧の通り。光源の位置によっては小さなゴーストが発生することもあるが、太陽が写り込んでもシャドウもしっかり締まるのは、さすが逆光対策へ情熱を燃やすシグマだけある。
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Photo & Text by 鹿野貴司(しかの・たかし)