SIGMA(シグマ) 20mm F1.4 DG DN | Art の実写レビューです。
クラス最高となるF1.4という非常に明るい超広角レンズの、解像感、周辺部画質、フリンジ、コマ収差などの画質、星景撮影などで実際に使用してみた使用感を、実写を中心にレビューします。
F1.4の明るさを活かした星景写真は勿論、超広角としては最大クラスのボケを使って、スナップ撮影も楽しい次世代のミラーレスカメラ用超広角レンズです。
特徴/操作性
20mm超広角レンズではクラス最高の明るさ「F1.4」を実現した次世代のミラーレスカメラ用超広角レンズ
星景、星野写真撮影を念頭においた、高い光学性能と操作性
スペックを感じさせないコンパクトなサイズ
実写レビュー
F1.4の明るさによる大きなボケが、超広角レンズの表現の幅を広げてくれる
高い描写性能による超広角らしいシャープな写り
サイズの大きさはデメリットだが、高い表現力はスナップにも使いたくなる魅力がある
SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art の存在意義とも言える星景撮影
画質
解像感
周辺部画質
フリンジ
フレア/ゴースト
コマ収差
比較
SONY(ソニー)FE 20mm F1.8 G との比較
SIGMA(シグマ)20mm F2 DG DN | Contemporary との比較
おすすめユーザー
F1.4の明るさが絶対的なメリット、星景写真撮影を念頭においた使い勝手の良さも
スペックを考えれば小さいがそれでも大きなサイズ
星景撮影には画質の意味でも効率の意味でもベストなレンズ、F1.4を活かした一般撮影にも
まとめ
SIGMA(シグマ) 20mm F1.4 DG DN | Art の特徴は、20mmとしては世界で唯一となる(2022.7 SIGMA調べ)開放F値1.4である事が先ずあげられます。
広角レンズでは出しづらい大きなボケを活かした写真が撮れる事は勿論、長時間露光が必要な星景写真で威力を発揮するスペックです。
特に10秒以上の露光を行う事も多い星景写真では、例えば半絞りの違いでも30秒の露光が20秒で済むなので、撮影の効率を大幅に上げる事ができるでしょう。
星景写真を年頭に置いたSIGMA(シグマ) 20mm F1.4 DG DN | Art は、星景写真を撮る際に便利な機能を幾つか備えています。
MFLスイッチを使えば、フォーカスリングの動きを無効にする事ができるので、星にピントを合わせた後MFLスイッチを押す事でピントを合わせる手間から開放されます。又、長時間露光では外気とカメラの温度差による結露を防止するため、レンズにヒーターを装着するのが普通ですが、レンズヒーターリテーナーが備えられているので、装着位置によりヒーターが写ってしまう事故を防ぐのに有効です。
こういった機能は、星景撮影を前提にデザインされた20mm F1.4 DG DN | Art の優れた特徴のひとつと言えます。
長さ113.2mm、重量630g(いずれもSONY E用)のレンズをコンパクトと言ったら笑われてしまいそうですが、超広角20mm、開放F1.4のスペックを考えれれば驚くほどコンパクトであると言わざるをえません。
今回のテスト撮影の半分以上は街中のスナップで行いましたが、SONY α7 IVに装着して持ち歩いていてもストレスに感じる事はほとんどありませんでした。
勿論、軽量コンパクトなレンズとは言えませんが、コンパクトな事は星景写真のような専門的な写真以外でも十分に使える、意外と幅広い用途を持つレンズだと感じました。
フィルター径: | φ82mm | 最小絞り: | F16 |
---|---|---|---|
長さ: | 113.2mm(ソニー E)/111.2mm(L マウント) | 最短撮影距離/最大撮影倍率: | 23cm/1:6.1 |
絞り羽根: | 11枚(円形絞り) | 重量: | 630g(ソニー E)/635g(L マウント) |
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超広角レンズは非常に広い画角を持つ事から構図の整理が難しく、スナップではあまり使う人のいないレンズかもしれません。
しかし、SIGMA(シグマ) 20mm F1.4 DG DN | Art の開放F1.4という明るさが、ボケによる構図の整理や表現を可能にしてくれるおかげで、スナップでも思った以上に使いやすいレンズです。
実は、今回のテスト撮影も苦手な星景メインで撮らなければならないかと、少し憂鬱だったのですが、試しにスナップで使ってみると想像以上に楽しくて、スペックだけを見て星景だけに使うレンズだと考えると少々勿体ないと感じました。
超広角レンズで構図をまとめるコツのひとつは被写体にこれでもか!というくらい近づく事です。
それでも背景は広くフレーミングされるところが超広角レンズの面白いところで、普通の広角では単調な写真になってしまうところでも、背景にもうひとつ情報を入れられる楽しさがあります。
作例は夏の日差しをあびて大きく育った稲を撮っただけですが、超広角レンズの広い画角のおかげで雀除けの青いネットが写って、ただ稲だけを撮るより少し面白い写真になりました。
SIGMA(シグマ)のレンズでは当たり前となってしまった特徴ですが、 20mm F1.4 DG DN | Art もミラーレスカメラ用のArtらしく非常にシャープなレンズです。
大口径の超広角レンズなので、開放では周辺部がやや甘くなりますが、半絞り程度絞れば改善する非常に高性能なレンズとなっています。
作例はf2.8まで絞って撮影していますが、シャープで引き締まった描写は実に広角レンズらしく、大きなボケを活かした先ほどの作例とは別のレンズで撮ったような、印象の違く写真になっていると思います。
20mmという短い焦点距離は、被写体との距離を取ってあげれば簡単にパンフォーカスに近い全体にピントの合った写真が撮れます。
作例はF11に絞りこんで撮影、画面全体にピントが合うパンフォーカスにする事で、超広角の特性である遠近感の誇張を活かした奥行き感のある写真になったと思います。
階段の上に鏡が貼られているおかげで、どちらが上でどちらが下かわからないちょっと不思議な写真になりました。
超広角レンズが、ダイナミックな風景写真や、星景写真を撮るのに向いている事は事実だと思いますが、今回SIGMA(シグマ) 20mm F1.4 DG DN | Art を使ってみてそれだけではちょっと勿体ない、もっと幅広く使われていいレンズだと感じました。
私だけかもしれませんが、スペックだけ見てどうしても専門的な撮影用のレンズと考えてしまうのは、レンズがそれなりに大きい事にも起因している気がします。
確かに小さくはないレンズですが、持ち歩くのが大変という程でもないので、スナップなどにも是非活用して欲しい、そうおすすめしたくなる高い表現力を持った魅力的なレンズです。
作例は街歩きの途中でウインドウ越しに花瓶を撮ったものですが、それだけでなく、店内の洒落た家具や、ウインドウに映った人影、店内の暗さと差し込む眩い光など、多くの情報を一枚の写真に入れ込む事ができました。
標準レンズならもっとスマートにまとまった構図で撮れたと思いますが、個人的にはこんなごちゃごちゃっとした雑多な写真も好きです。
写真としてピンとのボケた感じにならないのは、F1.4による大きなボケのおかげである事は言うまでもありません。
星の撮影で思った以上に手間がかかるのがピント合わせです。当然オートフォーカスは使えないので、マニュアルで合わせる事になりますが、拡大表示した画面で小さな星に撮影の度にピントを合わせるのはなかなかのストレスです。
その点、SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art にはMFLスイッチがあるので、1度正確にピントを合わせてMFLスイッチをLOCKしてしまえば、フォーカスリングの動きは無効となるので、ピントを再調整する事無く効率的に撮影が進められます。
思った以上に便利な機能で、星景写真を撮るならこの機能の為にこのレンズを選択してもいいと思えるほどでした。
暗闇での撮影となる星景写真ではカメラやレンズの操作を手探りで行う事になります。手になじんだ使い慣れた機材を使う事は勿論、もともとの操作性の良さも重要です。
今回のテスト撮影ではMFLスイッチを頻繁に使いましたが、レンズ左側の操作スイッチが上からスイッチ(FOCUS)→ボタン(AFL)→スイッチ(MFL)の順になっているので、ボタンの下がMFLスイッチと覚えておけば操作ミスもなく使いやすいと感じました。
メーカーが意図的にそうしたかはともかく、個人的に使いやすく感じた点です。
非常に高い解像感を持ったレンズです。
先に述べたとおり、開放では周辺部分がやや甘くなりますが、中心部のシャープさは超広角レンズの中でもトップクラスと言っていいでしょう。
作例2を拡大して解像感を見てみます。
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開放では周辺部で少し描写が甘くなりますが、それでも大口径の超広角レンズである事を考えれば優秀な部類に入るでしょう。
又、半~1絞り程度絞る事で改善するので、画質のピークで使いたいならF2.8程度まで絞ると画質の均質性や周辺光量落ちも補正無しでほとんど気にならなくなります。
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やはり周辺部分は中心に比べて少し画質が低下しますが、個人的にはそれ以上に中心部の解像感の高さに驚きました。
逆光など明暗差の激しい箇所に、開放ではわずかですがフリンジが発生します。
とは言え、ほとんどわからない程度なので問題となるケースは稀でしょう。
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広角レンズは逆光などレンズに直接光が入るような条件ではゴーストやフレアが発生する事が多い焦点距離です。
SIGMA(シグマ) 20mm F1.4 DG DN | Art も逆光ではゴーストが発生する事がありましたが、フレアの発生はほとんど無く、質の高い高性能なコーティングがされている事がうかがえます。
発生の仕方によってはゴーストはちょっとした表現のアクセントにもなるので、良し悪しだけでは片づけられないポイントと言えます。
作例はゴーストが出やすい逆光線、最小絞りで撮影しました。
個人的にはちょっとカッコいいゴーストの出方で、むしろ発生を喜びたいところです。
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星景写真用に使われる事を想定したレンズなので、コマ収差についても検証しておきます。
作例は開放F1.4で撮影していますが、画面周辺部でわずかにコマ収差が発生しています。かなり優秀な部類だと思いますが撮影者によっては気になる方がいるかもしれません。
F2まで絞る事でほぼ改善されるので、気になるなら1絞り程度絞って使用すれば良いと思います。
SONY 純正の FE 20mm F1.8 G は、純正としては比較的リーズナブルな価格と高い性能、コンパクトなデザインで人気のレンズです。
サイズについてはSIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art と比較するとひとまわり以上小さくなるので、バランスという意味ではFE 20mm F1.8 G に分があるように感じます。
それでは標準レンズでは意外と違いのでる半絞りの明るさの違いによるボケの大きさはどれほどの差があるでしょうか。作例をみてみましょう。
上からF1.4、F1.8、F2の画像になります(全て SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art で撮影)。
ピントを合わせた被写体までの距離は1mほどですが、F1.4まで明るいとハッキリとしたボケが表現できて美しく見えます。
とは言えその差は大きくはないので、価格やレンズのサイズで撮影者が好みで選ぶ程度と言えるでしょう。
半絞りの差が大きな違いとなるのは星景写真です。
長時間露光が必要となる星景写真では、半絞りの差がシャッタースピードに大きく影響するからです。例えばF1.8のレンズで20秒露出をかけるところが、F1.4なら15秒ですみます。1カットにかかる時間の差は5秒、一晩に100カット撮影したとして100×5=500秒。つまり8~9分程の違いとなります。
又、星景写真ではノイズと星の光を見分ける為に同じフレーミングで数枚のカットを撮る事も行われます。そういった撮影ではたった5秒の露光時間の違いが、撮影の効率という意味で大きな違いとなってくるのではないでしょうか。
同じSIGMAの20mm F2 DG DN | Contemporary は同じ焦点距離ながらコンセプトが大きく異なるレンズです。
スナップなどでの撮影を重視して設計されている20mm F2 DG DN | Contemporary は、普段から持ち歩くのに苦にならない程度のコンパクトさを実現しています。持つ喜びを満足させる高いビルドクォリティやデザインも特徴です。
反面、20mm F1.4 DG DN | Art は1絞り明るいF値を持ち、星景撮影に便利なMFLスイッチやレンズヒーターリテーナーを装備し、その分20mm F2 DG DN | Contemporary と比較すると大きなサイズの、どちらかというと実用重視なレンズとなっています。
F1.4という他には類をみない明るさがSIGMA(シグマ) 20mm F1.4 DG DN | Art の最大の魅力です。
これにより、超広角としてはトップクラスの大きなボケと、長時間露光では非常に効率の良い撮影ができます。
MFLスイッチやレンズヒーターリテーナーなど、暗闇での不自由な撮影を強いられる星景撮影に便利な機能を有している事も含めて、星景撮影に使うレンズとしてはベストなレンズの一本と言えるのではないでしょうか。
スペックを考えれば驚くほどコンパクトと言えますが、それでも一般的には大きいと言えるサイズは、SIGMA(シグマ) 20mm F1.4 DG DN | Art の短所と言えるでしょう。
普段から持ち歩くには少し勇気のいるサイズ、重さなので、価格も含めて気軽に選択できるレンズではありません。星景写真などの専門的な撮影なら勿論おすすめのレンズとなりますが、スナップなどの一般的な撮影なら、同社のコンパクトで描写性能にも定評のある20mm F2 DG DN | Contemporary がおすすめです。
とは言え、F1.4の大きく美しいボケ味は非常に魅力的で、広角でのスナップが得意な方なら個性的な写真を撮れる、撮りたくなるモチベーションの上がるレンズと言えるのではないでしょうか。
以前、F2.8の明るいズームレンズを使って星景写真を撮りに行った事があります。現在のデジタルカメラは高感度性能も非常に高いですしF2.8で十分だろうと考えていましたが、これは間違いでした。
星の撮影では常に晴天とも限らないので、雲の動きなどを気にしながら撮りますが、そんな中10秒間が思いのほか長く感じられるのです。これがF1.4のレンズなら同じ露出を得るのに、わずか2、3秒で済みます。星景写真では明るいレンズは正義なので、本格的に星景写真を撮るなら是非選択肢に加えて欲しいおすすめレンズです。
又、SIGMAらしい美しく大きなボケは、今までの超広角レンズの枠を超えて面白い表現が出来るんではないか?そんな予感がする魅力的なレンズだと思います。
・20mmとしてはトップクラスに明るい、開放F1.4が最大の特徴です
・明るい広角レンズを活かした星景撮影に特におすすめです
・MFLスイッチやレンズヒーターリテーナーなど、星景撮影を便利にする機能が搭載されています
・SIGMAらしい非常に解像感の高い高性能レンズです
・半~1絞り絞る事で、周辺部まで高い均質性を得る事ができます
・開放F1.4による超広角レンズとは思えない美しく大きなボケも持ち味です
レンズ選びの参考にしていただければ幸いです。
【商品情報】SIGMA(シグマ) 20mm F1.4 DG DN | Art
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