特徴・操作性とLeicaを持つという事
いつかはLeica
Leica の哲学が感じられる描写
持っているだけで至福
ダブルカムユニット搭載レンズ使用時の注意
実写レビュー
季節や温度まで写る
Leica ズミルックスはLeica ズミルックスの写りに
是非使いたいモノクロモード
日常風景がアートに
トリプルレゾリューション
画像の比較
ノイズは少なくなるようだが・・・
個人的には60Mで撮影して画像処理ソフトでサイズダウンするのがおすすめ
画質
高感度性能は他メーカーよりやや弱い
脚色の無い性能がストレートに出る描写
シビアなピント
LeicaのライバルはLeicaだけ
Leica Q3との比較
旧モデルLeica M10との比較
メリット・デメリットとおすすめユーザー
結果だけじゃない撮影全体を楽しめるカメラ
カメラとしては最高クラスの価格
「いつかはLeica」の夢をかなえたいユーザーにおすすめ
作例に使用したカメラ
作例に使用したレンズ
まとめ
写真やカメラを愛する者で「Leica」というメーカーに心が動かない者は少ないでしょう。
好き嫌いは人によってそれぞれだと思いますが、現在一般的に使われるカメラのオリジナルを作ったと言ってもいいメーカーなので、写真好きがLeicaを避けて通れない事は当然かもしれません。
かく言う私も、ちらちらと「定年」の文字が見え隠れする昨今、退職の記念として自分へのプレゼントに「いつかはLeica」の野望を抱くひとりです。
そんなこんなでLeica M11-Pのテスト撮影は半ば自分で購入したいカメラのテストといった格好になりました。
とは言え短い貸し出し期間の間に他にもう一人同じような野望を持つスタッフも使うという事で(これだからカメラ屋は・・・(笑))、機能的な部分はとりあえず後回しにして、主に描写について見ていく事にします。
撮影をはじめての第一印象は、Leicaが持つ長い歴史と、写真やカメラ・レンズに対する哲学を感じられる「画」だという事です。こういった感覚は国産のカメラではなかなか味わう事ができません。
重厚なボディ、トップカバーに刻まれたLeicaの文字、伝統的なレンジファインダーを覗きながらピントを合わせていると、どうだ!俺は写真家なんだぞ!というような変な自信が生まれます。
まるでカメラを初めて手にした時のようなわくわくした気分にさせられるのです。持ち歩いているだけで至福の時間を過ごせたあの頃の気分。こんな気持ちになれるカメラがどれほどあるでしょうか?
そんな気分も束の間、レンズと合わせて200万円強の借りたカメラである事を思い出して現実に引き戻されるのですが。
今回のテスト撮影ではレンズにダブルカムユニットを搭載したLeicaズミルックスM f1.4/50mm ASPH.を使いました。
最短撮影距離が大幅に短くなり(70cm→45cm)非常に便利なのですが、ひとつだけ注意点があります。
それは、ピントの自動拡大表示の設定が近接域では使えない事です。コロの動きを感知して自動拡大を行っているようで、ピント拡大はコロのある70cmよりも無限遠側で行っておく必要があり最初は少し煩わしく感じました。
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今回のテスト撮影は寒空の中公園を散歩しながら行いました。
以前Leica SL2を使った事がある経験から、描写についてはある程度理解していたつもりだったのですが、モニターに写しだされたプレビューを見て驚きました。そこには確かに「冬」が写っていたのです。
日中の弱々しい光を受けた公園の風景から季節や温度が感じられる。Leica M11-Pは魔法のようなカメラです。
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都内ではまだ氷や霜を見る事は少ないかもしれませんが、私の住む郊外では田んぼのあぜに霜柱が立って歩きづらくなってきました。
都内の公園でも日陰はグッと気温が下がり、立ち止まってシャッターを切っているとすぐに日差しが恋しくなってきます。
寒い!寒すぎる!ズミルックスの描写にも助けられて、寒々とした冬の公園が表現できました。
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6000万画素のセンサーは、高性能なレンズは高性能に、そうでないレンズはそれなりに写ります。
Leicaのレンズにそうでないレンズは無いと断言できますが、今回使用したLeica ズミルックスはその特徴どおり開放では非常に柔らかい写りがそのままセンサーに記録されていました。
最近のカメラは上手にお化粧がなされるのが普通ですが、そういった装飾をほとんど施されていない画が新鮮です。
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ダブルカムユニット搭載のレンズを使用したので最短撮影距離が短くなって便利です。
Leicaを使っているのにレンジファインダーではなくモニターでピント合わせをしなければならない事に若干の敗北感を抱きますが、通常より20cm以上近寄れるのはやはり便利だと感じました。
伝統を重んじるだけでなく、現代の撮影スタイルに合わせて利便性についても配慮するあたりがLeicaの偉いところです。
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モノクロ写真はカラー写真から単純に色情報を削除したものでは無い。
油絵と水墨画は両方とも同じ絵です。しかし、仮に全く同じ場所を描いたとしても油絵と水墨画では観る人の印象は勿論、描く側の表現手法も全く違ったものになるでしょう。
Leicaのモノクロモードからはそんなメッセージが発せられているように感じます。
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ノスタルジックなデザインのカメラだからといってモノクロモードを使うというのはちょっと短絡的では?と思いますが、Leicaについては許してね、と思ってしまいます。
理由は、モノクロ写真ではより個性が発揮されるレンズの存在です。
シャープに、高解像度で写るレンズが必ずしも良いレンズでは無い。レンズの個性を表現に利用する。昨今では珍しくないそんな考え方を世に定着させたのは、もしかしたらLeicaかもしれません。
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日常のちょっとした散歩が、Leicaを肩からぶら下げているだけでどれだけ充実したものになるでしょうか?
コンパクトなボディと完成されたデザイン、多くのカメラが手本とする優れた表現力は、はじめて手にしたその日からあなたをカメラマンにしてくれるでしょう。
長年使ったカメラを親から子に託す。そんなロマンを夢想してしまうのはおじさんの悪い癖ですが、Leicaは憧れのカメラ、終着点のカメラであるとともに、初めて手にするカメラ、写真の楽しさを教えてくれるカメラとしてもピッタリです。
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スナップの楽しさのひとつは撮るものや撮る瞬間を探して歩く事ではないでしょうか。
レンジファインダーのカメラはフレーミングの外側、ブライトフレームの外側が見えるというのがメリットのひとつで、それが瞬間を写す事にプラスに働きます。
とは言え、カメラマンに少し厳しい目が向けられる昨今、人を入れて撮るのに躊躇があるのも事実で、私などは十分すぎる程に気を使い撮るものを探して撮っているというのが現実なのですが・・・
Lサイズで撮影
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Mサイズで撮影
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Sサイズで撮影
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トリプルレゾリューションは高画素センサーを採用したLeica M11-Pの機能の「売り」のひとつではないでしょうか。
作例は高感度で撮影した写真をそれぞれSサイズのピクセル数になるように調整した画像です。
ノイズの量という点に関しては、やはり画像サイズを小さくして撮影した作例の方が少なくなっているのがわかります。
しかし、画像自体の品質という意味では明らかに最高画素で撮った写真の方がシャープネスや立体感に富んでいるように見えます。
実際のテスト画像を見てみて、個人的には撮影時には最高画質で撮って後から画像処理ソフトを使ってダウンサイジングする方が良いと思います。
勿論、メディアの容量を節約したい、ノイズを少なくしたいなど記録サイズを小さくする理由も多いと思いますが、カメラやレンズのポテンシャルを優先するならやはり6000万画素で撮るのが良いのでは?というのが個人の感想です。
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高感度性能は他メーカーと比較してやや弱い印象です。
画像はISO3200で撮影していますが、はっきりとノイズが浮いているのが確認できます。
個人的にはナイトスナップなどであまり滑らかな画質なのも不自然に感じてしまう方なので、多少ノイズが交じるのは歓迎です。
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Leica M11-Pはセンサーがストレートにデータを出しているようで、レンズ性能やノイズについてあまり映像エンジンがお化粧していないようです。
最近の強力な映像エンジンのつくりだした画を見慣れていると欠点と写ってしまうかもしれませんが、裏を返せば脚色の無い素直な画ともとれるので、レンズの味を作画に活かしたいユーザーにはむしろありがたい点かもしれません。
撮影後の画像処理が前提となっていた古いデジタルカメラの画を見ているようです。
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少し注意したい点は、6000万画素のセンサーはピントについてそれなりにシビアである点です。
レンジファインダーを使って多少ラフに撮れるのもLeicaの良さですが、6000万画素センサーではほんの少しのピントのズレが画像として記録されるのでピントに少々気を使う必要があります。
シーンによって絞ったり、モニター拡大で正確なピント合わせをしたりといった工夫が必要になるでしょう。
Leica M11-Pと比較するカメラを選ぶのは難しいと感じます。「ブランド」の格の高さは勿論、実は同じようなコンセプトでデザインされているカメラが無いからです。
Leica Q3はLeica M11-Pよりもずっとデジタルカメラらしい機種です。
チルト液晶やEVFなどデジタルカメラらしい使い勝手の良さを持っています。レンズが固定式の為、特定のレンズにセンサーのチューニングを合わせられるメリットも大きく、条件によっては画質面でLeica M11-Pを凌駕する事もしばしばです。
正直に言うとLeica M11-Pの最大のライバルはLeica M10(ないしLeica M10-P)かもしれません。
2400万画素のセンサーはLeica M11-Pに採用される6000万画素センサーよりもピーキーさがなくて扱いやすく、特にピントの面では良い意味でアバウトさが出るのでスナップに使うLeicaとしては優秀なくらいです。両機を使った友人も少し気難しくなったLeica M11-Pに手こずって、Leica M10が懐かしいと言うほどでした。
他メーカーのカメラにも言える事ですが6000万画素が必要かどうかが、Leica M11-Pのカメラの価値を決める大きな要素となりそうです。
どのような芸術でも、使う機材に愛着を持って接するのは大切な事ですし、特に趣味として考えた時にはそれはとても楽しい至福の時間です。
書いては消し、消しては書いて進歩して来たカメラの中で、70年前のスタイルを継承した、ある意味ちょっと不便なカメラがあっても良いのではないでしょうか。
長い年月、変わらなかったのはLeicaだけだった。
デメリットは非常に高価である事です。レンズと合わせて車が買える価格はLeicaや写真によほどの思い入れがなければ高いと感じるでしょう。
このカメラを選択するのは、道具や物としての価値以上のものを見出せるかにかかっています。
プラシーボが入っている事は認めますが、私には確実に他メーカーのカメラがつくりだす画とは違う「何か」が見えました。
現代のM3に心ときめかないカメラファンはいないと思いますし、新品で手に入るというのも良い点です。
Leicaにカメラとして以上の何かを感じられるなら、後悔はしないでしょう。
「いつかはLeica」の夢をかなえたい全てのユーザーにおすすめです。
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Photo & Text by フジヤカメラ 北原