FUJIFILM(富士フイルム) X-H2S の実写レビューです。
FUJIFILMのフラッグシップ機の被写体認識、AF追従能力、AFスピードなどのオートフォーカス性能、裏面照射積層型2616万画素センサーの画質などを、実際に撮影した実写をもとにレビューします。
FUJIFILM Xマウントカメラのイメージをいい意味で覆す、プロ機として必要な要素をハイレベルに搭載したフラッグシップ機です。
特徴/操作性
驚くほど進化したオートフォーカス
Xシリーズ初となる裏面照射積層型2616万画素センサー
AF/AE追従、40コマ/秒の超高速連写
よりハイレベルになった動画性能
実写レビュー
オートフォーカスの追従性能が大幅アップ
実用的な被写体検出AF
FUJIFILM Xマウントのイメージを覆す高速なカメラ
画質・高速性能・サイズのバランスがいい
画質
裏面照射積層型2616万画素センサーの解像感
高感度性能
フィルムシミュレーションによる優れたカラーバランス
比較
Canon EOS R7との比較
SONY α7IVとの比較
おすすめユーザー
Xマウントカメラの中で最もオールラウンドな機種
プロ機らしい機能、品質を持つ分やや高額
あらゆるシチュエーション、被写体を、妥協せずに撮影したユーザーにおすすめ
まとめ
FUJIFILM(富士フイルム) X-H2S で実際に撮影してみて一番に感じたのは、オートフォーカスが驚くほど進化している事です。
特に新たに搭載された被写体認識機能は、Xマウントカメラで初めて搭載されたとは思えない完成度の高さでした。大きな声では言えませんが、あまり期待していなかったので、いい意味で大幅に予想を裏切られた格好です。
被写体認識の中でも鳥認識の成功率は他の先行するメーカーを凌駕するレベルで、今後野鳥撮影をするユーザーが選択するカメラに影響を与えるレベルだと感じました。
プロ機に求められる需要な要素に、高速性が挙げられます。
デジタルカメラではセンサーと映像エンジンの処理速度がカメラ全体のスピードに大きく影響しますが、X-H2S ではXマウントカメラで初めて高速な読み出しが可能な裏面照射積層型2616万画素センサーが採用され、カメラ全体での高速化がはかられています。
電子シャッター時のローリングシャッター歪みも抑えられているので、X-H2S の特徴のひとつである40コマ/秒の高速連写も安心して使えます。
X-H2S は新型の映像エンジンX-Trans CMOS 5 HSにより、AF/AE追従40コマ/秒のブラックアウトフリー連写が可能となっています。
個人的な撮影でこのような超高速連写が必要かと言われると答えは否ですが、より高速な被写体では、より細かく最良なコマを選ぶ事ができるので、シビアな撮影をするプロカメラマンからは歓迎される機能なのでしょう。
私個人としては、40コマ/秒の高速連写よりも、15コマ/秒のメカシャッターでの連写が、今回撮影した電車、鳥、動物、のいずれでも丁度いいコマ数で、自身で愛用するカメラにもこの速度があればと羨ましく思いました。
FUJIFILMのカメラは動画に強いというのは、一般のユーザーにもすっかり浸透したように思います。X-H2S でも、6.2K/30P 4:2:2 10bitのカメラ内カード記録に対応した事を筆頭に、4K 120pなどより高画質なフォーマットへの対応がはかられています。
とは言え、一般ユーザーにとって一番嬉しいポイントは、被写体認識の搭載をはじめ、オートフォーカス機能が進化した事が何より大きいのではないでしょうか。
個人的にも、人気のフィルムシムレーションを動画で使う敷居が下がった気がして、嬉しく思っているポイントです。
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先ずは鉄道写真でオートフォーカスの追従性能を確認してみました。
作例は600mmの超望遠レンズで中央線を疾走してくるあずさ号を撮影していますが、夕闇迫るオートフォーカスには少し厳しい条件の中、被写体認識が正確に車両を捉え続けピントを追い続けてくれます。E353の少し特殊な形状も問題無いようです。
このあともシャッターを切り続けましたが、車体が画面からはみ出すまで正確にピントを追い続けました。
同じ場所で構図を変えて普通電車を後追いで撮影しました。
画面中央には架線があり通常のオートフォーカスならそちらにピントが来てしまったと思いますが、被写体認識が働いているので、ピントは列車を追い続けています。
初めて搭載された機能という事もあってあまり期待していなかったのですが、鉄道については他社製品と比較しても遜色ない優秀なレベルにあると感じました。
X-H2S はFUJIFILM Xマウントカメラとしては初めて被写体認識が搭載されました。他メーカーの上位機種では普通となっている機能なので、後発という事になりますが、思った以上に完成度の高いものでした。
動物認識に安心してフォーカスを任せられるおかげで、撮影者はシャッターチャンスに専念出来ます。作例は人気のサーバルキャットですが、おかげで舌を出す瞬間を捉える事ができました。
便利な被写体認識ですが、動作が不安定だとスポットAFに切り替える必要が出て、実用的に使うのが難しい機能です。X-H2S の被写体認識は安心して使えるレベルにあると感じました。
作例4:F8 1/500 ISO800 露出補正±0 焦点距離:420mm
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被写体認識の中でも精度の高さに驚いたのが鳥認識です。今までに使った鳥認識にあまり満足する事ができなかった中、X-H2S の鳥認識は初めて実用的に使えると思えるレベルにありました。
作例は手前に木々の緑をボケるように入れていますが、鳥の目に正確にピントが合っています。フォーカスエリアをゾーンに設定していた事もありますが、鳥の撮影でストレスなくこういったフレーミングができるのは驚きです。
猛禽類以外にも、カモ、サギ、フラミンゴで試しましたが、いずれも高い確立で正確に鳥を認識してくれました。例外は、柔軟な体を使っておかしな恰好をしている時のフラミンゴで、さすがにこれは鳥として認識してくれませんでした(笑)。
X-H2S の高速連写は被写体によっては強力な武器となります。作例はサーバルキャットの一瞬の変顔を15コマ/秒の連写で捉えたものですが、10コマ/秒では撮れなかったかもしれません。
勿論、高速なオートフォーカスと被写体認識による部分も大きく、カメラ全体として高速である事が重要なポイントです。
FUJIFILM Xマウントカメラにあまり高速というイメージを持っていなかったのですが、そういった先入観をものの見事に打ち砕かれました。
非常に高速で羽を動かすチョウは高速連写の恩恵を大きく受ける被写体です。
作例では羽ばたきながら蜜を吸うチョウを捉えていますが、40コマ/秒の高速連写のおかげで羽根の開き具合などが微妙に違う多くのカットの中から、最適な1枚を選ぶ事ができました。
自分には無縁と思っていた40コマ/秒の高速連写ですが、プロスポーツの撮影など日常とかけ離れた撮影でなくても、使えるシチュエーションは意外と多くありそうです。
今回のテスト撮影では鉄道、動物園ともに超望遠ズームのXF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRを取り付けて行いました。
35mm判換算で900mmまでの望遠ズームは、広い動物園での撮影でもかなり被写体を大きく撮れて便利ですが、仮にフルサイズの900mmまでを持つと考えると重さやサイズの面で躊躇してしまうでしょう。
こういった少し特殊とも言える焦点域のレンズを比較的気軽に持ち出せて、高速に取り回し良く使える事は、X-H2S を選ぶ大きなメリットと言えるでしょう。
作例8:F8 1/160 ISO1600 露出補正±0 焦点距離:600mm
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鉄道写真の後、ちょうどのぼって来た月をついでに撮影しました。肉眼では確認できないクレーターがはっきりと写っていて、カメラの性能の高さがうかがえます。
重量約1.6kgのレンズで35mm判換算900mm相当の超望遠撮影ができる事は、APS-Cカメラの可能性のひとつと言えるでしょう。画質的にもフルサイズに近いハイレベルなもので、作例はISO1600の高感度で撮影していますがノイズも多くありません。
X-H2S は、画質・高速性能・サイズのバランスがとてもいいカメラです。
画素数と高感度性能のバランスのいい裏面照射積層型2616万画素センサーの解像感を、画像を拡大してみてみます。
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撮影時のISO感度は1250と決して低い値ではありませんが、ノイズの出方も少なく良好な画質です。
レンズ性能の高さもあって解像感も非常に高く、フルサイズとまではいかなくとも、それに近い解像感や立体感を持っています。
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APS-Cサイズ、裏面照射積層型2616万画素センサーは高感度にも比較的強くバランスのいいセンサーです。
作例はISO6400で撮影していますが、全体として立体感やシャープネスが十分に感じられる画となっています。拡大すればノイズの発生がわかりますが、もののディテールはしっかり残るリアルな描写となっています。
撮影者の感じ方にもよりますが、ISO6400程度までは使える画質だと思えました。高感度性能もAPS-Cカメラとしては優秀な部類に入ると言えるでしょう。
プロ機として高いレベルの性能を持つX-H2S を使っていると、FUJIFILMのカメラである事を忘れてしまいそうですが、勿論メーカーの最大の特徴であるフィルムシミュレーションを使った画作りができる事は大きな特徴のひとつです。
今回の撮影では動物の撮影ではSTD、昆虫館のチョウの撮影はVelvia、鉄道はSTDとETERNAを使い分けながら撮影しました。
作例は夕焼けの光を柔らかく表現してくれるフィルムシミュレーションETERNAを使って撮影しています。インスタントに美しいカラーバランスを楽しめるのはFUJIFILMのカメラを使う大きなメリットと言えるでしょう。
ここのところAPS-Cカメラの市場が、にわかに熱くなっています。そんなAPS-Cカメラの中でも最強カメラのひとつであるCanon EOS R7はX-H2S の強力なライバル機種と言えるでしょう。
2機種を比較した時、わずかなコンセプトの差が違いとなっていると感じます。例えばメカシャッターでの連写速度はどちらも15コマ/秒ですが、電子シャッターではX-H2S は40コマ/秒、EOS R7は30コマ/秒、X-H2S には当たり前のように用意されている縦位置グリップが、EOS R7にはありません(2022.7.14現在)。
明確にプロ機としてのコンセプトを持っているX-H2S は、クラス最高のカメラである事は間違いなさそうです。
どちらを選ぶかについては、システムの違いも考慮するべき点です。
APS-C専用マウントのXマウントは、コンパクトで高性能な幅広いレンズがラインナップされていますが、Canon RFマウントのAPS-Cカメラ専用レンズのラインナップはわずかです。XマウントのカメラはX-H2S が最も大きい機種となりますが、同じレンズを撮影用途に合わせて小さなカメラに取り付けて、コンパクトに使えるメリットもあります。
対するEOS R7 のメリットはRFマウントはフルサイズセンサーのカメラが主力だという事です。フルサイズとAPS-C、2つのセンサーサイズのカメラを同じマウントで使える事がEOS R7の大きなメリットと言えるでしょう。
X-H2S を購入する方の中には、望遠レンズでの撮影をメインに考えているユーザーが多くいらっしゃるのではないでしょうか。そう考えた時思い浮かんだのがレンズの事です。
FUJIFILMには軽量コンパクトで高性能なXF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR があります。SONYには高性能で名高い FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSがあります。α7IVはAPS-Cにクロップして使っても1400万画素ほど残るので、この組み合わせならある程度APS-Cカメラのような使い方ができるのです。
とは言え、SONYのレンズは約2.1kg、FUJIFILMのレンズは約1.6kgとおよそ500gの重量差があり、高速性能ではX-H2S が圧倒しているので、軽快に超望遠での撮影をしたいならX-H2S に大きなアドバンテージがありそうです。
苦手な被写体が無いという意味で、X-H2S はFUJIFILMのカメラの中でも最もオールラウンドな機種と言えるでしょう。又、これは他社のフラッグシップ機がおしなべてそうであるように、プロ向けのカメラの特徴でもあります。
性能的に高いレベルにあるという事は、あらゆるシチュエーションに柔軟に対応できるという事だからです。
グリップが取り外しできる事で、カメラの大きさを変えられる事も、1台で多くの用途に対応できる要因のひとつになっています。
短所はAPS-Cカメラとしてはトップクラスに高額である事です。
強力な防塵防滴をはじめプロの用途に合わせて堅牢につくられたボディは、高品質な部品をふんだんに使われている分、高額になる事は致し方ない事かもしれません。
その分、1台でほとんど全ての使い方、被写体に対応できる懐の深いカメラなので、用途に応じて2台のカメラを購入するよりも安いという考え方もできます。
X-H2S はFUJIFILMのカラーバランスを使って、あらゆるシチュエーション、被写体を妥協無く撮影したいユーザーには手放しでおすすめできるカメラです。
今回のテスト撮影で個人的に最も驚いたのはオートフォーカス性能が高い事で、言い方は悪いですがメーカーが宣伝する性能と実際に使ってみたフィーリングが完全に合致したと素直に感心しました。
勿論、シビアな被写体になった時には差があるのかもしれませんが、私レベルではAF性能について評価の高いメーカーと同等クラスにあるという印象です。
・FUJIFILM Xマウントカメラの中でもトップクラスの高いオートフォーカス性能を持っています
・初めて搭載された被写体認識も完成度の高いものです
・高速さを活かした超望遠での動体撮影に特に向いています
・画質・高速性能・サイズのバランスがとてもいいカメラです
カメラ選びの参考にしていただければ幸いです。
フジヤカメラでは、FUJIFILM(富士フイルム)ミラーレスカメラの中古商品を多数取り揃えております。在庫は日々更新されますのでどうぞこちらからご確認下さい。
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